「スラックライン」というスポーツを知っていますか?テレビなどでロープの上をトランポリンのようにはねる、ポーズを決める姿は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
スラックラインは、エンターテイメント性を高めた「綱渡り」のこと。元々、アメリカのクライマーたちが、遊びでやっていた高難度な綱渡りでしたが、2007年にドイツの「Gibbon社」が幅5センチの専用ライン(ロープ)を開発し、誰でも楽しめる新しいスポーツとして広まりました。一般的には、木と木の間にラインを張り、公園など屋外で楽しむことが多いようです。
このスラックライン、日本でも普及しつつあり、最近では屋内でも楽しめるようになっているんです。そこで今回は、Gibbon社製の屋内用スラックラインを設置し、一般に広く公開している東京のスポーツジム「ZERO Fight&Fit」にお伺いしました! お話をしてくれるのは、ジムを運営するトレーナーの岡本啓さん。スラックラインの基礎と、手軽なトレーニング方法を聞きました。
岡本さん「私がスラックラインと出会ったのは、2010年ごろ。当時、運動には自信があったんですが、友人に勧められてやってみると、これが全くできない(笑)。悔しさとインナーマッスルへの効果もあってその後練習を重ね、いまではかなり上達しました。その後、日本でも福田恭巳さんが競技の世界ランク1位になったり、ソチ五輪で活躍したスキージャンプの葛西紀明選手が練習に取り入れていることなどが注目され、このジムでも沢山のかたがスラックラインを楽しんでいます」
こちらのジムでは毎日スラックラインエリアを開放(2台、有料、指定時間内)。初心者でも気軽にスラックラインに挑戦することができるんです。さらに、なんと前述の世界ランク1位福田恭巳さんが加わっての初心者体験会も定期的に行われています! 初心者には最高の環境というわけです。
■見よ、これがスラックラインプレーヤーの技術!
岡本さん「まあ、まずはどんなものか見てもらって、体験してもらうのが早いですよ」
そう言うと、岡本さんはおもむろにラインに乗り、器用に片足でバランスを取り始めました! すごい、高さこそないものの、まるで雑伎団のようなアクロバティックな綱渡りです。さらにそこから驚がく技を連続して披露!
いったいどれだけ訓練を積めば、これほどの大技を会得することができるのでしょうか……。一見すると少しハードルの高い競技に見えるスラックラインですが、「誰でもすぐに、一定のレベルまで上達できるポイントがある」と、岡本さんは語ります。
岡本さん「足の力だけでは立つことはできません。身体全体を使いながら、重心を調整したり、手の位置を変えたりといった感覚が必要です。肝心なのは『体幹』を意識しながら、正しい姿勢をキープすること。そのため、見た目の筋肉よりも深層にあるインナーマッスルの強さが大事。さらに、ラインに乗っている足側にしっかりと体重をかけます。このとき、乗っていないほうの足を床に近づけることで、重心を下に落としていきます。こうすると、乗っている足側にしっかりと体重をかけることができます。上げた腕をリラックスして左右に動かしながらバランスをとると、ラインの上で安定することができます。逆に、頭と足が前後に動いてしまうと、姿勢をキープするのが難しくなります」
理論は何となくわかってきました。それではVOX編集部が実践! 普段運動していない社会人男性が、いきなりチャレンジしてもできるものなのでしょうか……。
ここで先生から姿勢の指導が。
■自宅でもできる、スラックライン上達の「ストレッチ」
岡本さん「まずは体幹を意識した正しい姿勢を身体に覚え込ませます。頭の上で手を組んで、手のひらが天を向くようにして真上に大きく伸びをしてください。そのときに、骨盤の前側の左右にある出っ張った点と、前側の肋骨の一番下のカーブの点を結ぶ線が、壁と並行になるようにします。肋骨側が前に 出てしまう場合は少し息を吐いてお腹を引っ込めましょう。その状態で一旦手をおろし、肩の力を抜きます。これで理想的な姿勢に近づきます。この運動はスラックラインで鍛えられるインナーマッスルに同じような刺激を与えることができるので、自宅でもスラックラインのトレーニング代わりになりますよ」
岡本さん「これらのストレッチを行ってから、改めてラインに乗ってみてください」
■ポイントを抑えれば誰でも上達、すぐに楽しさにハマること間違いなし!
たった10分程度のストレッチで、そんな簡単にいくわけが……と思っていたら、なんとラインに乗ってバランスをとることができました! しかも、足を変えながら前に進むことも。まさに「綱渡り」!
今回はわずか30分程度でしたが、無事、スラックラインを楽しむことができるくらいに成長することができました! こちらのジムの初心者講習では、1~2時間のトレーニングで座る、ジャンプする、反転するといった動きまでできるようになる人も多いとか!
岡本さん「やっぱり、誰だってすぐにうまくなる方法が知りたいはず。ポイントを抑えれば、すぐにスラックラインは楽しめるようになります。実際、ウチのジムはハードに鍛える男性客が多いですが、スラックラインを楽しみに来る人は20~30代の女性が多いです。みなさん楽しみながら、身体を鍛えられるスラックラインにはまっています。最初はできなくても、『こんな簡単なことができないなんてくやしい!』と思うことは上達への近道。まずは一度、スラックラインの楽しさを体験してほしいですね!」
体験中は、涼しい室内でそれほど動いていないはずなのに、汗がビッショリ。やはり見た目以上に身体を使うようで、フィットネス効果もかなり期待できます。翌日は、鈍った身体だったせいもあり、体幹周りと肩甲骨に心地よい筋肉痛が。それでも「もっとできたはず…!」という気持ちもふつふつと沸いてきました。
見た目よりもずっと簡単で、しかも手軽に体験できるスラックライン。この夏スポーツを始めるなら断然オススメ。楽しさにハマること間違いなしです!
取材協力
ZERO Fight&Fit
住所:東京都千代田区神田神保町1-16-3 TSI神保町ビル
http://zerofit.info/slackline/
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。