土地の売却相場の調べ方は?注意点を含めて詳しく解説

本記事では、土地売却時の相場の調べ方を、公的機関が発表する指標と、不動産会社の査定を利用する方法に分けて解説します。注意点を含めて解説するので、土地の売却時に参考にしてください。
記事の目次
公的機関を利用した土地の売却相場の調べ方

国土交通省などの公的機関が発表するデータを利用すると、客観的かつ広範囲の地価動向を把握できます。公的機関が発表している土地売却において参考になる指標は、以下のとおりです。
- 実勢価格
- 公示地価
- 基準地価
- 路線価
- 固定資産税評価額
実勢価格
実勢価格は、土地が売買された実際の価格のことです。公的機関が発表している指標のなかでも、相場を知るうえで直接的な指標になるため、土地の売却相場を調べる際にも参考にしやすいでしょう。
国土交通省の不動産情報ライブラリ(旧:土地総合情報システム)で、実勢価格の情報が提供されています。不動産情報ライブラリでは、都道府県・市区町村・取引時期・面積・土地の用途などの条件を指定して過去の取引価格を検索し、坪単価や総額を確認が可能です。
近隣の類似する複数の事例を比較すれば、実勢価格から自身の土地の相場を把握できるでしょう。ただし、取引件数の少ない地域や、古い事例しか載っていない地域では、現在の正確な相場を把握することは難しいかもしれません。
公示地価
公示地価は、国土交通省が毎年1月1日時点の標準地点を不動産鑑定士が評価し、3月下旬に発表する1平方メートルあたりの正常取引価格の目安です。公共事業や民間取引において広く参照されている指標になります。
実勢価格と同様に、国土交通省の不動産情報ライブラリから、該当する土地の評価額を確認できます。実際の売買価格とは乖離するケースもありますが、他の指標とあわせて検討することで、相場の理解につながるでしょう。
基準地価
基準地価は、都道府県が主体となって調査し、知事が毎年7月1日時点で評価する土地の価格です。公示地価とは補完関係にあり、公示地価が都市部中心であるのに対して、基準地価は地方部を含むため、地域全体の地価動向をより幅広く把握できるでしょう。
国土交通省の不動産情報ライブラリや各都道府県のホームページから基準地価を調べられます。公示地価とあわせて把握しておきたい指標です。
路線価
路線価は、相続税・贈与税の評価に用いられる基準で、国税庁が毎年7月1日時点での路線ごとの1平方メートルあたりの価格を公表します。路線価は相続税評価が主な目的になりますが、土地の価格水準を把握する一つの目安になるでしょう。
国税庁が公開する路線価図・評価倍率表で、該当地の路線価図や路線価一覧が確認可能です。ただし、路線価は実勢価格・公示地価と比較すると低めに設定されています。路線価は公示地価の8割程度になっているため、「路線価 ÷ 0.8」で計算すると、より正確な目安を算出できるでしょう。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、各自治体が固定資産税のために設定する評価額で、3年ごとに見直されます。路線価と同様に税負担の基準であるため、売却相場の直接的な指標にはなりません。しかし、公的機関が公開している土地の評価額の指標であるため、他の指標とあわせて把握しておきましょう。
固定資産税評価額は、所有者向けに毎年送付される固定資産税納税通知書に記載されています。市区町村の役所で固定資産課税台帳の閲覧・証明書の取得も可能です。固定資産税評価額は公示地価の7割程度であるため、路線価と同様に「固定資産税評価額 ÷ 0.7」で割り戻せば、目安を求められるでしょう。
不動産会社の査定を利用した土地の売却相場の調べ方

不動産会社に依頼する査定は、売り出し価格設定や価格交渉に直結する直接的な相場の目安です。公的機関の信頼性の高い情報を調べてから、不動産会社に査定を依頼すれば、査定が正確であるかを判断しやすいでしょう。不動産会社に依頼する査定方法は3つあります。それぞれの特徴を理解して、査定を利用しましょう。
簡易査定
簡易査定は、面積や利用状況などの物件の基本情報をインターネット上で入力し、過去の取引事例や統計情報をもとに算出する査定方法です。インターネット上で手軽に相場を確認できるため、売却価格の目安を気軽に知りたい場合に役立ちます。ただし、現地の詳しい状況が反映されないため、実際の売却価格とは異なるかもしれません。
一括査定
一括査定は、インターネット上で複数の不動産会社にまとめて査定依頼できる仕組みです。一度の入力で複数社から査定結果を集められるため、相場を把握するうえで最適な査定方法になります。相場を大きく逸脱した査定結果を出す不動産会社では、売買が成立しにくいため、不動産会社選びにも役立つでしょう。簡易査定を利用してから一括査定をおこなうことで、不動産会社全体の査定価格の目安がわかるため、相場を把握しやすくなります。
不動産情報サイト アットホーム「不動産一括査定依頼サービス」でも一括査定ができます。全国2,411社(2025年7月時点)の不動産会社が参加しており、お住まいの地域の不動産会社にも査定を依頼できるでしょう。
訪問査定
訪問査定は、不動産会社の担当者が現地を訪れて、物件や周辺環境、建物の状態などを直接確認し、詳細な査定をおこなう方法です。簡易査定ではわからない要素を反映して査定価格を算出するため、より正確な売却価格を把握できるでしょう。
ただし、査定日時の調整や立ち合いが必要になるため、査定結果を得るために時間と手間がかかります。しかし、大まかな相場を把握しており、売却を具体的に計画している場合は、訪問査定により正確な売却価格を知ることが望ましいです。
土地の売却相場を調べる際の注意点

売却したい土地の相場を調べる際の注意点を5つまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
調べた相場は目安であることを理解する
売却したい土地の相場を調べた際に算出された価格は、実際の売却価格とは異なる可能性があります。例えば、実勢価格を調べた場合、土地の面積と形状には差があるため、評価額に差が生じることも。
また、周辺の地域で開発がおこなわれた場合、外部要因が与える影響も大きく、短期間で相場が大きく変化することもあります。調べた相場はあくまで目安であり、必ずしも売却価格が確約されるものではないことを理解しておきましょう。
最新のデータを活用する
土地価格は常に変化しているため、最新のデータを利用することが重要です。不動産会社が提示する査定価格は、3カ月以内の売買成立を想定した金額になります。それ以上の期間が過ぎれば、査定結果の信憑性は薄れます。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」、国税庁が公開する「路線価図・評価倍率表」、固定資産税納税通知書など、公的指標は最新情報であるかを確認しましょう。
複数の情報源を組み合わせる
土地の相場を把握するには、複数の情報源を組み合わせることが重要です。多くの公的指標を調べることで、土地価格の相場に関するデータが複数集まります。
不動産会社に価格査定を依頼する場合は、最初から一つの不動産会社に絞ることは避けましょう。1社の査定結果では、相場に沿ったものであると判断することが難しいからです。そのため一括査定などを利用して、複数の不動産会社の査定価格から相場を判断しましょう。複数の情報を組み合わせることで、土地の売却相場を高い精度で把握できます。
売り出し価格と成約価格は異なる
売主や不動産会社が設定する売り出し価格と、実際に取引が成立する成約価格は異なる場合があります。土地の購入希望者から売り出している土地に対して値下げ交渉があった場合、その土地の売れ行きが芳しくない場合は交渉に応じるケースも。よって、値下げ交渉を受け入れれば、成約価格は売り出し価格よりも安くなるでしょう。
ただし、不動産会社は土地の売却戦略として売り出し価格を実勢価格よりも高く設定することがあります。売り出し価格が相場よりも高いケースでは、売れなかった場合に値下げをおこなうことで成約価格は実勢価格に近付くと考えられます。
手元に残る金額は諸費用・税金で変動する
土地の売却相場を把握して目論見どおりに売買が成立したと仮定しても、売却価格の全額が手元に残るわけではありません。実際に手元に残る金額は、諸費用・税金を差し引いた金額です。そのため、売買が成立したあとに手元に残る金額を考えるなら、売却にかかる諸費用・税金を把握する必要があります。
土地の売却時に差し引かれる費用・税金は以下のとおりです。
- 仲介手数料
- 測量費
- 解体費用
- 登記費用
- 印紙税
- 譲渡所得税・住民税
仲介手数料
仲介手数料は、土地の売却が成立した際に、不動産会社に対して支払う報酬のことです。土地の価格査定は基本的に無料ですが、買主を募集するなどの仲介業務には手数料がかかります。仲介手数料の上限は「取引額 ×3% +6万円」と定められています。
測量費
測量費用とは、土地の形状や面積を正確に把握するために、土地家屋調査士に依頼する作業費用です。相場は土地面積や周辺環境によって変動します。
解体費用
建物のある土地を更地にして売却する場合、建物の解体費用が発生します。解体費用は建物によって異なり、構造や現場条件によって上下する点に注意が必要です。
登記費用
土地の売却では、抵当権抹消登記が必要です。登記には登録免許税がかかり、登記を依頼する場合は司法書士に対する報酬も発生します。
印紙税
土地売買契約書に貼付する印紙税は、契約金額に応じて国税庁から所定の金額が定められています。国税庁租税特別措置法により軽減措置が適用されると、本則税率よりも印紙税の金額が安くなります。
譲渡所得税・住民税
譲渡所得税・住民税は、土地の売却による譲渡所得に対して課税される税金です。譲渡所得は売却価格から購入代金などの取得費や、仲介手数料、測量費用、解体費用などの譲渡費用を差し引いて算出します。
土地の所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得となります。長期譲渡所得の場合は、所得税15%、住民税5%の合計20%(2037年までは復興特別所得含む20.315%)の税金が課されます。
まとめ
売却したい土地の相場を把握するには、公的機関の指標・不動産会社の査定結果など、複数のデータを参照して多角的に判断することが重要です。また、土地価格は常に変動していることから、最新の情報でなければ価格が乖離してしまう可能性があります。
そのため、一つの情報に依存せず、常に最新のデータを取得すれば、現時点の土地の売却相場を高い精度で把握できるようになります。
土地の売却相場を把握し、不動産会社などの専門家と相談したうえで、売り出し価格の決定など、具体的な売却戦略を立てるようにしましょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ