「オーベルジュ」

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奈良で「食と農の魅力」シンポジウム

奈良で「食と農の魅力」シンポジウム

 奈良県が来年4月に新設する研修教育施設「なら食と農の魅力創造国際大学校」(NARA Agriculture & Food International College/通称ナフィック)の開校に先立ち、料理人と農家との交流・連携による地域振興を考えるシンポジウムが奈良市内で開かれた。 シンポジウムでは、高級フランス料理店を展開する「ひらまつ」(東京)の平松博利社長が、荒井正吾知事と対談し、「料理人は経営感覚や文化を理解し、食材と対話ができなければならない」と話した。 基調講演では、山形大学の江頭宏昌教授(農学部)が、自家採種などによって栽培されてきた在来作物を活用した、山形県内での取り組みを紹介し「在来作物は郷土の誇り、魅力になる」と訴えた。 続いて行われたパネルディスカッションでは、なら食と農の魅力創造国際大学校開設準備専任アドバイザーの河野一世さんをコーディネーターに、国際観光日本レストラン協会会長の尾川欣司さん、なら起業ネットワーク「和母(わはは)」代表の竹西多香子さん、工学院大学教授の西森陸雄さん、江頭教授が登壇し、自身の活動内容を紹介しながら、奈良の食や農業について白熱した議論を繰り広げた。 ひらまつは、大学校に併設される宿泊型フランス料理店「オーベルジュ・ド・ぷれざんす桜井」の指定管理者として運営を行う。客室を備え、奈良の食材を使ったフランス料理を提供する。 客室はスイート2室(5万5千円)とツイン7室(2万3千円)。レストランは40席で、ディナーコースの料金は6千円から。7月中旬から予約受付を開始する。 奈良県農業大学校を改編したナフィックは、農業の担い手を育成する「アグリマネジメント学科」と、農業知識を持つ飲食サービス業のプロフェッショナルを養成する「フードクリエイティブ学科」を新設する。 学生の募集は10月からで、各学科の定員は20名。修業期間は2年間。フードクリエイティブ学科の学生は、ひらまつが運営するオーベルジュで実践的な調理技術や経営管理の知識を習得する。動画:NAFICで「食」と「農」のトップランナーを育成https://youtu.be/81xA_qlgPxA

ルーアンの悶絶スイーツ 一歩先のフランスの旅(その2)

ルーアンの悶絶スイーツ 一歩先のフランスの旅(その2)

 町ごと美術館と言われるフランス・ノルマンディーのルーアンで、大聖堂からメインストリートを歩いた前回。その通りの突き当りに、ジャンヌ・ダルクが火刑に処せられたヴューマルシェ広場がある。ルーアンには、コロンバージュと呼ばれる中世の木組み構造の建物が多いが、この広場を囲むように建つレストランも同様。その中央、色鮮やかな花の鉢植えで窓辺が飾られた一軒が、フランス最古のオーベルジュとして有名な「ラ・クーロンヌ」だ。1345年に開業したこのオーベルジュは、名物鴨料理をはじめ、ノルマンディーらしく、りんごやカルバドスを使ったデザートなど、地域色豊かな食事が楽しめるとあって、世界中から訪れる人が絶えない。   この広場のすぐ近くにあるホテル・ブールテルードは、これからルーアンを訪ねてみようと思う人にお勧めの宿だ。16世紀に建てられ、ゴシック様式やルネッサンスの彫刻など、中世をそのまま伝える建築物は、1924年からフランスの歴史的建造物に指定されている。スパホテルとして、屋内プールや数々のスパメニューも充実、レストランとブラッスリー、バーも併設している。宿泊しなくても、ビストロのテラス席で食事をすれば、コロンバージュと石畳の広場を眺めながら、郷土料理や、季節の味が楽しめる。  歩き疲れてお茶をするなら、大聖堂近くの「ダム・ケーク」をはずしてはいけない。 かつて金物装飾の店だっただけあり、店入口には繊細な曲線の装飾。ウィンドウには、マドレーヌやショコラ、タルトなどがきれいに並べられ、すでにそのファサードがスイーツ女子には悶絶ものだ。お天気の良い日なら、中庭のテラス席を頼んで、名物のクランブルにマリアージュ・フレールの紅茶を。もちろんお菓子を買って帰ることもできるが、目移りするほどさまざまな種類があるから、要注意だ。  せっかくのフランスの旅、やはり夕食は星付きレストラン、という人は、セーヌ川沿いのGill(ジル)へ。カニやオマール海老の前菜、タラやヒラメなどの魚介類の料理が有名だが、肉好きの人にはもちろん、仔牛の胸腺や仔羊肉のコンフィなども。  こうやって食べ歩くより、のんびり散歩しながら、おいしいパンやおやつを買ったり、朝市で日常の食をのぞきたい、という人にも、この“町ごと美術館”のルーアンは美しい舞台を提供してくれている。次回は、コロンバージュの建物と石畳が続く町歩きへ。

町ごと美術館のルーアン  一歩先のフランスの旅(その1)

町ごと美術館のルーアン  一歩先のフランスの旅(その1)

 観光ガイドがあふれるパリ。美術館からレストラン、流行りの店にいたるまで、パリジャンよりパリに詳しくなれるような情報が、日本では大量に、常にアップデートされている。リゾート地の南仏や、お城めぐりのロワール、ワイン好きが足を伸ばすボルドーやブルゴーニュなど、パリは行き尽くした、という人のためのフランス情報にも事欠かない。だが、パリから列車でほんの1時間であるにもかかわらず、あまり多くの日本人が立ち寄らない、フランスらしいとっておきの場所がある。 りんごやカマンベールで有名なフランス北西部、ノルマンディーのルーアンという町だ。クロード・モネが連作を描いた大聖堂と、ジャンヌ・ダルク終焉の地として知られ、第二次世界大戦時の爆撃で大きな被害を受けながら、長い時間をかけて中世の伝統的な姿に修復してきた類まれな町。フランス最古のオーベルジュもここにある。静かで落ち着いた夏の旅を計画したい、という旅行好きのために、「町ごと美術館」と呼ばれるルーアンをじっくりご紹介しよう。第1回目は、夏に見ておきたい大聖堂とメインストリート。 フランス第6の都市ルーアンには、パリのサン・ラザール駅から特急列車に乗って約1時間で着く。ヴィクトル・ユーゴーが「百の鐘が鳴る町」と書くほど教会が多く、中でもゴシック建築で有名なカテドラルは必見だ。12世紀から400年かけて16世紀に完成した大聖堂は、フランス・ゴシック建築の最高峰といわれ、150メートルの尖塔はフランス一の高さを誇る。レースのような繊細な浮彫装飾を見上げ、カメラを構える人は多い。ルーアン出身のフロベールの作品「ボヴァリー夫人」に描かれた大聖堂の描写を、今もそのまま見ることができるからだ。 毎年6月から9月まで、夜になると、この大聖堂の壁面を丸ごとプロジェクターにした壮大な映像ショー「光のカテドラル」を見に、多くの人が集まる。ここ3年ほど、夏になるとこのショーを観ているが、日本人観光客に出会ったのは数えるほど。パリを起点にもう一歩先へ向かうとなると、同じ方角を向いていても、一気に海辺のモン・サンミッシェルまで直行、という場合が多く、ルーアンはどうやら「途中駅」として通過してしまう人が多いらしい。町のメインストリートになっている「大時計通り」を歩いても、時折ツアーの一行とすれ違う程度で、ほとんど日本人は見かけない。 通りの中ほどに、文字通り、ルネッサンス様式の時計台がある。道をまたぐアーチの表裏に、二つの大時計。もともとゴシック様式の鐘楼として建築されたもので、時計台からはルーアンの旧市街が見下ろせる。さらに進むと、ジャンヌ・ダルクが火刑に処せられた広場にたどり着く。中央には、ジャンヌ・ダルクの魂をなぐさめるために建てられた教会。周囲には、たくさんのビストロやレストランが並んでいる。その中の一軒が、フランス最古のオーベルジュ。次回は、当地のグルメを紹介しつつ、さらにルーアンの“奥”を歩いてみよう。