老犬という穏やかな伴侶 その2・ボタン 【きみといきる】

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(OVO オーヴォより)

ボタンを引き取るとき、保護していた保健所の担当者からは「おそらく痴呆が始まっていると思う」と言われていました。ボタンが私たちのところにくるまでには少し悲しい、しかし珍しくはない理由があります。

おそらく洋犬の血が混じっているのでしょう。ボタンはふさふさとした毛でおおわれた少し小さめの中型犬です。年齢は12歳くらい。おばあちゃん犬といっていい年です。可愛がられていたのだろうと思いますが、少し怯える仕草も見せるので、なにか怖い目に遭ったことがあるかもしれません。ボタンが原因で飼い主が近所の方とうまくいかなかったようだ、と聞いています。鳴いたり吠えたりした声がトラブルの原因のようです。家族の中で体調を崩してしまった人もいるようです。家族の精神的な負担を考えると、もうこれ以上飼うことは難しい。しかし知り合いに引き取ってくれる人はいない。そうやって保健所に保護されました。

ボタンを引き取るかどうか、私たちは議論をしました。痴呆が始まっているとしたら新しい家族を探すことは難しくなる。しかし、残りの時間がそれほど長くないのなら、その時間をせめて少しでも快適なところですごさせてやりたい。そう話しあってボタンを引き受けることにしました。

迎え入れてみると、嬉しいことに私たちの予想は外れました。ボタンは元気な犬でした。いつまでも吠えたり同じ所をぐるぐる回ったりする行動は痴呆の症状でよく見られるものですが、ストレスにさらされたときにも出る場合があります。もしかしたらボタンはボタンなりに、ストレスのある環境で頑張っていたのかもしれません。私たちのところにきてからはそんな行動は見られず、穏やかに過ごしています。

白内障がだいぶ進んでいるようですので、景色はあまり見えないかもしれません。耳も少し遠いようです。でも食欲はあるし内臓も丈夫です。散歩のリズムも軽快です。スタッフが定期的にシャンプーしてあげているので、いつもふさふさと柔らかい毛を風になびかせています。

この、ケニア・ドイさんの撮ってくれた写真を見ると、生きる力にあふれた犬なんだなと思います。

ボタンがやってきたのは10月8日。この日の誕生花はノボタン。だからボタンと付けました。ノボタンの花言葉は「謙虚な輝き」です。

著者:藤谷玉郎(ふじやたまお)

一般社団法人ふくしまプロジェクト理事
東北大学大学院卒業。福島県庁・秋田県庁を経て2014年4月より現職。東日本大震災後に被災地派遣で福島県庁に出向し動物保護行政に携わる。その当時の日々をブログ「福島日記」に記録。
きみといきる。ふくしまプロジェクト WEB
ブログ「福島日記」

写真:ケニア・ドイ

芸能人のグラビアなどを数多く手がけ、人物撮影を得意とするスチールカメラマンが、2011年猫カメラマ
ンになることを宣言。
ブログで猫写真を発表し続ける。ファースト写真集『ぽちゃ猫ワンダー』(河出書房新社)が2014年12月に発売され話題に。好評発売中。
ケニア・ドイのネコブログ
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