(Jタウンネットより)
「下北沢」と「上北沢」。
似たような名前の2つの街だが、その知名度には大きな開きがある。
上北沢は、東京・世田谷区の北辺、その中央部に位置する住宅街。古着屋やライブハウス・小劇場が密集し、若者文化やサブカルチャーの発信地として名高い下北沢と比べると、どうしても影は薄くなってしまう。

ネットで「上北沢の魅力」について調べてみても、ヒットするのは「新宿や渋谷のベッドタウン」「閑静な住宅街」などといった評価ばかり。やはり、シモキタに比べると地味な印象を拭い去れない。
ビートルズよりストーンズ、巨人よりヤクルト、ステーキよりも生姜焼きに心惹かれる筆者。なんだか、「カミキタ」に親近感がわいてきた。
というわけで、今回のJタウンネットでは、そんな「上北沢」の持つ独特な魅力を存分に紹介してみたい。
マニア垂涎の上北沢商店街
新宿から京王線に揺られることおよそ15分。東京に住んで5年になる記者だが、生まれて初めて上北沢駅に降り立った。

平日の昼間ということもあり、駅前は少し閑散としている印象だ。駅の北口を出て1分ほど歩くと、上北沢のメインストリートともいえる商店街にたどり着いた。



いずれも、なかなか味のある情景だ。商店街内の「いい意味で寂れた」街並みは、その筋のマニアからすれば垂涎ものだろう。通りを少し離れて、甲州街道の手前まで行くと、そこには「うまい」の看板で有名な「ラーメンショップ」の店舗跡が。閉店から結構時間が経っているようで、シャッターに落書きされているのがまたオツである。

下北沢は、若者向けのオシャレな古着屋が多数立地している。一方で、上北沢北口の商店街にある洋品店は以下のようなもの――。いずれの店舗も、年齢層の高い女性をターゲットにしているようだ。



高級住宅街のような南口周辺に、突如出現する「占い美容室」
南口方面にも足を延ばしてみると、そこは閑静で落ち着いた住宅街といった印象。住宅街の道の両側に桜並木が続いている風景は、まるで伊豆や軽井沢のような別荘地のようにも見える。中央の大通りから規則的に枝道がのびている「肋骨通り」も、駅の南側にある。
そんな高級住宅街を尻目に、西に向かって線路沿いを歩いていくと――。

インパクト抜群の「占い美容室」があった。ここでは、散髪や着付けと同時に占いを受けることが出来るらしい。価格は通常の占いが10分2000円、霊感占いが1万円と少々高額だが、散髪した際は料金プラス1000円で鑑定してもらえるらしい。

なるほど上北沢は、やはり北と南のどちらも一筋縄ではいかないようだ。学生などの若者が集い、昼夜問わず賑わっている下北沢に比べ、人がほとんど歩いていないのも好印象だった。下北沢で遊び疲れてしまった人も、いちど上北沢の静かで独特な雰囲気を体験してみることを、ぜひおすすめしたい。
ちなみに、同じ世田谷区にある「上北沢」と「下北沢」だが、両者の距離は10キロ以上も離れている。いったいなぜ、似たような地名がつけられているのだろうか。
その理由は、かつて世田谷には目黒川の支流である「北沢川」が流れていたことにある。川の上流を「上北沢」、下流を「下北沢」と名付けたという。現在では北沢川は暗渠化されており、その名残は地名にしか残っていない。