「エーゲ海」

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世界から注目される長寿の土地、ギリシャのイカリア島の秘密

世界から注目される長寿の土地、ギリシャのイカリア島の秘密

 最も長生きする国として知られている日本。国内においては地域差があるものの、国全体として充実した医療制度、ヘルシーな日本食など、日本人の長寿の秘訣は世界からも注目され続けている。 一方、ヨーロッパにも日本のような“長寿の島”として知られ、注目されている場所があることをご存知だろうか。それは、ギリシャの北エーゲにあるイカリア島。ギリシャ神話に登場するイカロスが、近くにある海に転落した逸話から名前が付いたという歴史ある島だ。イカリア島はヨーロッパ諸国と比べても平均寿命が非常に長く、実際にイカリア島に住む3分の1の人は90歳を超えて逝去し、現在でも100歳を超えている高齢者がたくさんいる。 特筆すべきなのは、イカリア島の高齢者は寿命が長いだけでなく、体も健康的であること。がんや心臓病といった病気、さらにはうつ病や認知症になる人が非常に少ないのだ。外出や運動、さらには性生活もアクティブだという。この長寿と健康の秘訣については、多くの研究によってその秘密が解明されようとしている。 まずはイカリア島の伝統的な食事。アテネ大学医学部の心臓専門医であるクリスティーナ・クリソフ教授の研究によると、イカリア島の食事は独自の特徴がある。それは、大豆と、赤ワインの約10倍もの量の抗酸化物質を含む地元で採れた野菜をたくさん含んでおり、肉や精製糖の摂取は少なく、たくさんの芋とヤギの乳を摂取しているのだという。これは、他のギリシャにある島の食事とは大きくかけ離れているのだそうだ。また、彼らはハーブティーを多く飲むがコーヒーはあまり飲まず、トータルで一日の摂取カロリーが低いという。 イカリア島はいまだに観光客がほとんどいない、孤立した島。クリソフ教授は、西欧化の影響をほとんど受けていないことが平均寿命の長さと大きく関係していると分析している。さらに、昼寝をする習慣については、心臓病のリスクを減らす効果ももたらしていると考えられている。実際に、イカリア島の高齢者は十分に睡眠をとるのだそうだ。 歴史的な背景も、イカリア島の長寿の秘訣といえるかもしれない。イカリア島は第二次世界大戦時、ドイツ軍とイタリア軍に占拠され、少なくとも島の約20%の人が飢え死にした歴史がある。戦争が終わると、島の人々は団結して生き抜くことでこの苦しみを乗り越えてきた。島全体のそうした活力が、多くの高齢者たちの生きる力につながっていることもあるのだ。 さらに、島で不動産管理人をしているエレニ・マザーリーさんは、イカリア島の文化では家族の存在が長寿と健康に大きく関係しているという。エレニさんによれば、島には老人ホームがあるものの、そこには何らかの理由で家を失った高齢者しかいないのだそうだ。「多くの高齢者は、家族と一緒に暮らします。おじいちゃんやおばあちゃんを独りぼっちにすることは、若い世代にとって恥ずかしいことだと考えられているのです」と語る。家族と一緒に暮らすことは、孤独を感じずに元気でいられる大きな要因なのだろう。 健康的に長生きするためには、健康的な食事や活発な運動だけでなく、生きようとする気持ちや家族の存在など精神的な面が大きく寄与していることを教えてくれるイカリア島。日本も長寿大国として、イカリア島から学べる点がいろいろとあるかもしれない。

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