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相続したマンションの売却にかかる税金は?種類と利用できる控除を解説

相続したマンションを売却する際の税金について解説します
「相続したマンションを売却する際にかかる税金額は?」「売却する時に使える控除はある?」など相続によって取得したマンションを売却するにあたって、このようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相続したマンションの売却にかかる税金の種類や、利用できる控除を解説。税金額がわかるシミュレーションも併せて紹介します。記事を読めば、相続したマンションを売却する際にかかる税金を詳しく把握できるため、ぜひご一読ください。

相続したマンションの売却にかかる税金の種類

相続したマンションの売却にかかる税金の種類を紹介します
相続したマンションの売却にかかる税金の種類を紹介します

相続したマンションを売却する際にかかる税金の種類は以下のとおりです。

  • 譲渡所得税
  • 住民税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 消費税

それぞれの税金を詳しく解説します。

譲渡所得税と住民税

譲渡所得税と住民税は、売却によって得た所得にかかる税金です。譲渡所得税は確定申告の際に、住民税は6月ごろに支払います。住民税は一括払いと4回の分割払いで支払えるため、金額に応じて支払方法を変えることも可能です。

売却するマンションの所有期間 税率
5年以上 譲渡所得税:15%
住民税:5%
5年以下 譲渡所得税:30%
住民税:9%

譲渡所得税と住民税は、不動産の所有期間によって税率が変わるため、納税額を算出する前に調べておきましょう。所有期間は相続後ではなく、被相続人(不動産を残して亡くなった人)が当該不動産を取得した日からの所有期間です。
確定申告の際は、譲渡所得税に加え、2.1%の復興特別所得税も支払わなければなりません。復興特別所得税は東日本大震災の復興にあてられる税金で、2037年まで納税する義務があります。

5,000万円の、所有期間が5年超えでの長期譲渡所得金額があるケースを例に、どのくらい税金がかかるか見てみましょう。


  • 譲渡所得税額
    5,000万円×15%=750万円

  • 住民税
    5,000万円×5%=250万円

  • 復興特別所得税
    5,000万円×2.1%=105万円

確定申告の際に支払うのは譲渡所得税額750万円+復興特別所得税105万円=855万円、6月以降に支払う住民税は250万円となります。

譲渡所得税額と不動産の所有期間がわかっていればすぐに算出できるため、納税額が気になる方は事前に確認しておきましょう。

印紙税

印紙税は、経済的な取引に伴って契約書を作成した場合に課税される税金です。売買契約書はもちろん、工事請負契約書やお金の貸し借りの契約書などにも印紙税が発生します。
納付方法は課税対象となる書面に収入印紙を貼り、その収入印紙に消印を押すことによって納税されます。
印紙税は契約金額によって税額が異なるため、契約金額に応じて収入印紙を購入しなければなりません。

不動産の売却にかかる印紙税は、2024年3月31日までに作成される文書に限り、軽減措置が適用されます。相続したマンションの売却にも適用されるため、特例が適用されている期間内に手続きを進めることがおすすめです。

契約金額 印紙税額 軽減措置適用後の金額
1万円未満
10万円以下 200円
10~50万円以下 400円 200円
50~100万円以下 1,000円 500円
100~500万円以下 2,000円 1,000円
500~1,000万円以下 1万円 5,000円
1000~5,000万円以下 2万円 1万円
5,000~1億円以下 6万円 3万円
1~5億円以下 10万円 6万円
5~10億円以下 20万円 16万円
10~50億円以下 40万円 32万円
50億円以上 60万円 48万円
 契約金額に記載がないもの 200円

参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

不動産の売買契約書は買主と売主で作成するため、印紙税は1通ずつ双方が負担するケースも多いようです。

登録免許税

登録免許税は、相続したマンションの登記変更をおこなう際に発生する税金です。マンションを売却するには、まず被相続人の名義から自身の名義へと変えなければなりません(相続登記)。法務局で手続きをおこなう際に、不動産の固定資産税評価額×0.4%の登録免許税を支払って、登記変更を済ませましょう。

また、固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されています。納税通知書の「価格」の欄に記載されている金額に0.4%をかけた金額を用意して、登記変更の手続きに向かいましょう。登記変更は必要書類も多く、複雑なため、司法書士などの専門家へ依頼すると安心です。

消費税

マンションの売却自体に費用は発生しないものの、不動産会社に仲介を依頼する場合の仲介手数料や登記手続きの代行を依頼する場合は消費税もかかります。消費税は売却が完了する前に支払わなければならない可能性もあるため、第三者に売却のサポートを依頼するのであれば、金銭に余裕を持たせておきましょう。

相続したマンションの売却時に活用できる税金の控除

相続したマンションを売却する際に使える控除を紹介します
相続したマンションを売却する際に使える控除を紹介します

相続したマンションを売却すれば利益を得られるものの、額に応じて譲渡所得税や住民税が発生します。しかし、控除を活用すれば納税額を抑えることが可能です。ここで相続時に活用できる控除を紹介しましょう。

小規模宅地等の特例

相続や遺贈によって受け取った不動産を売却する場合は、「小規模宅地等の特例」を利用することができます。小規模宅地等の特例を利用することで、マンションの相続税評価額を軽減できるでしょう。

マンションの場合、持分割合に応じて土地の相続税評価額の算出をおこなう必要があります。具体的には、まず、路線価方式や倍率方式によってマンションの敷地全体の評価額を算出します。次に、建物登記簿の表題部で確認できる「敷地権の持分割合」で、自身が所有している土地面積分の評価額を算出しましょう。建物の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じです。

上記の方法で算出された土地と建物の評価額の合計が、相続したマンションの相続税評価額となります。小規模宅地等の特例を活用することで、算出した評価額の「土地の部分」の評価額を軽減することが可能です。330平方メートルまでの面積を80%軽減することができるため、忘れずに活用しましょう。

マンションを相続した時の小規模宅地等の特例の主な適用条件は、以下のとおりです。

【適用要件】

  • 被相続人が住んでいたマンションの敷地であること
  • 被相続人の配偶者や同居している親族が相続すること
  • 相続税の申告期限まで住み続けること

詳しい要件は、国税庁ホームページ「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」を確認してください。

一軒家の相続とは異なり、マンションを相続した時の小規模宅地等の特例の適用は複雑です。事前に不動産会社や税理士などの専門家に相談をしましょう。

相続したマンション売却にかかる税金シミュレーション

相続したマンションを売却する際のシミュレーションを紹介します
相続したマンションを売却する際のシミュレーションを紹介します

相続したマンションを売却する際、どれくらい税金がかかるのかをシミュレーションしてみましょう。納税義務が発生するのは譲渡所得税・住民税・復興特別所得税・登録免許税・印紙税です。消費税は発生するケースとしないケースがあるため、シミュレーションには含めません。シミュレーション条件は以下です。

【条件】

  • 建物の売却額は8,000万円
  • 売却した建物の購入費用は4,000万円
  • 取得にかかった費用は100万円
  • 相続時の特例の適用要件を満たしている
  • 固定資産税評価額は建物2,800万円、土地2,800万円
  • 売却した住戸を6年間所有していた

まずは譲渡所得税と住民税から算出します。2つを算出するには課税譲渡所得税額を把握しなければならないため、建物の売却価格-(建物の購入費用+取得にかかった費用)-特別控除で計算しましょう。

8,000万円-(4,000万円+100万円)-3,000万円=900万円です。

所有期間が6年で長期譲渡所得に該当するため、譲渡所得税は15%、住民税は5%、復興特別所得税は2.1%をかけます。

譲渡所得税 
900万円×15%=135万円

住民税
900万円×5%=45万円

復興特別所得税
900万円×2.1%=18.9万円

続いて、登録免許税の算出をおこないます。登録免許税の計算式は(建物の固定資産税評価額+土地の固定資産税評価額)×0.4%です。

(2,800万円+2,800万円)×0.4%=22.4万円

最後に印紙税です。印紙税は売却額に応じて金額が変わり、8,000万円の場合は6万円です。ただし、相続したマンションを2024年(令和6年)3月31日までに売却する場合は軽減措置が適用されるため、印紙税は3万円となります。

マンションを売却する際に必要な税金の計算がすべて終わりました。合計額は、下記のとおりです。

譲渡所得税135万円+住民税45万円+復興特別所得税18.9万円+登録免許税22.4万円+印紙税3万円=224.3万円

合計額は一括で支払うわけではありません。登録免許税・印紙税・譲渡所得税+復興特別所得税・住民税の順に支払うため、少しずつ支払っていくものと考えておきましょう。なかでも譲渡所得税は金額が大きいため、確定申告の時期までに用意しておくことがおすすめです。

相続したマンションを売却した時の確定申告

相続したマンションを売却する際は確定申告をする必要があります
相続したマンションを売却する際は確定申告をする必要があります

相続したマンションを売却する際は、確定申告をする必要があります。確定申告をしなければ譲渡所得税や住民税を支払うことができず、控除も受けられません。そのまま無申告の状態でいると、ペナルティを課されたうえで納税しなければならないため、支払い負担が大きくなってしまうでしょう。

ここでは、相続したマンションを売却する際におこなうべき確定申告の必要書類と流れを解説します。

確定申告に必要な書類

マンションを売却する際におこなう確定申告は、複数の書類が必要です。3,000万円の控除を受ける場合は「譲渡所得内訳書」を4枚用意する必要があるため、忘れずに揃えましょう。手続きに必要な書類は以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書
  • 分離課税用の申告書
  • 登記事項証明書
  • 不動産の売買契約書

確定申告書・譲渡所得の内訳書・分離課税用の申告書は税務署の窓口でもらえます。登記事項証明書は法務局、不動産の売買契約書は不動産を売却した際に手に入るため、捨てずに保管しておきましょう。

税務署の窓口でもらえる書類は、国税庁のホームページからダウンロードすることも可能です。ダウンロードして印刷をしたあと、手書きで記載して提出します。手書きでの記入が面倒であれば、「国税庁 確定申告書等作成コーナー」で書類を作成し、電子ファイルをe-Taxで送信することもおすすめです。

確定申告書等作成コーナーは、毎年1月ごろから使えます。インターネット上で24時間いつでも作成可能なため、仕事で忙しく作成の時間が取れない方でも、隙間時間に作って提出できるでしょう。

確定申告の流れ

確定申告に必要な書類を把握したあとは、手続きの流れを見てみましょう。

  • STEP 1申告に必要な書類を揃える
  • STEP 2所得税額を算出する
  • STEP 3確定申告書に必要事項を記入する
  • STEP 4税務署に提出する
  • STEP 5納税する

登記事項証明書と不動産の売買契約書を用意し、所得税額を計算しましょう。所得税額算出後、確定申告書や譲渡所得の内訳書などに必要事項を記入します。すべて記入し終えたら、税務署に書類をまとめて提出し、算出した所得税を納税して完了です。

確定申告書等作成コーナーで書類を作成する場合は、必要事項を入力すると自動で所得税額が算出されます。自身で計算する手間が省けるため、計算が苦手な方は国税庁のホームページを活用しましょう。

所得税の納付方法は以下のとおりです。

  • 口座振替
  • インターネットバンキング
  • ATM
  • クレジットカード
  • スマートフォンアプリ
  • QRコード
  • 窓口

さまざまな支払方法が用意されているため、ご自身の都合のいい方法で納税しましょう。

確定申告の期間

確定申告の期間は、毎年2月16日~3月15日までの約1カ月間です。時間はたっぷりあるものの、書類内容にミスがあったり、書類が不足していたりすると修正申告をおこなわなければなりません。期限を過ぎるとペナルティが課される恐れもあるため、余裕をもって手続きを終わらせましょう。

まとめ

相続したマンションを売却する際は、譲渡所得税や住民税、登録免許税などの税金が発生します。すべての税金を納めるとなると高額になり、利益の大部分を失ってしまうかもしれません。納税負担を抑え、多くの利益を残したいのであれば、特例控除を活用しましょう。

控除を適用するには、確定申告をおこなう必要があります。確定申告をおこなわなければ控除が適用されないだけでなく、無申告でペナルティが課される可能性もあるため、必ず手続きを済ませることが大切です。余裕をもって確定申告を済ませ、十分な利益を手に入れましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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