街のコト

一大歓楽街に今も残る浪速の情緒(大阪市/中央区・法善寺横丁)

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(ライター:村上 健)

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派手な装飾やビル前面に吊るされた巨大なカニやフグの張りボテの下で、毎日が初詣のような喧騒が繰り広げられる大阪・道頓堀かいわい。その一隅に、明治時代から変わらない情緒を漂わせる横丁があります。

ダメ亭主を支える一途な浪花女の心意気を描いた、織田作之助の小説『夫婦善哉』。その舞台にもなった法善寺横丁がそれ。道幅3m弱、全長約70mのつつましい通りながら、両側に老舗のバーや上品な和食の店などが軒を連ね、大衆的な歓楽街の中で異彩を放っています。

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商売繁盛と良縁祈願の参拝客が絶えない「水掛不動尊 法善寺」

前回の京都・石塀小路で京都市電の敷石に触れましたが、常に打ち水されて風情があるここの石畳も、元は大阪市電の敷石です。
実はこの横丁、平成に入って2度の火事に遭いました。普通、再建には建築基準法に従って道幅を4mに広げる必要があります。しかし、伝統の横丁を守るべく、数十万の署名が集まり、特例措置を適用して元の道幅が守られたとか。防災は大切。さりとてルール一辺倒にならないあたりが、大阪らしいゆとりと分別です。

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村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

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月刊不動産流通2015年9月号掲載

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