応募作品の中から毎月ノミネートされる優秀作品をご覧いただけます。
隣に越してきた女が予言者だった。私はその予言者の女のことを、ノストラダム子と名付け、親しみを込めてダム子と呼ぶことにした。ダム子の予言は本当によく当たる。恐ろしいくらいによく当たる。ダム子の予言によって世界は彩られ、そして破滅を迎える。そんなダム子に私は徐々に惹かれていく。
身近な誰かと別れる時、わたしの足の指は何処かに消えて、そしていつの間にか生えてくる。右足の薬指がなくなったある朝、隣人が引っ越して行きわたしは恋人に振られ、新しく越してきた爽やかな青年は右手の小指が欠けていた。
由利子は大学の近くで一人暮らしをしている。仲の良い友達はおらず、いつも一人で過ごしている。一人の時間は好きだが、ある日隣人の弾くギターの音を心地良く思い、自分の寂しさに気付く。二人は壁越しに互いを意識するようになり、学園祭の夜、距離を縮める。
ある日、インド舞踊家の魅惑的な女性が隣室に引っ越してきた。僕達はバルコニーで顔を合わせると、舞踊の所作で挨拶を交わす。僕は何回か彼女の公演に足を運んで親しくなったが、彼女は舞踊修行でインドに行くためまた引っ越していった。僕の脳裏には彼女の魅惑的な姿が残る。
女として自分に自信がない鈴子。そんな彼女へ宛名も差出人も不明の妙な手紙が届くようになる。最初は隣の部屋に住む女の子へ宛てた手紙が間違えて入ってきたのではと思うが、しかしどうやらそれは鈴子へ宛てた手紙のよう。ストーカーか、悪戯か、それとも恋人の策略か。手紙の差出人は一体誰だろう。
大学近くの安アパートで一人暮らしをしつつ作家を目指す“僕”は,敬愛する小説家である山田國夫大先生の賞に応募するものの,落選.心折れて気分転換に公園に行ったところ,何とそこには山田先生本人がいた.一生の運を使い果たしたのではないかと,僕は舞い上がる.
今年で本厄を向かえた先輩にことごとく降りかかる厄。犬も歩けば棒に当たるではないが、厄が歩けば棒にも当たるしこけるし、公共料金だって払えなくなるもので、先輩の厄には恐れ入ってしまう。自分の厄年を迎えるときには必ず厄払いはしようと思う。
自由な母と二人暮らしだった三角菜奈(ミスミナナ)は、大学進学を期に一人暮らしを始める。生活費や家賃の為にバイトに明け暮れ、節約しながら生活している。ある日、同じ大学の「田中さん」が隣に住んでいる事を知る。自分とは違う感性や考えを持つ田中さんに、興味を持ちつつ暮らしていたが・・。
夫の耳から、いつの間にか耳毛が消えていた。自分で処理したとは思えず、私は浮気を疑った。夫を問いつめると、情けない声で「耳かきのお店」で切ってもらったのだという。私は夫を脅して、「耳かきのお店」とやらに乗り込むのであった。
アパートで独り暮らしをする拓三(23)の隣人は、拓三が不在の時にベランダから部屋に入り込み自炊したりベッドで眠ることが当たり前になっている。隣人は若くて魅力的な少し年上の女性だ。拓三が大人になるために、彼女はいろいろなことを教えてくれることになる。
争い事の嫌いな佐藤浩は幼い時分よりずっと、自分を出さず他人に合わせて生きてきた。そんな浩も目出度く大学を卒業して、春から社会人となる。彼は実家を出て通勤するのに便利な賃貸マンションへと引越した。引越しの片づけの途中、空になったダンボール箱を、彼は何気に頭からかぶってみた。すると?
お隣は母子家庭。ママは登下校するランドセルの少年を怒鳴りつけるのが日常だ。「わたし」は少年がかわいそうだと思いながらも、若いママが気になっている。ある夕方、ドーナツ屋の列に並んでいる親子の姿を見つける。「わたし」は思わず同じ列に並んでしまう。
娘と二人暮らしの母親。甘えん坊でわがままな娘に手を焼きながら毎日を過ごしている。そんなある日、二人は家の中で小人を見つける。娘は小人の世話をし始め、次第に自立心を高め、そして母親のありがたみに気づいていくが・・・?
「ちゃんとしっかり喋れんのかいなぁ」バイト先でいつもお世話になっている人の呆れる顔。もう何度見たことだろうか。「……すみません」「いや、ちゃんとな、落ち着いて言えばいいねんか。そんなに焦らんでもな。」僕は俯く。「…はい、分かりました」「返事しぃな!」僕は前を向いて、笑顔をつくる。
闇は人を不安にさせる。突然のマンションの停電、ぼくらは一丸となって一刻も早い電気の復旧のためにあれこれ考えるのだが、ぼくはふとある考えに捕らわれる。この人たちは本当にこのマンションの住人なのか? もしそうでなければ、その目的は? 誰が嘘をついている?考えるとわからなくなってきて……。
ある事情で「さくらアパート」に引っ越してきた高橋知幸。このアパートでは大家の計らいで回覧板を回すなど、住居人同士の交流が図られていたが、どうも上手くいっていない。そんな時、大家が倒れてしまい、下手をすれば退居を命じられる状況になってしまった。さて、住居人はどう動くのだろうか。
来客が近所の情報をおしえてくる。しかも、話す本人はその情報を知らないのに。どうやら、近所にいるwi-fiの奇妙なアカウント名の主がその情報源らしい。それは誰が、なぜ情報を発信しているのだろうか。wi-fiにのせて発信される情報は、僕の生活をすこしずつ変えようとしていた。
ある日、若夫婦のもとに、「この街で計画停電が夜7時の時間帯で5日間続く」というニュースが舞い込んできた。半年前の「ある事件」以来、冷え切っていた夫婦仲だったが、奇遇にも、この計画停電につられて、これまでのお互いの「隠し事」を、一本の蝋燭の灯りの下、次第に打ち明け合うのだった…。
息子が文鳥をもらってきた。息子は私には反抗的だというのに、夫とは仲がいいみたいだ。夫は最近よくメールをしている。私じゃない女のにおいがするような気がする。経年劣化する縄のように、私たちの関係がいつかちぎれてしまう前に、私は家出でもしてやろうと思った。
DV父と幼い弟妹と暮らす柊也16歳。隣に越してきた自分達とは対照的な幸せな家族。そんなお隣さんに助けてもらう日々の中で頑なだった心が溶けていく。安全に暮らすということ。正しい道。家という当たり前ではない大切なものの話。
子どもの頃に隣に引っ越してきた家族とはずっと仲がいいものだと思っていた。いまは、仲が悪いわけではないけれど、どこかよそよそしい。私の弟が不良をしているからだ。隣の家のユウキくんは不良ではない。ふたつの家族のことを気にしながらも、私はもうすぐ家を出ていかないといけない。
一人暮らしをする私は家の中では自堕落な女性。ある日、窓を半開きのまま大声で愚痴を言うと、その声は隣に住む青年に聞こえており、私は咄嗟に居もしない姉の存在をでっちあげてしまう。どうにか嘘を通そうと芝居を続けるが、ある日青年にばれてしまう。しかしそれをきっかけに二人はより親しくなる。
愛猫ナイトとの別れ間もない南千鶴。もういないはずのナイトがいるような錯覚をおこしてはそのたびに涙に暮れていた。そんなとき、千鶴のアパートの大家さんの家に一人の青年が引っ越してきた。
大学入学と同時に一人暮らしをはじめたわたし。あるとき、隣に住むおばあさんが帰り道の交差点で、一人で泣いているのに出会う。気になって声を掛けたわたしがおばあさんから聞いたのは、かつては海のなかに住んでいたことがあるというおばあさんの不思議な話だった。
時々、桜よりも先に春の訪れがある。故郷を離れ都会に出てくる若者はみんな、春の使者。都会で生きる人は多かれ少なかれ同じように甘酸っぱくてほろ苦い経験をして今がある。今春巣立ったばかりだろう大学一年生のお隣さんにこっそりとエールを送る。そんなにここも悪くないよ。
鈴木優香は、この春に異動になった部署での飲み会で、独身男性の若本博文との仲を取り持とうとする先輩に、面白い話をしてと言われて短大生のときにひょんなことから始まったお隣さんとの文通について話し始める。話し終えるとこちらを見つめる若本と目が合い、お隣さんが若本であることを知る。
SEの桐橋祐司は、異動で配属された先の静かさを寂しく感じていた。ある金曜日、訪れた店の店員と話していると、彼女はなぜか不思議な表情をする。「明日は楽しみですね」。翌日、祐司の部屋の外から、子どもの声が聞こえてきた。
家族で今暮らす家へ引越して五年の間、私は両隣さんと挨拶をたまにするていどの付き合いだ。学生時代吹奏楽部にいた私は、結婚をした当時住んでいたマンションでトランペットを吹き、隣人から苦情を持ちこまれた。以来楽器とは疎遠となった。最近隣りの高橋さん家からトロンボーンの音が聞こえてくる。
三十路目前の丸山美紀は、男っ気もなく、家と会社の往復の日々。そんな折、超イケメンの沢井陸が隣に引っ越して来た。美紀は好意を持つが、隣から愛の言葉が聞こえる。恋人か? と思いきや、陸が役者の卵で、「ロミオとジュリエット」のセリフ練習だったことがわかり、壁越しにセリフを言い合うようになる。
〈私〉は人とつきあうのが苦手で近所づきあいもない。というか、このあたりの家はみんなどこか冷めている。ボケが進行している母との暮らしは疲れるばかりで、いつのまにか自分が、年齢以上に老いてしまっているのを感じる。母と死に向かっていく日常のなかで、きょうも左隣の家から爆発音が聞こえる。