街のコト

酒蔵「南部美人」で奮闘する、米国からやってきた現代版「マッサン」

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(Jタウンネットより)

岩手県二戸市で日本酒の製造販売を行う「南部美人」の五代目蔵元・代表取締役社長の久慈浩介氏が、2014年10月16日、ツイッターで次のようにつぶやき、注目された。

アメリカのアーカンソー州ホット・スプリングス市出身のベン君というアメリカ人が南部美人に酒造りの研修にやってきました。ベン君はアメリカでも米どころで水もきれいなホット・スプリングス市でなんと酒蔵を建設するためにやってきています! pic.twitter.com/b0NBwPClma
– 久慈浩介 (nanbubijinsake) 2014, 10月 15

これに対して、こんな声が寄せられている。

nanbubijinsake 現代版のマッサンみたいですね、朝ドラの。
– ボブテイル (nishiogibobtail) 2014, 10月 15

同日、同社のホームページでも次のように発表された。

アメリカのアーカンソー州のホットスプリングス市から、酒造りの研修のためにベン君というアメリカ人が南部美人にやってきました。彼はアメリカで日本酒の 酒蔵を自ら立ち上げるために、酒造りの勉強をしにやってきました。なぜ南部美人で引き受けたかというと、ベンの出身であるホットスプリングス市と岩手県花巻市が姉妹提携しており、その縁で岩手の中で外国人研修生を受け入れられる蔵として南部美人がピックアップされて引き受けました。杜氏や蔵人と寝食をとも にして、今一生懸命頑張っています。来年の春までしっかりと酒造りを学んでいただきたいと思います。

酒造り研修生のベンさん(画像提供:南部美人)
酒造り研修生のベンさん(画像提供:南部美人)

山田錦も栽培されているホットスプリングス

研修生ベン・ベルさんの故郷であるアーカンソー州は、米国南部にある。あまりなじみがないなと思うかもしれないが、実は日本人にとって重要な人物である、あの連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの出身地だ。またホットスプリングス市は、第42代大統領のビル・クリントンの故郷でもある。

同市は米国有数の温泉リゾート地として知られており、温泉が取り持つ縁で花巻市と姉妹都市となった。両市は小・中・高校生の交換留学をはじめ、市民レベルでの交流を深めているという。今回の研修も、ホットスプリングス市からの希望を受けた花巻市が、岩手県内の酒蔵を打診して実現したとのこと。

ホットスプリングスでは酒造好適米として知られる「山田錦」が栽培されており、高品質な日本酒造りに意欲的な土地だという。

日本酒の未来を語る五代目蔵元

一方、研修を受け入れた南部美人の五代目蔵元・久慈浩介氏は、1997年から日本酒の米国市場を育ててきた開拓者の一人だ。日本食の人気が広がるにつれ、日本酒のファンも驚くほど増えてきたという。大吟醸をはじめとしたハイクオリティな日本酒は、リッチな人々を中心に理解され、強い支持を得てきたようだ。

だが久慈氏はこう言う。

「日本から輸出する高品質な日本酒は、高収入な人々が飲む高価な飲み物となってしまっている。幅広くミドルクラスの人にも気軽に飲んでもらいたい。そう考えると、米国で造るしかない」

米国内で小規模な醸造会社が品質の良い日本酒を造るようになれば、ミドルクラスの人にも日本酒の良さが理解されるようになるだろう。米国で日本酒が広く飲まれるようになれば、日本の酒造業界にとっても何もマイナスになる点はない。研修を受け入れた理由は、まさにここにある。

「日本酒の未来を考えたら、今が大きなターニングポイントだと思います」と、久慈氏は力説する。

先輩の蔵人に教わるベンさん(画像提供:南部美人)
先輩の蔵人に教わるベンさん(画像提供:南部美人)

米と麹と日本語との格闘

研修生ベンさんの年齢は30代、酒造業界でのキャリアも積んできた。ホットスプリングス市には彼の研修成果を待ちかまえている人たちもいるそうだ。かんたんではないかもしれないが、近い将来、ホットスプリングスに酒蔵もできるだろう。

しかし、目下の悩みは日本語のようだ。米と麹と日本語と格闘しながら、酒造りを学んでいる。

「あえて英語に訳したりはしません」と、久慈氏は語る。「技術だけではなく、酒造りに宿る心を学んでほしいですね」

ベンさんの一途な姿、どこかで見たような、と思ったら、あ、そうか、マッサンだ。ニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝さんは100年近く前、英国スコットランドでこうやってウイスキー造りを学んだのか、と。

日本酒造りを学ぶベンさん(画像提供:南部美人)
日本酒造りを学ぶベンさん(画像提供:南部美人)

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