街のコト

「艦これ」と、深刻化する「空き家問題」の見えないつながり

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(Jタウンネットより)

実はいま、日本各地で空き家の増加が問題となっている。

空き家が放置され続けていると、ゴミ屋敷化したり、火災の原因になったりする。老朽化が進むと、外壁や屋根瓦が落ちてきて、思わぬ事故も起こりやすい。不審者が住み着いて、治安が悪化する事例も多く、近隣の住民に迷惑がかかってしまうこともある。だが、所有者にはなかなか解体しない人が多い。というより、しようにもできないという。

空き家の解体がなかなか進まないのには、原因がある。家を解体して更地にすると、解体費用は数百万単位でかかるという。また、その後の固定資産税もそれまでより高くなる。所有者にとって金銭的な負担が大きいことが、最大の問題である。

呉信用金庫の珍しい「空き家解体ローン」

とはいえ、空き家問題の解決は今や社会的課題ともなっている。

そんな中で、珍しい動きだ。空き家の解体を考えている人を支援するため、2014年11月27日、広島県呉市にある呉信用金庫で、「くれしん空き家解体支援ローン」が新設された。

対象は、空き家の所有者・相続人、または土地の所有者等。同金庫の営業区域内の住人、または事業所に勤務している、満20歳以上、安定収入が見込まれる人という条件だ。

融資金額は、10万円以上200万円まで。期間は3ヵ月以上7年以内だ。融資利率は固定金利で2パーセント。

中国新聞ウェブ版の記事によれば、こうした「空き家解体」を対象としたローンは、全国的にも珍しいという。

呉市風景(Cheng-en Chengさん撮影,Flickrより)

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海軍の町として栄えたことが、空き家増加の遠因に

その背景には、「海軍の町」として繁栄した呉ならではの事情があるようだ。

港町で元々平地が少ない呉だが、戦前には海軍関係の施設が次々と置かれ、関係者が多く暮らした。人口は40万人に達し、当時の広島市に匹敵する「大都市」だった。

上記のような土地不足から、住宅は山や坂など斜面地に建てざるを得なかった。そして人口が減ってみれば、不便な場所にあるこれらの住宅は、戦後に設けられた団地などとともに、その多くが「空き地」化してしまったのだ。

こうした状況を改善するため、呉市では2014年1月から、「空き家等の適正管理に関する条例」を施行している。所有者に空き家の「適正管理」を呼びかけるとともに、市が改善のための勧告、また命令などを行うことを定めた。

とはいえ、所有者にしてみても、資金がなければ解体しようにもできないというのは前述のとおり。今回のローンは、こうしたニーズに応えたものだ。

最近では「艦これ」ブームもあり、改めて呉を含めた各地の「海軍の町」への注目が集まっている。艦これと空き家ローン。一見まったく関係ない2つの社会現象が、どこかでつながっている――呉信用金庫の取り組みには、そんな不思議を考えさせられる。

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