街のコト

人気の「遊べる道の駅」に見た、地域の防災のこれから

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(Jタウンネットより)

栃木県東南部に位置する茂木町は、面積の約70%を山間部が占める人口約1万4000人の町だ。1996年7月に開業した「道の駅もてぎ」は、地元産の食材をベースにしたレストランやご当地ラーメン店、野菜直売所、土産物売り場などで構成され、家族で遊べる広い公園もある。
敷地のすぐ横を真岡鐡道の線路が通っていて、土日祝にはSLが走る。単なる休憩所を超えた「遊べる道の駅」として高い評価を受けている。

筆者が訪れたのは春分の日にあたる2014年3月21日のこと。マイカー利用者やツーリング途中のライダーでごった返していた。中でもとちおとめを使ったアイスクリーム売場は大盛況で長蛇の列ができていた。

ききょうの花をかたどった八角形の建物やガラスの温室などが立ち並ぶ中、2013年4月に竣工したばかりの「茂木町防災館」に筆者の目はとまった。

茂木町防災館(写真はすべて編集部が撮影)
茂木町防災館(写真はすべて編集部が撮影)
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大水害の災禍から立ち直った町

「道の駅もてぎ」の立っている場所は、1986年8月4・5日に発生した「茂木水害」で大きな被害を受けた場所でもある。
台風10号から変わった低気圧の影響で大雨が降り、街の中心部を流れる逆川は氾濫、役場は2メートルの床上浸水に遭った。
茂木町での人的被害は、死者3名、行方不明者1名、負傷者58名。被害額は当時の町の予算の約4倍にあたる約160億円。政府により局地激甚災害地に指定された。

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茂木の人たちは悪夢のような災害から立ち上がり、一丸となって復興を目指した。復興のため逆川の大改修が実施され、移転した家屋は約150棟におよぶ。総予算は約146億円。町の歴史に残る大事業だ。
道の駅もてぎは、川幅1.5倍に広がった逆川のほとりに復興のシンボルとして建設された。

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防災館は太陽光発電を使った照明や、非常用電源、物資保管倉庫などを備えていて、普段は休憩所として提供されている。筆者が中に入ったときは、赤ん坊連れの若夫婦が授乳室を利用していた。
1階はイベントスペースとしても活用されているが、壁には防災用品の展示や、茂木を襲った災害の写真が展示されている。

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2階を見学することはできなかったが、緊急時に避難者を収容できるよう布団も用意されている。

館内にいた女性スタッフに話を聞いた。
茂木町は近隣他町に比べて土砂災害発生危険区域が多く、そのうえ竜巻も発生しやすい地形なのだとか。近年の局地的豪雨に対しても敏感な様子で、1986年の災害を昨日の出来事のように語っていた。

町は8月5日を「町民防災の日」と定め、大規模な防災訓練を行っているという。

多機能化する道の駅

筆者はグルメコーナーのある建物に戻った。とちおとめのアイスクリームを堪能し、茂木産のニラが入ったラーメンに舌鼓を打った。

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ゆずを使った地場産品が並ぶ土産物コーナーはラインナップの豊富さに目を見張る。商品開発に余念がないのだろう。

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栃木自慢のいちごは生産者の名前と顔写真が掲示されている。消費者としても安心して購入できるし、直販なので生産者にとっても実入りが多いというメリットがある。全国各地で道の駅が増えている理由が理解できる。

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そろそろ帰ろうかと駅に向かったとき、汽笛を鳴らしたSLがやってきた。公園で遊んでいた子供たちは駆け寄って手を振り、乗客も窓から手を振っていた。

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国交省が防災拠点として整備中

東日本大震災の被災地域では、流通網が寸断され大手スーパーやコンビニが長期間にわたって休業を余儀なくされた。その中で一夜早く開店にこぎつけたのが道の駅だった。
近所の農家が農作物を供出したり、近隣の道の駅が物資を融通し合ったり、スタッフが独自に物資調達のため駆け回ったりしたエピソードは今も語り継がれている。
ところで、日本の卸業界は大規模・集約化が進んでいる。平時はそれで問題ないのだろうが、遠距離輸送ができなくなったとき、強いのは道の駅かもしれない。

貴重な教訓を得た国交省は現在、道の駅を防災拠点としても機能するよう整備を進めている。

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