街のコト

巨大地下室ブームが到来!/ ロンドン(イギリス)

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(ライター:冨久岡 ナヲ)

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地下室建設中の家。前庭から削岩機を入れて裏にある主庭の地下を掘っている

イギリスは日本より国土面積は小さいものの、可住地面積が広く、人口は日本の約半分。だから不動産の価値は「土地」の良さよりも、家の質とロケーションが重視される。それゆえロンドンは不動産価格が常に国内トップだが、最近の投資ブームでさらに価格が高騰している。今、人気の高級住宅地に一戸建てを買えるのは国内外の富裕層ばかりだ。

ロンドンの家々は彼ら富裕層の基準からすると小ぢんまりしている。しかし厳しい建築規制により増築や建て直しはほぼ不可能。それに古い家ほど価値が上がるので、築100~200年の家を壊すつもりもない。そこで考え出された合法的に家を拡張する方法が「地下室をつくること」。それも、広い庭の地下までも掘って地下3階、温水プールに映画室、遊戯室まで、と「とんでもない」スケールでの話である。

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豪勢な浴室やジムなどが設けられている地下室例

こうして「これなら誰にも文句を言われまい」と、富裕層の所有する住宅が一斉に建築申請を始めたのだが、削岩機による騒音問題、地下水圧の変化により隣接する家が傾くなど苦情が続出した。そこでやっと政府が乗り出し、増築は地下1階だけ、庭面積の50%を超えて掘るのは禁止などの規制が14 年中にも発効される見通しだ。そうなる前に許可を得てしまおうと、大型プランだけで450件もの申請が出されているのだとか。

高級住宅の多いケンジントン地域に長く住むある貴族は、このブームに対し「近所に迷惑をかけて地下室をつくるなんて最低だ。私みたいに、別宅としてカントリーサイドの城でも買えばいいのに」と反対している。いずれにしろ、庶民にはあまり縁のない世界の話なのだが…。

 

冨久岡 ナヲ(ふくおか・なを)
ロンドン在住ジャーナリスト。イギリスのビジネスや文化など広範なテーマで記事を執筆するほか、住宅事情調査や日本からの投資用不動産視察コーディネートも行っている。

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