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リッピングからハイレゾ再生まで楽しみを広げるパイオニアのワイヤレスワールド  ◎文・野村ケンジ

リッピングからハイレゾ再生まで楽しみを広げるパイオニアのワイヤレスワールド  ◎文・野村ケンジ

リッピングからハイレゾ再生まで楽しみを広げるパイオニアのワイヤレスワールド 〜ワイヤレスドライブ“BDR-WFS05J”&ミュージックシステム“Stellanova”◎文・野村ケンジ AVアンプや高級スピーカーなどの本格オーディオビジュアル機器から、ヘッドホン&イヤホンなどのポータブルオーディオ、さらにはカーナビやカーオーディオなどの車載製品まで、幅広いジャンルの音響機器を手がけているパイオニア。日本有数のオーディオメーカーとして、高い知名度を誇る同ブランドだが、そのいっぽうで、パソコン分野でも内蔵や外付け用のBD-Rドライブ(BD/DVD/CDライター)を豊富にラインナップしてきており、そちらのジャンルでも有名だったりする。いや、今どきはハイクオリティーを志向したBD-Rドライブなんて、市井ではパイオニアくらい。音響ブランドならではのノウハウを生かすことで、データ書き込みの正確性だけでなく、CDリッピングや音楽再生についても高いクオリティーを誇る独自のシステムを搭載していることから、主にPCオーディオ(パソコンをプレーヤーとして活用するオーディオシステム)ユーザーから高い信頼を得ているのだ。iOSデバイス対応で機動力を高めたパイオニア・ワイヤレスドライブワイヤレスドライブ パイオニア BDR-WFS05J オープン価格 このようにパイオニアのもうひとつの顔となっているBD-Rドライブだが、その最新モデルはラインアップされた独自のワイヤレスドックによりPCとのワ イヤレス接続にも対応。パソコンでワイヤレスの外部ドライブとしての活用はもちろんのこと、この7月にはワイヤレスドックのファームウエアがアップデート されて、iOS専用アプリと連携して、iPhone/iPad、同社オーディオシステム「Stellanova」などと接続できるようになり、ダイレクト にCDリッピングやワイヤレス再生といった、さまざまな使い方が可能となっている。  もともとパソコン用ドライブであるにもかかわらず、パソコンレスでも利 用することができるようになっているのだ。そんな、画期的な手軽さを持ち合わせている最新世代のワイヤレス対応BD-Rドライブが「BDR- WFS05J」だ。  ワイヤレス機能を搭載、パソコンだけでなくスマホやタブレットからもコントロールが行えるという、多機能と利便性を極めたBDR-WFS05Jだが、そ の構成は至ってシンプル。スロットローディング式のPC用薄型BD-Rドライブ本体に、台座を兼ねたワイヤレスドックが組み合わせられた2ピース構成と なっており、ドライブを縦型設置することもあって、スペース効率もかなりよい。実際のセットアップも、台座部分にACアダプタをつなぐだけ。あとはパイオ ニアが提供しているPC用、またはiOSデバイス用のアプリから家庭内無線LANに接続させるSTモードか、直接ワイヤレスユニットを親機として接続するAPモードで接続するだけなので、ワイヤレス機器に不慣れな人でも、ほんの数10 分あれば使い始めることができる。なかなかに手軽だ。 それでいて、前記のようにiOSデバイスからパソコンレスで直接をCDリッピングして再生できるほか、iOSデバイス内の音楽データをドックにつないだHDDやUSBメモリーに書き出し、またiOSデバイスから再生したり、リッピングではデータの保存先にUSB HDDやUSBメモリーを指定できるなど、使い勝手もよい。いやはや、便利な時代になったと思う。  ちなみに、ワイヤレスユニットはAPS-WF01Jというモデル名で単体発売されているので、BDR-XS06Jなどパイオニア製BD-Rドライブを所有している人も、手軽にワイヤレス化ができる。 いっぽうで、パイオニアならではのハイクオリティー志向であるのも、BDR-WFS05Jならでは。振動の排除、抑制を図った高剛性ボディーを採用するほか、リッピングなどでCDデータの読み取りをより高精度に行うようにするPureRead 2+を搭載。新アルゴリズムの採用によって、データの読み取り精度を従来よりも高めている。ちなみに、PureRead 2+の“+”はPureRead系の設定をドライブ本体のファームウエアが記録保存してくれることを指した記号で、パソコンをつなげるたびにいちいちドライブの動作を再設定する必要がなくなっている。おかげで、一度設定してしまえば、パソコンやタブレットなどからも同じ設定を利用することができるようになっているので、ことBDR-WFS05Jのようなワイヤレス接続で様々な機器から利用する場合はとても便利だ。 また、映像や音声コンテンツの再生時にはディスクを低速で回転させ静音を保ち、データをハードディスクに保存するときはディスクを高速回転させてパフォーマンスを高めるアドバンスド静音ファームウエアも機能しており、利用状況に応じて最適な動作を自動的にチョイスしてくれるのも嬉しい。新しいスタイルのワイヤレス・ハイレゾシステム Stellanova さて、BDR-WFS05Jを、実際に使ってみるにあたり、今回はもうひとつ、個性的な製品を組み合わせてみた。それは、先にもちょっと触れたパイオニアのコンパクト&スタイリッシュオーディオシステムStellanovaだ。ワイヤレスミュージックシステム パイオニア Stellanova APS-S301J オープン価格 こちらの製品、何を隠そう、パイオニアはパイオニアでもピュアオーディオ部門ではなく、BD-Rドライブ開発と同じ部署が開発に携わったというユニークな生い立ちを持つ製品。本体は、超薄型の変形五角形デザインが採用されていたり、レッドやブラウンなどのカラーバリエーションが用意されたりと、なかなかにスタイリッシュなデザインとなっている。 シリーズとしては、システムの中核となるUSB DAC内蔵アンプ「APS-DA101J」、USB HUB機能を持ったワイヤレスユニット「APS-WF02J」をラインナップ。APS-DA101Jはシルバーにゴールド、レッド、グリーン、「APS-WF02J」はブラックにブラウン、ブルー、ピンクという、両者で全く異なる4色ずつのカラーバリエーションが用意されているのも特徴的だ。また、専用の小型スピーカーAPS-SP101Jも含めたフル構成のAPS-S301J、スピーカー&アンプ構成のAPS-S201Jなどのセットモデルも用意されている。  そういったスタイリッシュでコンパクトなスタイルもさることながら、やはりパイオニアというべきか、Stellanova最大の特徴といえば、ワ イヤレス環境を活用しつつも、ハイレゾ再生に対応していることだ。しかも、「Air Hi-Res Link Technology」なる独自技術によって、iPhoneやiPadなどのiOSデバイスからのDSD5.6MHzと PCM192kHz/24bit(いずれも最大)までのハイレゾ音源が楽しめる。今後のハイレゾ音源の普及を考えても、十分に高いスペックを持ち合わせて いるといえる。 ワイヤレスドライブからiPhone/iPadにダイレクトCDリッピング ということで、今回はStellanovaのAPS-S301Jシステムと、BDR-WFS05Jを組み合わせて、どのような活用ができるのかをいろいろと試してみた。なお、パソコンはWindows8.1、iOSデバイスにはiPhone5Sを使用。Windows8.1には専用プレーヤーソフト「Pioneer Stellanova Player」と機器接続ソフト「Pioneer Wireless Connect」を、またiPhone5sには専用アプリ「Wireless Hi-Res Player 〜Stellanova〜」をインストールして、それぞれの使い勝手や機能性についてテストを行っている。 まずはWindows8.1でパソコン用プレーヤーソフトPioneer Stellanova Playerを使う。一言でいえばオーソドックスな音楽再生ソフトで、特に奇をてらったものではない。その分、操作はとても分かりやすかった。加えて、(当然ながら)ハイレゾ音源の再生やその他の音源の再生などもこちらのソフトから行えるため、操作がひとつにまとまってくれているのはかなり便利。その点も含め、使い勝手はよいといえる。  いっぽう、機能の充実が光っていたのが、iOSデバイス専用アプリWireless Hi-Res Player 〜Stellanova〜だ。こちらはiPhone本体やパソコン、Stellanovaに接続したUSBメモリ(FAT32に対応)など、様々な場所に 置かれた音楽ファイルが再生できるうえ、それがどこに置かれたファイルなのかもアイコンを見ればひと目でわかるようになっている。また、ワイヤレス経由で BDR-WFS05Jと接続しておけば、CDリッピングもコントロールが可能(リッピングのファイル形式も選択可能なのが嬉しい)。ちなみに、リッピング したデータは、iPhone自身に保存されるため、外出時などにヘッドホン等で楽しむことも可能だ。   なお、Stellanovaおよび「BDR-WFS05J」については注意する点がひとつ。こちらの2製品ともに、プレーヤーやコントローラーとして接 続できるデバイスは同時にひとつだけとなっていて、パソコンからiPhoneに切り替えるときは「Pioneer Wireless Connect」を使ってパソコンとの接続をいったん解除、その後iPhoneの「Wireless Hi-Res Player 〜Stellanova〜」アプリから接続を行わなければならない。とはいえ、今回のようなテストならいざ知らず、そこまで頻繁にプレーヤーを切り替える ことはないだろうから、億劫に感じるほどではないだろう。StellanovaでiPhoneからワイヤレス・ハイレゾ再生 USB DAC内蔵アンプAPS-DA101JとワイヤレスユニットAPS-WF02Jを組み合わせたStellanovaは、iPhoneからのハイレゾ再生やUSB DAC機能など、なかなかに便利だ。では、実際のサウンドはいかがなものだろうか。ということで、StellanovaのワイヤレスユニットAPS-WF02JにUSBメモリーを挿し、その音質を確認してみることにした。 フォーカス感のしっかりした、明瞭なサウンド。ヴォーカルやメインギターがしっかりと前に出てきて、存在感のある歌声や演奏を楽しませてくれる。音色傾向としては、クセの弱い、ナチュラルなイメージ。ありのままの歌声を、ストレートに楽しませてくれる。自然でいて、活気のあるサウンドといえるだろう。   しかしながら、APS-S301Jに組み合わせられている小型のスピーカーは、ミニマムなサイズはありがたいものの、66mm口径フルレンジユニットを採用して いる。このためか、低域の量感としてはバランスは悪くないのだが、ローエンドののびがもう少し欲しいという印象を覚えた。そこで、手元にあったドイツELACの BA72を組み合わせてみたところ、これがなかなかに相性がよく、重心の下がった、かつエネルギー感の高いサウンドを披露してくれた。同時に、音場的な広がり感も向上、立体的なサウンドフィールドになってくれた。  両者の違いは、あくまでも好みの範疇ではあるが、APS-DA101Jのパワーアンプ部が(そのサイズからは望外といえる)良好な駆動力を持ち合わせているため、もしお気に入りのブックシェルフスピーカーがあれば、そちらと組み合わせて活用するのも手だろう。それでも、「Stellanova」ならではの利便性や音質の良さは、十分に活かすことができるはずだ。 ワイヤレス環境を得ることで活用シーンが大きく広がったBDR-WFS05Jと、スマートなデザインと手軽で便利な機能性を持ち合わせつつも、音質に関して一切の妥協なく仕立てられたStellanova。どちらもパイオニアらしい、こだわりに満ちた製品だと感心させられた。