空き家売却の方法は?税金や費用、売却時の注意点について解説

本記事では、空き家を売却するメリットや売却方法、売却時にかかる諸費用、売却時の注意点などを解説します。空き家を所有してそのままの状態でいる方や、売却方法に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
知っておきたい!空き家対策特別措置法とは

空き家対策特別措置法は、正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」といい、近年の空き家問題を解決するために2015年(平成27年)に全面施行された法律です。調査によって「特定空き家等」に指定された場合、空き家を適切に管理していない所有者に対して市町村から助言・指導・勧告などの行政指導が入ります。勧告を受けても状況が改善されなかった場合は、罰金規定のある命令が発せられます。空き家の増加が続く状況を踏まえ、2023年(令和5年)に一部を改正する法律が施行されました。
特定空き家と認定されたらどうなる?
「特定空き家」として認定された場合、以下のような措置がおこなわれます。
- 行政の助言や指導で改善を求められる
- 固定資産税の特例が適用されなくなる可能性がある
- 罰金が科される可能性がある
- 行政によって解体される
助言や指導、勧告によって改善を求められるのが一般的ですが、それでも改善がみられない場合、最終的には行政代執行で解体されます。解体にかかる費用は所有者が全額負担することになりますので、放置するのは避けたほうがいいでしょう。
空き家を売却するメリット

空き家を売却すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
維持費がかからなくなる
空き家を売却することで、維持するためにかかる費用がなくなります。不動産を所有していると、毎年固定資産税・都市計画税がかかります。また、人が住まない家は老朽化が進みやすくなるため、傷んだ家の修繕が必要になるケースもあるでしょう。住んでいない場所にこれらの費用をかけるのはもったいないと感じることは多く、売却することで一つの悩みが解消されます。
管理の手間がかからなくなる
前述のとおり、人が住まない家は傷みやすいため、定期的に換気や通水などが必要です。遠方に住んでいて空き家を所有しているなど、現実的に管理が難しいケースもあるでしょう。管理の手間に加えて交通費もかかるため、定期的に負担に感じる管理の手間がなくなることは、大きなメリットといえます。
まとまったお金が手に入る
空き家を売却することで、まとまったお金が手に入ります。自分の趣味や子どもの教育費、家族との旅行、投資資金にするなど、さまざまな用途に充てることが可能です。また、相続した空き家の売却であれば、売却益が出た場合でも特例が適用される可能性があり、大きな節税効果を得られるでしょう。
空き家の売却方法には仲介と買取がある
空き家の売却方法は、主に「仲介」と「買取」の2種類です。仲介では中古住宅を新築や築浅住宅よりも安く購入し、自分好みにリフォーム・リノベーションしたい方からのニーズがあり、手を加えずそのまま売却することができます。しかし、ニーズが絞られるため売却まで時間がかかる可能性があるほか、建物の老朽化が進んでいる場合は建物を解体して更地で売却しなくてはならず、解体費用がかかります。一方、買取はそのままの状態でも売却しやすく、早期に売却することが可能です。しかし、相場よりも6~8割程度の価格になる可能性があり、売却しても損益が出てしまう可能性があるでしょう。
仲介

買取

仲介は、売主と買主の間に不動産会社を介して売買契約をおこなう方法です。売主に代わって、不動産会社が販売活動や契約書類の作成、契約手続きなどを進めてもらえます。買主は不動産会社以外の個人や法人のケースが多く、売主と買主が直接やり取りすることはほとんどありません。一方、買取は売主と買主の間に不動産会社が介入せず、直接取引をおこなう形です。この場合の買主は不動産会社で、契約手続きなどは買主の不動産会社がおこないます。
空き家を仲介で売却する
空き家を仲介で売却するには以下の方法があります。
空き家をそのまま売却する
空き家をそのまま売却するには、「中古住宅」として売却するか「古家付き土地」として売却するかのどちらかです。築20年以上経ち、老朽化が激しい場合には「古家付き土地」として売却するのがいいでしょう。
空き家をそのまま売却するメリット
空き家をそのまま売却すると、売却が完了するまで時間がかかるケースもあります。しかし、ある程度の築年数が経過していても住める状態を維持し、なおかつ立地がよければ、すぐに買い手がつく可能性があるでしょう。また、住宅用地の特例により、空き家を解体して更地にするよりも固定資産税が安く済むため、売却が完了するまでの費用を抑えることが可能です。
空き家をそのまま売却するデメリット
仲介で売却するには、購入者の目に留まるような魅力が必要です。築年数が経っている空き家だと見た目の印象が悪くなるうえ、購入者のニーズが狭まるため売却するのに時間がかかる可能性があります。一般的な戸建て住宅よりも売りづらくなってしまうことを考慮する必要があるでしょう。
空き家を解体して売却する
仲介では、空き家を解体して更地の状態で売却する方法もあります。建物の老朽化が進み倒壊の危険性がある場合や、リフォーム・リノベーションするよりも解体するほうが費用を抑えられる場合などにおすすめです。
空き家を解体して売却するメリット
空き家を解体して更地で売却すると、買い手が付きやすくなります。マイホームを考えている方のなかには、注文住宅にこだわって土地探しをおこなっている方も少なくありません。希望する土地が見つからず何年も探し続けているケースもあり、また、古家付き土地と比べて見栄えがよくなるため、更地のほうが早く売却しやすくなるでしょう。
空き家を解体して売却するデメリット
空き家を解体して更地の状態にすると、空き家があるときよりも土地にかかる固定資産税や都市計画税が高額になります。減税措置の対象だったときと比べて3~6倍の支払いになるので、売却期間なども含めて検討する必要があるでしょう。
また、解体するには当然ながら、解体費用が発生します。引き渡し前におこなう解体にかかる費用は、原則売主の負担です。ただし、空き家を解体する際に各自治体から補助金が出る可能性があるので、事前に調べて活用しましょう。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
空き家を買取してもらう
空き家を買取してもらうには以下の方法があります。
不動産会社に売却する
空き家を不動産会社に買い取ってもらうのも一つの方法です。相談からそのまま売却までスムーズに進む点が特徴といえますが、不動産会社が必ずしも買取をおこなっているわけではありません。そのため、買取が可能な不動産会社を探す必要があります。
不動産会社に売却するメリット
空き家を不動産会社に買い取ってもらうことで、早期に売却することが可能です。まとまったお金を手にできるまでの期間は、買取相談から早くて1カ月程度です。また、不動産会社が直接買い取るため、仲介手数料は発生しません。基本的に空き家はそのままの状態で引き渡すことができるので解体する必要もなく、売却にかかる費用を最大限に抑えられる点は売主にとって大きなメリットといえるでしょう。室内に家具などが残っていれば一般的には撤去が必要になりますが、交渉次第ではそのまま残して引き渡すことも可能です。
不動産会社に売却するデメリット
空き家の状態によっては、不動産会社に買い取ってもらう方法が最適な方法であると判断できるケースもあります。しかし、買取は仲介と比べて、売却価格が安くなる可能性が高くなります。不動産会社は買取後、自社でリフォームなど手を加えて再販売するケースがほとんどです。そのため、相場の6~8割程度での買い取りになります。価格重視で売却したい場合は時間がかかっても、買取より仲介のほうが高額で売却できる可能性が高いといえるでしょう。
空き家の売却時にかかる税金や費用

空き家を売却する際は、主に以下のような諸費用がかかります。
- 相続登記費用
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 仲介手数料
- 解体費用
それぞれ詳しく解説していきます。
相続登記費用
空き家が相続したものである場合、相続登記が必要です。通常は相続した時点で法務局に申請し、名義変更をおこなわなくてはいけません。しかし、売却する際に名義が変わっていない場合は、引渡しまでに相続登記を完了させておくようにしましょう。自分で登記の申請もできますが、司法書士に依頼するのが一般的です。
相続登記費用の内訳は、申請書類の取得費用、登録免許税、司法書士報酬の3つです。書類の取得費用が5,000円前後、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%(一部免除の可能性あり)、司法書士報酬は5万~10万円程度なので、合わせて15万~20万円前後と考えておくとよいでしょう。
譲渡所得税
譲渡所得税は、不動産を売却した際に発生する利益(譲渡所得)に対して課される税金です。譲渡所得税は住民税と取得税、復興特別取得税のそれぞれに税金が課された合計の総称をいいます。譲渡所得を算出する計算式は以下を参考にしてください。また、住民税などの税率は空き家の所有期間によって異なります。
譲渡所得額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡年の1月1日 時点での所有期間 |
所得税率 | 住民税率 | 復興特別 所得税率 |
合計税率 |
---|---|---|---|---|
5年以下 (短期譲渡所得) |
30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
5年超 (長期譲渡所得) |
15% | 5% | 0.32% | 20.32% |
※売却日ではなく「売却した年の1月1日時点」で判断
※「譲渡所得税」の税率は売却する不動産の所有年数によって異なります
※復興特別所得税は東日本大震災の復興にあてられる税金で、2037年まで納税する義務があります
印紙税
印紙税は、空き家を売却する際の不動産売買契約や領収書などの課税文書に課せられる税金です。売却金額や領収書に記載される金額に応じて税額が定められており、その税額の収入印紙を契約書などの課税文書に貼り付けて納税します。なお、2027年3月31日までに作成された契約書であれば、軽減措置の対象となるので軽減後の印紙税を納めるようにしましょう。金額ごとの印紙税は以下の表で確認してください。
不動産譲渡契約書 | 本来の印紙税 | 軽減後の印紙税 (2027年3月31日までに 作成されるもの) |
---|---|---|
10万円超 50万円以下 |
400円 | 200円 |
50万円超 100万円以下 |
1,000円 | 500円 |
100万円超 500万円以下 |
2,000円 | 1,000円 |
500万円超 1,000万円以下 |
1万円 | 5,000円 |
1,000万円超 5,000万円以下 |
2万円 | 1万円 |
5,000万円超 1億円以下 |
6万円 | 3万円 |
1億円超 5億円以下 |
10万円 | 6万円 |
5億円超 10億円以下 |
20万円 | 16万円 |
10億円超 50億円以下 |
40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
仲介手数料
仲介手数料は、仲介の方法で売却した際に不動産会社に支払う手数料です。基本的に成果報酬なので、売買が不成立となった際に支払う必要はありません。支払うタイミングは契約時に手数料の半金、決済(引渡し)時に残りの半金を支払うケースが多い傾向にあります。
低廉(ていれん)な空き家の売買における仲介手数料の特例
古くなった空き家の流通を活発化させるために国土交通省が2018年に導入した「低廉な空き家等の売買取引における媒介報酬額の特例」。
2024年7月1日に特例の改正がおこなわれ対象範囲が400万円以下から800万円以下まで拡大となり、報酬額の上限も18万円(税別)から30万円(税別)まで引き上げられました。
また、仲介手数料の支払いについても、今まで売主のみ対象としていましたが買主からも受け取ることが可能となりました。
売却価格(税別) | 仲介手数料の上限 |
---|---|
800万円以下 | 30万円+消費税 |
800万円超~ | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
解体費用(更地にして売る場合)
空き家を解体して更地で売却する場合、解体費用は売主の負担です。20~30坪程度の木造戸建ての場合、100万~150万円前後かかります。構造によって費用が異なり、鉄骨造やRC造のほうが高くなるのが一般的です。解体にかかる期間は、2週間~1カ月程度を目安に考えておくと良いでしょう。
空き家の3,000万円特別控除とは

3,000万円特別控除とは、被相続人から取得した不動産を売却する際に、一定の要件を満たせば利用できる特別控除です。空き家を売却して売却益が出た場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除されます。売却代金や相続してから売却に至るまでの期間などの指定がありますので、要件に当てはまるか事前に確認してみましょう。
空き家を売却する際の注意点

空き家の売却をスムーズにおこなうには、以下でご紹介するようなポイントを押さえておく必要があります。自分でできることから始めて、売却の準備を進めていきましょう。
空き家の名義変更ができているか確認する
まずは、空き家の名義変更ができているか確認することが重要です。不動産は本人名義のものでなければ売却することはできません。空き家の相続登記が完了しておらず名義が自分になっていない場合は、変更するまで売却できなくなってしまうため、早急に名義変更の手続きをおこないましょう。
抵当権が抹消されているか確認する
名義変更に加えて、抵当権が抹消されているかどうかも確認する必要があります。抵当権が抹消されている状態でなければ、不動産を売却することはできません。ローンが残っている状態で相続し、抵当権がそのままの場合は、売却金額によってローンの完済が可能かどうかも確認が必要です。抹消登記が完了していない場合は、遅くとも引渡しまでに抹消登記の申請をおこなうようにしましょう。
売却方法は自己判断せずに不動産会社に相談する
空き家の売却方法を決める際は、自己判断だけで決めずに不動産会社に相談することをおすすめします。より高値での売却を求めて、自己判断でリフォームしたり解体したりする方もいます。しかし、必ずしも購入者のニーズを押さえられているかどうかわかりません。また、希望する金額で売却できるとも限らないので、プロの意見を聞いて判断したほうがよいでしょう。費用をかけた分、損することがないように慎重な判断が大切です。
解体して売却する際はタイミングをはかる
空き家を解体して更地で売却する際は、更地にするタイミングをはかるようにしましょう。不動産は居住用建物がある土地よりも、更地のほうが固定資産税の負担が大きくなります。更地にした時点で減税措置の対象から外れ、売却が完了するまでの税負担が多くなってしまうので、引渡し時期から逆算して解体するようにしましょう。
まとめ
空き家を売却することは、売主の負担をなくすだけでなく、地域住民の命や環境を守り、空き家の再生にもつながります。使い道がなく放置したままの空き家がある場合は、売却を選択肢に入れてみましょう。売主が負担する費用や手間をできるだけかけずにスムーズな売却を希望する場合は、自己判断せず専門家の判断も取り入れることが大切です。空き家の売却を最適な方法でおこなうために、まずは不動産会社に相談することをおすすめします。
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