テーマ:お隣さん

物書きの隣人

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読者賞について

あなたが選ぶ「読者賞」

読者賞はノミネート掲載された優秀作品のなかから、もっとも読者から支持された作品に贈られます。

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【作品タイトル】変態失格
【ペンネーム】中田真言宗

【評価】
・キャラクター D
・ストーリー C
・世界観、アイデア C
・構成 B
・文章力 E

総合評価:D
………………………………………………

けたたましい蝉の声が響き渡る八月の下旬、下宿先のアパートに一通の郵便が届いた。僕はこの日を首を長くして待っていた。そして配達員からソレを受け取るやいなや、ブラウンベースの落ち着いた部屋の中で、血湧き肉躍らせながらハサミで封を切った。「評価シート」と書かれたその紙は、僕に残酷な現実を突き付けた。一次落選。当然審査したのは人間、しかも今回の審査員は僕の敬愛する小説家である山田國夫大先生であるが、そうとは思えないほど人情味の欠片もない紙一枚が、僕の目には写っている。コメント欄には、「don’t mind!」の文字が。先生らしいと言えば先生らしいが、書いてあるのがそれだけというのはあんまりだろう。こっちは売れっ子作家から具体的なアドバイスが貰えることも期待して応募しているんだぞ、と、もし先生に会ったら言ってやりたいところなのたが、それよりも感謝のお礼を先に言いたい。今日の今まで、夢を見させてくれたことに。楽しい時間だった。授賞式で格好よくスーツをキメた自分を想像したり、賞金の使い道を考えているだけで楽しかった。ありがとうございます。
さて、感傷に浸るのはそれくらいにして、さっそく反省会を始めようか。結果にコミットしなかった原因を改善し、次に繋げる。小説を書く事だけじゃない、それはどんなフィールドにおいても大切なことだ。何回失敗しても、挫けない心が大事なんだよ。反省とは言ったけど、別に後ろ向きな意味じゃない。反省がネガティブを含むなら、僕は反省なんて一度もしたことがない。ただ前を向いて、淡々と間違いを見直していくだけだ。人生にはネガティブ思考なんて必要ない。僕の辞書にネガティブという横文字は存在しない。ネガティブが人生を狂わせるからだ。人生で一番厄介な障害物だろう。いつだって、どんな場所にいたって、一番苦しい時に限って、そいつは僕達の前に現れる。僕はそいつに屈することなく、そいつの顔面に拳を叩き込める男でありたいのだ。

文章力、E評価。五段階評価の、“E”である。もう立ち直れない。最悪だ。なんて無様だ。終わりだ、何もかも。日本語が書けていればC評価は貰えると言っていた奴をこの場に召喚してファイヤーバードスプラッシュを食らわせてやりたい。或いは、24時間顔面放屁の刑でも良い。奴らの言っていたこと、あれは嘘なのか。嘘じゃなければなんだ。僕の文章力は小学生の作文以下ということか。なんてこった。これでも一応、高校卒業レベルの語彙は有していると思っているし、大学入試でも小論文で受験した。平易な文章、つまりC評価相当の文章は書けている筈なのだけど、一体何が悪いのやら。どこの公募に出しても、毎回文章力の評価だけがすこぶる悪い。水のような文章が好ましいと、山田大先生が指南書のようなもので書かれていたが、それに習って書いてきたつもりだ。それなのに一向に改善が見られない。やはり僕には才能がないのだろうか。小説家にはなれないのだろうか。ええい、こんなもの。

物書きの隣人

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