(OVO オーヴォより)

学校における「いじめ」というのは、当事者や家族だけでなく、自治体や教育関係者全般にとっても深刻な問題だ。文部科学省によると、全国の小中高校が2013年度に把握したいじめは18万5860件となり、2年連続で過去最多を更新した。
一方アメリカではどうだろうか。さまざまな生徒のグループ比較や、学校でいじめられたことのある生徒の報告が数年でどう変化しているかなど、信頼性が高くタイムリーなデータを提供することでいじめ問題の改善に取り組んでいる、アメリカの教育省管轄の統計機関NCES(National Center for Education Statistics)によると、2013年度におけるいじめは減少したというデータが出た。
2013年度のデータによると、いじめを受けたのは生徒の約22%。これは、データを集めた2005年、2009年、2011年の28%、2007年の32%と、どの年よりも低い結果となったのだ。そして、2013年のこの低いパーセンテージからは、いくつかの特徴が見て取れる。例えば女子生徒のいじめは、2009年は29%、2011年は33%であったが、2013年には24%と大きく減少。この減少傾向は男子生徒も同様であった。さらには、ヒスパニックやアジアの生徒におけるいじめのパーセンテージも2007年、2009年に比べて減少した。
ここでいう「いじめ」とは、言葉、精神的、ネットを使った社会的虐待などが含まれている。2013年のデータによると、いじめられた生徒のうち、多くは侮辱的なからかわれ方や名前の呼ばれ方をされ、そのうち7%の生徒はネットいじめを受けたという。
このニュースを考慮して、教育省は改めていじめ反対運動の推進を告知した。「学校が安全になるほど、子どもたちは学力的にも社会的にも成長します。」と、アメリカ合衆国教育長官のアーン・ダンカン氏はプレスリリースの中でコメントを述べた。「教育省は、学校でのいじめが徹底的に改善されるよう闘っています。ここ数年で状況が改善されたとはいえ、我々は今後もアメリカの子どもたちの安全を保障するために取り組んでいきます。」と力強くコメントしている。
先の「川崎中1生徒殺害事件」のように、日本ではいじめによる悲しいニュースはいまだ絶えることがない。そのたびに言及されるのは、いかにして家庭、学校、地域を通して大人が子どもを守っていくかということ。アーン氏のコメントには、子どものいじめという問題をいかに大人たちの努力の問題として捉えなくてはいけないのかという強い意志が感じられる。日本でも国や教育機関の取り組みだけでなく、我々一人ひとりが子どもたちの安全を真剣に考えていけるかが、これからのいじめを減らす上で重要なカギを握っているはずだ。