みんなで机を囲んで仕事に勉強に専念。 図書館のようなワークルームのある家
ワークルームの書棚は圧迫感が出ない色や寸法を考えて造作。「座ったまま本を取れて快適」(ご主人)。奥にはお茶を淹れるためのシンクも
2019.11.20

みんなで机を囲んで仕事に勉強に専念。 図書館のようなワークルームのある家

密集した住宅街に建つ、学術に携わるご夫妻と2人のお子さまの家。 傍らにいながら自立して過ごせる空間づくりで、いつも家族がつながるわが家に

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Oさん一家は大学教員のご主人と研究者の奥さま、7歳の長女、5歳の長男の4人暮らし。公園を臨む世田谷区のマンションに住み始めたところ、のどかな自然と、ギャラリーや古書店のある豊かな文化性が気に入り、近隣に一戸建てを建てることにした。
購入したのは約64㎡のコンパクトな敷地。限られた面積だが、自宅で仕事をすることが多く、専門書を大量に所有するご主人にとって、大容量の書棚と職住一体の暮らしは外せない条件だった。
 

物件データ 所在地/東京都世田谷区
面積/97.3㎡
築年月/2016年5月
設計者/彦根明+狩野翔太(彦根建築設計事務所)
www.a-h-architects.com

O邸の間取りは1階が書棚に囲まれたワークルームと音楽ルーム、2階はLDKと浴室、3階は寝室と子ども部屋で、建物の中心に円筒状の壁で囲まれたらせん階段を配したユニークなプラン。
「シンプルな間取りだと広がりを感じにくいため、『変化のある空間づくり』を目指しました」そう話すのは建築家の彦根明さん。らせん階段の壁を部分的にオープンにして、空間全体に適度なつながりを持たせている。

建物を南側に寄せたことで、高さ制限(北側斜線)をクリア。北側にはアプローチを設けて木製ルーバーで目隠し
らせん階段の壁はピアノの搬入出に必要な幅を確保し、構造壁を入れているため歪な楕円形に。有機的なフォルムが芸術的なムードを漂わせる

「ご家族を見ていると、とてもフラットで対等な関係。一体感を得ながら自立して過ごせる設計とすることで、よりOさんらしい暮らしに近づけたいと思いました」(彦根さん)
 ご主人の仕事場であるワークルームには、子どもたちと奥さまのデスクも設けられている。4つの机を中央に固めてそれぞれにパーテーションを立て、同じ場所にいながらおのおのが勉強や作業に専念できるようにした。書棚は壁全体につくり付けて収納量を確保。書物に囲まれたようなつくりは学術に携わるご主人にとって至福であり、図書館のような穏やかなムードも味わえる。

リビングダイニングの東側の窓は、視線を遮りながら公園の緑を取り込む高さ。戸棚は下部を開放して間接照明を入れ、軽さと広がりを演出

「思い切った試みでしたが、仕事中でも子どもが宿題をしたり本を読んだりする姿を見守れるように。2階の気配も伝わり、いつも家族といる気持ちになれます」(ご主人)
「人との関わりの中で、子どもが自分の過ごし方を見つけられる家になったなと。色々な居場所があり、1人の時間も充実します」(奥さま)家族のスタイルにマッチし、心にゆとりをもたらす住まいが、4人の絆を育んでいる。

玄関には明るさと広がりを感じられるガラス扉を採用しているが、アプローチの木製ルーバーと壁によってプライバシーは守られる
敷地北側の余白を生かして3階にテラスを設置。らせん階段の壁の一部に開口部を設けて抜けをつくり、手摺りは支柱側に設置
三角屋根の勾配を現した開放的な寝室。白壁×木のぬくもりのある空間に公園の鮮やかな緑が映え、美しいコントラストを見せている
取材協力

text_ Makiko Hoshino photograph_ Akira Nakamura

HOMETRIP Styles of living

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