街の本屋ならではのユニークな取り組みで知られた、札幌「くすみ書房」が閉店…

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(Jタウンネットより)

[どさんこワイド – 札幌テレビ]2015年6月22日の放送では、長年親しまれたマチの本屋さん閉店のニュースが特集されました。

札幌市厚別区にある『くすみ書房』。毎週金曜日に地域の人たちが集まって、本の朗読会が開かれています。しかし、長年親しまれてきた朗読会も6月19日で最後となりました。

なぜなら、『くすみ書房』は、69年の歴史に幕を下ろすことになったからです。

本を愛してやまない、店主の久住邦晴さんにとって閉店は苦渋の決断でした。「売り上げ不振に伴って、取引先への支払いが滞ってきているということで、取引先からの強いすすめもあり、今回、これ以上続けられないと思い決断した」といいます。

『くすみ書房』は、1946年に久住さんの父が札幌市西区琴似で創業。長年マチの本屋さんとして親しまれてきました。しかし、2000年になって、周辺に大型書店が相次いで進出。雑誌の販売もコンビニエンスストアに奪われ、経営は大きく傾きます。

そんなとき専念しようと思ったのは、人を集めるということ。そのためには「誰もやらないおもしろくて、珍しいことをやるのが大原則」と考えた久住さん。

逆転の発想で、良い作品なのに注目されない本を集めた「売れない文庫フェア」。さらに、あまり本を読まない中学生に向けた「中学生はこれを読め!」。本屋のオヤジのおせっかいとして始めた独自の企画は、他の書店にも広がり、『くすみ書房』の名は全国に知れ渡りました。

くすみ書房の「売れない文庫フェア」の様子(池田隆一さん撮影、Flickrより)

2008.10.05

それでも売り上げは徐々に悪化し、2009年9月に琴似の店舗を閉店。厚別区の大谷地に店を移しました。そのとき「大谷地できちんと商売をして、力をつけて、まずは琴似に2軒目を出すのが目標」と語った久住さん。彼にとって、大谷地への移転は新たな挑戦だったのです。

本と人、そしてオヤジの情熱

しかし、移転してから、書店を取り巻く環境は大きく変わります。本のネット販売や、電子書籍が普及し、売り上げは思うように伸びません。

それでも久住さんは、地域の人とのつながりを大切にしてきました。

『くすみ書房』の近くにある厚別南中学校。久住さんは毎年、この中学校を訪れ、本を読む大切さ、本の力を伝えています。また、本の魅力をどう伝えるか、読解力と表現力が必要となる本のポップの作り方も指導するなど地域とのつながりを育んできました。

そんななかで、おせっかいな本屋のオヤジの想いは、着実に子どもたちにも伝わっています。

消えた”マチの本屋さん”

そして迎えた閉店の日。

久住さんは、琴似時代から始めた「中学生はこれを読め!」のコーナーにいました。「本当に「中学生はこれを読め!」には思い入れがいっぱいありますね。残念です」と感慨深げに語る久住さん。ここが店で一番好きな場所です。

実はこのコーナーにある本の3分の2は、3年前に亡くなった奥様が選んだといいます。読書好きで、久住さんより本に詳しく、いつも相談していたそうです。

夜10時。閉店を見届けようと、なじみの客ら50人以上のファンが集まりました。

最後の最後まで愛情を注いでくれた地域の人たちを前に感謝の言葉を贈ります。

大谷地での6年間でまた、多くの人たちとのつながりが生まれ「やはり本屋は幸せな職種というか、本当に愛される仕事なんだなと思いました」と語る本を愛して止まない久住さん。閉店の日をむかえても本と人をつなげる情熱は消えていませんでした。

本と人をつなぐのが久住さんの天職のようですね。私は、閉店の際のあいさつでの「2、3日前に、小学校6年生くらいの女の子からお手紙をいただきました。大好きだった久住書房さんへというお手紙でした。その中に、自分が本を好きになったのはくすみ書房があったからです。どんな形でもいいので、ぜひ店を再開してください。という言葉でした。それを読んだときに、本当にうれしくて、やってきてよかったという気持ちになった」というお話に久住さんの人柄を見たような気がしました。(ライター:北海道saki)

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