築150年以上の古民家を移築再生。 すてきなレトロモダンの居住空間
玄関の上がり口に設けた和室。天井材はマツの古材を再活用。障子もサイズを調整して流用
2014.10.20

築150年以上の古民家を移築再生。 すてきなレトロモダンの居住空間

祖母が暮らした新潟県の古民家を静岡県の別荘地に移築。 豪雪地帯ならではの立派な柱や梁を受け継ぎ、夫婦で過ごす憩いの空間に

TRIP
30

新潟県上越市柿崎で、ご主人のおばあさまが長く一人で住んでいたという築約150年の古民家。2004年におばあさまが亡くなり、その後、伯父さまが相続していた。
 「伯父は東京に住んでいたため、管理できない状態で…。取り壊すことを決めていたんです」(ご主人)それを聞いた奥さまは、「興味があったので、取り壊す前に、ぜひ見せて欲しいと頼みました。実際見た瞬間に、古くても太い柱や梁、しっかりした造りの家に圧倒されました。これは壊してはいけない、私たちの手で何としても再生させなければと、使命のようなものを感じました」

物件データ 所在地/静岡県田方郡
面積/133.75m²
築年/2011年5月 設計/Gプランニング 清水康造+佐々木祐子 www.gplan-arch.com
ケヤキなどの木々が迎えてくれるアプローチ。植栽はこの地に元々植えてあった木を生かした

インターネットで、古民家再生を数多く手掛けている建築事務所を探し、桑原さんご夫妻の家に近い、Gプランニングに相談。大変だけれど、移築再生は可能という返事に、ご主人の決心も固まった。 ご夫妻は古民家を当分の間、別荘として使うことに決め、移築先に熱海や湯河原周辺を検討。そして熱海の隣町、函南町の別荘地にぴったりの土地を見つけ、いよいよ移築のた めの古民家調査と設計がスタート。「古民家移築は、現地再生と比較すると建物の損傷具合や、柱や梁の腐食などの調査が大変になります。構造を考慮しつつ間取りを決め、それ に加えて変化する環境風土や周辺景色に馴染む家のプロポーション、庇の深さなどの検討も必要です」(Gプランニング・清水さん)


庇がほとんど出ていなかった屋根に庇を付け直し、切妻屋根の形状にする作業が大変だった
庇がほとんど出ていなかった屋根に庇を付け直し、切妻屋根の形状にする作業が大変だった
迫力のある大黒柱やケヤキ材の差し鴨居を用いた伝統工法で建築
迫力のある大黒柱やケヤキ材の差し鴨居を用いた伝統工法で建築
石張りの玄関。長持もその上に飾っている瀬戸本業染付花文敷瓦も、新潟の家で見つけたものを再生
石張りの玄関。長持もその上に飾っている瀬戸本業染付花文敷瓦も、新潟の家で見つけたものを再生
古材の梁や柱を現しに。「カッシーナ」の家具を配したレトロモダンなリビングダイニング
古材の梁や柱を現しに。「カッシーナ」の家具を配したレトロモダンなリビングダイニング

ご夫妻がこの家に望んだのは、料理好きな奥さまが使うプロユース仕様のキッチン、温泉風呂、夫婦それぞれの書斎など。
「あとのプランはお任せで、いくつか提案してもらったのですが、結局元の間取りに近いプランを選ぶことになりました。そのプランを見ていると、子どものころ、祖母の家で遊んだときの光景が思い出され、懐かしい感じがして。家が身近に感じられたんです」(ご主人) ここに来るとゆったりとした気分になる、と言いながら、今は1ヶ月に1回しか来ることができないのが悩み。定年後は、ここを拠点に楽しい第二の人生を送ることを2人は心待ちにしている。


独立式キッチンは奥さまの切望でプロユースに。火力の強いガスコンロ、大きなオーブンも
独立式キッチンは奥さまの切望でプロユースに。火力の強いガスコンロ、大きなオーブンも
)温泉を引いた浴室。奥さまの希望で信楽焼の浴槽を採用。壁、天井はヒノキで統一した
温泉を引いた浴室。奥さまの希望で信楽焼の浴槽を採用。壁、天井はヒノキで統一した
)広縁のコーナーに配したご主人の書斎。小窓から光が入る。2階には奥さまのアトリエがある
広縁のコーナーに配したご主人の書斎。小窓から光が入る。2階には奥さまのアトリエがある

text_ Sayaka Noritake(colonna) photograph_ Akira Nakamura

取材協力

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