このページの一番上へ

住宅ローンは早く返すべき?繰り上げ返済する前に知っておきたい優先事項とは

住宅ローンはとにかく早く返すのがベストな選択なのでしょうか
住宅ローンを借りている人の多くは、できるだけ早く住宅ローンを完済したいと考えているでしょう。借入期間が長くなれば、その分利息が増えるからです。しかし、繰り上げ返済はとにかく早くすればよいとは限らないのはご存じでしょうか。本記事では、住宅ローンを早く返す前の優先事項や、繰り上げ返済のメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。

住宅ローンは早く返すべき?

住宅ローンはとにかく早く返さなければならないのでしょうか

住宅ローンは早く返すべきなのかの答えは、「必ずしも早ければよいとは限らない」です。住宅ローンは単に早く返すのではなく、早く返すタイミングと早く返した時の効果を総合的に判断しておこなうべきです。

とはいえ、住宅ローンを借りている人の多くは、できれば早く住宅ローンを完済してしまいたいと考えているでしょう。なぜなら、長く借りれば借りるほど利息が大きくなるからです。また、住宅ローンを借り続けていることで精神的に不安になる場合もあります。住宅ローンの完済が早く済めば、経済的なメリットや心理的な安心感を得ることができます。

安心感を得るだけでなく、ローンの完済により家計に余裕が生まれます。そうすれば、他のライフプランに資金を充てることが可能に。さらに、ローンを完済すれば住宅の所有権を手に入れる欲求も満たすことができます。

住宅ローンを早く返す方法は、「繰り上げ返済」です。繰り上げ返済とは、住宅ローンの毎月の返済額以外に、まとまった額を返済することです。追加の支払いによって元本が減少し、住宅ローンの総利息を減らすことができます。前述のような安心感を得られるなら、資金に余裕があればぜひ実行したいと思うのは当然です。しかし、何も考えずにとにかく繰り上げ返済をするのは、要注意。タイミングを間違えるとむしろ損をする可能性があります。

繰り上げ返済をおこなう前に、優先すべき事項があります。そして、繰り上げ返済のメリットやデメリットをよく比較検討し、繰り上げ返済をするタイミングにも注意が必要です。これらを総合的に判断して実行すれば、住宅ローンを早く返すのに適した方法がわかるはずです。では、次項から詳しく解説していきます。

住宅ローンを早く返す前に優先すべき事項とは?

住宅ローンを返すよりも優先すべき資金とは

住宅ローンは、不動産を購入するための借金ですが、不動産は資産としての側面も持っています。そのため、住宅ローンの金利はよい債務と考えることもできます。したがって、もし長期所有していても資産価値がない負債がある場合は、そちらを優先して返済した方がよいでしょう。また、住宅ローンの返済にすべての資金を充ててしまい、まとまった資金がなくなってしまうのも要注意です。
そこで、住宅ローンを返済する前に優先して返すべき事項を5つ紹介します。

  • 住宅ローンより金利が高い債務の返済
  • 子どもの教育費の確保
  • 老後資金の確保
  • 万が一の予備費の確保
  • 家の修繕費の確保

特にクレジットカードのローンや車のローンなど、住宅ローンよりも金利の高い負債は優先的に返済しましょう。このような負債は、資産価値がなく税金の控除対象にもなりません。

つぎに、削ってはならない費用として子どもの教育費があります。教育費の確保は、子どもの将来を考慮するうえで非常に重要です。私立学校への入学や海外留学を考える場合もあるので、早めに積立をしておきましょう。

また、老後に備えた資金の確保は、個人と家族の安心と幸福に関わる重要な要素です。教育費や他の資金の工面に手いっぱいで、老後資金を確保していないケースがみられますが危険です。人生100年時代と言われるように、将来ほとんどの人が必要になるのが老後の費用。退職後の生活を安心して過ごせるよう、老後資金を確保しておきましょう。

さらに、予期しない出来事や緊急事態に備えるための予備費も重要です。失業や病気、自然災害などの場合には、予備費を使い、生活を維持しなければなりません。万が一の際に家計を守るため、十分な備えをしましょう。

見落としがちな資金として、修繕費があります。賃貸であれば、家の設備に不具合が生じても、大家さんに修繕してもらえる場合が多いですが、持ち家では基本的にすべて自分の負担で修繕することになり、マンションの場合は共用部分の修繕についても所有者で負担しなければなりません。突然の不具合や、高額な修繕費用が必要になることもあるため、修繕費は積立ておくことが大事です。
家の修繕費を優先すれば、住宅の資産価値を守りながら、快適な住環境を維持できます。家の修繕費も優先順位の高い資金です。

これらの資金を確保したうえで、ゆとりがあれば住宅ローンの返済へ回すのがおすすめです。ライフプランや家計のバランスを考慮した資金配分をおこないましょう。

住宅ローンを早く返すメリットとは?

住宅ローンを早く返すメリットはなんでしょうか

住宅ローンを早く返すとどのようなメリットがあるのでしょうか。以下、具体例を挙げて説明します。

利息が減らせる

住宅ローンは借り入れた金額に対して利息を支払う必要があります。返済期間を短縮すれば返済期間にかかる利息が減少します。

例えば、35年間の返済プラン(元利均等方式、固定金利1.4%)で3,000万円の住宅ローンを組んでいるとします。そして、15年目の時に住宅ローンの残債を一括返済したとします。35年返済だと、利息を合わせて約3,800万円の返済総額でしたが、15年で完済すると利息を合わせて約3,500万円の返済総額になります。つまり、20年早く返済すると約300万円の節約になります。

精神的負担がなくなる

住宅ローンは長期間にわたる借金です。返済期間が長いと、借金の負担を背負い続けることになり、精神的にストレスを感じることがあります。一日も早くローンを完済すれば、借金から解放される安心感を得ることができます。また、将来の経済的な不安を軽減し、家族との生活をより豊かに楽しむことができるでしょう。

金銭的負担がなくなる

住宅ローンの返済は家計にとって大きな負担となります。家庭によっては、毎月のローン返済が支出の大部分を占めるケースも。ローンを早く返済すると、返済にかかる金銭的負担がなくなり家計に余裕ができます。これにより、教育費や老後資金、家の修繕費などの積立や急な出費にリソースを充てることが可能になります。

このように、住宅ローンの返済期間を短縮すると利息の節約、精神的な安心感、金銭的な余裕を得ることができます。

住宅ローンを早く返すデメリットとは?

住宅ローンを早く返すにあたりデメリットはあるのでしょうか

住宅ローンを早く返すと利息の節約、精神的な安心感、金銭的な余裕を得ることができますが、デメリットはあるのでしょうか。以下、具体例を挙げて説明します。

手元から大きな資金がなくなる

住宅ローンを早く返済するためには、大きな一括返済や毎月の返済額を増額する必要があります。これにより、手元の資金が減少し、将来のための積立や緊急時の資金が不足する可能性があります。例えば、子どもの教育費や老後資金の積立などの計画を妨げてしまう場合があります。

住宅ローン控除が適用されなくなる

住宅ローン控除は、住宅ローン返済に対して税制上の優遇措置が適用される制度です。しかし、早期返済によりローンが完済されると、これらの控除が適用されなくなる場合があります。その結果、所得税の負担が増えることになります。

手数料がかかる場合がある

住宅ローンには返済時に手数料がかかる場合があります。特に固定金利を適用している場合や、ローン契約書に違約金が明記されている場合、早期返済に際して手数料がかかることがあります。

団信の保障が使えなくなる

住宅ローン契約時には、死亡・疾病などのリスクに備えるために団体信用保険(団信)に加入する場合があります。団信は、死亡などにより住宅ローンを支払えなくなった場合に、住宅ローンの残高について保険金が支払われ、その保険金により住宅ローンが完済される制度です。したがって、住宅ローンを完済すると、団信の保障も終了します。団信を生命保険の代わりとしていた場合は、他の保険に加入するなどの必要が生じます。

早期返済は、これらのデメリットを理解して実行しましょう。返済を前倒しするだけでなく、教育費や老後資金の充実、手元の資金が不足しないように配慮するなど、バランスの取れた計画が重要です。

住宅ローンを早く返すと得をするの?

住宅ローンはどのような時でも早く返したほうが得なのでしょうか

住宅ローンを早く返すと得をするのでしょうか。もちろん、繰り上げ返済をすれば利息の軽減効果がありますが、いつどのような時に実行しても得とはいえません。なぜなら、2022年からは13年間住宅ローン控除を受けられるので、住宅ローンの金利によってはあえて住宅ローンの残債を減らさないほうがよい場合があります。住宅ローン残債を減らし過ぎないで住宅ローン控除を受けて、節税効果を十分に享受してから繰り上げ返済したほうが得になる考え方です。結論として、住宅ローンを借入期間満了よりも早く返すなら、住宅ローン控除が終わる13年後を目安に検討するのがよいでしょう。

住宅ローンを早く返すと得となる返済額やタイミングは、実際に計算をしてみるのが賢明です。住宅ローン控除額は現状、年末時点の住宅ローン残債の0.7%を上限として節税ができます。年末時点の住宅ローン残債が仮に2,000万円の場合は、最大で14万円の控除を受けることができます。もし、住宅ローンの金利が0.7%を下回るようであれば、住宅ローン控除が適用されている期間内に繰り上げ返済をしないほうがよい場合があります。
もし、急いで返済する必要がない場合には、住宅ローン控除が適用になる期間中は資金を運用に回せば、リターンをプラスにできるかもしれません。自由資金を有意義に使えるのであれば、そのほうがお得ではないでしょうか。

住宅ローンの金利や残債を把握し、住宅ローン控除の金額を計算して比較するのがよいですが、自分だけでは判断しかねるという場合はプロに相談し、最適な方法を検討してください。

記事のおさらい

Q:住宅ローンは早く返すべきですか?

A:住宅ローンは単に早く返せばよいのではなく、優先すべき事項を加味し、メリットやデメリットを比較検討したうえで総合的に判断して実行すべきです。その際には住宅ローン控除の節税効果もあわせて、実際に計算をしてみましょう。ただ単に早く返せば、必ず得をするとは限りません。

Q:住宅ローンの返済よりも優先すべき事項はなんですか?

A:クレジットカードや車のローン返済、教育費の積立や老後資金の確保、緊急予備資金と家の修繕費の確保です。これらの資金を確保しても余る資金を繰り上げ返済に充てるのが賢明です。

Q:住宅ローンを早く返すメリットはなんですか?

A:住宅ローンを早く返すメリットは、利息の節約、精神的な安心感、金銭的な余裕を得られることです。

Q:住宅ローンを早く返すデメリットはなんですか?

A:手元から大きな資金がなくなること、住宅ローン控除が適用されなくなること、繰り上げ返済の手数料がかかる場合があること、団信の保障が使えなくなることです。

まとめ

本記事では、住宅ローンは早く返すべきなのかについてわかりやすく解説しました。住宅ローンは単に早く返せばよいのではなく、優先すべき事項を加味し、返済のタイミングと効果を総合的に判断して実行するのが重要です。老後資金や緊急予備資金、家の修繕費などを確保しても余る資金を繰り上げ返済に充てましょう。

住宅ローンを早く返すと利息が節約でき、精神的な安心感も得られるメリットがありますが、手元から大きな資金がなくなり、住宅ローン控除が適用されなくなるなどのデメリットもあります。さらに、住宅ローンの金利次第では、住宅ローン控除を活用したほうが得な場合もあります。繰り上げ返済を実行するかは、住宅ローン控除も計算し総合的に判断して決断しましょう。自分だけで判断できない場合は、積極的に専門家に相談するのをおすすめします。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
関連する記事を見る
住宅ローンを何年で返済すればよいのか、についてはさまざまな考え方があります。住宅ローン自体は借金で、借り入れ元本に対して利息がかかってくるものなので、完済時期が早い方がいいのは基本的な考え方といえます。とはいえ、20年以上の長期にわたって、家計を圧迫しながら返済を続けるのは困難です。そうならないためにも、ここでは住宅ローンの返済期間について考えてみたいと思います。
家を買うにあたっては、住宅ローンを組むのは半ば当然のように思えるのですが、住宅ローンを組むことにどのようなメリットがあるのでしょうか。あらためて、住宅ローンを利用することでどのようなメリットがあるのかを確認しておきましょう。
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る