「菅原文太」

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見て終わりではなく、見た後が重要な映画  市民全員参加型の「未来シャッター」

見て終わりではなく、見た後が重要な映画  市民全員参加型の「未来シャッター」

 いったい、これはどういう種類の映画なのだろう。どう人に伝えたらいいのだろう・・・。 NPO法人ワップフィルム(東京)が6月19日(金)、東京・大田区のTIAT SKY HALLで映画『未来シャッター』のマスコミ試写会を開催した。何の予備知識もなく娯楽映画かと思って出かけた筆者だったが、見終えた途端に冒頭のように悩んでしまった。物事を伝えるのが仕事のメディアの人間としては失格であるが、真摯に伝えようとすればするほど、その全貌をシンプルに表現することは難しい。 柱となるストーリーはこんな感じだ。「大手映画会社を退職し心を閉ざしたOL未希、職業を転々とする篤志、外国人留学生アントニオ。今の社会に生きにくさを感じ、適合できない若者たちだったが、未希の親友の久美や地域を活性化しようとする柴崎によって、自ら未来を作り出そうと再チャレンジの冒険が始まる・・・」 だが、本当の主役ではないかと思えるのは、主人公たちが訪れる商店街、企業、プロジェクト、町工場、農業、フューチャーセッション、ものづくりの現場などに登場する人々だ。なんと全員が実際に活動・生活する人たちで、ほとんどがリアルな肩書のままである。途中で、「ん? これってドキュメンタリーだっけ」と思うくらい大勢登場し、主人公たちの物語は要所要所で進行していくのみだ。 そして、随所に挟み込まれるのが、「警句」ともいうべき登場人物たちの言葉だ。「人間にとって一番やっかいなのは自分の心」「人生の主導権を取り戻そう」「心のシャッターを上げよう」「鳥の目、虫の目、魚の目で見ればいい」「人間は誰かのため、地域のために生きることで成長する」・・・・・・。もがきながら懸命に生きている人なら誰もがひとつふたつは胸にささるであろう言葉の数々。 実はこの映画は、コンセプト・脚本メイキング段階から十数名のプロジェクトとして始まり、次第に多様な関係者を巻き込み、ロケ地提供、特別出演、サポーター登録などの協力を得ながら3年間かけて完成したという。故菅原文太氏が内諾していたナレーションは、俳優の宇梶剛士が遺志を引き継いでいる。 正直、柄がバラバラのパッチワークのようでもあり、種々雑多な具がぎっちり詰め込まれた鍋のようでもある、捉えどころのない映画だ。一言で△△柄とか、○○鍋とまとめにくいのだが、まとめる必要はないのかもしれない。そう、我々はきっと必要以上に線引きをしたがるのだ。高橋和勧(たかはし・かずゆき)監督が「自分自身が何回見ても勉強できる映画」と語ったように、これは一度見ただけで終わりという映画ではない。自分の生き方を見直したり、あるいは仲間や家族と見て自分はここが気になったなと話し合ったりできる、いわば見た後が重要な映画なのかもしれない。 「自分たちの未来は自分たちで創る。自分の人生の主導権を取り戻す」というアクションを起こす若者を増やしていくのが目的というこの映画は、自主上映も募っている。何かピンときた人、仲間と見てみたいという人はワップフィルムまで連絡してみてはどうだろう。 ■一般ロードショー日時:2015年7月1日(水)〜7月8日(水)・平日    19:00〜・金曜日   19:00〜、21:00〜・土・日曜日 15:00〜、19:00〜会場:キネマフューチャーセンター(東京都大田区東蒲田2-20-2 キネマ通り商店街)定員:各回20人料金:1ドリンク付き 一般1,000円、障がい者手帳所有者と同伴者、および学生は500円■予告編https://www.youtube.com/watch?v=d-cPATe2rXc