暮らしのコト

根付くか?サードウェーブコーヒー  クチュームのインパクト探る

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(OVO オーヴォより)

シアトル系に次いで第3の波、“サードウェーブコーヒー”が上陸して話題をふりまき、そろそろ1年が経つ。さまざまなコーヒーを味わうことができる東京で、このサードウェーブコーヒーがどんなインパクトを持っているのか探るべく、1号店でも人の集まる都心でもなく、家族連れをはじめ、落ち着いた買い物客の多いアッパーなエリア、二子玉川に静かに開店した「クチューム」に行ってきた。

オープン初日。10時の開店を半時間ほど過ぎての来店だったため、もう長い列かと覚悟していったが、路面店ではなく、玉川高島屋の中という場所もあってか、さほどでもなく20分ほどで入店。パリ本店と同じカット・アーキテクチャーの内装だが、オスマニアン建築がひしめく街並みにマッチしたグレーの石と白タイルの本店に比べると、若干軽快さのある、ナチュラルなデザインだ。ブレンドやシングルオリジンなどのエスプレッソ、ハンドドリップ、コルタードやモカなど、シンプルながらこだわりが感じられるラインナップから、数量限定で入荷する注目度の高いゲイシャを選択した。個性豊かなコーヒーの数々は、独自の焙煎で、一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れられる。

土作りからこだわった農園と、直接取引でシングルオリジンコーヒーを仕入れるクチューム創始者の二人。玉川高島屋店のオープンには、パリ本店からバリスタ選手権で上位入賞経験を持つバリスタ、ニコラさんが駆けつけてコーヒーをサーブした。木製のプレートにのったコーヒーグラスと、やはりガラス製のサーバーで運ばれてきた”ゲイシャ“は、国際オークションで最高落札価格を記録したスペシャリティーだけあって、さすがに雑味のないまろやかな味。オペラやエクレアなどのスイーツの他、仏産キノコやゴルゴンゾーラを使ったタルティーヌ、クロックムッシュなど、玉川店限定のランチメニューもそろっている。

パリといえば、カフェ文化の中心地。ルソーやヴォルテールが通ったカフェ、プロコップまでさかのぼる歴史あるカフェの町では、じわじわ店舗数を増やすシアトル系カフェにも「入店してるのは外国人観光客ばっかりさ」という皮肉が飛び交う。こうなると「サードウェーブ」が持ちうるインパクトにも限界があるようにも思えるが、そこでしのぎを削るクチュームには、“アートな焙煎”と賛辞を送るフランス人も少なくない。コーヒーの味に凝る店主たちがけん引した“喫茶店”文化から、日常の一杯を手に、パソコンや本を抱えて一人で長居するのが心地よいシアトル系へと重心を移した日本のコーヒー文化は、フランスとは別個の道を歩んできた。コーヒーの質や焙煎、味にもう一度焦点を当て直し、店の個性で勝負する、という意味での“新たな喫茶店への回帰”が、ここでのサードウェーブなのかもしれない。

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