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田舎の土地売却を成功させる完全ガイド|高く・早く売るための具体的な方法と流れ

田舎の土地売却を成功させるポイントを解説します
都市部とは違い、田舎における土地の売却は「買い手が見つかりにくい」「価格がつきにくい」など、特有の課題があります。しかし、売却の流れやコツを理解し、適切な戦略を取れば、スムーズかつ納得のいく価格で売ることは十分可能です。

本記事では、田舎の土地売却を検討している方に向けて、売却前に押さえるべきポイント、具体的な進め方、高く売るための工夫までをわかりやすく解説します。山林や農地など、広大で特殊な土地を売りたい方も、ぜひ参考にしてください。

記事の目次

田舎の土地を売却する方法

田舎の土地を売却したい時の方法を解説します
田舎の土地を売却したい時の方法を解説します

地方に所有している土地を手放したいと考えた時、都会と同じ感覚で売却を進めようとすると、思うようにいかないことも少なくありません。田舎特有の事情を理解したうえで、売却先や方法をしっかり選ぶことが大切です。不動産会社に仲介を依頼する方法はよく知られていますが、それ以外にも空き地バンクや土地活用の専門会社、個人間の売買など、さまざまな手段があります。ここでは、それぞれの方法や特徴をわかりやすく紹介します。

不動産会社に仲介を依頼する

田舎にある土地を売却する際に、一般的で安心感のある方法が不動産会社による仲介です。まずは不動産会社に連絡し、所有する土地の査定を依頼するところからスタート。査定価格を参考に売り出し価格を設定し、そのあとは不動産会社が広告やインターネットを通して購入希望者を募ってくれます。条件が一致すれば売買契約が成立します。

この仲介方式では、契約が成立してから仲介手数料を支払う仕組みのため、売却前の相談は無料で受け付けている会社が大半です。「どれくらいの価格で売れるのか」「買い手が見つかるまでにどのくらい時間がかかるのか」などの疑問にも、プロが丁寧に対応してくれます。そのため、不動産売却が初めての方でも安心して任せやすい選択肢でしょう。

不動産会社による買取を利用する

なるべく早く土地を手放したい、あるいは周囲に知られずに売却を進めたい場合は、買取を利用するのも一つの方法です。買取は、通常の仲介とは異なり、不動産会社が直接あなたの土地を買い取る方式です。そのため、広告などで情報が広まることもなく、スピーディーに売却が完了します。

一方で、仲介による売却では、市場価格に近い値段で売れる可能性があるものの、買い手を見つけるまで時間がかかることも。買取では、価格が相場よりやや低くなるケースが多いですが、「すぐに売りたい」「手続きを簡潔に済ませたい」などの人には向いています。また、不動産会社によっては「一定期間内に売れなければ買い取ります」などの買取保証制度を設けているところもあり、このような制度を活用すればリスクを軽減できるでしょう。

土地活用の専門会社に相談する

土地を売るのではなく、うまく活用して収益化する考え方もあります。こうした時に頼りになるパートナーが「土地活用の専門会社」です。例えば、土地を信託したり、運営を外部に委託するなどの方法を通して、売却せずに収益を得ることが可能です。場合によっては、活用したのちに売却することで、より高い価格で売れるケースも少なくありません。

土地活用を得意とするのは不動産会社だけではなく、地元の資産運用会社や信託に強い企業なども含まれます。田舎では不動産仲介専門の会社は少ない傾向にありますが、視点を変えることで相談できる先は意外と多く見つかるはずです。「すぐに売る」だけが選択肢ではないことを頭に入れ、多角的な視点で土地の活用方法を検討してみましょう。

空き地バンクを利用して売る

田舎の土地を売る際には、自治体が運営する「空き地バンク」を活用する方法も有効な手段です。一般的な不動産ポータルサイトでは、どうしても都市部の物件が中心になり、地方の土地は埋もれてしまうことも。そのなかで、空き地バンクは地方の土地に特化しているため、購入希望者と出会いやすいメリットがあります。

空き地バンクの取引には、自治体と連携した不動産会社が仲介に入るため、初めて不動産売買をおこなう方でも安心して進められます。売却したい地域名と「空き地バンク」のキーワードで検索すれば、該当エリアの情報ページが見つかります。また、全国の情報をまとめたサイトもあるため、複数の選択肢を比較しながら検討するとよいでしょう。

個人間の直接取引を試みる

仲介や買取を利用しても買い手が見つからない場合、最終手段として個人間で直接取引をおこなう方法もあります。例えば、土地に「売地」と書かれた看板を立てて近隣住民にアピールしたり、地域密着型の掲示板アプリやネットオークションを利用して購入希望者を募る方法が挙げられます。

この方法のメリットは、広告費を抑えながら売却活動を進められる点です。しかし、不動産売買に関する知識がある程度求められ、契約書の作成や登記手続きなどもすべて自己責任でおこなわなければなりません。多少のリスクはありますが、売却コストを抑えたい人や、周囲に知っている人が多い地域であれば検討してみる価値はあるでしょう。

田舎の土地が売れない理由と対処法

田舎の土地が売れない理由を解説します
田舎の土地が売れない理由を解説します

地方にある土地を売りたいと思って売却活動を始めても、なかなか買い手が現れないことがあります。その背景には、地域特有の事情や売却対象となる土地の条件など、さまざまな原因が潜んでいる可能性があります。しかし、原因を正しく見極め、それに合った対策を取ることで、状況が改善されるケースも少なくありません。ここでは、田舎の土地が売れにくい主な理由と、それぞれに適した解決策を具体的にご紹介します。

地域の需要が乏しいため売れにくい

田舎の土地がなかなか売れない理由としてまず挙げられるものが、その地域のニーズの少なさです。特に、住宅地としての需要がほとんどないようなエリアでは、売却にかなりの時間を要する場合があります。土地の需要は、その活用目的が明確であってこそ生まれるものです。

仮に周辺の相場に合わせた価格で販売していても、その金額が用途に見合っていなければ、買い手の関心を引くことは難しいでしょう。この場合には、用途そのものを見直すことが有効です。例えば、住宅用地として売ることが難しければ、駐車場、資材置き場、貸し農園などの利用を前提にし、それに合わせた価格に変更することで、需要のある層にアプローチできる可能性が高まります。

法的・手続き上の問題が売却の妨げになっている

なかなか売却が進まない場合、表面的にはわかりにくい法律的な問題や相続手続きの不備などが、原因になっていることもあります。以下のようなトラブルは、売却そのものができない、あるいは買い手が手を引いてしまう要因になります。

  • 土地の境界が不明確で、面積が確定できない
  • 市街化調整区域にあり、原則として住宅などの建築ができない
  • 高圧電線が近く、建築基準法上の制限がある
  • 相続後に遺産分割協議が済んでおらず、名義変更がされていない

これらのような状況にある場合は、早めに専門家に相談して問題点を洗い出し、適切な対処をおこなう必要があります。例えば、境界に関する調査は土地家屋調査士、市街化調整区域や建築制限に関しては建築士。また、相続や名義変更の手続きは、司法書士や弁護士などが対応可能です。まずは不動産会社に相談し、状況に応じて信頼できる専門家を紹介してもらうと、解決までがスムーズに進みます。

土地の条件が悪く活用しにくい

売却がうまくいかない要因として、土地自体に問題があるケースも考えられます。例えば、以下のようなケースに該当すると、買い手が敬遠しやすくなります。

  • 最寄りの駅やバス停から遠く、交通の便が悪い
  • 崖地や極端に細長い形など、土地が活用しづらい形状である
  • 土地が広すぎる
  • 上下水道が未整備でインフラが整っていない

地方では、これらの条件が重なっている土地も珍しくありません。ただし、条件が悪いからといって諦める必要はありません。マイナス要素を補うようなプラス材料、例えば自治体による移住支援や住宅購入に関する補助制度、固定資産税の減免措置などの情報を加えることで、興味を持ってもらえる可能性が出てきます。地域で実施されている支援制度などを調べ、売却情報のなかに明記しておくと、買い手にとっての安心材料になります。

田舎の土地を売却するためのポイント

田舎の土地を高く売却するためのポイントを解説します
田舎の土地を高く売却するためのポイントを解説します

田舎に所有している土地を売却したいと思っても、「なかなか買い手がつかない」「相場より安くなってしまう」などの悩みを抱える方は少なくありません。しかし、事前にいくつかのポイントを押さえておくことで、売却条件を改善し、少しでも高く、かつスムーズに売れる可能性が高まります。

田舎の土地は都市部とは異なり、買い手側の不安が大きくなりやすいため、その不安要素を取り除く努力が必要です。ここでは、よりよい条件で売却を成功させるために、売主ができる具体的な工夫を紹介します。

測量や境界確認を事前におこなう

地方の土地では、長年使われずに放置されていることも多く、「正確な境界がわからない」などのケースがめずらしくありません。境界杭が抜けていたり、隣地との線引きが曖昧になっていたりすると、購入希望者にとっては不安材料となり、購入を躊躇されてしまう可能性があります。

このようなトラブルを防ぐためには、売却に先立って確定測量を実施するといいでしょう。隣接する土地の所有者の立会いのもとで境界を明確にし、その結果を測量図として残すことで、買い手にとっても安心材料になるでしょう。
もし隣地所有者の立会いが難しい場合は、現況測量で対応することも可能です。しかし、買い手のなかには「確定測量でないと購入できない」などの意向を持つ人もいるため、結果的に売却のチャンスを狭めてしまうこともあります。
また、隣地所有者との話し合いが難航する場合は、法務局が管轄する筆界特定制度の利用も視野に入れましょう。この制度を通して、筆界(法的な境界)を第三者が判断してくれるため、境界を巡るトラブルを避けやすくなります。

売却方法そのものを工夫する

田舎では土地の売買取引が頻繁におこなわれていないため、買い手にとっては購入に踏み切るまでの心理的なハードルが高くなりがちです。このハードルをいかに下げるかが、売却成功の鍵になります。そのために有効な手段として、以下のような方法があります。

  • 土地を分筆し、小さな区画から売り出せるようにする
  • いきなり売却ではなく、賃貸で貸し出したうえで、将来的に買ってもらう提案をする

例えば、大きな面積の土地を希望価格で売ることが難しい場合でも、数区画に分けて「手の届く価格帯」で販売することで、買い手の視野が広がります。

また、「いきなり買うのは不安だが、まずは貸してほしい」などのニーズも一定数あります。このような層には、お試し的に土地を使ってもらい、気に入ったら購入を検討してもらうなどの段階的なアプローチが効果的。これは、多くの自治体が取り入れているお試し移住と同じ発想で、購入前に体験できることで、購入への心理的な障壁を下げることができます。

ライフラインの状況を調査・明示しておく

土地を購入する際、多くの人が重視するものが、電気や上下水道、ガスなどの生活インフラの整備状況です。都市部であれば当たり前に整っているインフラも、田舎の土地では未整備であることも多く、情報が不透明な場合はそれだけで敬遠されてしまうことがあります。

不動産会社に仲介を依頼している場合は、不動産会社が代わりに調査してくれるケースが一般的。しかし、個人で売却活動をしている場合や個人間取引では、売主が自らインフラの有無を確認する必要があります。特に遠方にある土地の場合、役所・水道局・ガス会社などへの問い合わせや現地調査に時間を要することも。とはいえ、購入を検討する方にとっては、どのような設備が使えるのかが重要な判断材料となるため、早い段階で確認しておくことがおすすめです。
「上下水道が未整備だけれども引き込み可能」「プロパンガスが利用できる」など、具体的な説明があるだけでも、買い手の印象は大きく変わるでしょう。

適正価格を設定する

田舎の土地を売却するうえで重要な点は、無理のない価格設定です。希望どおりの価格で売りたい気持ちはあっても、周辺の相場よりも大幅に高い金額では、購入希望者の検討から外れてしまいます。

土地の売却には、売り出し価格と成約価格の2つがあります。売り出し価格とは、広告やチラシ、不動産ポータルサイトなどに掲載されている希望販売価格のこと。一方、成約価格は実際に買主と契約が成立した金額を指します。多くのケースで、購入希望者から価格交渉が入るため、最終的な成約価格は売り出し価格よりも10%ほど下がる傾向にあります。田舎の土地は、都市部と比べて需要が限られることが多いため、価格設定が高すぎると、そもそも問い合わせが来ないなどの事態になりかねません。「売れなければ意味がない」の視点に立ち、売却相場をよく調査したうえで、実際に売れる価格に近づけた設定をすることが成功への第一歩です。

相場の調べ方を工夫する

価格を決める際は、国土交通省が公開している「不動産情報ライブラリ」などの公的データや、不動産ポータルサイトで近隣の取引実績を確認することをおすすめします。また、地元の不動産会社に相談することで、最新の実勢価格や需要動向を把握することもできます。

一般媒介契約で売却チャンスを広げる

田舎にある土地を少しでも高く、かつ効率的に売却したい時には、一般媒介契約を活用することもおすすめです。一般媒介とは、複数の不動産会社に同時に売却依頼ができる契約形態で、1社専属の契約よりも広く売却のチャンスを得られます。

地方の土地は、都市部と比べて物件価格が低いため、不動産会社が広告に積極的にならないこともあります。1社のみに依頼してしまうと、その会社の対応次第で売却が長引いてしまう恐れも。一方で、複数の会社に依頼できる一般媒介であれば、それぞれの不動産会社が早く買い手を見つけようと競争するため、広告や営業活動に力を入れてくれる可能性が高まります。その結果、物件が多くの人の目に触れることになり、スムーズな売却につながりやすくなります。

なお、複数の会社に依頼すると「仲介手数料が増えるのでは?」と心配される方もいますが、その点は心配無用です。仲介手数料は成功報酬であり、実際に買主との契約を成立させた不動産会社にのみ支払うことになります。つまり、成約に至った1社のみに支払えばよく、複数社に依頼したからといって費用が余分にかかることはありません。むしろ、どの会社も成約を勝ち取るために積極的に動いてくれるため、結果として早期売却や価格交渉の面でもプラスに働くことが多くなります。田舎の土地は少しでも露出を増やし、多くの人に知ってもらうことが大切。そうした意味でも、一般媒介契約は有効な方法の一つです。

売却には余裕のあるスケジュールを立てる

田舎の土地を、希望価格に近い形で売却したいと考えている場合、スケジュールに十分な余裕を持って進めることが重要です。都市部でさえ、土地が売れるまでにはおおよそ3カ月かかることが一般的。それに対して、需要が限られる地方の土地は、さらに時間がかかる傾向にあります。

特に田舎では、買い手が見つかるまで半年から1年以上かかるケースも少なくありません。そのため、すぐに結果を求めるのではなく、じっくりと時間をかけて売却活動を続けていく心構えが必要です。ただし、スケジュールの長期化は価格設定にも密接に関係しています。設定価格が相場よりも高めであると、買い手が現れにくくなり、販売期間が長引く原因になります。売却開始から最初の3カ月間は、市場の反応を観察する重要な期間。このタイミングで反応が薄い場合には、売り出し価格を一度見直すなどの柔軟な対応が必要になることもあります。適切なタイミングで価格を調整しながら、焦らずに戦略的な売却活動をおこなうことが重要です。

空き家バンクへの登録を活用する

田舎の土地を売却する方法の一つとして、自治体が運営する「空き家バンク」に登録する手段があります。空き家バンクは、自治体が管理する不動産情報のポータルサイトで、空き家だけでなく、自治体によっては更地も登録可能な場合があります。

この制度の特徴は、不動産ポータルサイトに掲載されない物件も掲載されているため、熱心に物件を探している購入希望者が訪れる点です。また、登録物件が少ないため、買い手の目に留まりやすいメリットも。土地の情報をできるだけ広く知らせるためにも、空き家バンクの利用を検討する価値があります。

古い建物は解体しておく

土地に古い家屋が残っている場合は、できるだけ取り壊して更地にしておくことをおすすめします。古家がそのまま残っていると、買い手が解体費用を負担しなければならず、売りづらくなってしまいます。

一般的に木造住宅の解体費用は1坪あたり3万円〜5万円ほどで、坪数によって異なりますが全体で150万円前後になることが多いです。買い手にとっては大きな負担になるため、売主側であらかじめ解体しておくほうが、売却をスムーズに進められるでしょう。

隣接する土地の所有者に声をかける

田舎の土地を売却する際には、隣地の所有者に購入の打診をする方法も効果的です。隣地の所有者にとっては、自分の土地が広がるなどのメリットがあり、一般の買主よりも高い価格で購入してくれる可能性が高いです。

また、隣地所有者に限らず、近隣で商売をしている人などが駐車場用地を探しているケースも少なくありません。このように近所の方にも声をかけることで、思わぬ買い手が見つかることもあるため、幅広く周囲に相談してみることをおすすめします。

不動産会社の現地調査費用を支払う

田舎の土地を売る時、不動産会社に対して現地調査などの費用を支払うこともポイントです。宅地建物取引業法の改正により、取引価格が800万円以下の不動産の場合、不動産会社は仲介手数料に加えて最大33万円までの現地調査費用を受け取れるようになりました。

従来は、価格の低い不動産の仲介手数料が少ないため、不動産会社の協力を得にくく、売却が進まないこともありました。しかしこの改正によって、800万円以下の土地の売却でも不動産会社の積極的なサポートを期待できます。特に価格が低めの田舎の土地では、現地調査費用を支払うことで協力を引き出し、円滑に売却を進めるコツとなります。

売却できない田舎の土地を手放すための別の方法

田舎の土地が売却できない際の別の方法を解説します
田舎の土地が売却できない際の別の方法を解説します

これまでに挙げたような対策を取っても買い手が見つからない場合、売却以外で土地を手放す方法を検討する必要があります。ここでは、いくつかの代表的な手段を紹介します。

相続土地国庫帰属制度の活用を検討する

どうしても使い道が見つからず、管理も困難な土地に関しては、国が引き取ってくれる制度「相続土地国庫帰属制度」の利用が考えられます。この制度は2023年4月に始まったもので、すでに相続済みの土地でも対象になります。ただし、以下の条件を満たす必要があります。

  • 建物が建っていない
  • 抵当権や借地権などの権利関係が存在しない
  • 他人が使用しておらず、今後の利用予定もない
  • 土壌汚染が確認されていない
  • 境界が確定しており、争いがない

条件をクリアすれば、申請によって土地の所有権を国に移転することができます。ただし、審査がおこなわれるほか、申請には手数料や負担金が発生します。詳細に関しては法務省の公式サイトを確認しましょう。
また、可能性は低いものの自治体に売る選択肢もあります。これは公有地拡大推進法に基づくもので、自治体が必要と判断した土地を買い取ってくれる制度です。

市区町村のなかには道路課や緑地課、公園課、土木課、下水道課、教育委員会など、土地の購入を検討する部署が複数存在します。土地の売却を希望する場合は、それらの部署に申し込みをおこない、「土地買取申出書」を提出しましょう。申請を受けてから自治体が土地の必要性を検討し、購入の対象と認められれば、土地を買い取ってもらえる場合があります。ただし、対象となる土地や条件は自治体によって異なるため、詳細は各自治体に問い合わせるとよいでしょう。

寄付や無償での譲渡を検討する

買い手が見つからず、所有していても維持費だけがかかるような場合には、土地を無償で引き取ってもらう方法もあります。例えば、地域の自治体やNPO、近隣の住民や企業などに相談し、無償譲渡を打診することが考えられます。

ただし、注意が必要なのは、無償でも贈与とみなされる可能性がある点です。受け取る側に贈与税を課される場合があるほか、譲渡する側にも譲渡所得税が発生するケースもあるため、税務面の確認を怠らないようにしましょう。事前に税理士などの専門家に相談してから進めると安心です。

田舎の土地を売却する流れ

田舎の土地を売却する流れを解説します
田舎の土地を売却する流れを解説します

田舎の土地を売却する際には、都市部とは異なる独特の注意点やステップが存在します。特に山林や原野、田、畑など、田舎特有の土地種別が絡む場合は、測量や価格査定などに注意が必要です。ここでは、田舎の土地を売る基本的な流れを、順を追って詳しく解説します。これから土地の売却を検討している方はぜひ参考にしてください。

  • STEP 1測量をおこなう
  • STEP 2土地の査定を依頼する
  • STEP 3媒介契約を締結する
  • STEP 4販売活動が始まる
  • STEP 5契約条件を交渉する
  • STEP 6売買契約を締結する
  • STEP 7境界を明示する
  • STEP 8引き渡しをおこなう
  • STEP 9確定申告をおこなう

流れについてそれぞれ詳しく解説します。

ステップ1.測量をおこなう

土地を売却する際にまず重要となるものが、境界の確定です。これは、売買対象の土地の境界線が正確に明示されていることを指します。境界が曖昧な土地は、買い手にとって不安要素となり売却が難しくなります。そのため、できるだけ境界をはっきりさせてから売りに出すことが理想。境界の確定には、専門の測量会社に依頼して測量をおこなってもらいましょう。

ただし、田舎の土地の場合、特に山林や原野、農地などの広大な土地では、測量費用が高額になりがちです。さらに、公簿面積(登記簿に記載されている面積)と実測面積(測量した面積)に大きな差がなければ、公簿面積のままで売買をするケースも。このような売買を公募売買と呼び、実際に測量した面積をもとに売買するものを実測売買と言います。田舎の土地は、手間や費用を抑えるために公募売買が一般的ですが、条件や状況によっては測量をおこない実測売買をおこなうこともあります。

ステップ2.土地の査定を依頼する

売却準備が整ったら、次に不動産会社による土地の査定を受けます。査定は適正な売り出し価格を決めるために重要なステップです。自分で価格を調べることも可能ですが、田舎の土地は、取引件数が少なくデータが限られるため、自己判断だけで正確に価格を把握することは難しいでしょう。

一方で、不動産会社は過去の取引データはもちろん、土地の法的規制や交通アクセス、周辺環境なども踏まえて査定をおこないます。そのため、より現実的で精度の高い査定額を算出できます。特に田舎の土地の場合は、都市部以上に土地の条件や立地の良し悪しが価格に大きく影響を与えるため、専門家による査定は重要です。

ステップ3.媒介契約を締結する

査定の結果、売却を依頼したい不動産会社が決まったら、媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産会社に売却の仲介を正式に依頼するための契約のことです。媒介契約には主に以下の3種類があります。

契約の種類 内容
専属専任媒介契約 不動産会社によって積極的に販売活動をおこなってもらいやすい一方で、売主は他の不動産会社に依頼できず、自己発見取引(自分で買主を見つけること)もできません。
専任媒介契約 他の不動産会社には依頼できませんが、自己発見取引は可能です。
一般媒介契約 複数の不動産会社に同時に売却を依頼でき、自己発見取引も可能です。

専属専任媒介契約や専任媒介契約は、1社限定で売却を依頼する契約のため、不動産会社の積極的なサポートが期待できます。一方で、一般媒介契約は複数社に依頼できるため、競争原理が働くメリットがありますが、対応の手薄さがデメリットとなることもあります。どの契約形態が、自分の土地や状況に合うかをしっかり検討しましょう。

ステップ4.販売活動が始まる

媒介契約を締結したら、いよいよ販売活動がスタートします。都市部の場合は平均して3カ月程度で売れることが多いですが、田舎の土地は売却期間が長くなりやすい傾向に。

売却までに半年以上、場合によっては1年近くかかることもめずらしくありません。根気よく売却活動を続けることが重要です。販売活動は不動産会社がチラシ配布やインターネット広告、空き家バンクへの掲載などさまざまな方法を駆使しておこなわれます。

ステップ5.契約条件を交渉する

購入希望者が現れると、「買付証明書」と呼ばれる購入申込書が提出されます。この買付証明書には購入希望額が記載されており、価格交渉やその他の条件交渉に発展することも。売主としては、値引き交渉や引き渡しの時期など条件面も考慮しながら、最終的な合意を目指します。交渉は双方にとって納得できる条件を見つけることがポイントです。

ステップ6.売買契約を締結する

契約条件が整ったら、売買契約書を作成し、署名押印をおこないます。不動産の売買契約は、必ず書面でおこなうことが法律で定められています。契約書は課税文書にあたり、契約金額に応じて印紙税がかかります。例えば、500万円超1,000万円以下の売買契約書には5,000円の印紙が必要に。印紙税に関しては、以下の表を参考にしてください。

契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1,000円
100万円を超え500万円以下 2,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万円
1,000万円を超え5,000万円以下 2万円
5,000万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円

出典:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

ただし、2027年3月31日までは軽減措置が適用されます。詳細は国税庁の公式サイトで確認してください。また、契約成立の証として、買主から手付金を受け取ります。一般的に手付金は売買価格の約10%です。この手付金は、契約解除がない限り売買代金に充当されます。同時に、売主は不動産会社に対して仲介手数料の半額を支払います。

ステップ7.境界を明示する

売買契約後から引き渡しまでは通常1カ月程度の期間が設けられます。この間に売主は買主に対して土地の境界を明示する義務があります。正確な境界の明示がなければ、買主は安心して土地を受け取ることができません。事前にしっかり準備をしておくことが重要です。

ステップ8.引き渡しをおこなう

最後に、土地の引き渡しをおこない売却が完了します。引き渡し時に買主から手付金以外の残代金を受領します。また、所有権移転登記に必要な書類や実測図など関連書類を買主に渡しましょう。売主は残りの仲介手数料を不動産会社に支払い、手続きが終了します。

ステップ9.確定申告をおこなう

土地を売却した翌年には、必要に応じて確定申告をおこないましょう。確定申告期間は原則として、毎年2月16日から3月15日までです。売却にともなう譲渡所得が発生した場合、税務署へ申告する義務があります。税金の計算や控除に関しては専門知識が必要なため、税理士や専門機関に相談すると安心でしょう。

田舎の土地は、都市部とは違った特性や注意点が多いですが、丁寧に一つひとつのステップを踏むことで、納得のいく売却が可能です。時間がかかることもありますが、焦らず着実に準備と対応を進めましょう。

まとめ

田舎における土地の売却は、都市部と同じ手順を踏むだけでは、時間も手間もかかりやすいものです。しかし、境界確定や査定、空き家バンクや隣地所有者への打診など、地域性に合わせた方法を組み合わせることで、売却の可能性は大きく高まります。
また、売却後の税金や特例制度も事前に確認しておくことで、手元に残る金額を最大化できます。本記事で紹介した流れとコツを参考に、ぜひ計画的かつ有利な売却を目指してください。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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