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住宅ローンを20年にするとどうなる?選択時に持つべき視点もわかりやすく解説!

住宅ローンの返済期間を20年で組む時のポイントやメリットデメリットを解説します
40代で住宅ローンを借りる時、定年までの20年くらいで完済したいと考える人もいらっしゃると思います。また、30年以上の長いローンを組むよりも、20年くらいのほうがよいと考える人もいらっしゃるでしょう。しかし、いざ住宅ローンの借入期間を考えてみると、そもそも何を基準に判断してよいかわからないですよね。

本記事では、住宅ローンの借入期間を20年に設定した時にどうなるのか、返済期間を20年にするメリットやデメリットを解説します。また、住宅ローンの借入期間を選ぶ時に基準となる考え方やポイントも解説します。

住宅ローンを20年に設定すると毎月の返済額や総支払額はどうなる?

住宅ローンの借入期間はどれくらいがよいのかシミュレーションしてみましょう

住宅ローンを組む時に、借入期間をどれくらいにすればよいのか悩む人も多いでしょう。では、借入期間を20年にした時と、35年にした時で毎月の返済額や総支払額がどのように変わるか、シミュレーションをします。なお、試算条件は以下のとおりとします。

  • 借入金額 3,000万円
  • 返済方式 元利均等
  • 当初金利 1.5%
  • 金利変動はしないものとする
  • 毎月の返済以外の支払いはしないものとする

毎月の返済金額の変化は?

まずは、毎月の返済金額を比較します。シミュレーション結果を見てみましょう。

借入期間(返済期間) 毎月の返済金額
20年 14万4,763円
35年 9万1,855円

比較すると、毎月の支払いには約5万円の差が出ます。5万円の差であれば大きな差ではないと考える人もいれば、5万円あれば投資など他の有意義な出費に使えそうと考える人もいらっしゃるかもしれません。考えは人それぞれですが、返済期間が15年変わると毎月の支払いではこのような差になります。

支払総額の違いは?

次は、返済総額を比較します。シミュレーション結果は以下のとおりです。

借入期間(返済期間) 返済総額
20年 3,474万3,155円
35年 3,857万9,007円

比較すると、支払総額には約384万円の差が出ます。約384万円の差は大きいと考える人も多いのではないでしょうか。ただ、この返済総額は、繰り上げ返済やボーナス払いなどをおこなわなかった場合です。もし途中で繰り上げ返済などをおこなえば、この差はもっと小さくなります。

借入期間が短いほうが、月々の返済金額は大きくなりますが、支払総額は少なく済みます。借入期間変更で生じる差に加え、他にもメリットやデメリットがあります。さまざまな要素を総合的に判断して、無理のない返済計画をもとに借入期間を決めましょう。

住宅ローンを20年で契約するメリットとは?

住宅ローンを20年で契約するとどのようなメリットがあるのでしょうか

住宅ローンの借入期間は自由に決めることができますが、あえて20年で契約するとどのような利点があるのでしょうか。住宅ローンを20年で契約するメリットは、以下のとおりです。

金利リスクの軽減

住宅ローンを20年で契約する際の重要なメリットの一つは、20年以上の長期固定設定よりも金利リスクが軽減される点です。

長期間の住宅ローン契約では、金利変動の影響を受けやすくなります。金融市場の動向や経済状況によって金利が上昇する可能性があり、返済額が増加するリスクが高まります。当然ながら、長期間の金利動向を予測するのは難しく、将来の金利変動に対する不確実性が高まります。長期固定設定の場合、金利が契約時よりも上昇した場合、支払総額が増加するリスクがあります。しかし、20年の契約期間の場合、金利の変動に対する影響が30年以上の長期契約よりも相対的に小さくなります。

20年の契約期間は、経済状況の変動にも柔軟に対応できる利点があります。将来的な収入の変動やライフプランの変更に対しても、20年の比較的短い期間でのローン完済が見込まれるため、安心感が増します。もし、借入期間中に金利が急上昇した場合は、固定期間中に繰り上げ返済をおこない、返済期間を短縮する措置を取った対応が可能です。これにより、金利上昇のリスクを最小限に押さえることができます。

生活負担の軽減

20年の契約期間は、長期固定設定よりも生活負担を軽くできます。

まず、20年の住宅ローン契約では、長期間の契約に比べ、比較的近い将来にローン完済が見込まれ、ライフプランの変更や経済状況の変動に対する柔軟性が上がります。もし、借り手の収入が将来的な増加を見込める場合には、収入増加後の支払いに余裕ができます。さらに、長期間返済を続けるほど増える利息も、20年をめどに完済できるので、結果的に返済総額を低く抑えることができます。

総括すると、住宅ローンを20年で契約すると、将来への柔軟な対応が可能になり、生活負担が軽くなります。また、借入期間をできるだけ短くすると返済総額を抑えることができます。これにより、借り手は経済的な安定感を得つつ、余裕をもって生活を送れるようになります。

早期の所有権確立

住宅ローンを20年で契約すると、当然ながら長期契約の場合よりも早期に所有権を確立できます。借入期間は短いほど、ローンの完済が早まります。契約期間が短ければ、毎月の返済額が比較的高く設定されますが、その分元本の返済が速く進み、借金を早期に返済できます。一方、長期固定設定の場合、月々の返済額が低く設定され、返済完了までの期間が長くなります。

長期固定設定では所有権確立までの期間が長いため、価値向上の利益も後回しとなりがちです。しかし、20年の契約では早期にその利益を享受でき、住宅のバリューアップにともなう価値向上が早まります。借入期間が短いため、ローンの完済が迅速に進み、将来的な経済的自由や投資のチャンスがあるのも利点です。

住宅ローンを20年で契約するデメリットとは?

住宅ローンを20年で契約するとどのようなデメリットがあるのでしょうか

住宅ローンを20年で契約するとさまざまなメリットがありましたが、反対にデメリットはあるのでしょうか。主なデメリットは、以下のとおりです。

20年以下の短期固定金利や変動金利より金利が高い

住宅ローンの20年固定金利は、35年固定や30年固定と比べれば低くなります。しかし、変動金利や短期固定金利と比較すると、金利が高いのがデメリットになります。

変動金利や短期固定金利の場合、金利変動のリスクは借り手が負うため、金利は比較的低く設定されることがあります。一方で、20年間の固定金利契約は、金利変動の影響を受けにくく、金融機関は将来のリスクをカバーするために金利を上乗せする場合があります。

選択肢が限られる

金融機関は、さまざまな住宅ローンの金利優遇プランを提供して利用者確保に努めています。ただ、20年の固定金利を提供する金融機関は、そのポリシーや経営戦略によって異なります。短期や長期固定金利に注力しているのは一部の金融機関で、なかには20年固定金利を提供していない場合もあります。金融商品は住宅ローンの需要に応じて提供されるため、20年固定金利に対する需要が低い場合、金融機関が提供するプランも限られる可能性があります。

その結果、借り手が20年の契約を検討する際には、金融機関の選択肢が制限される可能性があります。選択肢が限られると、競争がなくなり、金利やサービスの選択肢が少なくなることが考えられます。

固定金利終了後の金利変動リスクがある

住宅ローン契約で、一部の場合では固定金利の期間が終了すると、変動金利に切り替わることがあります。これにより、元々は固定だった金利が市場の金利変動に応じて変動する可能性が出てきます。20年間の変動リスクは抑えられても、固定金利が終了すると金利変動リスクは避けられません。

住宅ローンの金利は、市場金利の影響を受けます。固定金利の期間中に市場金利が変動すると、固定金利終了後の金利も変動します。金利が変動すると、返済額が増減する可能性があります。

将来の金利変動を正確に予測するのは難しいうえ、固定金利終了後の金利変動により、返済額が増加すると、借り手にとっては予想外の追加負担が生じる可能性があります。これにより、生活費や他の支出に対する余裕が減少するリスクがあります。住宅ローンを20年で契約する際には、固定金利終了後の金利変動リスクがあることを覚えておきましょう。

住宅ローンで20年返済を選ぶ時のポイントとは

住宅ローンの20年返済を選ぶ時のポイントは何でしょうか

メリットとデメリットを理解して、住宅ローンを20年で返済していくことを考える時に、どのような点に注目すればよいのでしょうか。この章では、住宅ローンの20年返済を選ぶ時のポイントを解説します。

借入金利をみる

住宅ローンを選ぶ際のポイントは、借入金利をみることです。金利は、借りたお金を返す際に支払う利息の割合を示すものであり、返済総額や月々の支払額に大きな影響を与えます。金利を考慮して、自身や家計に最適な金利タイプを選びましょう。

また、金利は金融機関の間で競争があるため、複数の銀行や信用組合から見積もりを取ることで、より有利な金利条件を見つけられる可能性があります。交渉できる余地があれば、積極的に交渉するのも大切です。

固定期間終了後の金利をみる

20年での住宅ローン契約を検討する時は、借り入れ時の当初金利だけでなく21年目以降の金利がどうなるかも慎重に検討しましょう。固定期間がある住宅ローンでは、固定期間が終了すると、それ以降の金利優遇幅は小さくなるのが一般的です。そのため、固定期間が終了すると金利が上がり、返済額が高くなってしまう可能性があります。21年目以降、金利が上がる可能性がある場合は、20年で返済できるようにした方がいいでしょう。

金利の設定には、借り入れ当初一定期間金利優遇される当初優遇タイプと、全期間優遇のある全期間優遇タイプがあります。それぞれに利点と欠点があります。固定期間終了後の金利を確認し、自身の経済状況やリスク許容度に合わせて、適切な金利タイプを選びましょう。

付帯サービスの内容を確認する

住宅ローンを20年返済で選ぶ際には、付帯サービスの内容も重要です。付帯サービスは特に、団体信用生命保険(以下、団信)の特約が代表的です。通常の団信は債務者の死亡時に残債が消滅しますが、特約を付帯すると保障範囲が広がり、多くの疾病に対する保障が提供されます。

付帯サービスで付加できる内容には、がん50%保障団信や全疾病保障などがあります。
それ以外に、固定期間終了後の優遇金利幅なども考慮すべきです。これらの特約を付帯サービスとして提供する金融機関もあり、金利に上乗せされる場合もあれば、無償で提供される場合もあります。付帯サービスで、保障を受けつつ返済のリスクも軽減できるので、よく精査して選ぶべきです。

事務手数料を確認する

事務手数料がかかるのか、いくらなのかなどもよく確認しておきましょう。計算方法が定額なのか、定率なのかでも、費用が大きく異なります。返済期間中に、繰り上げ返済を検討しているならなお、手数料の金額に加え、繰り上げ返済の手順も確認しておくことをおすすめします。

記事のおさらい

Q:住宅ローンを20年に設定すると毎月の返済額や総支払額はどうなる?

A:借入期間が20年の場合、毎月の返済額は144,763円で、総支払額は34,743,155円です。
35年の場合は、毎月の返済額は91,855円で、総支払額は38,579,007円です。比較すると、毎月の支払いには約5万円、返済総額では約384万円の差が出ます。

Q:20年返済で住宅ローンを組む時のメリットとは?

A:20年返済で住宅ローンを組むと、20年以上の長期固定設定にした時よりも、金利が低くなることがメリットです。また、返済が20年で終わるので金利リスクを下げることができます。さらに、生活負担の軽減が期待できるとともに、早期で住宅の所有権を確立できることもメリットです。

Q:20年返済で住宅ローンを組む時のデメリットとは?

A:20年返済で住宅ローンを組むと、それよりも短期の固定金利や変動金利と比べ、金利が高くなるのがデメリットです。また、20年返済の住宅ローンのプランは他のプランよりも選択肢が限られたり、固定金利終了後の金利変動リスクがあるのもデメリットです。

Q:住宅ローンで20年返済を選ぶ時のポイントとは?

A:借り入れ時の金利をみるとともに、固定期間終了後の金利もチェックしましょう。また、団信の内容をはじめ付帯サービスもチェックしましょう。さらに、借り入れ後に繰り上げ返済などをおこなう可能性もあるので事務手数料もよく確認しましょう。

まとめ

本記事では、住宅ローンの借入期間を20年に設定した時、毎月の返済金額や総支払額がどうなるのか、メリット・デメリットを解説しました。また、住宅ローンの借入期間を選ぶ基準となる考え方やポイントも解説しました。家庭の状況によって、適切な住宅ローンの借入期間や毎月の支払金額はさまざまです。
住宅ローンを組む時は、金融機関など専門家に相談のうえ、無理のない返済計画を立て、余裕を持って返済ができるようにしましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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