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相続土地国庫帰属制度が使えない土地・不動産とは?要件や理由、対処方法を解説

相続土地国庫帰属制度が使えない土地・不動産とは?
相続した土地を手放す方法の一つに、「相続土地国庫帰属制度」があります。しかし、すべての土地を国に引き取ってもらえるわけではありません。建物がある、抵当権などの権利が設定されている、境界が明らかでない土地などは、申請段階で却下されます。

また、崖や地下埋設物などがあり、通常の管理・処分に過分な費用や労力がかかる土地も、審査の結果、不承認となる場合があります。

この記事では、相続土地国庫帰属制度を利用できない土地の要件や理由、国庫帰属が難しい場合の対処方法を解説します。申請後に却下・不承認となった場合でも審査手数料は返還されないため、申請前に土地の状況や権利関係を確認しておくことが重要です。

なお、法務省の「相続土地国庫帰属制度の統計」では、2026年7月31日時点で却下85件、不承認96件となっています。

記事の目次

そもそも相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度とは?
相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度は、相続や相続人に対する遺贈によって取得した土地の所有権を、法務大臣の承認を受けて国庫に帰属させる制度です。対象は土地であり、建物を含む不動産をそのまま国に引き取ってもらう制度ではありません。

制度の目的は、相続したものの利用予定がない土地の管理負担を軽減し、将来の所有者不明土地や管理不全土地の発生を抑えることにあります。その一方で、管理コストをそのまま国へ転嫁することを防ぐため、国が引き取れない土地の要件が定められています。

相続土地国庫帰属制度の申請が受理されない土地(却下要件)

相続土地国庫帰属制度の申請が却下される土地の特徴は?
相続土地国庫帰属制度の申請が却下される土地の特徴は?

次の土地は、土地の状況を詳しく審査する前提を欠くため、原則として申請段階で却下の対象となります。

建物がある土地

登記されていない建物でも、現に建物が存在する場合は申請できません。登記されていない古家や廃屋も、実体として建物に該当すれば同様の扱いとなります。

建物に該当するかどうかは、屋根や周壁などの状況を踏まえて判断されます。制度を利用するには、原則として建物を解体・撤去したうえで申請する必要があります。

抵当権や地上権などの権利が設定されている土地

抵当権、地上権、賃借権など、土地の使用・収益を目的とする権利が設定されている土地は、申請できません。登記記録だけでは確認できない権利もあるため、現地の利用状況や契約関係も確認します。

他人の利用が予定されている土地

現在、道路や通路として利用されている土地、墓地内の土地、境内地、水道用地・用悪水路など、他人の利用が予定されている土地は対象外となります。過去に使われていただけで現在は利用されていない場合は、ただちに該当するとは限りません。

特定有害物質により土壌汚染されている土地

土壌汚染対策法上の特定有害物質により、法務省令で定める基準を超える汚染がある土地は申請できません。過去の土地利用から汚染の疑いがある場合には、申請前に調査や資料の準備が必要になることがあります。

境界が明らかでない土地

申請地の範囲が明らかでない土地は却下対象です。ただし、確定測量や境界確認書が一律に必須ではありません。現地の境界を申請者が認識でき、隣地所有者との間に争いがないことを示せるかが重要です。

所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地

第三者が自分の土地だと主張している場合や、隣地所有者と境界位置を争っている場合など、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地は申請できません。国に引き渡す前に、申請者側で権利関係を整理する必要があります。

相続土地国庫帰属制度の審査で認められない土地(不承認要件)

相続土地国庫帰属制度の審査で認められない土地の特徴は?
相続土地国庫帰属制度の審査で認められない土地の特徴は?

申請自体は受け付けられても、審査の結果、通常の管理・処分に過分な費用や労力が必要と判断される土地は不承認となります。

急傾斜地や高い崖がある土地

勾配30度以上かつ高さ5m以上の崖があり、崩落防止の擁壁工事など通常の管理に過分な費用や労力を要する土地は承認されません。基準を満たす崖があるだけで自動的に不承認となるのではなく、管理上の負担もあわせて判断されます。

管理や処分を阻害する工作物・車両・樹木などが地上にある土地

老朽化した工作物、放置車両、管理上問題となる樹木などがあり、それらが土地の通常の管理・処分を妨げる場合は不承認となります。
一方で、森林の立木や安全性に問題のない土留め・柵などは、存在するだけでただちに不承認になるわけではありません。

除去が必要な有体物が地下にある土地

産業廃棄物、建築資材、既存建物の基礎、古い油タンク、大きな石などが地下にあり、管理や処分のために撤去しなければならない土地は承認されません。有体物があっても、それを除去しなくても通常の管理・処分に支障がない場合は、不承認要件には該当しません。

隣地所有者等との争訟が必要な土地

袋地で公道への通行が妨げられている土地、不法占拠者がいる土地、隣地から生活排水が流入し続けている土地など、通常の管理・処分のために訴訟が必要となる土地は不承認となります。

その他、通常の管理や処分に過分な労力や費用を要する土地

災害防止のため大規模な工事が必要な土地、重大な被害を生じさせるおそれのある鳥獣・害虫が生息する土地、追加の造林・間伐などが必要な森林、国が法令上の金銭債務を承継する土地なども対象外となることがあります。

相続土地国庫帰属制度が使えない主な理由

相続土地国庫帰属制度が使えない理由とは?
相続土地国庫帰属制度が使えない理由とは?

要件を整理すると、制度が使えない理由は大きく4つに分けられます。

建物や工作物がある

前途のとおり、国が取得した直後から解体・撤去・補修をしなければならない状態では、管理コストが国へ転嫁されるため、建物や工作物がある土地は該当しません。

土地の管理が難しい

崖、危険な樹木、地下埋設物、災害リスクなどがあり、通常の土地より管理に手間や費用がかかる場合が該当します。

権利やトラブルがある

担保権、賃借権、境界争い、不法占拠などがあると、国が所有者になっても自由に管理・処分できない土地が該当します。

費用の支払いができない

審査手数料に加え、承認後には負担金が必要です。負担金を期限までに納付しなければ承認は失効し、土地は国庫に帰属しません。

相続土地国庫帰属制度が使えない際の対策

相続土地国庫帰属制度が使えない時はどうすればいい?
相続土地国庫帰属制度が使えない時はどうすればいい?

国庫帰属が難しい場合でも、土地を整理する方法は一つではありません。むしろ、建物の解体や地下埋設物の撤去に高額な費用がかかる場合は、制度の要件を満たすために工事をするより、別の方法で手放すほうが合理的なこともあります。

相続放棄をする

相続開始を知った時から原則3カ月以内で、まだ相続を承認していない場合は、相続放棄を検討できます。ただし、相続放棄は土地だけを対象にできず、原則として相続財産をまとめて放棄することになります。相続放棄後の財産管理も一定のルールがあるため、専門家への相談を検討しましょう。

自治体に相談する

自治体によっては、一定の条件のもとで寄付を受け入れたり、地域利用につなげたりする場合があります。また、寄付の受入れ、地域利用、農地・森林の相談窓口などが設けられています。ただし、自治体には土地を引き取る義務はないため、利用価値や管理負担によって対応は異なることを理解しておきましょう。

空き家バンクを利用する

建物付きの土地で国庫帰属制度が使えない場合は、空き家バンクを利用して買主や利用者を探す方法があります。建物を解体せずに引き継げる可能性がある点は、国庫帰属制度との大きな違いです。

不動産有料引取りサービスを利用する

費用を支払えば土地を引き取ってくれる民間サービスもあります。ただし、事業者の信用力、契約内容、所有権移転登記が確実におこなわれるか、将来追加費用が生じないかを十分確認する必要があります。

不動産会社に売却する

価格を下げれば売却できる土地や、隣地所有者・事業者に需要がある土地もあります。国庫帰属のために解体や撤去費用をかける前に、売却可能性を査定しておくと選択肢を比較しやすくなります。

相続土地国庫帰属制度を自分で申請する注意点

相続土地国庫帰属制度を自分で申請するには?
相続土地国庫帰属制度を自分で申請するには?

制度は本人申請もできますが、審査手数料は却下・不承認となっても返還されないため、申請前の確認が重要です。

事前に要件を確認する

申請前に、登記事項証明書や公図などを確認するとともに、現地の建物・工作物・残置物、境界、権利関係などを確認します。却下・不承認要件に該当しないか整理します。

申請方法や流れを把握する

法務局への事前相談、書類作成、申請、書面審査・実地調査、承認、負担金納付の流れを把握しておきます。事前相談の結果と実際の審査結果が異なる場合もあります。

専門家のサポートを受ける

申請書類の作成が難しい場合、業務として作成を代行できるのは弁護士、司法書士、行政書士です。なお、申請手続そのものは原則として申請者本人がおこなう必要があります。

境界や筆界が問題となる場合は土地家屋調査士への相談も有効です。建物の解体や権利抹消を含め、多少費用がかかっても申請前の整理から専門家に確認すると手戻りを防ぎやすくなります。

まとめ

相続土地国庫帰属制度では、建物や担保権がある土地などは申請段階で却下され、崖や除去しなければ通常の管理・処分ができない地下の有体物などがあり、過分な費用や労力が必要となる土地は審査で不承認となります。

相続土地国庫帰属制度の申請が受理されない(申請段階で却下される)土地とは?

担保権などが設定された土地、他人の利用が予定されている土地、一定の土壌汚染がある土地、境界が不明な土地、所有権の争いがある土地などです。

また、登記されていない建物でも、現に建物が存在する場合は申請できません。建物に該当するかどうかは、屋根や周壁などの状況を踏まえて判断されます。

相続土地国庫帰属制度の審査で認められない土地とは?

管理が必要な崖、管理・処分を阻害する地上物や地下埋設物、隣地所有者などとの争訟が必要な土地など、国が通常どおり管理するには過分な負担が生じる土地です。

相続土地国庫帰属制度が使えない際の対策は?

相続放棄、自治体への相談、空き家バンク、民間の有料引取りサービス、不動産会社への売却などがあります。国庫帰属の要件を満たすために多額の費用をかける前に、複数の方法を比較することが大切です。

土地の状況によって最適な処分方法は異なります。まず登記と現況を確認し、国庫帰属に向けて問題を解消するのか、売却など別の方法を選ぶのかを検討しましょう。特に境界、権利関係、建物の有無は、申請前の早い段階で確認しておくことが大切です。

渋田 貴正

執筆者

渋田 貴正

司法書士事務所V-Spirits 代表司法書士。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社に在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年独立し、司法書士事務所開設。相続に特化した司法書士事務所として幅広くサービスを提供している。

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