オール電化マンションが売れないと言われる理由は?売却に必要な対策方法を紹介
本記事では、オール電化マンションが売れないと言われる理由と売却の対策方法を紹介します。記事を読むことで、売れにくい傾向にあるオール電化マンションの売却に必要な知識がわかるようになるでしょう。
記事の目次
オール電化マンションが売れないと言われる理由

オール電化マンションが売れないと言われる理由は以下のとおりです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
電気代の高騰でランニングコストが増加している
オール電化マンションが売れにくいと言われる大きな理由の一つが、電気代の高騰によるランニングコストの増加です。オール電化住宅は、調理・給湯・暖房などすべてのエネルギー消費を電気でまかないます。
そのため、電気料金が上昇するほどランニングコストが増加し、生活コスト全体に影響を与えます。燃料価格の高騰や円安の影響で電気料金は上昇傾向にあり、ガス物件と比較して光熱費を節約できるメリットは失われつつあるでしょう。
今後、電気代がさらに上昇する可能性もあるため、将来のランニングコストの増加に不安を覚えやすい点もオール電化マンションが敬遠される理由になります。エネルギー情勢の変化から、オール電化は光熱費が安く家計にやさしい物件ではなくなりました。現在では、ガス物件のほうが将来のコスト上昇を含めてランニングコストを節約しやすいと考えられています。
停電時にすべての設備が使用できなくなる
オール電化マンションは、停電が起きるとすべての設備が使用不可能になります。IHクッキングヒーター、エコキュート(ヒートポンプ給湯機)などの設備にも電気が必要であるため、停電するとお湯を沸かすこともできません。
地震・台風などの自然災害が発生し、長期的な停電が続いた場合、ガスが利用できる物件であれば、ガスコンロやガス給湯器を利用して生活ができるでしょう。しかし、オール電化は停電の発生で、すべてのエネルギーの供給が途絶えることになります。
2011年に発生した東日本大震災の影響で、災害に対する備えを重視する人が増えました。災害をきっかけに停電リスクに弱いマンションに不安を感じる人が増えているため、オール電化マンションが売れにくい状況が続いていると考えられます。
修理・交換の負担が大きい
オール電化は1980年代に初めて登場し、2000年代後半から2010年代にかけて全国的にブームになりました。現在では、2000年代に建設されたオール電化マンションの築年数が20年以上の水準に到達します。築年数の経過により、設備の修理・交換における負担の大きさがデメリットとして実感されるようになりました。
オール電化マンションは、電気設備が多いため、ガス物件と比較しても修繕コストがかさみやすくなります。電気系統のトラブルは、修理費が高額になりやすく、部品交換では直せず、機器ごと入れ替えが必要になることも。
また、エコキュートの耐用年数が10年程度であるため、すでに10年〜15年使用している場合は交換が必要な設備とみなされるでしょう。中古のオール電化マンションは、購入直後に修理・交換負担が発生するリスクがあります。また、長期的な維持管理でコスト負担が大きくなりやすいことも、近年になって広く知られるようになり、オール電化が避けられやすくなりました。
ガス物件と比較して不便を感じる場面がある
オール電化マンションは、ガス物件と比較して不便を感じる場面が少なくありません。例えば、IHクッキングヒーターは温度調整に慣れが必要であることから使いづらいと感じる人もいます。直火で料理する場合と比較して、鍋を振る料理に不向きであることから、料理が好きな人からは敬遠されることも。
また、エコキュートの仕組み上、タンクに溜めたお湯を使用するため、お湯が切れてしまうことがあります。お湯を多く使用する場面では注意しておかなければ、タイミングによってはお風呂に入りたい時に入れないかもしれません。ガス物件と比較して具体的に不便を感じる場面があることから、人によっては敬遠される要素になるでしょう。
電力会社を選びにくい
オール電化マンションは、電力会社の選択肢が限られるデメリットもあります。近年は電力自由化によって新しい電力会社とさまざまなプランが登場しましたが、オール電化専用の料金プランに対応していない電力会社も多くあります。結果的にオール電化を理由に契約先を自由に選べないことも。また、場合によっては、マンション全体で一つの電力会社と契約しており、自身で選べないケースもあります。
電気代を節約するにあたって、電力会社とプランの選択は重要です。しかし、オール電化マンションを選ぶことで、電気代を節約する手段が制限されやすいことも、オール電化マンションの需要減少の原因になっていると考えられます。
オール電化以外でマンションが売れない原因

オール電化マンションの売却活動をおこなっても物件が売れない原因は、必ずしもオール電化にあるとは限りません。マンションが売れない原因がわかれば、オール電化マンションであっても売却できる可能性があります。マンションが売れない代表的な3つの原因を確認しましょう。
立地条件が悪い
マンションが売れない根本的な理由には、立地条件の悪さがあります。オール電化が問題ではなく、通勤・通学の利便性の悪さや、治安に対する不安が物件の需要を減らしていることも考えられるでしょう。
反対にいえば、オール電化マンションであっても立地条件がよければ、一定の需要は見込みやすいです。再開発計画が進み今後の需要の高まりが期待できる地域や、公共交通と商業施設へのアクセスがいい地域であれば、オール電化であることを理由にまったく売れないとは考えにくいでしょう。
価格設定が相場にあっていない
売り出し価格が周辺相場に合っていない場合は、オール電化に限らずマンションは売れません。購入希望者が集まらない理由は、市場価格よりも割高であるからです。同じエリアで築年数の近い同様の物件と比較して、かけ離れた売り出し価格は購入の候補から外されるでしょう。
また、オール電化は売れないと言われていることから、一般的にマイナス要素になります。特にエコキュートを耐用年数以上使用している場合、購入希望者の負担になることが予測されます。売却するためには、オール電化を理由に売り出し価格を下げて販売する必要があるかもしれません。
売却活動に問題がある
マンションが売れない原因が物件そのものではなく、売却活動の進め方に問題があるケースも少なくありません。不動産会社選びに失敗している場合は、オール電化マンションを効果的に宣伝できず、結果的に購入希望者が現れない状態が続いているケースがあります。
また、内覧時に部屋の清掃・片付けが不十分であることを理由に購入希望者が現れないことも。オール電化マンションは売れないと言われることもありますが、反対に訴求できるメリットも少なくありません。売却活動の内容次第では売れる可能性があります。
オール電化マンションが売れない場合の対策方法

オール電化マンションが売れない場合の対策方法は5つあります。
それぞれ詳しく解説します。
オール電化物件売却に実績がある不動産会社を選ぶ
オール電化マンションを売却する際の不動産会社の選び方では、オール電化物件の売却実績を重視します。実績のある不動産会社は、オール電化の物件であっても効果的な見せ方を知っているため、デメリットがあっても売却できる可能性は高まります。
また、オール電化に対する知識が十分にあり、質問にも的確に答えられる不動産会社の担当者であれば、安心して売却活動を任せられるでしょう。オール電化マンションの売却に対する実績と知識のある不動産会社に仲介を依頼すれば、スムーズに売却しやすくなります。
売却価格を見直す
オール電化マンションが売れない場合は、売却価格を見直すことも重要です。電気代の上昇でオール電化のランニングコストが上がっていることから、買い手の評価は厳しくなっています。そのため、慎重に価格を設定する必要があるでしょう。
同様のエリア・築年数・間取りのオール電化マンションの売り出し事例から、相場を把握するようにしましょう。マンションの売却価格の相場は、各不動産ポータルサイトや国土交通省が公開する「不動産情報ライブラリ」から確認できます。
現在の売り出し価格がオール電化であることを考慮して、相場とかけ離れているようであれば、売却価格を見直すことで購入希望者が現れるかもしれません。
設備の修繕・メンテナンスの記録を提示する
購入希望者の立場に立つと、電気設備の信頼性や耐久性を確認しておきたいところです。よって、売主は設備の修理・メンテナンスの記録を提示すれば、購入希望者の信頼を得ることにつながるでしょう。
エコキュートの設置・交換時期、メンテナンスの実施履歴などの情報を明確にすれば、かかるコストが予測しやすくなるため、修理・交換の負担が大きいオール電化マンションであっても安心して購入できます。特にエコキュートの耐用年数を上回る築10年以上を経過した物件では、記録の提示が重要になるでしょう。
オール電化の電気設備への信頼感を高めることができれば、購入希望者の不安をやわらげ、購入意欲を引き出しやすくなります。
ホームステージングで物件の印象をよくする
オール電化マンションは、ガス給湯器の配管やコンロ下の排気設備が不要になるため、キッチンや浴室を中心に部屋の印象がすっきりします。よって、ホームステージングを活用して内覧時の印象を高めることで、別の角度からオール電化マンションの魅力をアピールできます。
ホームステージングは、家具や照明、小物などを工夫して部屋をモデルルームのように演出し、内覧者の購入意欲を引き出します。魅力的な空間であることをアピールできれば、コストに不安があっても購入希望者は現れるでしょう。
不動産会社と相談のうえで、ホームステージング会社に依頼して効果的なホームステージングをおこないます。
オール電化のメリットを伝える
近年は電気代の高騰などを理由に、オール電化にネガティブなイメージを持つ人が増えています。しかし、最大の売却対策は、デメリットを踏まえたうえでオール電化のメリットを伝えることです。実際に暮らしたうえで感じたメリットを含めて、内覧者に伝えられれば、成約につながりやすいでしょう。
オール電化マンションのメリット

最後に、オール電化マンションの具体的なメリットを以下にまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
火災やガス漏れの心配が少ないため安全性が高い
オール電化マンションの魅力は、火災やガス漏れの心配が少なく、安全性が高い点です。ガスを一切使用せず、調理や給湯、暖房まですべて電気でおこなうため、ガス管からの漏れや引火事故などのリスクを大幅に減らせるでしょう。
特にIHクッキングヒーターは、直火を使わないため火の立ち上がりがなく、子どもや高齢者がいる家庭でも安心して使えます。電気設備はセンサーや安全装置が充実しており、異常を感知すると自動的に停止する仕組みです。火災警報器と連動させれば、万が一のトラブルにも対応できるでしょう。
電気代などのコストよりも、自身や家族の安全性を重視する人に、オール電化マンションは適しています。
蓄電池は電気代の節約・停電の対策になる
オール電化マンションのリスクはランニングコストの増加と停電ですが、蓄電池を導入している物件であれば対策できます。蓄電池とは、電力を貯めておき、必要な時に使えるようにする設備のことです。
太陽光発電と併用すれば、発電した電力を昼間に使い、余った分を蓄電池に貯めて夜間に利用する自給自足も可能です。電気の購入量を減らせるため、光熱費の節約につながるでしょう。
また、蓄電池は災害時の非常電源としても心強いです。停電時でも蓄電池に貯めた電力を使えば、ライフラインが途絶えるリスクを軽減できます。蓄電池や太陽光発電など、オール電化のリスクを軽減できる設備を導入しているなら、デメリットを対策できるメリットとして訴求できるでしょう。
災害時には復旧が早い
電気は他のインフラよりも復旧スピードが早い傾向にあるため、オール電化マンションも災害時の復旧が早くなります。大規模な災害が発生してガスの供給が止まった場合、ガスの復旧は安全確認が必要であるため、時間がかかります。オール電化マンションは電気が復旧すれば、生活を再建できるため、ガス物件と比較して復旧は早いでしょう。
オール電化マンションは、長期的な停電に対するリスクがあります。しかし、他のインフラと比較して電気の復旧が早いことから、蓄電池などの設備の導入とあわせれば災害に強いと考えられます。
ガス物件と比較して掃除の手間が減りやすい
オール電化マンションは、キッチンまわりの清掃を中心に掃除やメンテナンスの手間が少ないです。IHクッキングヒーターは、フラットなガラストップであるため、調理後に布で拭くだけで汚れが落ちます。火を使わないため油の飛び散りも少なく、壁や換気扇の汚れも抑えられるでしょう。
また、ガスを使用しないため、ガスの設備点検も不要になります。掃除・メンテナンスの手間を減らせる場所があるため、生活を続けるうえで負担も減らしやすいでしょう。
環境にやさしいエコな生活ができる
オール電化マンションは、環境にやさしいエコな暮らしを実現できます。ガスを使用せず、電気エネルギーだけで生活が完結するため、二酸化炭素の排出を抑えられます。
太陽光発電設備を導入し、クリーンエネルギーを利用した生活も可能。近年では住宅も持続可能な住まいであることが重視されているため、環境に対する配慮は重要になります。また、環境に配慮した住まいの取得が各自治体の補助金の対象になることも。環境に対する配慮もオール電化のメリットとして主張できるでしょう。
火災保険・住宅ローンで優遇を受けられることがある
オール電化マンションは、火を使わない構造のため、火災リスクが比較的低いと判断されるケースが多く、優遇を受けられる場合があります。例えば、一部の保険会社では火災保険料を割引しており、ガス物件と比較して保険料が安くなります。
また、金融機関によっては、オール電化の物件を対象に住宅ローンの金利を優遇している場合も。オール電化マンションは電気代のみを比較すればコストがかさみやすいと考えられますが、火災保険料や住宅ローンの金利でガス物件と比較した場合は負担が軽減されます。総合的なコストを考えるなら、オール電化マンションにも負担を節約できるメリットがあります。
まとめ
オール電化マンションは、電気代の高騰や災害による停電リスクなどの影響で売れにくいと言われることがあります。しかし、安全性や暮らしの快適さでは今でも魅力的な住まいです。そのため、売却活動の方法次第では、満足のいく価格で売買を成立させることもできるでしょう。
売却活動の際には、オール電化マンションの売却に適した不動産会社選びが重要です。最低でも3社以上に相談したうえで、媒介契約を結ぶ会社を決めることをおすすめします。また、売却活動を始めるにあたって売却の懸念点だけでなく、買い手にとって魅力になるメリットを理解して伝えられるようにしましょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

