借地権の売却相場は?価格の計算シミュレーションと地主交渉のポイントを解説
本記事では、借地権の売却相場や価格の計算シミュレーション、さらには地主との交渉をスムーズに進めるためのポイントを解説します。本記事を参考に、借地権がどのような性質を持ち、市場でどのように扱われるのか把握しておきましょう。
記事の目次
借地権とは?

借地権とは、建物の所有を目的にして、他人の土地を借りる権利です。通常、一戸建てやマンションを購入する際は、土地と建物の両方の所有権を取得しますが、借地権物件の場合は、建物は自分の所有物、土地は地主から借りる特殊な形態になります。
コスト面の特徴
所有権と比較した借地権の金銭的なメリット・デメリットを以下に整理しました。
| 借地権のメリット | 借地権のデメリット |
|---|---|
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・土地の購入費用がかからない
・土地にかかる固定資産税・都市計画税を払わなくてよい
・物件の購入価格が安い
|
・地代(賃料)がかかる
・契約更新料、承諾料、売却手数料がかかる
|
借地権付き物件の魅力は、初期費用を大幅に抑えられる点です。一般的には所有権付きの物件に比べて、6割〜8割程度の価格で手に入ります。また、土地の所有者はあくまで地主のため、土地にかかる固定資産税や都市計画税を負担する必要はありません。
一方で、土地は借りている状態のため毎月の地代が必要です。さらに、将来的なリフォームや転売時には地主への確認と承諾料が必要になるケースがほとんどになります。
借地権の種類
借地権には、契約時期や内容によりいくつかの種類があります。大きく分けて、更新すれば長期間住み続けられる普通借地権と、あらかじめ期限が決まっており、終了後は更地にして返却する定期借地権の2種類です。それぞれの特徴を以下にまとめました。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 旧法借地権 | 1992年以前の契約。借り主の権利が極めて強く、更新して半永久的に居住可能 |
| 普通借地権 | 現在の法律(新法)。契約期間は当初30年などで、更新が可能 |
| 定期借地権 | 原則、更新はなし。50年などあらかじめ期間が決まっており、終了後は更地にして地主に返却する |
現在流通している中古物件に多いのが旧法借地権です。建物が存続する限り更新が認められやすく、資産価値も維持されやすくなります。1992年以降に新設された普通借地権も、基本的には更新可能です。
一方、定期借地権には更新の概念がありません。契約満了時に建物を解体して更地で返す必要がありますが、分譲価格や地代の設定は安くなる傾向にあります。
売却や増改築には承諾が必要になる
借地権は自己の資産ですが、所有権のように自分のみで売却や活用の判断はできません。主に以下のケースで地主の承諾が必要になります。
- 第三者への売却(名義書換)
- 建物の建て替え・大規模な増改築
- 借地権設定の条件変更(用途変更など)
承諾を得る際、慣習的に支払われるのが承諾料です。例えば、売却時の名義書換料は借地権価格の10%程度、建て替え承諾料は更地価格の3〜5%程度が相場とされています。地主との関係が良好ならスムーズに進みますが、万が一承諾が得られない場合には、裁判所に許可を求める借地非訟手続きが必要になることも。将来のトラブルを回避するには、地主と良好な関係を築くことが重要です。
借地権の売却相場シミュレーション

借地権の価値は、その土地が更地の場合の評価額をベースに、国税庁が地域ごとに定めた借地権割合をかけて算出できます。借地権の売却価格を検討する際、不動産会社の査定を待つだけでなく、自分自身でおおよその目安を算出しましょう。
計算方法を知ると、地主との買取交渉や不動産会社への相談時に、提示された金額が妥当かどうかを判断できます。
自用地評価額(更地価格)の調べ方
借地権価格を算出するには、その土地を自分の所有地(自用地)とした場合の評価額を把握しましょう。指標になるのは、国税庁が毎年発表している「路線価」です。路線価とは、主要な道路に面した標準的な宅地1平方メートルあたりの評価額を指します。まずは、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」にアクセスし、該当する住所の地図を確認しましょう。
地図をみると、道路上に数字とアルファベットが記載されています。この数字が1平方メートルあたりの単価です。例えば「300C」では、「1平方メートル = 300 × 1,000円 = 30万円」となります。これに土地の面積をかけたものが、その土地の公的な更地評価額です。
ただし、路線価は実勢価格の8割程度を目安に設定されています。よりリアルな売却相場を知りたい場合は、『国土交通省の不動産情報ライブラリ』で近隣の取引事例を確認するか、路線価で出した数字を1.25で割り戻して、市場価格に近い自用地評価額を見積りましょう。
路線価図から借地権割合を特定する手順
更地の評価額がわかったら、借地権割合を確認しましょう。借地権割合は、数字の後ろにあるアルファベットで判別します。全国の路線価図には、AからGまでの記号が割り振られており、それぞれの割合は以下です。
| アルファベット | 割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
例えば、路線価図に「300C」と記載されていれば、路線価は40万円、借地権割合は「C」であるため上記の表から70%であることがわかります。
都心部や商業地ほど割合が高く、郊外の住宅地になるほど低い傾向です。国が公に認めている基準であるため、地主との交渉や相続税評価で強力な根拠になります。
計算式
これまでの情報を組み合わせて具体的な金額を計算しましょう。計算式は以下のとおりです。
- 借地権価格 = 更地価格 × 借地権割合 × 補正率
補正率とは、土地の形状や利用条件で増減する値を反映させるための係数です。例えば、土地が極端に細長い場合は、奥行価格補正がかかります。建物が老朽化していて建替えが必要などのマイナス要因も考慮される仕組みです。また、第三者売却の場合は、前述した地主への承諾料などの減価を補正し差し引きます。
【計算例】
更地価格 5,000万円、借地権割合が70%(C)の土地、補正率0.8の場合
「5,000万円 × 70% × 0.8 = 2,800万円」
第三者売却にともなう市場性の減価や承諾料を考慮して補正率を「0.8」と設定すると、上記の計算により2,800万円が実質的な売却相場の目安になります。複数の情報を組み合わせることで正確性の高い借地権価格を求められるでしょう。
借地権を売却する3つのケース

借地権の売却を検討すると、「いくらで売れるのか」気になるでしょう。借地権は、一般的な所有権の不動産とは異なり、土地を所有する地主の存在が価格に大きく影響します。そのため、誰に対して売却するのか、どのような手法をとるのかによって、手元に残る金額に数百万円単位の差が生じることも。
相場を正しく把握するためには、市場価格だけでなく、地主へ支払う承諾料や、借地権割合などの特有の指標を理解する必要があります。代表的な3つの売却ケースごとに、価格が決まる仕組みと目安を以下にまとめました。
地主に買い取ってもらうケース
地主に借地権を返還するケースは、借地人の心理的負担が少なく、トラブルも避けやすい方法です。この場合の売却価格は、一般的に、更地価格の20%〜70%程度が相場となります。地主から借地人に返還してほしいと売却を依頼される場合と、借地人から地主へ売却を依頼する場合、どちらから売却を依頼するかによって価格が異なります。
地主から借地人へ依頼があった場合の売却価格は、通常の更地価格の60%~70%が目安といわれています。
一方、借地人から地主へ売却する際、地主は貸している土地を買い取る法的な義務はないため、交渉で価格が決まる場合が多く、市場価格よりも低く設定される傾向にあるでしょう。
ただし、相場は低くなっても借地人側にメリットはあります。第三者へ売却する際に必要な譲渡承諾料を支払う必要がなく、建物が古い場合でも現状のまま引き取ってもらう交渉がしやすい点です。仲介手数料などの諸経費も抑えられるため、地主への売却を選択するケースも多いでしょう。
第三者へ譲渡するケース
地主以外の第三者に借地権を売却する場合の相場は以下の式で計算できます。
- 更地価格 × 借地権割合 ー 借地権特有の減価(マイナス査定)
国税庁が定める借地権割合は都市部で60%〜70%程度ですが、実際に第三者が購入する際は、所有権の物件に比べて銀行ローンが組みにくい場合が多く、将来の建替え時には地主の承諾が必要になるため制約が付きます。そのため、実勢価格は、借地権価格からさらに10%〜20%程度の減価がなされることが一般的です。
また、地主へ支払う譲渡承諾料も必要になります。譲渡承諾料は売却価格の10%程度が相場で、売主となる借地人の負担です。例えば、更地価格が5,000万円、借地権割合が70%(C)の土地を第三者に売る場合、計算上の借地権価格は3,500万円ですが、減価や承諾料を差し引くと、実質的な手残りは2,500万円〜3,000万円程度になるでしょう。第三者への譲渡は、買い手探しに時間がかかる点にも気を付ける必要があります。
地主と共同で売却するケース
借地権を売却する場合に、高値で売却できる可能性が高いのは、地主と協力して売却する方法です。借地人の持つ借地権と、地主の持つ底地をセットにして、一人の買い手に売却します。この方法が有利な理由は、買い手側に土地の所有権が移動するため、通常の不動産市場と同じ条件で取引されるためです。住宅ローンも組みやすいため、借地権特有の減価が発生しません。
例えば、借地権単体では2,500万円でしか売れなかった物件でも、地主と共同で5,000万円で売却できれば、借地権割合70%の場合、3,500万円で売却できるでしょう。地主からみると、価値が低いとされる底地単体で売るより、セットで売るほうが収益を得られるため、メリットがあります。交渉が必要になりますが、地主と良好な関係を築いているのなら、検討すべき選択肢になるでしょう。
借地権の売却に発生する主なコストと税金

借地権の売却で、売却価格と同じくらい重要なことは、手元にいくら残るかどうかです。借地権取引は、通常の不動産売買で発生する諸経費に加え、地主に対して支払う承諾料が発生します。また、古い建物が残っている場合の解体費用の分担や、利益が出た際にかかる税金の仕組みを正しく理解しなければ、売却後に思わぬ出費が発生し、想定以上に手取り額が少なかったと感じることも。
売却に関連する4つの主要なコストと相場について詳しく見ていきましょう。
地主へ支払う譲渡承諾料(名義書換料)の相場
借地権を第三者に譲渡する際には、地主への譲渡承諾料の支払いが生じます。借地人交代に対する謝礼金の性質を持ち、実務上は借地権価格の10%程度、あるいは更地価格の3%〜5%程度が相場です。
例えば、借地権の評価額が2,000万円なら、200万円程度が目安となります。この承諾料は法律で一律に決まっているわけではなく、あくまで慣習や地主との合意によって決まります。
もし地主が不当に高い金額を請求したり、譲渡自体を拒否したりした場合には、裁判所に借地権譲渡許可の申し立てが可能です。その際には、裁判所が鑑定結果に基づいて同程度の非訟事件の付随処分で、承諾料の支払いを命じることが一般的です。
スムーズな売却には、媒介契約を結ぶ前の段階で、概算の承諾料に対し地主から内諾を得ておくと理想的です。
建物を取り壊す際の更地化費用
借地権の売却では、古い建物(家屋)をどのように処理するかが大きな論点になります。地主に買い取ってもらう場合、地主が古い建物を活用しないケースでは、更地での返還が条件になりやすいでしょう。建物の解体費用は原則、借地人が負担するケースが大半です。
また、第三者に売却する場合も、買い手が新しい家を建てる前提なら、解体費用分を売却価格から差し引く形での取引になります。木造住宅の解体費用は坪単価4万〜6万円程度が目安ですが、アスベストの有無や重機が入れる道路状況によって費用が跳ね上がる可能性も。ただし、地主がそのまま建物を使いたい場合や、建物にまだ価値があり、買い手がそのまま住む場合は、解体費用を浮かせられるかもしれません。
売却活動に入る前に、建物の取り扱いを地主や不動産会社と明確にしましょう。
仲介手数料や印紙代など不動産取引の諸経費
借地権でも不動産取引のため、一般的な諸経費が発生します。まず大きな割合を占めるのは、仲介手数料です。この上限は宅地建物取引業法で決まっており、「売却価格 ×3% +6万円 + 消費税」と定められています。
次は売買契約書に貼付する印紙税で、取引金額に応じて数千円から数万円程度必要です。建物を売却する際には、所有権を移転するための登記費用も必要になります。借地権そのものは登記されていないケースも多いですが、建物の名義変更は必須です。
さらに、土地の境界が曖昧な場合には確定測量を求められる場合があり、数十万円単位の測量費が発生します。標準的な不動産売却のコストは、売却価格の5%〜8%程度を見込んでおく必要があるでしょう。
売却益が出た際には譲渡所得税がかかる
借地権を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、所得税と住民税が課せられます。計算式は以下のとおりです。
- 譲渡所得税=譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)
特に、借地権を売却した譲渡所得には、特有のポイントが2つあります。1つ目は、取得費の計算です。親から相続した古い借地権などで、当時の購入価格が不明な場合は、売却価格の5%を取得費で計算する概算取得費を適用します。概算取得費を適用すると、税額が高くなりやすいです。地主に支払った更新料なども取得費に加算できるため、過去の領収書を整理しましょう。
2つ目は、所有期間で税率が異なる点です。売却した年の1月1日時点で所有期間が、5年を超えていると長期譲渡所得で税率が20.315%、5年以下なら短期譲渡所得の場合は39.63%になるため、税率に大きな差が出ます。また、自分が住んでいた家(居住用財産)を売る場合には、3,000万円の特別控除が適用できる可能性があり、税金がゼロになるかもしれません。
税金の制度は複雑であるため、税理士などへ事前の確認をおすすめします。
借地権を売却する時の手順

借地権の売却は、地主との合意形成が必要となるため、通常の不動産売却と比較してステップが多く、慎重な段取りが求められます。
地主への相談なしに勝手に話を進めてしまうと、のちに大きなトラブルに発展し、最悪の場合は売却自体が差し止められることも。最悪な結果を防ぐためにも手続きの全容をあらかじめ把握すれば、余計な承諾料の発生を抑え、有利な条件で買い手探しができるでしょう。
借地権を現金化するルートは、大きく分けて地主か第三者の2つです。それぞれの売却ルートを、流れから具体的な内容までみていきましょう。
地主に買い取ってもらう場合の手順
地主への売却(権利の返還)は、以下の4ステップで進行します。
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STEP 1地主への意向打診売却の意思を伝え、買取の可否を確認する
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STEP 2条件交渉と査定買取価格や建物の解体費用の負担を協議する
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STEP 3譲渡契約の締結合意内容に基づき、借地権譲渡契約を結ぶ
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STEP 4決済・建物の引き渡し代金の受け取りと同時に、建物の名義変更や鍵を返却する
地主に借地権を買い取ってもらう手続きは、関係者が借地人と地主の二者に限定されるため、比較的シンプルに進みます。
まずは、地主への意向確認からはじめます。地主が売却に前向きなら、次に価格の査定と交渉に入ります。借地主から地主に売却を申し出た場合は、更地価格の20%〜50%が相場になる点を念頭に置き、建物の解体費用の負担、現状のまま引き渡すかなどの細かな条件を詰めましょう。
条件が合意に至れば、借地権譲渡契約の締結です。この際、未払いの地代がないか、境界確定が必要かなどの最終確認をおこないます。最後に、借地権の移転と引き換えに売買代金を受け取れば完了です。地主が買い取る場合は、第三者への譲渡で必要な譲渡承諾料が発生しないため、提示価格が多少低くても、実質的な手残りが計算しやすくなります。
第三者に売却する場合の手順
一般の買い手や不動産会社に売却する場合は、以下の5ステップが必要です。
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STEP 1地主への事前相談と内諾第三者への譲渡に対して地主の理解をえる
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STEP 2売却活動と買い手探し不動産会社を通じて市場に出し、購入希望者を募る
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STEP 3譲渡承諾条件の確定地主と譲渡承諾料の金額を合意する
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STEP 4売買契約の締結買主と契約を結び、地主から正式な譲渡承諾書を取得する
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STEP 5決済・名義変更代金決済と同時に地主へ承諾料を支払い、登記を移転する
第三者に借地権を売却する場合は、地主の承諾取得と買い手探しを並行しておこなわなければなりません。
まず、地主からの譲渡承諾の内諾を得ましょう。地主の許可がない状態で買い手を探すと、あとで話が頓挫するリスクがあります。この際、不動産会社に仲介を依頼し、地主への説明や承諾料の交渉を代行してもらうことが一般的です。承諾の目処が立ったら、販売活動を開始し、購入希望者を探します。
買い手が見つかったら、単なる売買条件だけでなく、新しい借地人と地主との間で結ばれる今後の地代や更新料などの条件も、地主の合意を取り付ける必要があるでしょう。
重要なことは、譲渡承諾書の取得で、これがないと買主は安心して代金を支払えません。特に買主がローンを利用する場合、地主から銀行への抵当権設定承諾書への署名捺印も必須となります。すべての書類が揃ったら、決済・引き渡しです。
売却代金のなかから地主へ承諾料を支払い、建物の移転登記をおこなうと一連の手続きが完了します。三者で調整する必要があるため、地主に買い取ってもらう場合よりも期間と労力を要するでしょう。
借地権売却をスムーズに進める6つのポイント

借地権の売却は、単なる物件の売り買いではなく、地主との権利の調整が必要な取引です。通常の不動産取引と同じ感覚で進めると、地主との対立を招いたり、買い手が見つかっても承諾が得られず破談になったりするリスクも。売却を成功させるには、地主側の心理をくみ取りつつ、法的な権利と市場の慣習をバランスよく活用しましょう。
また、買い手に対して買いやすさを整える工夫も欠かせません。借地権特有のハードルを乗り越え、より好条件でスムーズに現金化を実現するための6つのポイントを解説します。
地主との信頼関係を良好にする
借地権売却の成否は、地主との人間関係で決まるといっても過言ではありません。地主の協力が得られれば、第三者への譲渡承諾料を抑えられたり、地主による高額な直接買取が期待できたりと、査定額に直結するメリットが生まれます。
一方で、過去に地代の遅延があったり、無断で増改築をおこなうなどして関係が悪化していると、売却を妨害されたり、法外な承諾料を要求されたりすることも。売却を決断する前から、日頃から地主に対して誠実に対応したうえで、売却の相談時にも丁寧に説明する姿勢が必要になります。
更地での返還要求には交渉する
売却の相談をした場合、地主から「建物を取り壊して更地で返してほしい」と強く求められる場合があるでしょう。しかし、借地権が旧法や普通借地権なら、借地人には更新の権利があり、無償で更地返還に応じる法的な義務は基本的にありません。
地主が譲らない場合は、建物付きで第三者に売りたい意思をあらためて明確に伝えるか、解体費用を売却価格から差し引く形での妥当な買取価格を再提示しましょう。更地にするには多額の費用がかかるため、お互いに納得できる形で売却できるように交渉する姿勢が重要です。
契約更新のタイミングを逆手に取る
更新料の支払いのタイミングは、売却のチャンスでもあります。契約更新の直前は、地主に対して、新しい借地人とあらためて長期契約を結べるメリットを提示しやすいためです。
また、更新時期に合わせて、更新せずに地主に買い取ってもらうか、更新料を支払ってから価値を高めて第三者に売るかの選択が明確になります。更新料を支払った直後の借地権は、残存期間が長いため買い手がローンを組みやすく、市場価値が高まりやすいです。更新の前から準備を始め、有利なタイミングを見計らうようにしましょう。
買主がローンを組めるよう抵当権設定の事前承諾を得ておく
借地権が売れにくい理由は、買主が住宅ローンを組む際、地主の承諾が必要となる点です。銀行側が抵当権を設定するためですが、多くの地主は自分の土地に抵当権が設定されることを嫌がります。しかし、この承諾がなければ、買主は現金で購入するしかなくなるので、ターゲットが極端に絞られてしまうでしょう。
そこで、売却活動を始める前に、不動産会社を通じて地主へ買主がローンを利用する場合、抵当権設定に協力できるかどうかを確認し、承諾を得るとスムーズです。承諾が得られている物件なら、普通の所有権物件と同様の検討層にアピールできるため、成約率が格段に向上します。
毎月の地代や更新料が、相場より高すぎないか再確認する
買い手は購入後のランニングコストを厳格にチェックします。設定されている地代や将来の更新料が近隣相場より著しく高い場合、どれだけ物件自体が魅力的でも敬遠される可能性が高いでしょう。
現在の地代が不当に高いと感じるなら、売却前に地主と地代引き下げの交渉をおこなうか、少なくとも周辺相場と同等だと証明する資料を準備しましょう。また、更新料の算出根拠が契約書に明記されていない場合は、地主と協議して基準を事前に明確にすると、買い手の不安を払拭できるため、スムーズな売却につながります。
借地権に強い専門の不動産会社をパートナーに選ぶ
借地権の取引は、法律、税務、そして地主との繊細な交渉術が求められる特殊な分野です。一般的な不動産会社では面倒な物件の扱いを受け、安易な値引きを提案されるケースも少なくありません。
パートナーには、借地権の取引実績が豊富で、地主との交渉ノウハウを持つ不動産会社を選びましょう。専門的な知識を持つ不動産会社なら、地主への承諾料交渉を代行してくれるだけでなく、借地権特有の価値を理解した投資家や顧客を抱えているため、より好条件でのマッチングが期待できます。
複数の会社を比較し、地主への説明能力が高いと感じる担当者に依頼できれば、借地権売却をスムーズに進められるようになるでしょう。
借地権の売却に関するよくある質問
借地権の売却についてよくある質問をまとめました。
地主が売却を承諾してくれない場合、売却は不可能?
地主が売却を承諾してくれない場合でも、借地非訟手続きがあります。借地非訟とは地主が正当な理由なく譲渡を拒む場合、裁判所に申し立てて地主の承諾に代わる許可を得る手続きです。この際、借地権価格の10%程度の承諾料を地主に支払いますが、法的に第三者への売却が可能になります。
ただし、地主との関係が悪化するリスクもあるため、地主と十分に話し合ったうえで選ぶようにしましょう。
建物が老朽化して住めない状態でも借地権の価値はある?
建物が老朽化している状態でも価値があり、売却も可能です。立地がよければ解体して更地で引き渡すことを条件に高値で取引されるかもしれません。借地権の価値は建物そのものではなく、その土地を利用して建物を所有できる権利にあります。
親から相続した借地権は名義変更せずにそのまま売れる?
亡くなった方の名義のままでは売買契約が結べません。そのため、相続人への名義変更をおこなってから売却しましょう。相続で借地権を引き継ぐ際、地主への名義書換料の支払いは法的に不要ですが、第三者に売る段階では誰が現在の権利者かを明確にしなければなりません。まずは遺産分割協議をおこない、建物の名義を整理しましょう。
住宅ローンが残っている借地権は売却できる?
住宅ローンが残っていても借地権の売却は可能です。ただし、引き渡し時にローンを完済し、抵当権を抹消しなければなりません。通常の不動産売却と同様、売却代金で住宅ローンを一括返済する流れになります。
注意点は、借地権は所有権に比べて査定額が低くなりやすい点です。そのため、売却価格がローン残高を下回るオーバーローンにならないかどうか、事前にシミュレーションをおこないましょう。
まとめ
借地権は土地代を抑えて、希望のエリアに家を建てたい方に合理的な仕組みです。一方で、将来の売却や建て替え時には地主との交渉が必要になるため、法律の知識や地主との良好な関係が重要となる不動産でもあります。
借地権の扱いで迷う場合は、独断で進めず、借地権に精通した不動産会社や専門家に相談しましょう。
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執筆者
井上 紗英
宅地建物取引士、2級フィナンシャル・プランニング技能士
大学卒業後、地方銀行へ入行し、個人・法人向けの融資事務を担当。正確さが求められる業務で経験を積む一方、よりお客様の人生に寄り添い、幅広い金融商品を学びながらコミュニケーション力も高めたいと考え転職。カスタマーサクセスとして、煩雑なお手続きのご案内やお客様対応を通じて、不安に寄り添いながら資産形成を支える。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ







