街のコト

昭和史に彩られた 大都会の無人駅 (神奈川県/鶴見線・国道駅)

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(ライター:村上 健) ekimeguri01 「あれ、ここって前は何だったか?」
戦災復興、列島改造、バブル景気と、時代とともに大きく姿を変える首都圏。ほんの少し前の風景すら思い出せないことも少なくありませんが、じっくり歩けば昭和の名残りをとどめる場所も見つかります。京浜工業地帯を縦横に走るJR鶴見線の「国道」駅もそんな一つです。

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昼でも暗い無人駅「国道」構内

駅名の由来は、第一京浜国道が目の前だったからというそっけなさですが、構内がすごい。今や辺境の駅でも珍しい木製改札を抜けると、アーチ状に天井高く柱と梁を組んだ構内は薄暗く、10軒ほどの店舗スペースは、1軒の居酒屋を除いてどこも空き家。
「駅ナカ」が充実し、買い物が駅の中でほとんど済んでしまうご時世に、ここで済むのは仕事帰りの一杯だけ。かつて黒澤明監督の映画『野良犬』で闇市シーンを撮影したといわれるだけあって、戦後を封印したかのようです。 実際、構内から第一京浜側に出て駅舎を見上げれば、外壁のあちこちに太平洋戦争当時の米軍による機銃掃射跡も発見できます。

前へ前へと突き進むのは世の常なれど、時には昔を振り返ることも必要。昼間なのに人けのない「国道」駅構内で、そんな思いが浮かびました。

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駅構内に残るレトロな看板

村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、古い商店や駅舎など心に染みる風景を描き続けている。 著書『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』 ほか

ƒvƒŠƒ“ƒg 月刊不動産流通2014年12月号掲載

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