(OVO オーヴォより)

次世代エコカーとして期待されているのが、燃料電池自動車(FCV)。水素と酸素が化合して水になる際に発生する電気を利用して走る自動車だ。さまざまなメリットがあるため、官民挙げて普及拡大を急いでいるが、課題はコストと、使用する液化水素を供給する水素ステーションのインフラ整備といわれている。とりわけ、燃料となる水素の価格がどれくらいになるのか、ガソリン車と比べてどうなのかという点は、ドライバーにとって気になるところだろう。
その気になる価格が、岩谷産業から14日に発表された。1kgあたり1,100円だ。これは、N?(ノーマル立方?)あたり100円という価格を重量表示したもので、「液化水素」を原料として供給する都心部のイワタニ水素ステーションにおける価格。消費税などの税金は含まれない。これが安いのか高いのか、にわかに判断できる人はあまりいないだろうが、同社ではハイブリッド車(HV)の燃料代と同等だと説明している。つまり、FCVを1km走らせるために必要な水素価格を、同車格のHVを1km走らせるために必要なガソリン価格と同等に設定したというわけだ。
これは、今年6月に経済産業省 資源エネルギー庁から発表された「水素・燃料電池戦略ロードマップ」で設定された目標よりも大幅に時期を早めた価格。ロードマップでは水素の価格について、2015年に「ガソリン車の燃料代と同等以下」を、2020年に「ハイブリッド車の燃料代と同等以下」を目指すという目標が設定されていたからだ。それが一気に6年も前倒しされたことになり、消費者にとっては予期せぬ朗報だ。実は、岩谷産業は約70年にわたって水素エネルギーの研究に取り組んできた会社。水素を使った燃料電池自動車時代の到来は同社の悲願でもあることから、思い切った価格設定に踏み切ったということらしい。もうまもなく国内の大手自動車メーカーからFCVの発表があるとうわさされているが、それがHV並みの燃料費で動かせるとなれば、FCV普及に向けた第一歩を力強く踏み出せるにちがいない。
なお、もうひとつの課題である水素ステーションについては、自動車メーカーとエネルギー企業(岩谷産業を含む)13社が100カ所の先行整備を表明しているが、同社は現在、兵庫県尼崎市と福岡県北九州市に商用の水素ステーションを開所。2015年度中に東京、名古屋、大阪、福岡の4大都市圏を中心に20カ所の商用水素ステーションを自社で整備することを表明している。