(OVO オーヴォより)

ピンと大きく広げたヒレに黒い模様。渋い体色ながら可愛らしいフォルムを持つこの魚、名前を「トゲナガイサキ」と言う。背の高いシマイサキやコトヒキのようにも見えるが、実は1科1属1種の珍種で、国内では下田海中水族館が唯一の飼育展示個体と思われる種類なのだ。
一般にトゲナガイサキは、南日本以南の水深100〜200メートル前後の深海に生息するとされ、ごくまれに底引き網で水揚げされる。もともと数が少なく、魚屋の店頭で見かけることは無いものの、刺身や塩焼きにすると非常に美味なのだとか。浅い海に棲むイシダイ釣りの“外道”という情報もあり、幼魚はたびたびダイバーに目撃されている。要するに良くわかっていない種類らしい。状態は非常に良く、長期展示が期待できる、と水族館。水族館の魚を鑑賞しながら「美味しそう」と思うのは何だか不謹慎で自責の念にかられるが、そんな珍種が塩焼きで美味、と言われると舌なめずりしそう。お魚好きも水族館フリークも、ちょっと見逃せない展示だ。