袋地とは?準袋地や囲繞地との違い、デメリットや高く売却する方法を解説
袋地とは、ほかの土地に取り囲まれており、公道に直接接していない土地のことです。原則として建物の建て替えが認められない「再建築不可物件」として扱われます。
袋地は、日々の通行やライフラインの維持などで隣人とのトラブルが起きやすい側面を持っています。そのまま解決を先延ばしにしていると、建物の老朽化による倒壊リスクだけでなく、使わない土地の固定資産税を払い続けるだけの負の遺産になりかねません。
本記事では、袋地の基本的な仕組みや所有し続けるリスク・デメリットから、少しでも高く売却するための具体的な対策を、わかりやすく解説します。
記事の目次
袋地とは?
袋地(ふくろち)とは、周囲がほかの土地に囲まれていて、公道とは接していない土地のことを指します。敷地から外へ出入りするためには、他人の所有地を通行しなければなりません。

袋地では、原則として建物の新築や建て替えができません。建物を建築する際、建築基準法により「敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」と、接道義務が定められているためです。
接道義務は、火災や地震などの災害時に、住民の避難経路や消防車などの緊急車両の進入経路を確保するために設けられています。

ただし、現在袋地でも家が建っているケースも少なくありません。これは、現在の接道義務が定められる前に建てられた建物であるためです。
法律が新しくできた際、それ以前から存在していたものには新しい法律は適用されません(不遡及の原則)。したがって、現在の建物は既存不適格建築物(※)として、そのまま住み続けることが例外的に認められている状態にすぎません。
※既存不適格建築物:建築当時は適法だったが、その後の法改正などにより現行の基準に適合しなくなった建物
そのため、ひとたび建物を解体して更地にしてしまうと現行の法律が適用されるため、新しく家を建てることはできなくなります。
袋地に関連する・似ている用語
袋地に関連する・似ている用語を5つ紹介します。
準袋地(じゅんふくろち)
準袋地(じゅんふくろち)とは、河川や水路などを通らなければ公道へアクセスできない、あるいは崖で土地と公道とに著しい高低差がある土地です。
【準袋地を遮るものの例】
- 河川や水路
- 池や沼
- 海
- 極端な高低差のある崖

他人の土地に囲まれていなくても、公道に直接出られない点では袋地と同じ扱いです。民法上も同じ条文(民法第210条)内に規定されており、周囲の土地を通行する権利が認められています。
ただし、袋地と同様に建築基準法上の接道義務を満たしていないため、原則として建物の新築や建て替えはできません。
囲繞地(いにょうち)
囲繞地(いにょうち)とは、袋地を周囲から取り囲んでいる土地です。民法では、公道に通じない土地の所有者が公道に至るため、その周囲にある囲繞地を通行できる権利を認めています(民法第210条1項)。
これは他人の土地に囲まれる地形的な状況を考慮した救済措置です。

無道路地(むどうろち)
無道路地(むどうろち)とは、意味合いとしては袋地と同義であり、建築基準法上の道路に接していない土地を指します。
主に、税理士や不動産鑑定士が、土地評価をおこなう場合の実務に用いられる呼称です。
なお、相続税評価額の計算では、無道路地は、不整形地としての評価(補正)を行ったあとの価格から、接道義務を満たすために必要な通路の開設費用を差し引いて求めます。この差し引ける金額には上限があり、最大で評価額の40%までと定められています。
囲繞地通行権
囲繞地通行権とは、道路に接していない土地(袋地)の所有者が、人の通行を目的として、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行できる権利です(民法第210条)。隣地所有者の合意がなくても法律上当然に発生する権利であり、他の土地の所有者は拒否できません。
法律で通行が認められている一方で、囲繞地の所有者が受ける損害を最小限に抑えるため、以下のような制限も定められています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第211条 | 通行の場所と方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、囲繞地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない |
| 第212条 | 通行者は、通行する土地の損害に対して「償金(通行料)」を支払う義務がある |
| 第213条 | 土地の分割や一部譲渡によって袋地が生じた場合、分割者の土地のみを通行でき、償金の支払いは不要となる |
通行地役権
通行地役権とは、通行のために設定される地役権であり、特定の土地(要役地)の利便性を高めるために、隣接する土地(承役地)を通行できるようにする権利です(民法第280条)。囲繞地通行権とは異なり、当事者の合意(契約)によって設定されます。
囲繞地通行権との主な違いは、次のとおりです。
| 囲繞地通行権 | 通行地役権 | |
|---|---|---|
| 発生要件 | なし (法律上当然に発生) |
合意(契約) |
| 通行の範囲 | 必要最小限 | 契約で自由に設定可 |
| 法務局での登記 | 不要 | 可 (登記することで 第三者に対抗できる) |
| 再建築の可否 | 原則不可 | 条件を満たせば可 |
囲繞地通行権があるだけでは、通常は接道義務を満たしたとは扱われません。判例でも「接道要件を満たす幅の通行権が当然に認められるわけではない」とされています。一方、通行地役権は、権利を登記し、建築基準法上の道路まで幅員2mを確保してつなげれば、接道義務を満たし再建築は可能となります。
袋地でよくあるデメリット・リスク

不動産市場では「負動産」といわれることもある袋地ですが、所有あるいは所有し続けることによるデメリットやリスクがあります。ここでは、代表的な5つを解説します。
原則として建て替えや新築ができない
袋地が抱えるデメリットは、原則として建物の新築や建て替え(再建築)が認められない点にあります。すでに解説したとおり、袋地は建築基準法上の接道義務を満たしていないためです。
単に新しく家が建てられないだけでなく、老朽化や災害で現在の建物が失われた場合、同じ場所に家を再建できず、更地にするしかない点で居住環境を失うリスクを抱えています。
一定の規模のリフォームやリノベーションはできるケースもありますが、増築や減築など建築確認申請が必要となる大規模な工事は、原則としてできません。
担保価値が低い
袋地は一般的な不動産と比べて、金融機関からの担保価値が低く見積もられる傾向にあります。現行の法律下では建物の再建築ができないため、土地としての利用価値が著しく制限されていると判断されるためです。
その結果、袋地の売却相場は周辺の一般的な整形地と比較して、3割~7割程度まで下落するケースが見られます。
仮に購入希望者が現れた場合も、担保価値の低さから住宅ローンの利用が困難になる問題があります。そのため、買い手が資金力のある投資家や買取業者などに限定され、一般の土地より市場での流動性が低くなります。
通行トラブルのリスクがある
袋地は、他人の敷地を日常的に通行しなければならないため、隣人との摩擦やトラブルを生み出しやすい環境です。
法律的に通行する権利(囲繞地通行権)が認められていても、通行の範囲や荷物の置き方などを巡って、近隣トラブルに発展するケースもあります。相続や売買で土地所有者が変わって揉める可能性もあるでしょう。
【通行や権利に関するトラブルの例 】
- 通行範囲の認識の違い
- 通行料(償金)の値上げや支払いに関する揉め事
- 水道やガスなど生活インフラ工事の承諾拒否
特に、配管が隣地を通っていることが多いため、修繕や引き込み直す工事をする場合には隣人から、掘削承諾書などを得ることを推奨します。
以前は隣人の承諾がなければ工事ができませんでしたが、2023年の民法改正により、ライフラインの設置・使用権が明文化されました。これにより、あらかじめ目的や場所、方法を通知すれば、たとえ隣人の承諾がなくても工事をおこなうことが可能となっています(民法第213条の2)。
ただし、ライフラインの設置・使用を拒否された場合に工事を強行することは禁じられており、裁判所の手続きが必要となります。紛争を防ぎ円滑に工事をおこなううえでは、引き続き事前に承諾を得るための交渉が重要です。
日当たりや風通しが悪く、プライバシーの確保が難しい
袋地は四方を他人の土地や建物に囲まれているため、住環境が閉鎖的になりやすい特徴があり、以下のような懸念点があります。
【住環境の主な懸念点 】
- 日照時間や通風が遮られやすい
- 室内に湿気がこもり、カビの発生、建物の劣化が早い
- 周囲の家から視線が届きやすくストレスを感じる
- 隣家との距離が近く生活音が漏れやすい など
居住環境が悪い家は、住みにくいだけでなく、売却時にもマイナス要因となります。
解体・工事の費用が高額になりやすい
袋地の隠れたデメリットが、解体やリフォームなどの建築コストが高額になりやすい点です。なぜなら、道路に接していないため、ショベルカーなどの大型重機や、廃材を積み込むダンプカーを敷地内に横付けすることが困難なためです。
重機が進入できないため、作業員がバールなどを使い手作業で建物を解体する、あるいは発生した大量の廃材を、ダンプカーを駐車する公道まで手運びする(小運搬)必要があり、通常より工事費が高くなります。
袋地を活用するための具体的な接道義務確保策
袋地のデメリットを解消し、資産価値を回復するためには、建築基準法上の接道義務をクリアする必要があります。
ここでは、接道義務を確保するための具体的な方法を解説します。なお、接道義務を詳しく知りたい方は「接道義務とは?家づくりや不動産売買で知っておくべき知識をわかりやすく解説」も、あわせてご覧ください。
隣接する囲繞地の一部を購入する
一つ目の方法は、公道に出るための通路部分(幅2m以上)を隣接する土地の所有者から買い取る方法です。

交渉が成立して分筆や所有権の移転登記が完了すれば、細長い通路の先に建物が建つ「旗竿地(はたざおち)」を所有できます。自身の単独名義の土地で接道義務を満たせるため、建物の建て替えが可能となります。
ただし、隣人にとっては自らの土地が減る行為であるため、容易に承諾を得られるケースは稀でしょう。地域の相場価格を上回る金額での買い取りを求められることもあるうえ、測量や分筆登記などの費用も必要となり、一定の資金力が必要です。
自身の土地の一部と公道に接している隣地の一部を等価交換する
隣地の一部を買い取るまとまった資金の準備が難しい場合、自身の土地の一部と、隣地の通路となる部分を等価交換(同等の価値の不動産で交換)する方法があります。

手元に資金がなくても接道義務を満たす通路を確保できるだけでなく、相手にとって土地の形状がよくなる、もしくは、資産価値が上がるメリットがあれば交渉がまとまりやすい方法です。
ただし、土地の交換比率は単に面積だけで決まるわけではありません。それぞれの土地の評価額や形状などを考慮して決める必要があり、折り合いをつけることが難しいケースもあります。
位置指定道路の申請をする
隣接する土地の所有者の同意を得て、公道から私有地内に向けて新たに私道を築造し、位置指定道路として行政に申請する方法です。

位置指定道路とは、特定行政庁(※)から位置の指定を受けることで、個人の私道であっても建築基準法上の「道路」として認められる制度を指します。新たに築造した道路に自分の土地を接させることができれば、再建築が可能です。
※特定行政庁とは、地域の建築行政を担う自治体の長あるいは都道府県知事
しかし、この方法には費用と時間の面で大きなハードルが存在します。
【位置指定道路の申請にかかる主なコスト】
- 官民および民民の境界確定測量費
- 道路位置指定図の作成と標識設置の費用
- 幅員4mのアスファルト舗装や側溝(排水設備)などの土木工事費
事前の測量や申請手続きだけでも数十万円からの費用がかかり、実際の道路築造工事を含めると合計で数百万円単位の出費になることが一般的です。さらに、関係者との合意形成や行政手続き、工事完了までに数カ月単位の期間を要するため、個人でおこなうにはハードルが高い点を理解しておく必要があります。
建築基準法に基づくただし書き道路(43条許可)の認定を受ける
物理的に接道要件を満たすのがどうしても難しい場合、建築基準法の特例許可制度を利用する選択肢があります。
現在は「第43条第2項第2号に基づく許可」と呼ばれており、旧法での通称である「43条ただし書き許可」の名称で広く知られている制度です。
いわば、再建築不可物件の救済措置として認められた制度で、接道義務の適用除外規定として以下のように定められています。
- 建築基準法第43条2項2号
-
その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
- 参照:建築基準法|e-Gov 法令検索
具体的には、次の基準に適合する建築物で、建築審査会の同意を得て特定行政庁が許可したものは、例外的に再建築が認められます。
- 周囲に広い空地があること
- 建築基準法上の道路でない農道など(公共の用に供する道)に接していること
- 建築基準法上の道路に通ずる通路(避難通行上安全なもの)に接していること
ただし、43条ただし書き道路の許可・認定基準は、自治体によって異なる場合もあるため、各自治体の窓口で確認・相談する必要があります。
関係各所との調整や申請手続きは複雑なため、一般の個人が単独で進めるのは難しく、建築士やコンサルタントなど専門家への相談が望ましいでしょう。
袋地を高く売却する方法

再建築不可や買い手が住宅ローンを組みづらい制約がある袋地を、できるだけ高く売却するには、その特性に合わせた対策が必要です。
ここでは、袋地を高く売却する3つの方法を解説します。
隣地とセットで売却(共同売却)する
一つ目の方法が、隣地(囲繞地)の所有者と協力し、一つのまとまった土地として同時に売り出す共同売却の方法です。
袋地単体では買い手がつかなくても、囲繞地と合わさることで一定の広さを持つ整形地へと変わり、利用価値が広がります。公道に面した広い土地になれば、マンションやアパートの開発用地を探している不動産会社にとって、優良な物件となる可能性もあります。
隣地所有者との合意が必要ですが、両者の土地の市場価値が向上する相乗効果が生まれ、単独で売るよりも売却価格が飛躍的に上がるでしょう。
なお、共同売却の合意が得られない場合は、隣地の所有者自身に袋地を直接買い取ってもらう交渉も選択肢の一つです。隣地所有者にとって、自分の土地を広げて物件の価値を高められる提案であれば話がまとまりやすく、第三者に売却するよりも高い価格で売却できる可能性があります。
通行地役権や通行掘削承諾を取得する
袋地をそのままの状態で高く売るには、買主が将来的に建物を新築・建て替えでき、安心して生活できる環境を整えておくことが重要です。
そのために、以下の2つの権利と承諾の取得を推奨します。
- 通行地役権の設定と登記
- 通行掘削承諾書の取得
隣人との間で通路部分に通行地役権を設定し、自治体の許可基準を満たす幅員(原則4m以上)を確保します。そのうえで、法務局で通行地役権を登記し、特定行政庁(自治体)との協議を通じて建築基準法の特例許可(第43条第2項第2号許可)が受けられる条件を整えることで、再建築可能への道が開かれ、土地の価値を高めることにつながります。
また、囲繞地通行権は、通行料の値上げや通行拒否など将来的なトラブルのリスクがともないますが、契約として通行地役権を明確に登記しておくことで、買主の不安を払拭できるでしょう。
さらに、水道やガスなどの生活インフラを引き込むための掘削承諾書を取得しておくことも重要です。袋地では配管が隣地の下を通るケースが多く、工事の際には隣地所有者から掘削の承諾を得る必要があります。
この承諾がない土地は、買主が入居後に生活インフラの工事を進められないリスクがあるため、買い手や不動産会社から敬遠されがちです。事前に承諾書を取得しておくことで、そうした不安を取り除き、売却をスムーズに進められます。
売却が困難な場合は、再建築不可物件専門の買取会社に相談する
長期間売れ残っていて売却の見通しが立たない場合は、袋地など再建築不可物件を専門に扱う買取会社への相談が現実的な選択肢となります。
一般の不動産仲介会社は、売却が難しく、売却価格が低くなりやすい袋地の取り扱いには消極的です。一方で、買取を専門とする会社を利用すると市場価格より安くなりますが、以下のようなメリットもあります。
- 買取会社が直接買い取るため、現金化までのスピードが早い
- 残置物がある状態や隣人トラブルを抱えたままでも売却できる会社もある
- 売却後に欠陥が見つかっても責任を問われない(契約不適合責任の免責)
専門の買取会社は独自のノウハウで権利関係を整理し、物件を再生して収益化する仕組みを持っているため、一般の市場では売れ残りやすい袋地でも、買い取ってもらえる可能性が高まるでしょう。
まとめ
最後に記事の重要なポイントを振り返ってみましょう。
袋地とは?
袋地とは、ほかの土地に囲まれて公道に接していない土地です。建築基準法の接道義務を満たさないため、原則として建物の建て替えができない再建築不可物件に該当します。
袋地のデメリット・リスクは?
袋地の主なデメリットやリスクは、以下のとおりです。
- 火災や災害で建物がなくなると住環境を失う可能性がある
- 通行やインフラ整備を巡る近隣トラブルのリスク
- 再建築不可のため担保評価が下がり、ローンが使えず売却が難しくなる
袋地を高く売却する方法は?
袋地を高く売却する方法として以下のものがあります。
- 隣地と協力して共同売却する
- 隣地所有者に買い取ってもらう
- 通行地役権や掘削承諾書を取得しておく
売却の際は、袋地のような再建築不可物件の取り扱いに精通する不動産会社に依頼するとよいでしょう。
袋地は、一般的な土地と異なり、再建築不可の制限や、隣地所有者との複雑な権利関係が絡み合う特殊な土地です。
このような土地を、「どうせ建て替えられない」「売ろうとしても買い手がつかない」と諦めて放置してしまうことは、おすすめできません。そのままにしておくと、老朽化した建物の倒壊リスクや、通行を巡る近隣トラブルの火種を抱え続けることになり、将来ご家族に重い負担を残してしまう恐れがあります。
問題解決への第一歩は、ご自身の土地が現在どのような法的状況に置かれているのかを正確に把握することからです。
隣地の一部購入や地役権の設定、共同売却のほか、建築基準法の特例許可の取得など、状況を打開するための選択肢はゼロではありません。しかし、こうした専門的な手続きや隣人との交渉を、所有者様ご自身だけで進めるのは困難です。
そのため、一人で抱え込まず、袋地や再建築不可物件の取り扱いに長けた不動産会社や専門の会社へ相談してみてください。専門家による無料査定や客観的なアドバイスを受けることで、現状のまま買い取ってもらうべきか、権利関係を整理して売却すべきか、具体的な道筋がはっきりと見えてくるはずです。
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