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マンション相続をスムーズに進行するためには?手順と注意点を解説します!

マンションを相続する時はどうすればよいのでしょうか
誰でも遺産を相続する可能性はあるでしょう。お金であれば分けるのも簡単ですが、もしマンションを相続する時はどのように対応すればよいのでしょうか。

そこで本記事では、マンションを相続することになったら、どのように遺産の相続を進めていけばよいかを解説します。また、遺言書を開封する時の注意点や複数人で遺産を分割する時の方法、相続税や相続登記に関する内容もあわせて説明するため、よく確認しておきましょう。

マンションを相続する時の手続きは?

マンションを相続する時の手続きはどのように進めるのでしょうか
マンションを相続する時の手続きはどのように進めるのでしょうか

親族が所有しているマンションでも、ただ話し合いをすれば相続ができるわけではありません。相続するには事前の準備も必要です。そこで本章では、マンション相続の流れを説明します。まず、マンションを相続する手順は以下のとおりです。

  • STEP 1遺言書の確認
  • STEP 2相続人の決定
  • STEP 3相続人が複数の場合の相続方法を決める
  • STEP 4遺産分割協議書の作成
  • STEP 5相続税の申告
  • STEP 6相続登記申請書の作成
  • STEP 7相続登記

はじめに、「遺言書」を確認します。遺言書がない場合は、遺族たちでどのように相続をするのか決めます。相続は、「法定相続人」と呼ばれる相続の権利を持つ人だけが遺産をもらえると決まっており、故人との関係性により、相続の優先順位が決められています。

順位 相続人
常に相続人 配偶者
第1位 被相続人の子ども
第2位 直系尊属(父母など)
第3位 兄弟姉妹

配偶者は常に相続人になります。そして、配偶者に加えて相続人になるのは被相続人(亡くなった方)の子どもです。もし、子どもが一人もいない場合には、第2位の父母が相続人になります。

複数人で相続をする場合には、誰が何の遺産をどのくらい相続するのかを決める遺産分割協議をおこないましょう。協議をおこない、相続人全員の同意が得られたら「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書には相続の協議の結果を記し、全員の実印と署名を残します。さらに相続登記をする際には、実印を押した全員の印鑑証明書も必要です。遺産分割協議書は、マンションの相続登記をする時や預貯金を引き出す時にも必須になります。

遺産を相続すると、金額に応じた「相続税」の支払いが必要になります。申告は、被相続人が亡くなってから10カ月以内にしなければなりません。相続税の申告に必要な物は、相続税の申告用紙やマイナンバーの写し、相続人全員の印鑑証明などです。相続税の支払い期間は、確定申告と同じで毎年2月16日から3月15日です。現金で一括納付しなければならないので注意しましょう。

相続税の申告ができたら、相続登記をおこないます。相続登記の手続きは自分でおこなってもよいですが、必要な書類がかなり多いので大変な作業です。相続する不動産の所在地が分かれて複数あったりすると、請求先が複数になる場合もあります。期限に余裕をもって準備できるよう、早めに取りかかりましょう。

遺言書の種類と開封で注意すること

遺言書は開封に注意です
遺言書は開封に注意です

遺産相続でまずやるべきことは、遺言書の確認です。被相続人(亡くなった方)は、家族の争いや対立を避けたい思いから、遺言書を書いたのを伝えていない場合があります。遺言書が、金庫や故人の机の引き出しなどに隠されていないか探してみましょう。

ここで注意すべきなのは、遺言書を見つけてもすぐに開封しないことです。遺言書には、開封したら効力を失ってしまうものがあるためです。遺言書は、作成の仕方で3つの種類に分けられます。

公正証書遺言

「公正証書遺言」とは、法務大臣に任命された公証人の前で作成される遺言であり、公証人が遺言者の意思を確認し、真正性を保証する法的な文書です。通常の遺言書より法的効力が高く、遺言状の原本は公証役場に保管されます。原本が保管されており改ざんができないので、公正証書遺言は開封しても問題ありません。

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」とは、遺言者が自ら手書きで作成し、署名・押印した遺言書です。自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、内容が不明瞭だったり法的な要件を満たしていない場合、効力が疑われる可能性があります。そのため、開封は相続人立ち会いのもと、家庭裁判所でおこなわないといけません。もし、勝手に開封してしまうと、遺言書の効力は消えてしまいます。

秘密証書遺言

「秘密証書遺言」とは、遺言書の内容は明かさず、遺言書の存在を公証人に証明してもらう遺言書です。パソコンでの作成や代筆が可能ですが、公証人に確認してもらわなくてはなりません。開封は相続人立ち会いのもと、家庭裁判所でおこなわれます。

複数人でマンションを相続する場合の分け方は?

複数人でマンションを相続する時にはどのように分けたらよいのでしょうか
複数人でマンションを相続する時にはどのように分けたらよいのでしょうか

マンションを相続する場合、どのように分けるのがよいのでしょうか。マンションを複数人で相続する方法は、大きく分けて4種類あります。

現物分割

「現物分割」とは、マンションは兄、預貯金は姉、土地は弟……のように、遺産ごとに分割して相続する方法です。マンションは1人がそのまま相続します。現物分割して1人でマンションを所有すれば、以後売却や大規模な改修工事を予定しても、自分一人の判断で進められます。

共有分割

「共有分割」とは、マンションの名義を共有名義にして複数人で相続する方法です。相続時点では話がまとまりやすく事務も簡単ですが、その後、固定資産税や管理費の支払いをめぐって揉める原因になりがちです。また、共有名義にすると、マンションを売却する際には全員が合意しないとならないなど、自由に売買できなくなります。

代償分割

「代償分割」とは、他の相続人にマンションの相続に値する金額を支払う代わりに1人が所有権をもつ方法です。他の相続人にとっては、マンションを相続できなくても、代わりのお金をもらえるので納得しやすくなります。ただし、他の相続人に支払う金額は、マンションを相続する人のポケットマネーからの支出になります。

換価分割

「換価分割」とは、相続するマンションを売却し、現金化して分配する方法です。実際にマンションが売却された価格を均等に分配していくので、相続人にとっては納得しやすく公平に感じる分配方法です。現金が手元に入るので、売却時に必要になる仲介手数料も支払え、費用負担で揉めることもありません。

話し合いは簡単だけれど揉める可能性があったり、手続きは大変だけれど納得感があったりと、4つの方法でメリットとデメリットがあります。どの方法をとるのかは、当事者間でよく話し合うしかありません。

マンションの相続で相続税を計算する時にマンションの価格はどう判断する?

マンションを相続した時の相続税はどのように計算するのでしょうか
マンションを相続した時の相続税はどのように計算するのでしょうか

故人の財産を相続すると、財産の総額によって相続税がかかります。財産を引き継いだ人には、相続税の納税義務が生じます。相続財産になるのは、預貯金や株といった金融資産だけでなく不動産も該当します。マンションも相続することになれば、場合によっては相続税がかかります。どのように計算するのか以下で見ていきましょう。

相続税の基礎控除

まず、相続税には以下の計算式で求められる基礎控除があります。

【相続税の基礎控除】
3,000万円+600万円×法定相続人の数

例えば、法定相続人が3人の場合、
3,000万円+600万円×3=4,800万円となるので、基礎控除額は4,800万円です。

基礎控除を除いた金額に対し、相続税が計算されます。もし、相続財産が4,800万円以下だと相続税はかかりません。

なお、相続税は遺産総額に対して計算されます。マンションだけでなく、金融資産、生命保険も含まれます。マンションだけの金額が4,800万円以下でも、他に資産があれば相続税は発生するので注意です。

マンションの相続税評価額

マンションの相続税を計算するには、マンションの評価額を出す必要があります。計算のルールは国税庁によって定められています。マンションの場合は、建物部分と土地部分の相続税評価額を計算し、2つを足して金額が決まります。

建物部分の相続税評価額

建物部分の相続税評価額は、固定資産税の課税明細書に書かれているとおりです。固定資産税の金額は、毎年4月から6月に発行される明細書で確認できます。おおむね購入価格の7割です。

土地部分の相続税評価額

土地部分の相続税評価額は、「路線価方式」と「倍率方式」で算出します。どちらを使用するかは、物件が建つ土地に路線価が定められているかで判断します。

  • 路線価方式
    路線価×マンション敷地面積(平方メートル)×自分の持ち分割合
  • 倍率方式
    固定資産税 評価額×評価倍率×自分の持ち分割合

路線価とは、国税庁が定める路線(道路)に面した、標準的な宅地の1平方メートルあたりの価格です。路線価が定められていない土地を評価する場合は、倍率方式を使って計算します。自分が相続した土地の路線価は、国税庁のホームページで調べられます。 

【参考】国税庁ホームページ『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』 

相続税が払えないとどうなるか

マンションなどの不動産を相続した場合、売却しなければ手元に現金があるわけではないので、多額の相続税を納めるのは困難な場合があります。ちなみに、相続税が払えない場合は「延納」と「物納」で対応できます。

相続税の延納とは、相続税を分けて支払える制度のことです。相続税額が10万円以上だったり、納付できない正当な理由がある場合は、最長20年で延納可能です。ただし、利子税が必要になります。

相続税の物納とは、延納しても現金で納められない場合に、金額に相当する不動産や船舶、上場株式など物品で納めることもできます。ただし、相続税はあくまで現金納付が基本です。

不動産の相続登記に必要な書類は?

不動産登記に必要な書類は何でしょうか
不動産登記に必要な書類は何でしょうか

「相続登記」とは、相続したマンションの名義を変更することです。被相続人の名義から変更して初めて、不動産が自分の物となります。

相続登記の申請は、マンションの所在地域管轄の法務局でおこないます。必要書類を提出すると、約10日で完了証と権利証が届きます。必要書類はたくさんあって手続きが大変なうえ、不備があると書類のやりとりが増えてしまうので、失敗のないようよく確認してから対応しましょう。必要書類は以下のとおりです。

  • 1. 対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 2. 被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)または戸籍の附票
  • 3. 被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本
  • 4. 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 5. 対象不動産を取得する相続人の住民票または戸籍の附票
  • 6. 対象不動産の固定資産評価証明書
  • 7. 相続人全員の印鑑証明書
  • 8. 遺産分割協議書

1は法務局、2~7は市町村区役所で発行、8は自分で用意します。

相続登記の期限は明確に決まっていませんが、相続されたら速やかに手続きをするのが望ましいです。ただ、問い合わせる市町村区役所が、遠方だったり複数個所あると、手続きは煩雑で面倒と感じる場合もあります。そのため、相続登記がおこなわれずに放置されているケースが目立ち、問題になる場合もありました。2024年4月1日から、相続登記が義務化されます。相続財産に不動産があると知った日から3年以内におこなわなければなりません。

この記事のQ&A

マンションを相続する時の手続きは?

マンションを相続するにはまず、遺言書を確認します。遺言書をもとに相続人や相続方法を確認していきます。もし、遺言書がない場合は、相続人を決め相続の方法を決めていきます。相続方法が決まったら、内容を相続分割協議書に記します。そして、相続税の申告をし書類作成のあと、相続登記をおこないます。

遺言書の種類は?

遺言書には3つの種類があり、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」に分かれます。遺言書には勝手に開封すると効力を失うものもあるので、開封に注意が必要です。

複数人でマンションを相続する場合の分け方は?

マンションを複数人で相続する時の方法は大きく分けて4種類で、現物分割、共有分割、代償分割、換価分割があります。
それぞれの方法にメリットとデメリットがあるので、どの方法をとるかは当事者間でよく話し合うしかありません。

マンションを相続した時に相続税が払えなかったら?

相続税は基本的に現金で納めなければなりませんが、正当な理由がある場合に「延納」と「物納」が認められています。延納は相続税を分割支払いできる制度、物納は相続税を物で納める制度です。制度があるとはいえ利子税も発生するので、延納・物納は最終手段と心得ておきましょう。

不動産の相続登記に必要な書類は?

対象不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)や、被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本など、さまざまな書類が必要です。相続人全員の印鑑証明書や遺産分割協議書など必要書類が多いので、事前によく確認しておきましょう。

まとめ

本記事では、マンションを相続する時どのように遺産の相続を進めていけばよいかを解説しました。また、遺言書を開封する時の注意点や複数人で遺産を分割する時の方法、相続税や相続登記に関する内容も解説しました。マンションの相続は、必要事項をよく確認してスムーズに進めるよう心がけましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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