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住宅ローンは70歳まで組んでも大丈夫?起こりうるリスクと対処法とは

70歳まで続く住宅ローンを借り入れるとどのようになるのでしょうか
40代以降に住宅ローンを借りると、完済が70歳までになる場合もあります。住宅ローン返済は定年までにと考えている方にとっては、不安を感じる場合もあると思います。

本記事では、70歳まで返済が続く住宅ローンは滞りなく支払い続けられるのか、70歳までの住宅ローンを組んだ時のメリットやデメリット、定年退職年齢を超えても返済が続く時の注意点や、返済のコツをわかりやすく解説します。

70歳まで返済が続く住宅ローンは長い?

返済が70歳まで続く住宅ローン契約の期間は長いのでしょうか

会社に勤めている多くの人は、65歳を期限に退職になります。65歳以降は、自分の貯蓄や年金が収入の中心になる人も多いでしょう。そんな時、住宅ローンの返済が定年後も続いていくとなれば、不安に思う人もいるのではないでしょうか。では果たして、定年後70歳まで住宅ローンが続いていくのは長いのでしょうか?そこで、住宅ローン返済期間と完済年齢の平均を調べ、70歳まで住宅ローンを組むことは長いのか検証してみます。

住宅ローン返済期間の平均とは

前述の内容を検証するために、住宅ローン返済期間の平均を調べてみます。そもそも、住宅ローンは比較的大きな金額を借り入れるため、30年間や35年間でローンを組むのが一般的です。

国土交通省がおこなっている「令和4年度 住宅市場動向調査」(PDF)をもとに、住宅ローン返済期間の平均などをまとめると以下のようになりました。

  住宅ローン
返済期間で多い設定(借入時)
選択した人の割合 平均返済期間
分譲戸建て 35年以上 71.5% 32.7年
分譲マンション 35年以上 63.1% 29.7年

結果、住宅ローンは35年で組む人が約6~7割、契約時の返済期間の平均は約31.2年となりました。

住宅ローン完済年齢の平均とは

住宅ローンを完済する平均の年齢は何歳でしょうか。住宅支援機構フラット35の利用者調査(2022年度)では、住宅ローンの借入年齢の平均は42.8歳です。

前述の結果もふまえ、住宅ローン完済年齢の平均は、分譲戸建てだと75.5歳、分譲マンションは72.5歳と考えることができます。

このことから、70歳まで住宅ローンを組むことは特別長いわけではなく、返済期間は平均よりも若干短いと考えることもできます。

70歳までの住宅ローンを組むメリットとは?

70歳まで続く住宅ローンを組むメリットとは

2022年度版の資料をもとにすると、住宅ローン完済の平均年齢は70歳を超えていました。このように、完済時に70歳を超える年齢で住宅ローンを組んでいる人は少なくないことがわかります。
また、住宅ローンの返済期間を70歳までに設定すると、返済期間を短く設定するよりもメリットになることがいくつかあります。本章では、70歳までの住宅ローンを組むメリットを解説しましょう。

月々の返済額が軽減できる

借入額が同じであれば、期間が長いほうが月々の返済額を軽減できます。借り入れた時が40代までであれば30年以上の期間をもってゆっくりと返済していくことが可能です。月々の返済額が軽減されれば、それだけ毎月の家計に余裕が生まれます。そうなれば、趣味や旅行などの楽しみにお金を使うことができたり、子どもがいる家庭であれば教育にお金をかけることができるでしょう。毎月の家計に余裕ができれば、余剰資金を貯めておくことも可能です。思いがけない病気やケガ、災害などへの出費に備えたり、将来への貯蓄に充てることも。毎月の返済に追われなくて済むので、生活に余裕が生まれます。

おおよそのライフプランが見通せる

70歳まで返済の続くプランを選択する場合、借入年齢が40歳を超える人もいらっしゃるでしょう。20~30代には収入や将来のプランが定まっていなかった人も、40代になれば役職に就く人も増え、収入もこれまでより増えて安定する人も増えます。収入が安定してくると、おおよそのライフプランも定まってくる人が多くなります。20~30代の時は遠い将来のように思えていた定年後の生活も、40代になれば近い将来像としてとらえられるようになります。

そんな時、70歳までの住宅ローンを組むメリットは、おおよそのライフプランが定まっていることです。将来のライプフランが具体的に見通せている状態なら、老後の生活を鮮明にイメージでき、そのために必要な資金計画もより具体的に立てられるでしょう。

勤続年数や年収に信頼が得られる

勤続年数や年収の安定性に信頼がおける点もメリットのひとつです。例えば、40代から住宅ローンを組み、70歳まで支払う場合を考えます。40代までの期間、すでに十分な勤続年数を積み、安定した収入を得られていると期待できるでしょう。銀行などの金融機関は、ローン審査の際に勤続年数や年収を評価し、返済能力を判断します。定期的な収入があり、長期間にわたって勤続していることは、金融機関にとって貸し手としての信頼性を高める要因です。

70歳まで返済が続く住宅ローンを組むメリットは、長期間にわたる安定した勤続年数と収入によって、金融機関からの信頼性を高め、将来的なリスクを軽減する点にあります。

投資や運用の機会が持てる

毎月の返済負担を減らして生まれた余剰資金を使えば、投資や運用の機会が持てます。余剰資金を資産運用に回せば、将来的な収益を増やすチャンスが広がります。例えば、投資信託や株式、不動産などに投資でき、資産の増加が期待できるでしょう。運用により資産が増加すれば、老後の生活資金を増やすことが可能に。結果として、住宅ローンを70歳までにして手元資金を運用に回せば、老後の資産形成に貢献します。

70歳までの住宅ローンを組むデメリットとは?

70歳まで返済が続く住宅ローンを組むデメリットとは

住宅ローンを70歳まで返済していくにはメリットもありますが、避けて通れないデメリットもあります。本章では、70歳までの住宅ローンを組むデメリットをわかりやすく解説します。

借入期間が長くなるほど支払う利息が増える

借入期間が長くなれば、支払う利息の総額が増えます。返済期間が長いほど、借入残高に対して利息がかかる期間が長くなるためです。長い間固定金利を選択していればなおさら、利息額は増えます。利息を減らすには、返済期間を短くするしか方法はありません。

定年後の返済が負担になる

70歳までの住宅ローンを組むデメリットは、定年後の返済が負担になることです。例えば、借入期間を70歳までとする場合、65歳以降で収入が現役世代よりも減少する可能性が高いです。収入の減少にともない、住宅ローンを支払える余裕がなくなってきます。また、借入額が大きく返済額が多い場合、生活費や趣味にお金を充てる余裕が減少し、定年後の生活が制約を受けることがあります。

定年後の返済が生活の負担となると、生活の質が低下していきます。支払いの負担が増すことで、趣味や旅行などの楽しみが制限されることがあり、充実感のある老後を送ることが難しくなるでしょう。また、返済の負担が大きくなると、健康や福祉への投資が難しくなるかもしれません。そうなると、老後の生活の質や自由度の低下につながることも考えられます。

70歳までの住宅ローンを組む場合、定年後の返済が生活の負担になる可能性があるのがデメリットです。そのため、定年後の収入減に対してどのように対処できるかが重要です。

医療費や介護費などに備えられない

病気やその他の出費に備えられないこともデメリットとして挙げられます。人間は歳をとるにつれて、健康面でのリスクが増加します。突然の病気や体調の変化によって、労働能力や収入に影響を受ける可能性があります。特に高齢になるほど、医療費や治療費が増加し、経済的な負担が増すのはよくあることです。

70歳だと仕事を辞めていて、安定した収入がない、もしくは少ない可能性があります。もし70歳まで住宅ローンの返済が続いた場合、医療費や介護費用に備えられないかもしれません。また、反対に医療費や介護費用がかかりすぎてしまい、住宅ローンの返済が滞ってしまうことも考えられます。

住宅ローン返済が70歳まで続く時のリスクに対する対処法とは?

住宅ローンが70歳まで続く場合のリスクに対する対処法とはどのようなものでしょうか

返済期間が長い住宅ローンを検討すれば、少なからずリスクも生じます。しかし、リスクをうまく切り抜ける方法も存在します。本章では、リスクに対する対処法を紹介していきましょう。

定年退職後も収入を落とさないようにする

住宅ローンの返済が70歳まで続く場合のリスクは、前述したとおり主に定年後の収入減少です。収入の減少を防ぐには、定年後も収入を落とさない努力が必要です。特に、定年退職後における収入源が年金のみの場合、住宅ローンの有無に関わらず生活が厳しくなる可能性があります。このような状況を避けるためにはシニアの働き口を確保したり、専門的なスキルや経験を活かすフリーランスやコンサルティングの仕事を検討しましょう。

あるいは、自分で事業を始めることも効果的です。例えば、趣味や得意な分野をビジネスに結びつけ、自分で事業をおこします。定年退職後に料理のスキルを活かし、地域のカフェや飲食店を始めることも考えられます。また、手芸やアートの技術を生かしたワークショップの開催も選択肢の一つ。これにより、将来の不確定性に対しても自己努力で収入を確保できる可能性が広がります。

総じて、住宅ローン返済が70歳まで続く場合、定年後も安定した収入を確保するために新たな道の探求が大切です。

繰り上げ返済やローンの条件を変更する

住宅ローンの返済が困難になることを回避するために、繰り上げ返済やローンの借り入れ条件の変更を借入先の金融機関へ相談しましょう。

当初は資金難で返済期間を長くせざるを得なかった人もいるでしょう。あるいは低金利を活用して、あえて手元の資金を自由に運用するために返済期間を長くしていた人もいらっしゃるかもしれません。返済が進んでいき、資金を運用していた人のなかには、住宅ローン減税の期間も終わり、手元の資金にも余裕がでてくる場合もあるでしょう。返済期間は70歳までとしていても、さまざまな可能性を検討した結果、繰り上げ返済が有利になる場合もあるかもしれません。定年後の返済を心配する必要もなくなるので、繰り上げ返済も有効な手段です。

また、借入先の金融機関へ、ローンの条件変更を打診するのも有効な方法です。ただし、年齢制限などによって実行できない場合もあります。実現できるかは条件によりますが、まずは相談してみることが重要です。

リースバックを検討する

住宅ローン返済が70歳まで続くリスクに対する対処法の一つは、リースバックの検討です。リースバックとは、自己所有の住宅を売却し、そのあとすぐに購入者から賃貸契約を結ぶ仕組みです。契約を結ぶと、住宅所有者は売却資金を手に入れ、同時にその住宅を賃貸物件として借りることができます。リースバックを選ぶことで、住宅ローンの返済がなくなり、かつ今の家に住み続けながら、将来的な収入変動への柔軟な対処が可能となります。また、リースバックによって手に入る売却資金を、運用や投資に回すことで、将来の収入源を確保できるケースも。これにより、定年後の経済的な安定感を向上させることができます。

ただし、賃貸契約が無期限で続くわけではなく、借りる時の家賃がいくらなのかの問題もあります。検討する時は、収支がどうなるかをよく確認し慎重に実行しましょう。

記事のおさらい

Q:70歳まで返済のある住宅ローンは長い?

A:70歳まで返済期間が続くことは、平均より若干短いと考えることができます。理由は、住宅ローンの平均返済期間は、分譲戸建て住宅は32.7年、分譲マンションは29.7年で、住宅ローンの借入年齢の平均は42.8歳だったからです。調査結果から、住宅ローン完済年齢の平均は、分譲戸建て住宅は74.5歳、分譲マンションは72.5歳でした。

Q:70歳までの住宅ローンを組むメリットとは?

A:返済期間を長くとることで、月の返済負担を減らせることと、借入可能額を増やせることです。

Q:70歳までの住宅ローンを組むデメリットとは?

A:定年退職後の返済が負担になる可能性があります。また、借入期間が長くなるほど支払う利息が増えることや、総返済額が高くなってしまうことがあります。

Q:住宅ローン返済が70歳まで続く時のリスクに対する対処法とは?

A:定年退職後も収入を落とさない対策が重要です。また、繰り上げ返済をしたり、借り換えや住宅ローンの返済条件を変更するなどで対処が可能に。さらに、リースバックを検討する方法もあります。

まとめ

本記事では、70歳まで返済のある住宅ローンは長いのか、70歳までの住宅ローンを組んだ時のメリットやデメリットを解説しました。また、定年退職後も返済が続く時の注意点や、返済のコツもわかりやすく解説しました。

寿命の延びや価値観の変化などから、年齢が上がってから住宅ローンを検討したり、完済年齢が定年退職後になるケースも増えてきています。70歳まで住宅ローンが続くことも珍しいことではありません。マイホーム購入を実現するためにも、デメリットやリスクをよく理解して返済を進めていきましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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