一戸建ての売却が難しい理由は?売れない物件の特徴と売却方法を解説
本記事では、一戸建ての売却が難しい理由と売れない物件の特徴を解説。あわせて、売れない一戸建てを売却する方法を紹介します。
記事の目次
一戸建ての売却が難しい理由

一戸建ての中古物件の売却が難しい理由はいくつかあります。ここではその理由を具体的に見ていきましょう。
人口減少により空き家が増加している
日本は少子高齢化による人口減少が深刻であり、全国的に空き家が増加しています。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、誰も住むことがなく放置されている空き家の数と、総住宅数に占める空き家率は、以下のように推移している状況です。

1978年~2023年の45年間で、空き家数は268万戸から900万戸と3倍以上に増加し、空き家率は7.6%から13.8%に上昇しました。これは、親から相続した一戸建てを手放さず放置しているケースや、地方で利用されなくなった住宅が増加していることが背景にあります。
空き家が増加しているエリアでは、物件が余っている状態にあるため、売却に時間がかかることが予測されます。以上のデータから、空き家は今後も全国的に増加すると考えられるため、一戸建ての売却は年を重ねるごとに難しくなるでしょう。
建物の資産価値が下がりやすい
建物の価値は築年数の経過で下がりますが、マンションと比較しても一戸建ての価値は低下しやすいです。木造一戸建ての場合、築20年を超えると建物の価値が付かなくなります。そのため、建物はむしろ解体して更地にしてから売るほうが、買い手が見つかりやすいと判断されることも。
築20年以内の物件であれば、建物部分に価値が付きやすくなりますが、築年数が浅いだけでは一戸建ての買い手を見つけることは困難です。
将来の資産価値を含めて考慮する買い手や、不動産投資を前提に物件を購入する買い手にとって、一戸建ての物件は建物の資産価値が下がりやすいことから魅力的とはいえないかもしれません。
維持管理の手間や修繕の負担が大きい
一戸建ては維持管理に手間がかかり、修繕の負担が大きいことから敬遠される場合があります。マンションは、共用部分のメンテナンスを管理会社がおこないます。しかし、一戸建ては敷地すべての管理を所有者自身でおこなわなければなりません。
屋根や外壁のメンテナンス、給排水管の点検などの日常的に発生する維持管理の負担が大きいでしょう。築年数が経過するほど修繕が必要になるケースも多く、修繕費も増加しやすくなります。また、空き家の一戸建ては管理されないことから急速に劣化が進む可能性もあります。
マンションは修繕積立金により、修繕コストを事前に判断できます。しかし、一戸建ては所有してから発生する修繕コストの把握が難しいです。そのためかかるコストや手間を想像しにくいことも敬遠される理由になるでしょう。
類似した売買事例の少なさから適切な価格設定が難しい
一戸建ては類似した売買事例が少ないことから、適切な価格設定が困難です。マンションは同じ建物・近隣の建物の売買事例から、同様の条件の物件が豊富にあるため、相場を把握しやすいでしょう。しかし、一戸建ては土地の形状や立地条件、建物の築年数や仕様がすべて異なり、同じ条件の物件がほとんど存在しません。類似した売買事例が少ないほど、適切な価格を設定することが困難になります。
不動産会社の査定に幅が出やすく、売り手も買い手も正確な相場の把握が難しいことから、売り手は希望した価格での売却が難しく、買い手からは敬遠されます。一戸建ての価格の不透明さは、成約率を下げる大きな要因になるでしょう。
売れない一戸建ての特徴

売れない一戸建ての特徴は以下のとおりです。
- 立地条件が悪い
- 築年数が古い
- 再建築不可などの法的制約がある
- 価格が相場よりも高い
- 内覧で悪印象を与えている
それぞれ詳しく見ていきましょう。
立地条件が悪い
一戸建てに限らず、立地条件の悪い物件は売れにくいです。駅から遠く利便性が低い、スーパーや病院、学校など生活に必要な施設が周囲に少ないなど、生活インフラが整っていない物件は購入希望者から敬遠されます。また、道路が狭く車が出入りしにくい場所や、日当たりが悪い土地に建つ家も人気は低いでしょう。
築年数が古い

一戸建ては築年数が経てば、建物の価値が急速に下がるため、築年数が古いほど売れる可能性は低くなるようです。実際に公益財団法人東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」を見ると中古一戸建て住宅では、築11年~15年の物件がもっとも成約率が高く、以降減少傾向であることがわかります。
また、実家を相続する場合に多いケースでは、耐震基準が旧耐震基準のままの住宅であり、地震に対するリスクから買い手が見つかりません。築年数の古さは、今後の修繕コストの増加にもつながるため、購入する買主にとってリスクになります。
再建築不可などの法的制約がある
再建築不可物件は、一度建物を取り壊すと新しく住宅を建てることができない物件です。築年数の古い一戸建ては取り壊して新しく住宅を建てる選択肢もありますが、再建築不可物件は建て替えできない土地になります。よって、通常の一戸建ての物件と比較しても、多くの購入希望者が敬遠するため売却は困難です。
価格が相場よりも高い
類似した売買事例の少なさから、適切な価格を設定しにくい一戸建ては、価格設定を相場よりも高く設定しまうことも。一戸建てに限らず、相場より高い物件は割高と判断されて、検討対象から外れます。価格の高さから問い合わせすら少なくなり、売れ残る可能性が高くなります。
内覧で悪印象を与えている
物件に対して問い合わせがあり、内覧希望者がいても成約しない場合は、内覧で悪印象を与えている可能性があります。掃除が行き届いていない場合や、キッチン・浴室・トイレを中心に水回りの汚れが目立つ場合は、物件に対してネガティブな印象を抱かせる原因になります。
売れない一戸建てを売却するための対策

一戸建ては、さまざまな要因から売却が難しいことがあります。一戸建てが売却にいたらず困っている方に向けて、有効な方法をまとめました。
一戸建ての販売実績がある不動産会社を選ぶ
一戸建ては売却の難しさから、売却活動をおこなう不動産会社の実力が問われます。よって、一戸建ての販売実績が豊富である信頼できる不動産会社を選ぶことが、売却の成功確率を上昇させることにつながります。実績のある不動産会社は過去の販売データが豊富にあり、広告戦略にノウハウを持っているため、売れにくい一戸建てでも効果的な販売方法を提案してくれるでしょう。
また、大手で顧客の多い不動産会社であれば、独自の顧客ネットワークから買い手を探し出せることも。一戸建てが売れない状況にあっても、契約を結ぶ不動産会社を変更すれば買い手が見つかり、売却が成功するかもしれません。
最適なタイミングを選んで売却する
一戸建てに限らず、不動産の売却には最適なタイミングがあります。具体的には、1月~3月の新生活を始めるシーズン、9月〜11月の引越しシーズンは家を探す人が増えるため、買い手が見つかる可能性が高くなります。
また、築年数が経過するほど売りにくくなるため、売却を検討してからできる限り早いタイミングで売ることも重要です。売却の成功率を高めるなら、売却時期をできる限り意識しましょう。
価格を相場よりもやや低めに設定する
一戸建てが売れない状況のなかで売却することを優先したい場合は、価格を相場よりもやや低めに設定する選択肢もあります。相場よりも安い価格で販売されていれば、買い手は「お得である」と考えて購入を検討し、成約につながる可能性が高まります。
ただし、価格を下げる場合も相場とかけ離れた価格に設定すれば、売主が損をする結果になりやすく、買い手から重大な欠陥を隠していると疑われる可能性もあるでしょう。
古家付き土地として売却する
築年数が古い一戸建ては、建物の価値はほとんど評価されないため、建物を売るのではなく、家が付属した土地である「古家付き土地」として売却する選択肢があります。建物の価値は築年数が経過するほど減少しますが、土地の価値は地域によっては上昇傾向にあることから、建物の価値がゼロでも土地部分のみで十分な売却益を確保できるでしょう。
買主が実質的に解体費用を負担する売却方法であるため、一戸建てを解体して更地にしなくても物件を売却可能です。売主は解体費用を負担する必要がないため、売却時のコスト削減にもつながります。
買取保証付き仲介を利用する
一戸建てが物件として魅力がなく、不動産会社の仲介で確実な売却が困難な場合は、買取保証付き仲介の利用も選択肢の一つです。不動産会社が一定期間仲介で売却活動をおこない、売れなかった場合は事前に決めた金額で不動産会社が物件を買い取る仕組みです。
この方法であれば、仲介で売れない一戸建てであっても売れ残る心配はありません。買取保証により、最悪の場合は不動産会社が買い取ってくれるため、安心して売却活動を進められるでしょう。しかし、買取保証価格は市場価格よりも低く設定されやすいため、最初は仲介で売却を目指し、どうしても売れない場合に頼るといいでしょう。
一戸建てを売却する際の注意点

最後に、一戸建てを売却する際の注意点を3つ解説します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
不動産売却は一般的に3カ月~6カ月程度かかる
一戸建てが売れないと感じている場合、売却活動を開始してすぐに売れると誤解されているケースが多く見られます。そもそも不動産の売却は、平均して3カ月から6カ月程度かかります。そのため、売却活動を開始してから3カ月以内で売れないと判断するのは早計である可能性があります。
一戸建てでは短期の売却に期待せず、値下げや不動産会社の買取を利用する判断は、売却活動に十分な時間を取ってからのほうがよい場合も。不動産会社と相談したうえで売却が難しい場合は、売却活動の進め方を再検討する必要があるかもしれません。しかし、プロである不動産会社が売れると判断したのであれば、長期的に余裕を持って売却するほうが高値での売却が期待できるでしょう。
再建築不可物件は必要な対処をおこなう
再建築不可物件であっても、隣地との交渉で建築可能な物件にできる場合があります。再建築不可物件は、敷地が道路に十分に接していない接道義務に反するため指定されます。そのため、隣地所有者から通路部分の土地を買い取れば、接道義務を満たせる可能性があるでしょう。
また、建物の敷地と道路の境界線を後退させるセットバックも選択肢の一つです。再建築不可物件に必要な対処をおこない、再建築ができるようにすれば、古家付き土地として売却しやすくなります。買い手も再建築を前提に購入できるため、需要の拡大により売却できる可能性が高まるでしょう。
ハウスクリーニング・リフォームの実施で売れるとは限らない
建物の劣化や汚れが目立つ一戸建てでは、ハウスクリーニング・リフォームを実施すれば売れると考えるかもしれません。内覧の印象はよくなりますが、必ずしも成約率の向上につながるとは限りません。
また、コストをかけた分だけ、売却価格が上乗せされると限らないため損になることも。自己判断でハウスクリーニング・リフォームを実施せず、改修の効果を客観的に分析できる不動産会社に相談してからおこなうようにしましょう。
まとめ
一戸建ての売却は、さまざまな要因から買い手が見つからず難しくなることがあります。売却が難しい一戸建てであっても、契約する不動産会社の選択や売却戦略によっては、スムーズに売却できる可能性があるでしょう。
売却するためには、立地条件・築年数・相場を客観的に分析することが重要です。仲介で売却するべきか、不動産会社の買取を前提に動くべきかは、個々のケースで異なります。売却が難しい物件でも手放したい場合は、物件にあわせた取るべき方法を考えて実践しましょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ





