返済期間50年の住宅ローンはきつい?メリット・デメリットを徹底解説

毎月の返済額を抑えられるのが魅力ですが、期間が長いため不安に思っている人も多いかもしれません。
本記事では、50年の住宅ローンのメリット・デメリットや向いている人の特徴を紹介します。
50年の住宅ローンを組む以外で、毎月の返済額を抑える方法も紹介しているので、返済に不安のある方はぜひ最後までお読みください。
記事の目次
50年の住宅ローンのメリット

「返済期間50年の住宅ローンは期間が短いものと何が違うの?」「返済期間が長いメリットは?」と気になる人も多いでしょう。50年の住宅ローンのメリットは以下の3つです。
毎月の返済額を抑えられる
返済期間50年の住宅ローンのメリットは、月々の返済額を減らせることです。
毎月の返済負担が減れば、浮いた分は生活費や教育費など別の支出に充てられるでしょう。
特に20代で収入が高くないうちは、住宅ローンの返済に追われて生活が苦しいケースも少なくありません。
住宅保証機構株式会社の住宅ローンシミュレーションをもとに、返済期間によって月々の返済額がどのくらい変わるのか見てみましょう。
借入額:3000万円
返済方法:元利均等返済
金利:年2.190%(50年)、年1.940%(35年)、年1.460%(20年)
※融資手数料・保証料は考慮せず計算
※新機構団信付きの【フラット50】等の借入金利水準(2023年10月)のもっとも多い金利で計算
返済期間 | 毎月の返済額 |
---|---|
50年 | 8万2,315円 |
35年 | 9万8,457円 |
20年 | 14万4,212円 |
返済期間を50年に設定すれば、毎月数万円ほど返済額を減らせる可能性があります。
出産や教育など、今後のライフイベントにかかる資金も用意しやすくなるでしょう。
住宅ローンの返済が不安な方は、期間を延ばすことを検討してみてください。
若くても住宅ローンが組める
返済期間50年の住宅ローンは若年層向けのプランです。
先述のとおり、期間が長いほど毎月の返済額が少なくなるため、収入に対しての返済負担率を下げられます。
住宅ローンの審査では、年齢や年収、勤続年数だけでなく、返済負担率も重視されます。
返済期間が長いプランであれば、無理のない返済計画を立てつつ住宅ローンを組むことが可能になるでしょう。
団体信用生命保険を長期間活用できる
団体信用生命保険(団信)とは、被保険者(住宅ローン契約者)が保障期間内に死亡・高度障害状態になった場合、残りの返済が免除されるものです。
住宅ローンを契約する際は、一般的に団信にも併せて加入するケースがほとんどです。
長期で返済する住宅ローンであれば、必然的に団信の保障期間も長くなるでしょう。
団信の種類によっては、返済免除だけでなく保険金の支払いがあったり、特約を付加して3大疾病や入院時にも保障を受けたりできます。
50年の住宅ローンで団信に加入すれば、長期間活用できるでしょう。
50年の住宅ローンのデメリット

返済期間50年の住宅ローンは、期間の短いものと比べてデメリットが増えてしまうのが事実です。
50年の住宅ローンのデメリットは以下の4つです。メリットだけでなくデメリットも把握したうえで、申し込むべきか検討しましょう。
返済総額が大きくなる
50年の住宅ローンは、期間が短いものと比較すると返済総額が大きくなるのがデメリットです。
返済期間が長いため、元金に対する利息部分が膨らんでしまいます。
毎月の返済額は少ないものの、長い目で見るとより大きな金額を返済する点は注意が必要です。
また、借り入れする金融機関によるものの、一般的に返済期間が長いほど金利は高くなる傾向があります。
50年の住宅ローンを検討する際は、毎月の返済額だけでなく総返済額や金利の差も確認しておきましょう。
老後も返済が続く
50年の住宅ローンを検討する時は、定年退職後も返済が続くことを頭に入れておきましょう。
例えば、25歳で借りた場合の完済時年齢は75歳です。
定年退職後は基本的に年金生活となり、収入が大きく減少します。
限られた年金の中から返済分を捻出しなければならないため、老後の生活に大きく影響するかもしれません。
50年の住宅ローンを借り入れる場合は、資金に余裕が出たタイミングでの繰り上げ返済や、借り換えなどを検討する必要があります。
契約前に将来の返済計画を具体的に立てておきましょう。
返済中にリフォームが必要になる可能性がある
50年の住宅ローンで住宅を購入した場合は、返済中にリフォームが必要になる可能性も高いです。
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会の「2022年度 住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査 結果報告書」によると、リフォームを実施・検討する築年数は25年以上が最多となっています。
住宅ローンを完済する前にリフォームするなら、返済とは別に資金を用意したり、追加でローンを組んだりする必要があります。
50年の住宅ローンを組んだ場合は、将来のリフォームにかかる資金も計画的に準備しておきましょう。
残債割れリスクが高くなる
返済期間50年の住宅ローンは、残債割れリスクも考慮しておく必要があります。
残債割れとは、不動産の売却金額で残りのローンを完済できない状態のことです。
住宅は転勤や子育てといったライフスタイルの変化など、さまざまな理由で売却する可能性もあるでしょう。住宅の売却時は、その売却資金でローンを完済するのが一般的です。
返済期間が長いローンの場合、返済中に資産価値が大きく下がってしまうケースも少なくありません。
物件の資産価値が下がると売却金額よりもローン残高が上回り、自己資金を別途用意するか、売却を諦めなければならないかもしれません。
新築・都心の物件など資産価値が下がりにくい住宅を購入すれば、残債割れリスクを回避できます。
購入時に売却のことを考えるのは難しいかもしれませんが、念のため頭に入れておきましょう。
50年の住宅ローンがおすすめの人の特徴

「月々の返済額が減るのは魅力的だけど、50年のローンで後悔したくない」と悩んでいる人も多いかもしれません。
返済期間50年の住宅ローンが向いている人の特徴は以下のとおりです。
20代の人
50年の住宅ローンは20代におすすめです。
20代のうちは収入が上がらず、住宅ローンを組みたくても希望の予算通りに組めないこともあるでしょう。
返済期間を50年に設定すれば月々の返済額が少なくなり、返済負担率を下げられるため、年収が高くなくても審査に通りやすくなります。
より高額なローンを組めるようになるため、住宅の購入予算を引き上げることも可能です。
資産形成と返済を両立できる人
50年の住宅ローンは、返済をしながら貯蓄や運用などの資産形成をしたい人にも向いています。
月々の返済額を抑えられるため、手元に残ったお金を教育資金や老後資金の貯蓄・運用に回しやすくなるでしょう。
また、住宅ローン以上の金利での運用に成功すれば、50年ローンのメリットをより享受できます。
返済期間の長さをうまく利用して資産形成をするなら、50年ローンを検討してみましょう。
資産価値の高い住宅を購入する人
前章でも述べたとおり、50年の住宅ローンは残債割れリスクが高いことがデメリットです。
資産価値が高い住宅を購入するなら、万が一50年ローンの返済途中で売却することになっても残債割れを防げる可能性があります。
将来後悔しないためにもさまざまなシミュレーションをしておきましょう。
50年の住宅ローン以外で月々の返済額を抑える方法

「毎月の返済額はなるべく減らしたいけれど50年ローンはリスクが高そう……」と悩んでいる人も多いかもしれません。
50年の住宅ローンは返済期間が長い分デメリットも増えるため、他の方法で月々の返済額を抑えられないか気になりますよね。
50年の住宅ローンを組む以外で月々の返済額を抑える方法は、以下の3つです。
毎月の返済に不安がある人は、本章の内容を参考にしてみてください。
低金利のローンに借り換えをする
住宅ローンを借り入れたあと、途中でより低金利のローンに借り換えをすれば月々の返済額を抑えられます。
住宅ローンの金利は景気や物価などさまざまな要因で見直されます。基本的に住宅ローンは20~35年と長期間で返済を続けるものであり、返済中に金利が下がる可能性も十分考えられるでしょう。
金利が低いローンに借り換えができれば、毎月の負担も軽減できるはずです。
ただし、借り換えの場合は手数料や手続きの手間などのコスト面もかかります。
契約時の金利と比較して、コスト面も含めて借り換えのメリットがあるなら前向きに検討するのがおすすめです。
ボーナス併用払いを活用する
住宅ローンは毎月払いだけでなく、ボーナス併用払いも可能です。
ボーナス併用払いは、年に1~2回毎月の返済額に上乗せして返済する方法です。
一般的には、住宅ローン借入額の50%以下をボーナス払いにします。
ボーナス併用払いを設定すれば、月々の返済額を抑えられるメリットがあります。
「返済期間は長くしたくないけれど、どうしても月々の返済額を抑えたい」という人に向いている返済方法です。
ただしボーナス併用払いは毎月払いよりも元金返済のスピードが遅くなるため、返済総額が増えるのがデメリットです。
また、会社の業績などでボーナスの金額が変動することも少なくありません。
最悪の場合ボーナスがカットされ、住宅ローンの返済自体が難しくなるリスクもあります。
そのため、万が一ボーナスが支払われなくなっても、問題なく返済を続けられるか具体的に考えておく必要があります。
ボーナス併用払いでボーナスのほとんどを返済に充ててしまい、教育や老後に必要な資金を用意できないなんてことにならないよう利用する場合は、貯蓄に回す金額も考慮しましょう。
住宅ローン控除を活用する
直接的に毎月の返済額を減らせるわけではありませんが、住宅ローン控除を活用すれば節税につながり、所得税や住民税の還付を受けられる可能性があります。
住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住した年分以後の各年分の所得税や住民税額から控除できる制度です。
国税庁が定める住宅ローン控除の利用条件は以下のとおりです。
- 返済期間が10年以上あること
- 物件を取得してから6カ月以内に入居し、控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住していること
- 住宅の床面積(注1)が50平方メートル以上であり、かつ、床面積の2分の1以上を専ら自己の居住の用に供していること
- 控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下であること
- 贈与によって取得した住宅でないこと
(注1)床面積の判断基準は、次のとおりです。
- 登記簿に表示されている床面積により判断します。
- マンションの場合は、階段や通路など共同で使用している部分(共有部分)については含めず、登記簿上の専有部分の床面積で判断します。
- 店舗や事務所などと併用になっている住宅の場合は、店舗や事務所などの部分も含め、建物全体の床面積によって判断します。
- 夫婦や親子などで共有する住宅の場合は、ほかの人の共有持分を含めた建物全体の床面積によって判断します。
ただし、マンションのように建物の一部を区分所有している住宅の場合は、専有部分の床面積によって判断します。
住宅ローン控除を利用する場合、2年目以降は年末調整が可能ですが、1年目だけは確定申告が必要なので注意しましょう。
また、新築住宅だけでなく、中古住宅の購入時などの場合でも住宅ローン控除を受けられるため、詳細は国税庁のホームページを確認してください。
この記事のまとめ
最後に、返済期間が50年の住宅ローンについてよくある質問をまとめてみました。
50年の住宅ローンを組むメリット・デメリットは?
50年の住宅ローンを組むにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
メリット
- 毎月の返済額を抑えられる
- 若くても住宅ローンが組める
- 団体信用生命保険を長期間活用できる
デメリット
- 返済総額が大きくなる
- 老後も返済が続く
- 返済中にリフォームが必要になる可能性がある
- 残債割れリスクが高くなる
20代のうちから住宅ローンが組めるのはメリットといえますが、住宅ローンの返済が完了するのは70代となるため、老後の生活が不安になりますよね。そのため、ボーナス払いの併用や、繰り上げ返済なども考慮しておきましょう。
50年の住宅ローンはどんな人におすすめ?
20代のうちに家を購入したい人、月々の返済を抑えたい人、資産価値の高い家を購入したい人などに向いています。
ライフイベントによる支出額などを考慮しながらシミュレーションをしておきましょう。
50年の住宅ローンの返済額を減らすには?
住宅ローンを返済している間に、金利の変化によっては借り換えた方が返済額が低くなる場合もあります。ただし、住宅ローンを借り換える際には諸費用がかかるため注意が必要です。
その他、ボーナス払いを併用するのもひとつの方法ですが、こちらも会社の業績によってボーナスをカットされるなどのリスクがあることも念頭に置いておきましょう。
返済期間50年の住宅ローンは月々の返済額を抑えられるため、主に若年層向けのプランです。
ただし返済総額が大きくなるだけでなく、老後まで返済が続く、残債割れリスクが高くなるなどデメリットもあるため、慎重に検討する必要があります。
50年の住宅ローンに不安がある方は、別の方法で月々の返済額を抑えることも考えましょう。
住宅ローンの借り換えやボーナス併用払いなど、返済期間を長くする以外の方法でも毎月の負担は減らせます。
また住宅ローン控除を利用して節税を狙う選択肢もあります。
これから住宅ローンを借り入れる人は、長期的なライフプランや返済計画を立てたうえで、自分に合った方法を選びましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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