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いま、なぜ「オムライス」?  注目される食卓のメッセンジャーとしての役割

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(OVO オーヴォより)

スフレオムライス

洋食の定番「オムライス」。いま、なぜかその人気が盛り上がっている。TVドラマ「ウロボロス」(TBS系)で主人公の思い出のメニューとして登場したり、ヤンキース・田中将大投手登板前の定番メニューとして紹介されたり、あるいは金沢発祥の「ハントンライス」(白身魚のフライ、タルタルソースを乗せたオムライス)などの「盛りオムライス」も人気上昇中だ。また、日本一のオムライスの店舗を決定するフードイベント「カゴメ オムライス スタジアム」の全国大会開催も5月16日・17日に控えるなど、2015年に入って「オムライス」の話題は広がるばかり。

SNS上でもオムライスにケチャップで文字や絵を書く「オムレター」をよく目にするなど、オムライスは家庭の食卓においても、その裾野を広げつつ着実な盛り上がりを見せている。トレンド総研(東京)では「オムライス」現象に着目。その人気の秘密を探っている。

同総研が20代〜50代のオムライス好き男女500人に対して行った、オムライスに関する意識・実態調査が興味深い。オムライスのイメージに関しては、「美味しい」「ふわふわ卵」など共通した答が聞かれたが、「オムライス」を食べる場所に関しては「カフェごはん」(28歳・女性)から懐かしの「百貨店の食堂」(59歳・男性)まで、世代ごとのイメージの違いがあったという。また、「どんな時に『オムライス』を食べているのか」を調べると、「通常の食事として食べる」という人が多い中で、20代の41%が「誕生日やクリスマスなどの特別なイベント時に」と回答。年代が下がるにつれ、「オムライス」を「特別な日の食べ物」と捉えている傾向があるようだ。FacebookやTwitterなどSNSへの投稿経験も多い20代は、実に4人に1人が「自分で食べたオムライスの写真をSNSへ投稿した経験あり」と回答している。卵の黄色とケチャップの赤が華やかなコントラストをつくるオムライスは、SNS活用世代にとってまさに格好の撮影対象。オムライスで「特別な日」を華やかに演出したい、その様子をSNSに投稿してシェアしたい、そんな若年層の意向は、まさにSNS文化に沿ったオムライス観の変化といえそうだ。

またオムライスの調理経験については、男性59%・女性94%が「これまでにオムライスを作ったことがある」と回答。女性の調理経験の多さに加え、男性も6割近くが作った経験があることが明らかになった。オムライスを誰に作ったのかを尋ねたところ、男女合わせて「配偶者」(39%)が約4割、「交際相手」も33%と、3人に1人以上がパートナーに対して「オムライス」を作っていることが読み取れる。「彼女(または配偶者)に初めて作ってもらった料理がオムライス」という男性は複数いて、中には彼女に作ってもらったオムライスの美味しさに「嫁にするのはこいつだと決めた」男性もいた。

オムライスの大きな特長のひとつが、ケチャップでメッセージや絵を描くことができること。「アレンジオムライス」の一つとしてケチャップで文字や絵を描く「オムレター」や、受験シーズンや勝負前など応援メッセージを記し祈願する「願掛けオムライス」の話題が見られ、オムライスが持つ“メッセージを届けることができる”という機能は、いま変化を遂げている。

オムライス好きの実に半数の51%が「オムレターを作ってもらいたいシチュエーションがある」と回答しており、具体的には「自分の誕生日」(37%)、「個人的な目標を達成した時」(16%)、「クリスマス」(13%)を挙げている。女性に「オムレター」を望んでいる男性も少なからずいて、どうやら「オムレター」は節目の日を記念するスタンダードメニューになる可能性を秘めているといえそうだ。

「オムレター」や「願かけオムライス」のように、「オムライス」ならではのアレンジしやすさを活かした人気拡大の動きは、日本最大級の料理ブログポータル「レシピブログ」でも明らかだ。「レシピブログ」では2015年2月から「新感覚オムライスコンテスト」を開催中。お料理ブロガーたちが、“デコる”“盛る”“色々な食材と組み合わせる”ことで、見た目にもインパクトある「オムライス」の新アレンジレシピを考案している。

ちなみに、「新感覚オムライスコンテスト」で作られたメニューのうち、「オムライス好き」男女500名が最も「食べてみたい」と感じたオムライスは、子どもと一緒に食べたい「みつばちくんオムライス」、配偶者や交際相手と食べたい「愛情包みオムライス」、誕生日などイベントの時に作ってみたい「オムライスグラタン」だった。

最後にオムライスのプロにも聞いてみよう。ふわふわ食感が人気の「スフレオムライス」をメニュー展開している「卵と私」を運営する、日本レストランシステム(東京)戦略本部の佐々木綾子氏はこう語る。

「老若男女問わず一番人気のメニューが、見た目のインパクトを重視した『スフレオムライス』です。フランスのモン・サン=ミシェルの名物、スフレオムレツをモデルに、3年前メニューに追加しました。店舗でメニューを開発する際には、家庭と異なるオムライスをどう提供するかも大きなポイント。見た目のインパクトを楽しんでもらえるのは店舗ならではの魅力だといえるでしょう」

家庭でもできる「オムライス」を食べる時の盛り付け方や見せ方の工夫を尋ねると、「ポイントは見た目のバランスです。お皿の真ん中より少し奥側にオムライスを置いて、ケチャップが真ん中にたれるように意識してバランス良く盛り付けると、フォトジェニックなオムライスを作ることができます」とノウハウをこっそり教えてくれた。

定番として昔から愛されているオムライスだが、昨今の新しい愛され方をトレンド総研は次のように総括している。

「オムライスの現在の盛り上がりは、SNSとの親和性が高い“ケチャップでメッセージを描き、想いを託すことができる”ことが評価ポイント。子ども時代の好物、受験時に励ましてもらった思い出、初めて誰かに作ってもらったメニュー……アンケート調査からうかがえるオムライスは、『オムライス好き』の思い出の要所で強い印象を残しているようです。家庭で調理を担当することが多い女性が今後、社会進出により家庭に不在になりがちになることが予想される中で、『オムレター』など『オムライス』をもちいた“食卓のメッセンジャー”の活躍は、今後ますます発展することが見込まれるでしょう」

愛を伝えられて、なおかつおいしい「オムライス」。これからも永く愛されていくことだろう。

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