街のコト

フジの花よりウマの鼻(東京都/浅草・初音小路)

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(ライター:村上 健)

年間3000万人もの観光客で日々溢れ返る浅草寺かいわい。その西側、昭和ムードの遊園地「花やしき」と場外馬券売り場に挟まれたあたりに、一風変わった飲食店街「初音小路」があります。

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戦前は東京随一の盛り場だった浅草六区に隣接し、空襲で焼けた浅草寺本堂を再建するために売却されたのがこの一画。当時立ち並んだ屋台が前身で、今も20軒ほどのスナックやモツ煮の店が軒を連ねています。

珍しいのは、路地の真ん中に生えたフジの古木。毎年5月には、四方に伸びた枝先にかれんな花が咲いて狭い空を覆い、実にいい風情です。満開の花を愛でながら静かに杯を傾ける。麗しき日本の風習ですねえ。

交差する路地の空に広がるフジの枝。5月の連休前後には満開になる

交差する路地の空に広がるフジの枝。5月の連休前後には満開になる

しかし、週末にたむろするオジサンたちのお目当ては、どうやら花なんかじゃないようです。どの店でも、テレビに映し出されるのは競馬中継ばかり。花そっちのけで、ホッピー片手に競馬新聞とにらめっこです。気になるのは、フジの「花」より、ウマの「鼻」差というわけです。

地図

村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

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月刊不動産流通2017年5月号掲載

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