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囲繞地とは?通行料はいくら?基本ルールや売却が難しいと言われる理由、売るコツを解説

囲繞地とは?基本ルールや通行料・売却が難しい理由を解説
「囲繞地(いにょうち)」は、公道に面していない土地(袋地)を取り囲む周囲の土地を指します。不動産の相続や売買に携わるなかで耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

道路に出られない袋地の住人のために、法律では囲繞地を通行する権利(囲繞地通行権)が認められています。そのため、囲繞地の所有者は、他人の通行を受け入れなければなりません。

本記事では、囲繞地の基本的なルールや通行料から、売却が難しいと言われる理由、スムーズに手放すための5つのコツを解説します。

囲繞地(いにょうち)とは?

囲繞地(いにょうち)とは、公道に直接面していない土地を取り囲んでいる周囲の土地を指す言葉です。

袋地を囲む土地を囲繞地といいます
袋地を囲む土地を囲繞地といいます

道路に接していない土地のことは袋地(ふくろち)と呼ばれます。袋地に住んでいる人が外の公道へ出るためには、周囲を取り囲んでいる他人の土地を通らなければなりません。

また、池や沼、河川などを利用しないと他の土地に通じない、あるいは崖があって土地と道路との間に著しい高低差がある土地を「準袋地」といいます。この準袋地を取り囲む形で囲繞地となっている場合もあります。

準袋地を囲む土地も囲繞地と呼びます
準袋地を囲む土地も囲繞地と呼びます

民法と刑法における囲繞地の定義

民法と刑法で囲繞地の定義は異なります
民法と刑法で囲繞地の定義は異なります

囲繞地は、適用される法律が民法か刑法かによって、異なる意味合いを持ちます。ここでは、それぞれの法律による囲繞地の意味と違いを解説します。

民法上の囲繞地

民法上の囲繞地とは、周囲を囲まれて公道に出られない土地(袋地)を取り囲んでいる土地です。

民法第210条では、袋地の所有者を救済するため、囲繞地通行権の権利を定めています。これは、袋地の住人が公道へ出るために、周囲の土地(囲繞地)を通行できる権利です。

このような法律が設けられている理由は、土地を有効活用できるようにするとともに、隣人同士の関係を円滑にし、トラブルを防ぐためであると考えられています。

つまり、民法上、囲繞地の所有者は、自分の土地でありながら、袋地所有者のために一定の制限を受ける立場にあります。不動産の売買や相続の場面でトラブルになりやすいのは、主にこの民法上の囲繞地です。

出典:e-GOV法令検索「民法第210条」

刑法上の囲繞地

刑法上の囲繞地は、民法とは異なり、建物の周囲にある塀や柵などで囲まれた土地を意味します。

これは刑法第130条の住居侵入罪などに関わる概念であり、防犯や個人のプライバシーを保護することが主な目的です。つまり、正当な理由がなく、囲繞地に侵入すれば、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立するとされています。

民法上の囲繞地は他人の通行を受け入れる土地であったのに対し、刑法上の囲繞地は不法な侵入から守られるべき土地として定義されているのが、両者の違いです。

囲繞地と袋地の違い

囲繞地と袋地の違いを確認しましょう
囲繞地と袋地の違いを確認しましょう

囲繞地と袋地の大きな違いは、「公道に接しているかどうか」と「通行に関する立場(権利と義務)かどうか」です。

以下は、それぞれの違いをまとめた表です。

項目 囲繞地 袋地
意味 袋地を取り囲んでいる土地 他人の土地に囲まれている土地
公道との接道 接している 接していない
建物の建築 可能 原則不可
(再建築不可の
場合が多い)
通行の権利関係 通行させる義務がある 通行する権利がある

袋地は公道に面していないため、原則として新しく家を建てたり建て替えたりできません。ただし、外の道路へ出るために周囲の囲繞地を通らせてもらう権利(囲繞地通行権)があります。
一方で道路に接している囲繞地では、建物の建築自体は可能です。しかし、自分の敷地の一部を、袋地に住む人のための通路として提供し続けなければならない制約があります。
このように、囲繞地と袋地は「他人に通路を提供しなければならない土地」と「他人の土地を通らなければならない土地」の関係にあります。

囲繞地通行権の基本ルール

囲繞地通行権の基本ルールを解説します
囲繞地通行権の基本ルールを解説します

袋地の所有者が公道に出るために認められる「囲繞地通行権」ですが、無制限に権利が認められるわけではありません。法律によっていくつかの基本的なルールが定められています。ここでは、通行できる範囲や通行料など各種ルールを解説します。

通行の範囲

袋地の住人が囲繞地を通る際、敷地内のどこを通ってもよいわけではありません。民法では、囲繞地側の負担を最小限に抑える場所や方法を選んで通行することを定めています(民法第211条1項)。
これは、通行を受け入れる囲繞地の所有者に過度な負担をかけないためです。

実務上、通路の幅は、人間が歩いて通れる幅 や自転車を押して通れる程度の幅(おおむね2m)の範囲にとどまるケースが一般的です。したがって、単に「便利だから」などの理由で、むやみに広い通路や自由なルートを要求されることはないでしょう。

通行料

袋地の住人が囲繞地を通行する際、囲繞地の所有者は原則として通行料(償金)を受け散ることができます(民法第212条)。

囲繞地通行料に法定の金額はありません。実務では年間数千円~数万円程度となるケースが多く、
土地の面積や利用状況によって異なります。

住宅1戸が通行する程度であれば年間1万円前後で合意されるケースもありますが、車両通行をともなう場合は高額になることもあります。

基本的には当事者同士の話し合いで決定しますが、実務で目安とされるのは、以下のような基準です。

【通行料を計算する際の目安】
●近隣の囲繞地通行料の相場
●周辺の月極駐車場の料金相場

もし当事者同士で話し合いがまとまらない場合は、最終的に裁判所の手続き(調停や訴訟)などで決めることになります。なお、例外的に通行料が不要(無償)になるケースもあり、こちらは、次の項目で詳しく解説します。

例外的に無償になるケース

囲繞地の通行料は原則として支払う必要がありますが、特定の経緯で袋地が生まれた場合、例外として無償になることがあります。具体的には、以下のようなケースで無償での通行が認められやすくなります。

【例外的に無償となる主なケース】
●もともと一つの土地を分割・売却した結果、袋地ができた
●複数人で共有していた土地を切り分けた結果、袋地ができた
●競売によって土地の一部が他人に渡り、残りが袋地になった
●昔から長期間にわたり、無償での通行がお互いに黙認されてきた

ただし、この無償で通行できる権利は、原則として「土地を分け合った直接の当事者」にしか適用されません。そのため、分割とは関係のない第三者が所有する囲繞地を通行しなければならない場合は、通常どおり通行料を支払う必要があります。

囲繞地通行権で知っておくべき注意点

囲繞地通行権について知っておくべき注意点があります
囲繞地通行権について知っておくべき注意点があります

囲繞地の売買や管理で、どこまで他人の利用を許容すべきかの点がトラブルの原因となることもあります。ここでは、実務上で特に問題になりやすい2つの注意点を解説します。

自動車の通行は制限される場合がある

囲繞地通行権が認められる場合でも、囲繞地での自動車の通行は原則として認められないとされています。なぜなら、周囲の土地への損害を最小限に抑える必要があるためです。

自動車が通るためには2.5から3m以上の幅が必要となり、囲繞地の所有者にとって敷地が削られる負担が大きくなります。

しかし、過去の裁判例では、一定の条件を満たす場合に例外として自動車の通行が認められることもあると示されています。判断の目安となるのは、主に次のような事情です。

【自動車の通行が認められやすい条件】
●周辺に駐車場がなく、車がないと生活が成り立たないような極端な事情がある
●過去に長期間、車で通行していた実績がある
●車の通行を認めても、囲繞地側の被害が比較的少ない

単に「車があったほうが便利」などの理由だけでは認められず、双方の事情を慎重に比較して判断されます。

掘削時には私道所有者承諾の必要がある

囲繞地通行権が設定されている土地でも、水道やガスなどのライフラインを引き込むためには、実務上は依然として承諾が必要になるケースが多い点に注意が必要です。

2023年4月の民法改正によって、設備設置権が新設されました(民法第213条の2)。これにより、事前の通知や損害を補償する償金の支払いなどの適切な手順を踏めば、隣地所有者の承諾がなくてもインフラ工事の掘削ができることが法律で定められました。

とはいえ、金融機関は、融資対象となる不動産の資産価値を担保するため、住宅ローンの融資条件として隣地所有者の承諾書提出を求めることが一般的です。また、水道やガス工事会社は、近隣からのクレームを避けるため、承諾書がなければ工事を行わないケースもあります。

つまり、法律上は承諾なしで掘削が認められるようになったとはいえ、現実には隣人の承諾書が得られないと、住宅ローンの利用や家の建築が進まない状況に陥りやすいといえます。

囲繞地の売却が難しいと言われる理由

囲繞地の売却が難しいとされる理由は?
囲繞地の売却が難しいとされる理由は?

囲繞地は、不動産市場では、一般的な土地と比べると買い手が見つかりにくい傾向にあります。ここでは、囲繞地の売却が難しいとされる具体的な理由を解説します。

他人による敷地内の通行を拒否できない

囲繞地を購入した新しい所有者は、自分の敷地を他人が通行することを拒否できません。

なぜなら、民法で定められた囲繞地通行権は、法律上当然に認められる権利であり、土地が売買されても新しい所有者にそのまま引き継がれるためです。つまり、買い手からすると、自分や家族以外の第三者が合法的に敷地内に入ってくる状況を受け入れなければなりません。

通行するのは隣人だけでなく、袋地に住んでいる家族やその友人、郵便局員や宅配会社など、不特定多数の第三者が日常的に敷地内を出入りすることになります。他人の通行を拒めない点は、買い手にとって購入を見送る大きな理由になりえます。

プライバシー侵害と防犯リスクの懸念がある

他人が敷地内を通行できる囲繞地は、プライバシーの侵害と防犯上のリスクが懸念されやすくなります。家族以外の第三者が日常的に敷地内を出入りすることで、犯罪者が紛れ込む隙を生むためです。

具体的には、次のような懸念事項が挙げられます。

  • リビングなどの窓の近くに通路がある場合、外からの視線が気になりやすい
  • 不審者が敷地内に入ってきても、袋地の家に用事がある人と見分けが付きにくい
  • 夜間の足音や、通行人に反応して点灯するセンサーライトなどが気になってしまう

通常の一戸建てであれば、敷地内に他人が一歩でも入れば不審者として認識できます。しかし、囲繞地では誰が不審者かの判断が難しくなります。このような心理的な負担や防犯上の不安が、売却が難しいと言われる理由です。

再建築が制限されることがある

囲繞地は公道に接しているため家を建てることは可能ですが、敷地を有効活用する場面で制限を受ける可能性があります。

なぜなら、袋地の住人が通る通路部分は、囲繞地の所有者であっても相手の通行する権利を妨害してはならない義務があるためです。

そのため、土地の利用にあたっては、次のような制約を受ける可能性があります。

  • 通路部分に建物を建てることはできないため、希望する間取りや建物の配置が制限される恐れがある
  • 通路部分に車を駐車したり、自転車置き場を作ったりできず敷地を有効活用できない
  • 袋地へ向かう水道管などが地下を通っている場合、建て替えの際に配管の移設費用がかかったり間取りが制限されたりする

このように、囲繞地の登記簿上の面積よりも実際に使える広さが目減りしてしまいます。固定資産税は敷地全体にかかるにも関わらず、建築や利用に制約が生じる点も、一般的な買い手から敬遠される理由のひとつです。

囲繞地を売却する5つのコツ

囲繞地を売却するためのコツを押さえておきましょう
囲繞地を売却するためのコツを押さえておきましょう

一般的な土地と比べると売れにくいと言われる囲繞地ですが、売り方を工夫することでスムーズに手放せる可能性があります。ここでは、囲繞地の特殊な権利関係を解決し、適正な価格で売却するためのコツを解説します。

袋地とセットで売却する

隣接する袋地の所有者と話し合い、2つの土地をセットにして同時に売却する方法です。囲繞地と袋地をひとつのまとまった土地として売り出すことで、次のようなメリットが期待できます。

  • 囲繞地通行権の複雑な権利関係が消滅する
  • 接道義務もクリアできるため、不動産としての価値が高まりやすい
  • 土地が広くなる分、分譲住宅の開発会社などが買い手になりやすく、単独で売るよりも高い価格がつく可能性がある

お互いに土地を手放したいと考えており、隣人との関係が良好な場合に有効な選択肢です。

隣接する袋地所有者に買い取りを打診する

囲繞地の売却先として、隣接する袋地の所有者に買い取ってもらう方法です。一般の市場では避けられがちな囲繞地ですが、袋地の所有者にとっては、以下のメリットをもたらす土地になり得ます。

  • 囲繞地の購入によって公道に接し、家の建て替えができるようになる
  • 再建築が可能になることで、袋地の資産価値が大きく上がる
  • 将来の売却や住宅ローンの利用がしやすくなる

袋地の所有者としては、囲繞地を購入することで自分の土地の価値を大きく高められるため、場合によっては相場より高い価格で買い取ってくれる可能性があります。当事者同士の条件さえ合えば、一般的な市場に出すことなく取引を終えることも可能です。

土地の一部を等価交換する

囲繞地を売却する手段として、隣接する袋地の所有者と土地の一部を交換する、等価交換があります。等価交換は、互いの土地の価値を計算し、同じ価値になるように土地の一部を交換し合う仕組みです。

具体的には、袋地の住人が通路として使っている囲繞地の部分を相手に譲り、代わりに袋地の一部を受け取ります。

等価交換をすることで、売却しやすくなる場合もあります
等価交換をすることで、売却しやすくなる場合もあります

等価交換によって、袋地側は、公道に接する土地(旗竿地など)に変わり、単独で家の建て替えができるようになります。

一方、囲繞地側は、他人が敷地を通る権利(囲繞地通行権)が消滅し、プライバシーが守られた一般的な土地として売却できるうえ、有効活用できる土地面積が広がります。等価交換によって、双方が抱える土地のデメリットを同時に解決できるのが大きな強みです。

ただし、正確な測量や登記の変更、税金に関する特例の適用など、複雑な手続きが求められます。そのため、実際に手続きをおこなう際は、不動産会社や税理士などの専門家のサポートを受けながら進めるのが安全です。

通行料を受け取れるメリットを主張する

袋地の所有者から通行料を受け取っている場合、その通行料を地代収益として評価してくれる投資家に向けて売却する方法があります。

マイホームを探している一般の購入者にとって、他人が敷地内を通ることはデメリットです。しかし、自分で住むわけではなく利益を目的とする不動産投資家にとっては、毎月の地代収入が利回りの向上として魅力になる可能性があるためです。特に、袋地がアパートなどの場合、長期にわたって安定した収益が見込めやすいでしょう。

投資家へ向けて売却活動をおこなう際は、通行料に関する資料や契約書などを準備し、安定した収益を客観的なデータとして示すことが大切です。

専門の不動産買取会社に依頼する

隣人との関係が悪化していて交渉が難しい場合や、なるべく早く手放したい場合は、専門に扱う不動産買取会社へ依頼するのも選択肢の一つです。

一般的な不動産仲介での売却は、市場で個人の買い手を探すため時間がかかりがちです。一方、専門の不動産会社への売却であれば、不動産会社自らが直接物件を買い取るため、次のような利点が挙げられます。

  • 現状のまま買い取ってくれる
  • 買い手を探す期間が省け、スピーディーに現金化できる
  • 売却後のクレームや責任(契約不適合責任など)を問われないケースが多い

ただし、不動産会社は、買い取ったあとに再販するビジネスモデルであるため、売却価格は一般的な市場価格の5割~7割程度になる傾向にあります。しかし、いつ売れるかわからない不安や、近隣トラブルのストレスからすぐに解放されたい場合は、検討すべき選択肢です。

まとめ

最後に、囲繞地で重要な3つのポイントを振り返ります。

囲繞地とは?

囲繞地とは、公道に接していない土地(袋地)を取り囲んでいる周囲の土地のことです。法律上、袋地の所有者が公道に出るための通行権が認められているため、囲繞地の所有者は原則として他人の通行を拒否できません。

囲繞地と袋地の違いは?

袋地は公道に接していないため、原則として建物の再建築ができない土地です。一方の囲繞地は建築が可能ですが、袋地の住人のための通路を提供し続けなければならない違いがあります。

囲繞地の売れないと言われる理由は?

見知らぬ他人が敷地を通行することによる、プライバシーや防犯上の不安が生じやすいことが、囲繞地が売れにくい大きな理由です。また、通路部分を自由に利用できず、建築上の制限を受けやすい点も買い手から敬遠される要因となります。

ただし、袋地とセットでの売却や袋地所有者への売却、買取専門の会社の活用など、売却方法を工夫することでスムーズな売却も十分に可能です。

囲繞地は、自分の土地でありながら他人の通行を拒否できない性質を持つ土地です。そのため、購入や将来の売却にあたっては、通行料の扱いやプライバシー・防犯面の懸念、そして建築上の制限など、事前に把握しておくべきルールや注意点があります。

しかし、隣接する袋地の所有者にとって囲繞地は、自身の土地の資産価値を高める可能性を秘めている土地です。また、等価交換や買取専門の会社の活用など、状況に合わせて売り方を工夫することで、不利な条件を解消してスムーズに手放すことは可能です。

囲繞地の購入や売却で不安を感じる場合は、複雑な権利関係の整理を得意とする専門の不動産会社などに相談し、最適な解決策を見つけてください。

吉満 博

執筆者

吉満 博

株式会社あつみ事務所 代表

宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナー・住宅ローンアドバイザー
これまでの建築設計・不動産売買仲介業務の実務経験や自社サイトでの集客実績をもとに、ライターとして不動産・金融ジャンルを中心に記事を執筆するほか、不動産会社や士業などの集客支援をおこなう。

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