恋人が出て行った部屋で、『僕』は一人、リビングの床に張り付いていた。五時のチャイムが聞こえてきた。カップラーメンでも食べようかと思う。そんなとき、『僕』の部屋に女の子が訪ねてくる。彼女の小さなお願いが、母との思い出に重るとき、『僕』が思い出したこととは…。
新入社員佐和山ハルは初の一人暮らしに浮かれていた。先輩竹中は家具家電の買いすぎを心配するが、当人は計画は完璧だと意に介さない。やがて竹中が見たのは何も無い部屋とスケッチ帳に描かれた理想の部屋。少しづつ家具を買い足すハルの姿に理想には一歩づつ近づくしかないと納得する竹中だった。
小さい頃からひとり暮らしにあこがれ、ひとり暮らしが好きだった主人公は、結婚して子どもも大きくなった今、夫に内緒で小さな部屋を借り、昼間だけのひとり暮らしを始めた。ひとときの寂しさと自由を楽しみながらも、主人公は自分がひとり暮らしに求めていたものをようやく知る。
大学入学から3ヶ月、気づけばコミュニティが出来上がっており、友達を作りそびれてしまった奈央。ある日、飲み会で終電を逃したクラスメイトを泊めることなる。初めての来客は、ピーチティーをきっかけに話が弾み・・・
専業主婦の茜は、二人の子どもも独立し銀行員の夫と平凡に暮らしていた。浮気くらいでは別れることはないと思っていた茜だったが、夫の3度目の浮気から、思いがけず茜も新たな人生を選択することになる。
ひとり暮らしをしている中年の男がマンションの前で女と男の子を拾っていっしょに暮らしはじめる。最初はふたりを疎んでいたが、仲良くなったある日の夜、一本の電話がかかってくる。
篤子は就職を機に隣町で一人暮らしを始めた。しかし、平穏だった日々に突然、弟がやってきた。昔から好き勝手に生きる弟が篤子は嫌いだった。案の定、弟は篤子の迷惑を顧みずに好き勝手な行動をする。それに怒った篤子はとうとう弟と本気で喧嘩をしてしまう。
ベッドしかない殺風景な部屋に、他人の部屋が重なって見える。そんな「かさねぐらし」生活を続ける中で、女は人々の孤独や葛藤に触れ、己の何もなさに打ちのめされていた。ある夜のこと、空しい自室にて女は一人の男と出会い――何も持たない女と男の「かさねぐらし」がはじまっていた。
主人公の働いている店に昔よく飲みに来ていた女の子が死んだことをきっかけに、中学のときに一緒に部活動をしていたチームメイトと再会をする。昔のことについて話をしながらお互いのことを語っていく。
独り暮らしの男の部屋にある夜いきなりあらわれた黒い人影状の生物。正体不明の「それ」と彼との奇妙な共同生活がはじまる。いったいその正体は、目的は、存在理由は何なのか――
ある事情で「さくらアパート」に引っ越してきた高橋知幸。このアパートでは大家の計らいで回覧板を回すなど、住居人同士の交流が図られていたが、どうも上手くいっていない。そんな時、大家が倒れてしまい、下手をすれば退居を命じられる状況になってしまった。さて、住居人はどう動くのだろうか。
来客が近所の情報をおしえてくる。しかも、話す本人はその情報を知らないのに。どうやら、近所にいるwi-fiの奇妙なアカウント名の主がその情報源らしい。それは誰が、なぜ情報を発信しているのだろうか。wi-fiにのせて発信される情報は、僕の生活をすこしずつ変えようとしていた。
ある日、若夫婦のもとに、「この街で計画停電が夜7時の時間帯で5日間続く」というニュースが舞い込んできた。半年前の「ある事件」以来、冷え切っていた夫婦仲だったが、奇遇にも、この計画停電につられて、これまでのお互いの「隠し事」を、一本の蝋燭の灯りの下、次第に打ち明け合うのだった…。
息子が文鳥をもらってきた。息子は私には反抗的だというのに、夫とは仲がいいみたいだ。夫は最近よくメールをしている。私じゃない女のにおいがするような気がする。経年劣化する縄のように、私たちの関係がいつかちぎれてしまう前に、私は家出でもしてやろうと思った。
DV父と幼い弟妹と暮らす柊也16歳。隣に越してきた自分達とは対照的な幸せな家族。そんなお隣さんに助けてもらう日々の中で頑なだった心が溶けていく。安全に暮らすということ。正しい道。家という当たり前ではない大切なものの話。
空が一面暗くなって、黒紫色に渦巻き出した。これはもうそういうことだろうとセイタカアワダチ村のみんなは合意した。魔王が復活したのだ。急いで、勇者さまがこの村にやってくるのに備えなければならない。
善明は義理の家族と共に箱根の観光名所、大涌谷を目指す。旅行の目的は流産を経験した妻すぐりの心の傷を癒すこと。大涌谷の売店で見知らぬ少女に手を握られたすぐりは、その少女こそが自分たちの子どもではないかと言う。真偽は確かではないけれども、若い夫婦は空の下で失った子どもに別れを告げる。
冬の北海道で暮らす「私」は、ある雪の日、家に迷い込んできた虫を見つける。湖の下にあるという、その虫が住む「宮廷」。そこを抜け出し、骨の折れる長旅をして、地上に出てきた虫が欲しかったものは…。
「わかばニュータウン」の開発とともに設置されたすべり台が見守る、町の始まりそして終わり。少女は気づかずりぼんを落とし、少年はたえず結び続ける。町は老い、人は巣立ち、すべてが消え去ったかのように思えた「夢のあと」で、すべり台が見たものとは。
ある日、私は父と過ごした神戸の記憶を思い出していた。どうしてか私の中で父と神戸は表裏一体の存在であった。回想と現実の中から編み出される真実とは・・・
鈴花は愛読していたweb小説の作者ダイキに興味を持つ。そして自分も同じ小説投稿サイトに地元鎌倉を舞台とした作品を書き始めた。何の接点もないはずのダイキも鎌倉を舞台とした作品を書き始める。交差する二つの物語。主人公と作者が次第に重なっていく。
私が参加した奇妙なゲーム。豪邸の中に隠れた支配人を探し出して問いに答え、一番に戻ってきた参加者は無償でその豪邸を手に入れることが出来る。首尾よく支配人を探し出すことに成功した私だが、支配人は思わぬ条件を言い出した。
ある夫婦の念願が叶って、やっとできた子どもは髪の毛が凄まじかった。じきに髪の毛は子どもの体よりも長くなって、両親よりも長くなって、家のなかを覆っていった。切っても切っても追いつかなくて絶えず家事の危険がある。そこで夫婦は高い塔をつくって、その窓から子どもの髪を下に垂らそうとした。
我が家に突然、父が帰ってきた。一年ぶりに会う父は、相変わらず大きな声と大きな足音を出す。母も弟も嬉しそうに、そんな父を出迎えた。久しぶりの我が家に、父は嬉しそうだけど……。
森のおうちに残された七人の小人は、白雪姫を懐かしむあまり、小人の一人を白雪姫に見立て白雪姫ごっこを始めた。最初の白雪姫役は姫と駆け落ちし、二番目は悪い魔法使いにさらわれた。三番目は毒桃を食べ永遠の眠りにつく。小人たちは急きょ眠り姫ごっこに変更し、七人で仲良く暮らした。
昼寝をしていた有須は白ウサギに誘われるままに空き家であるはずの隣家に上がり込み、これが幼少期に経験した不思議の国の追体験であることに気付く。有須は裁判所へ殴り込み、トランプ兵を唆し無事女王への復讐を遂げる。目を覚ますと隣家から謎の美女が。童話にまつわる怪現象は終わっていなかった。
お菓子? そう。 あの、お菓子、よ、ね。 なんだい、お菓子、知らない、のー。 バカに、しないで、よ! だって、あの、お菓子、よ、ね、つて。 唐突、だから、よ。 なにが、唐突、さ。 家、の話、でしょ。