不動産売却時のつなぎ融資とは?メリット・デメリット、利用の注意点を解説!

うまく活用すれば、経済的な負担を軽減しながら住み替えができます。ご自身の場合はどうするのが最適か、記事を読んで確認してみましょう。
記事の目次
不動産の売却時に利用できるつなぎ融資とは?

不動産の売却時にもつなぎ融資を利用することができます。本章では、つなぎ融資とは何か、不動産担保ローンとの違いを解説します。
つなぎ融資とは
つなぎ融資とは、不動産を売却するまでの期間に、必要な資金を借り入れる融資のことです。売却する予定の不動産を担保にして融資を受けます。
住み替えには、自宅を売ってから新居を買う「売り先行」と、新居を買ってから自宅を売る「買い先行」の2通りあります。「売り先行」の場合、売却代金を新居の購入費用に充てることができます。しかし、「買い先行」の場合は、手元に資金がなければ、新居の購入ができません。この際に利用するのがつなぎ融資です。
融資された資金は、住み替え資金や引越し費用だけでなく、不動産を相続した際の代償金の支払いなどにも活用できます。
不動産担保ローンとの違い
不動産担保ローンも、つなぎ融資と同様、不動産を担保に融資を受けます。どのような違いがあるのか、表にまとめてみました。
つなぎ融資 | 不動産担保ローン | |
---|---|---|
前提条件 | 不動産の売却を前提 | 不動産の売却を前提 としていない |
融資期間 | 1カ月〜2年までの短期 | 20年までの長期 |
返済方式 | 元金一括返済方式 | 元利均等返済方式 |
つなぎ融資と不動産担保ローンの違いは、前提条件、融資期間と返済方式の3点です。つなぎ融資は、不動産の売却を前提としており、融資期間が1カ月〜長くても2年ほどです。元金一括返済方式で、毎月の返済は利息のみとなります。
一方、不動産担保ローンは不動産の売却を前提としておらず、資金をさまざまな目的で使うことが可能です。融資期間は最長20年までと長く、返済方式は元利均等方式で、元金と利息を含めた金額を返済していきます。融資期間が長期のため、繰上げ返済をする場合には、解約手数料が発生する可能性があることを覚えておきましょう。
売却時に利用できるつなぎ融資のメリット

住み替え時に利用できるつなぎ融資ですが、どういったメリットがあるのでしょうか。本章で詳しく解説していきます。
気に入った物件を買い逃さない
つなぎ融資を利用すると、気に入った物件を買い逃すことがありません。一般的に、不動産を売却する際には、売買契約の締結、決済、引き渡しなどの手続きがあり、時間がかかります。
もし、売却する前に気に入った物件が見つかった時、資金がなければ買い逃してしまうことも。物件との出合いはご縁もあるため、いつ気に入った物件と出合えるかはわかりません。
つなぎ融資を利用すると、新居の購入資金にあてることができるため、売却のタイミングとは関係なく、気に入った物件を購入できます。人気のある物件はすぐに売れてしまうため、買い逃さない点はメリットとなるでしょう。
売却のための時間を確保できる
不動産を売却するための時間を確保できる点も、つなぎ融資のメリットの一つです。売却のタイミングと関係なく資金が確保できるため、売却予定の不動産を安値で売り急ぐことがなく、売却のための時間を確保できます。
例えば、不動産の売却代金を新居の購入資金にあてたい場合、確実に早く売りたいと思うあまり、希望価格より下回る金額で売ってしまうことがあります。しかし、つなぎ融資を利用すると、先に資金が確保できるため、売却活動に時間を取ることができ、納得のいく価格で売ることが可能です。
売却のための時間が確保できれば、複数の不動産会社に見積もりを取ることもできるでしょう。よりよい条件での売却ができる点はつなぎ融資のメリットです。
引越し費用が抑えられる
つなぎ融資を利用すると、売却する前に新居を購入できるため、引越しが一度で済み、費用が抑えられます。例えば、新居が決まらないまま売却をしてしまうと、仮住まいをしなければなりません。仮住まいのあと新居に移るため、引越しを2回する必要が出てきます。
しかし、つなぎ融資で資金を融資してもらうことで、新居の購入資金が用意でき、売却する物件からそのまま新居に引越しができます。また、費用だけでなく、体力面・精神面でも短期間に2回の引越しは大きな負担となるでしょう。そういった負担を抑えられる点はメリットでもあります。
売却までの返済は利息のみで済む
つなぎ融資のメリットは、売却までの返済は利息のみである点も挙げられます。先述したように、つなぎ融資は売却予定の不動産を担保にして借り入れるものです。売却予定の不動産が売却できれば、その売却代金でつなぎ融資の元金を一括で返済することになります。そのため、売却までの返済は利息のみとなります。
ただし、つなぎ融資は住宅ローンと比較し、金利が高い傾向にあるため、事前にシミュレーションしておきましょう。
つなぎ融資のデメリット

不動産売却時に利用するつなぎ融資のデメリットは何でしょうか。メリット・デメリットを踏まえたうえで、よく検討しましょう。
取り扱っている金融機関が限られる
つなぎ融資のデメリットの一つは、取り扱っている金融機関が限られることです。例えば、SBIエステートファイナンスの「売却つなぎローン」は、取扱地域が1都3県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)となっています。セゾンファンデックスの「不動産売却前提ローン」では、対応エリアが全国と記載されていますが、一部対応できない地域があると注意書きがあります。お住まいの地域につなぎ融資を取り扱っている金融機関があるか、事前に調べておきましょう。
手数料がかかる
つなぎ融資を利用すると、事務手数料がかかる点もデメリットの一つです。先ほど例に挙げたSBIエステートファイナンスでは、融資事務手数料として融資金額の1.1%〜3.3%がかかります。例えば、融資金額が1,000万円だった場合、11万円〜33万円かかることになるでしょう。
事務手数料と2回の引越し費用などを比較し、つなぎ融資を利用するか決めましょう。
融資期間内に希望額で売れるとは限らない
つなぎ融資のデメリットとして、融資期間内に希望額で売れるとは限らない点が挙げられます。不動産の価格は、物件の状態や需要と供給のバランスによって変動します。駅から遠かったり、築年数が古かったりすると、売却価格は低くなるでしょう。
売却してから新居を購入する場合は、売却価格がわかっているため、資金計画が立てやすくなります。しかし、予想よりも売却価格が低くなってしまった場合には、自己資金を増やすなど対策が必要となります。
さらに先述したように、つなぎ融資は融資期間が定められています。もし、返済日までに売却できなければ、希望額でなくても売却し、元金を返済しなければなりません。
希望する価格で売却するために、実績があり、信頼できる不動産会社に依頼するのも大切です。
遅延損害金が発生する可能性がある
融資期間内に売却できなければ、遅延損害金が発生する可能性があります。つなぎ融資では、売却予定の不動産を担保にしているため、融資期間内に売却できなければ、金融機関が不動産を競売にかけて売却し、返済にあてることになります。
さらに、融資期間に返済できなかったペナルティとして遅延損害金が発生することも。遅延損害金の年利は高く設定されており、三井住友トラスト・ローン&ファイナンス株式会社の「不動産売却つなぎローン」では年率19.5%となっています。遅延損害金を発生させないためには、融資期間を長めに設定しておくといいでしょう。ただし、その分金利がかかり、返済額が多くなることに注意が必要です。
つなぎ融資が必要になるケース

先述したように、新居を先に購入してから今の住居を売却する際に、つなぎ融資は有効です。他にどういう場合につなぎ融資が必要になるのか、それぞれ見ていきましょう。
住宅ローンの抵当権を抹消したい時
住宅ローンの抵当権を抹消したい場合にも、つなぎ融資は有効です。抵当権は、住宅ローンを組む際に金融機関が設定するものです。万一契約者が住宅ローンを返済できなかった場合に、金融機関が代わりに住宅を売り、住宅ローンの残債を回収する権利のことを指します。住宅ローンを完済した際に、抵当権を抹消できます。
住宅ローンが残っている状態で売却する場合、抵当権があるため、リスクが高いことから、買い手がなかなか見つからないでしょう。つなぎ融資を利用し、あらかじめ住宅ローンを完済し抵当権を抹消することで、買い手も見つかりやすくなります。
新しく組む住宅ローンの融資までに資金が足りない時
新しく組む住宅ローンの融資までに資金が足りない場合、つなぎ融資を利用すると資金が用意できます。通常、住宅の引き渡し日に住宅ローンの融資を受けて残代金を支払い、決済をおこないます。しかし、トラブルによって融資が実行されず、決済できない時があります。この際につなぎ融資を受けることで、引き渡し日に決済が可能となります。
売却のタイミングが合わない時
不動産を売却するには、売却活動や売買契約の締結、決済など、時間がかかります。そのため、売却のタイミングが希望通りに進まない場合があります。例えば、転勤ですぐに引越ししたい時など、つなぎ融資が利用できれば、すぐに新居の購入資金を確保できます。売却する前に資金が確保できるため、新居の購入・住み替えがスムーズに進められます。
売却時のつなぎ融資に関するよくある質問
ここでは不動産売却時のつなぎ融資に関するよくある質問をまとめました。
融資が実行されるまでにどれくらいかかる?
つなぎ融資の融資実行までにかかる時間は、金融機関によって異なります。例えば、セゾンファンデックスの「不動産売却前提ローン」は最短1週間で融資可能となっています。融資が実行されるまでに、金融機関で審査がおこなわれます。また、融資実行の手続きも必要となるため、余裕を持って申し込むようにしましょう。
住宅ローンの返済があっても利用できる?
つなぎ融資は、住宅ローンの返済があっても利用可能です。つなぎ融資の借入金と、不動産の売却代金で、今住んでいる家の住宅ローンを完済し、抵当権を抹消することができます。また、新居の購入資金にあてることも可能。ただし、手数料がかかったり、利息の返済が必要となるため、資金計画をシミュレーションしたうえで、利用しましょう。
売却できなかった場合はどうなる?
売却が思うように進まず、融資期間内に売却できない場合もあるでしょう。売却できなかった場合、最終返済期日に元金を一括返済しなければなりません。また、返済できない場合には、遅延損害金が発生します。確実に売却をしたいのであれば、実績があり、信頼できる不動産会社に依頼しましょう。
まとめ
本記事では不動産売却時に利用できるつなぎ融資について解説しました。つなぎ融資を利用すると、売却のための時間を確保できたり、新居購入のための資金が用意できたり、さまざまなメリットがあります。しかし、融資期間内に売却できなければ、遅延損害金を払わなければならない可能性もあるでしょう。
複数の不動産会社に見積もりを依頼し、実績があり、信頼できる会社に相談や売却を任せると安心です。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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