街のコト

近代建築の父が手掛けたもう一つの名駅舎(大阪府/南海本線・浜寺公園駅)

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(ライター:村上 健)

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一昨年に丸の内駅舎の保存復原工事が完成したJR東京駅。今年、開業100年を迎えた駅舎は、周囲のビルに高さでひけを取るものの、戦災で失った南北のドームがよみがえり、首都の玄関にふさわしい風格を取り戻しました。開業時の設計は、近代建築の父、辰野金吾。実は今号で紹介する南海電鉄「浜寺公園」駅も、彼が手掛けています。東京駅に比べればずっと小ぶりですが、開業は7年早い明治40年。柱を壁に埋めず、装飾的に見せるハーフティンバー様式が実にチャーミングで、スケッチ心をそそります。

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関西らしく、駅前食堂のメニューにもビフカツが

駅から西へ歩くと、大阪で最も古い府営「浜寺公園」がすぐ。大阪湾沿いに約5,500本もある松並木は、「日本の名松100選」にも選ばれています。この松並木、明治維新後、生活に困窮した士族を救済する開墾事業で伐採されようとしたところ、歴史ある景観が消えるのを惜しんだ大久保利通の尽力で中止されたのだとか。そういえば、高架化に伴う駅ビル工事が始まる「浜寺公園」駅でも、今の駅舎はそっくり保存する工夫が施されるそうです。古くなったからと何でも切り捨てるんじゃなく、いいものは知恵を絞って生かす。そうありたいものです。

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交番の建物も由緒ある公園であることを偲ばせる

村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、古い商店や駅舎など心に染みる風景を描き続けている。 著書『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』 ほか

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月刊不動産流通2014年10月号掲載

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