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住宅ローンを定年後に払えない時の3つの対処方法を紹介

住宅ローンを定年後に払えない状態を避けるには、対処と対策を知ることが重要です
住宅ローンを払えなくなる理由はさまざまあります。そのなかでも退職して収入が減少する定年後は、住宅ローンを払えなくなる危険性が高いため注意が必要です。住宅ローンを定年後に払えなくなると、これまで住んできた住宅を失い、老後の生活が苦しくなる可能性も。対処できる段階で早めに対処し、払えない状態にならないために前もって対策することが重要です。

本記事では、定年後に住宅ローンが払えない時の対処方法と、払えない状態にならないための対策方法を紹介します。

住宅ローンを定年後に払えなくなる人の特徴

定年後に住宅ローンを払えなくなる人は老後を明確に想定していない場合が多いです

住宅ローンを定年後に払えなくなる人の特徴を3つ紹介します。

  • 退職で収入が大きく減少している
  • 老後の生活費を明確に想定していない
  • 住宅の築年数が古く、設備が老朽化している

それぞれ詳しく見ていきましょう。

定年退職で収入が大きく減少している

定年退職で再就職しない場合は、これまでの労働収入がなくなり、主な収入が年金となるため収入が大きく減少します。定年前の収入であれば支払えた住宅ローンも定年後には支払えなくなる可能性があります。

特に退職金で一括返済できないケースでは、定年後の住宅ローンの返済は大きな負担です。定年後も住宅ローンを返済する予定で返済計画を立てた時、定年で収入が大きく減少することを考慮しなければ払えなくなる危険性が高くなります。

老後の生活費を明確に想定していない

定年後も住宅ローンを返済する時、老後にかかる生活費を明確に想定していないと、想定外の出費に悩まされて返済が滞る可能性があります。総務省統計局は『家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年)結果の概要』で65歳以上の夫婦のみの世帯と単身世帯の生活費の内訳の平均データを公開しています。

消費支出 夫婦のみの世帯 単身世帯
食費 6万7,776円 3万7,485円
住居費 1万5,578円 1万2,746円
光熱・水道費 2万2,611円 1万4,704円
家具・家事用品 1万371円 5,956円
被服および履物 5,003円 3,150円
医療費 1万5,681円 8,128円
交通・通信費 2万8,878円 1万4,625円
教育費 3円 0円
教育・娯楽費 2万1,365円 1万4,473円
その他の消費支出 4万9,430円 3万1,872円
合計 23万6,696円 14万3,139円

平均支出は夫婦のみの世帯で23万6,696円、単身世帯で14万3,139円となっており、そのなかでも住宅ローンの返済を考えている方が注目したい消費支出は「住居費」です。二人以上の世帯・単身世帯ともに1万円程度となっており、多くの方がすでに住宅ローンを完済している状態にあることがわかります。

そのため、定年後も住宅ローンの返済をしていく場合は、平均データよりも住居費を大きく見積もって生活費を考える必要があります。また、老後の生活では健康リスクが高くなるため、月によって医療費が大きくかさむ可能性も考慮しましょう。住居費・医療費において余裕をもった生活費を想定していなければ、老後の住宅ローンの支払いが滞る場合があります。

住宅の築年数が古く設備が老朽化している

定年後も長期的に住宅ローンを返済するにあたって考慮したいリスクは、住宅設備の老朽化による修繕の必要性です。築年数の古い住宅では、設備が老朽化するため、住宅ローンの支払いとは別に修繕費がかかる場合も。住宅ローンの支払いは問題がない場合でも、住宅に関わる思いがけない出費が発生する可能性もあるため、定年後の住宅ローンの支払いはさまざまな可能性を考慮して、余裕をもった返済が求められます。

住宅ローンを定年後に払えない場合に起こること

定年後の住宅ローンが払えない場合に起こることを順序立てて解説します

定年後に住宅ローンが払えない状態になると、以下のような順番で問題が発生します。

  • STEP 1返済が滞ると督促状が届く
  • STEP 2分割払いの権利を失い一括払いが求められる
  • STEP 3競売にかけられ強制退去を命じられる

それぞれ詳しく解説します。

返済が滞ると督促状が届く

住宅ローンを支払えないと、一定期間が過ぎたあとに督促状が届きます。そのため支払えない状態になる前に金融機関に相談することが望ましいでしょう。
一方で返済が滞っている状態で金融機関に事情の説明をしていない場合は、返済や事情の説明が要求されます。

返済が滞っている状態が長引くほど、信用情報機関に返済の遅延が登録される可能性も高くなるため、借り換えなどの対処方法も取れなくなり状況が悪化していきます。

分割払いの権利を失い一括払いが求められる

住宅ローンの滞納を続けていると金融機関は「期限利益の喪失」に基づき、ローンの契約者は住宅ローンを分割払いする権利を失い、ローン残高の一括払いを迫られることになります。

滞納している状態では一括払いはできないため、団体信用生命保険(団信)に加入し保証会社と契約している場合は、保証会社による代位弁済がおこなわれる仕組みです。一方で、連帯保証人がいる場合は、主債務者が返済不可能な状態に陥ったことを理由に連帯保証人に返済が求められます。

競売にかけられ強制退去を命じられる

保証会社は代位弁済後に、住宅の競売を裁判所に申し立てます。競売の入札が開始し、落札者が決定すると裁判所は現在の居住者に対して強制退去を命じられます。この状態まで進んでしまうと、ローンの契約者は住宅を手放さなくてはなりません。

督促状が届く前の対処が重要であり、間違っても強制退去を命じられるまでなにもしない状態にならないようにしましょう。ローンの支払いが厳しい場合には早めに金融機関に相談するなど行動を起こすことが重要です。

定年後に住宅ローンが払えない状態にならないための対処方法

定年後に滞納しないための対処方法を紹介します

住宅ローンを定年後に払えない状態にならないための対処方法を3つ紹介します。

  • 再就職や保険の解約で返済資金を確保する
  • 親子リレーローンを含めた借り換えを検討する
  • リースバックなどで住宅を売却する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

再就職や保険の解約で返済資金を確保する

まずは、現在の返済計画で住宅ローンを返済する方法を考えていきましょう。返済できない状況を避けるためには、住宅ローンの返済資金の確保が重要です。年金や貯金だけでは返済資金を確保できない場合は、再就職や再雇用などにより、毎月の収入を増やすことで住宅ローンの返済をできるようにします。

その他にも、現在契約している貯蓄型保険の解約や、株式などの資産の売却など、貯金以外の資産がある場合は解約や売却によって返済資金を確保できます。住宅ローンの返済を含めた老後の生活を安定させるためにできることから始めていきましょう。

親子リレーローンを含めた借り換えを検討する

定年後まで長く住宅ローンの返済を続けている場合は、借り換えをおこなえば返済中のローンよりも安い金利で返済できる場合があります。安い金利の住宅ローンに借り換えられれば、返済の負担を軽減できるでしょう。

また、ご自身での返済が難しい状態にあり、子どもに住宅を残したい場合は、親子リレーローンへの借り換えも検討しましょう。親子リレーローンとは、親と子どもの2世代に渡って返済する住宅ローンであり、親が返済不可能な状態になった場合は、連帯債務者に指定した子どもがバトンタッチして返済を続けることになります。

現在の住宅ローンでは返済が難しい場合は、金利や返済条件を見直すために借り換えの検討がおすすめです。

リースバックなどで住宅を売却する

さまざまな手を尽くしても住宅ローンの返済が不可能であった場合は、住宅を売却して得た資金を住宅ローンの返済に充てることになります。住宅の時価が住宅ローンの残高を上回っている状態を「アンダーローン」と呼び、アンダーローンの場合は住宅を売却することで住宅ローンを完済可能です。

しかし、住宅を売却すれば住居を失うことになるため、売却しても現在の住宅に住み続けたい場合はリースバックが選択肢になるでしょう。リースバックは住宅を売却したと同時に住居の貸し付けを受けることが可能であるため、引越しや新たな住居を見つけることなく、現在の家に住み続けられます。

定年後に住宅ローンが払えなくなることを防ぐ方法

まだ定年前の方や住宅ローンを組んでいない方にできる対策方法があります

定年後に住宅ローンが払えなくなることを防ぐ対策を3つ紹介します。

  • 定年前に返済する計画を立てる
  • 定年後の返済資金を確保する
  • 資金に余裕がある時に繰り上げ返済をおこなう

それぞれ詳しく解説します。

定年前に返済する計画を立てる

定年後の返済は収入が大きく減少する可能性があるため、最初から定年前に返済する前提で計画を立てるほうが安定して住宅ローンを返済できるでしょう。定年前であっても無理のない返済を心がける必要はあります。労働による安定した収入がある状態で返済を定年後にあと回しにするのではなく、定年前に完済できるよう、返済を進めていきます。

定年後の返済資金を確保する

定年前に住宅ローンの完済が難しい場合は、定年後に返済資金をどのように確保するべきか考えておきましょう。定年退職後も再就職や再雇用で働き続けて収入を確保することも選択肢のひとつ。定年後の返済の不安を解消するために、医療保険や貯蓄型保険に加入による、老後のリスク対策は返済を滞らせない方法です。

資金に余裕がある時に繰り上げ返済をおこなう

定年前に少しでも定年後の住宅ローンの負担を減らすなら、資金に余裕がある時の繰り上げ返済が有効です。繰り上げ返済には、「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。返済期間短縮型は、返済期間を短縮して定年後に返済する期間を短くする効果が期待できるでしょう。返済額軽減型は、繰り上げ返済後の毎月の返済額を減少させるため、積極的におこなうことで定年後の返済の負担が軽くなります。

住宅ローンを定年後に払う場合のシミュレーション

住宅ローン定年後に払う場合のシミュレーションを見てみましょう

住宅ローンを定年後に払う場合の具体的なシミュレーションをおこなっていきます。35歳から住宅ローンを組むと仮定し、返済期間35年で完済時年齢は70歳になるパターンを考えます。65歳を定年とした時、定年後も5年間返済する必要がある想定です。

  • 返済額:5,000万円
  • 頭金:1,000万円
  • 返済期間:35年
  • 固定金利:1.5%
  • 返済方法:元利均等返済

参考:住信SBIネット銀行 【フラット35】保証型※借入割合80%以下

定年後の返済に必要な情報を以下にまとめました。

内容 金額
毎月の返済額 12万2,473円
年間の返済額 146万9,676円
定年後に必要な返済額(5年間) 734万8,380円

毎月の返済額は12万2,473円となり、定年後の5年間に必要な返済額は734万8,380円となりました。総務省統計局の調査結果の住居費の平均と10万円以上の乖離があることから、定年後の生活が厳しくなりやすい状態にあるといえるでしょう。

そのため定年前から繰り上げ返済をして、返済の負担を少しでも和らげることも検討したほうがよいでしょう。上記のシミュレーションの条件を利用して、50歳の時点で繰り上げ返済した時の返済期間短縮型と返済額軽減型の効果を以下にまとめました。

繰り上げ返済の額 短縮される期間 軽減された後の返済額
100万円 8カ月 11万7,631円
300万円 2年6カ月 10万7,945 円
500万円 4年3カ月 9万8,260 円
800万円 6年11カ月 8万3,731円
1,000万円 8年5カ月 7万4,046円

まとまった資金で繰り上げ返済をおこなうことで、定年後の住宅ローンの返済期間の短縮や返済額の軽減が期待できることがわかります。返済期間短縮型では、500万円の繰り上げ返済で定年後の返済を7カ月まで短縮可能です。繰り上げ返済すれば返済額によっては定年前に返済できます。

まとめ

定年後に住宅ローンを払うことが難しい状況に陥った場合は、金融機関から督促状が送られる前の早めの対応が重要です。前もって対応できれば、対処の選択肢も広がるため、最終的手段である住宅の売却を選ばずに済む可能性が高くなります。定年後も住宅ローンを返済する予定がある方や、定年後も返済する住宅ローンを組むことを検討している場合は、定年後の返済計画を練ったうえで、繰り上げ返済などもおこない、定年後の返済の負担をできる限り少なくするようにしましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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