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住宅ローンの世帯年収ごとの借入金額の目安は? 決めるポイントを3つ紹介

住宅ローンの借入金額を決めるには世帯年収ごとの借入金額の目安が役立ちます
共働きの家庭で住宅ローンを世帯年収で利用したいと考えた時、借入金額の目安を知りたい方もいるでしょう。住宅ローンは、ペアローン、連帯保証、連帯債務などの方法を利用すれば世帯年収で審査を受けることが可能です。しかし、世帯年収で借り入れをおこなう場合は、単独で住宅ローンを組むよりも慎重に借入金額を決める必要があります。今回は、借入金額を決めるうえで参考になる住宅ローンの世帯年収ごとの借入金額の目安を紹介し、借入金額を決めるためのポイントを解説します。

住宅ローンの借入金額の目安は世帯年収の何倍?

住宅ローンの借入金額の目安は世帯年収の5倍が目安です

住宅ローンの借入金額の目安を、世帯年収を基準に考えていきましょう。住宅金融支援機構フラット35の『2021年度 フラット35利用者調査』によると、建物の種類ごとに利用者の住宅の購入価額・世帯年収・借入金などのデータが公開されています。以下にその内容をまとめました。

建物 購入価額 世帯年収 借入金
マンション 4,528万円 788万円 3,742万円
中古マンション 3,026万円 608万円 2,606万円
建売住宅 3,605万円 563万円 3,334万円
土地付注文住宅 4,455万円 639万円 4,042万円
注文住宅 3,572万円 602万円 2,975万円
中古戸建 2,614万円 508万円 2,398万円

上記のデータの借入金を世帯年収で割ると、借入金額の目安が世帯年収の何倍であるかが求められます。

建物 世帯年収に対する借入金の目安
マンション 約4.7倍
中古マンション 約4.2倍
建売住宅 約5.9倍
土地付注文住宅 約6.3倍
注文住宅 約4.9倍
中古戸建 約4.7倍

データを単純に平均すると約5.1倍となることから、世帯年収に対する住宅ローンの借入金額の目安は5倍と考えられます。ただし、土地付き注文住宅が約6.3倍、中古マンションで約4.2倍と建物の種類で約2.1倍の差があるため、すでに購入する建物が決まっている場合や、購入する建物が決まった場合は個別に各データを参考にしましょう。

世帯年収ごとに住宅ローンで借り入れできる金額の目安

世帯年収ごとに返済負担率の基準、借り入れできる金額の目安が異なります

世帯年収ごとに住宅ローンで借り入れできる金額の目安は、返済負担率をもとに計算できます。返済負担率とは、世帯年収に占める年間返済額の割合のことであり、「年間返済額÷世帯年収」で求められます。

フラット35では、返済負担率の基準が年収400万円未満であれば30%、年収400万円以上であれば35%と定められています。つまり、フラット35の定めた返済負担率を基準に、世帯年収ごとに住宅ローンで借り入れできる金額の目安が求められるということです。

ただし、全体の借入金額を決めるには、借入期間や利息も重要になるため、個々のケースで考える必要があります。そのため、全体の借入金額を決めるのに重要な返済負担率が35%となる世帯年収400万円~1,200万円の年間返済額と月額返済額を下記の表にまとめました。

世帯年収 年間返済額 月額返済額
400万円 140万円 約11万円
500万円 175万円 約14万円
600万円 210万円 約17万円
700万円 245万円 約20万円
800万円 280万円 約23万円
900万円 315万円 約26万円
1,000万円 350万円 約29万円
1,100万円 385万円 約32万円
1,200万円 420万円 約35万円

世帯年収400万円から200万円ごとに、住宅ローンで借り入れできる金額の具体的な目安を紹介します。

世帯年収400万円

世帯年収400万円は、フラット35において返済負担率の割合が変化する基準であり、400万円未満であれば30%を超える借り入れはできません。世帯年収が400万円の時、返済負担率が35%となる年間返済額は約140万円であり、月額に換算すると約11万円です。

フラット35を基準に金利が4%で35年の返済計画を立てた時、返済負担率が35%に収まるようにローンを組むと2,500万円(返済負担率約33%)を借りることが可能です。

世帯年収600万円

世帯年収が600万円の場合、返済負担率を35%と仮定すると、年間返済額は約210万円であり、月額に換算すると約17万円です。

世帯年収400万円の時と同様に金利4%、35年の返済計画を立てると4,000万円は35%を超過するため、3,500万円以上(返済負担率約30%)4,000万円未満が目安になります。

世帯年収800万円

世帯年収が800万円となると、返済負担率35%で返済する時、年間返済額は280万円、月額では約23万円です。

35年の返済計画を立てる時、金利4%を条件に返済するなら、5,000万円を借り入れる場合でも返済負担率は約33%です。

世帯年収1,000万円

返済負担率が35%の時、世帯年収が1,000万円の場合の年間返済額は350万円、月額に換算すると29万円となるため、35年の返済計画かつ金利が4%の条件では、借入金額6,500万円で返済負担率が34%となります。

世帯年収1,200万円

年収1,200万円では、返済負担率が35%で返済する場合、年間返済額が420万円、月額への換算で35万円です。35年の返済かつ金利4%では、借入金額が7,500万円で返済負担率が33%となり、借入金額が8,000万円となると返済負担率は35%を超えます。

住宅ローンの借入金額を決めるポイント

借入金額を決めるなら返済負担率は余裕を持って調整しましょう

住宅ローンの借入金額を決めるポイントは3つあります。

  • 返済負担率を20%~25%程度に調整する
  • 生活費などの住宅ローン以外の出費とのバランスを考える
  • 具体的な返済プランをシミュレーションする

それぞれ詳しく見ていきましょう。

返済負担率を20%~25%程度に調整する

フラット35を基準に住宅ローンで借り入れできる金額を算出するなら、上記で算出した返済負担率は30%~35%程度で間違いありません。ただし、実際に返済するにあたって、余裕をもった返済を考えるなら返済負担率は20%~25%程度が理想といわれています。

フラット35の『2021年度 フラット35利用者調査』では、建物の種類ごとの返済負担率の平均が公開されています。

建物 返済負担率
マンション 22.1%
中古マンション 19.4%
建売住宅 23.7%
土地付注文住宅 24.9%
注文住宅 21.5%
中古戸建 20.3%

上記の結果からも約20%~25%の範囲で返済負担率の平均が収まっていることがわかります。借り入れできる金額の上限は、必ずしも余裕を持って返済できる金額ではないため、返済負担率の平均を参考にしたうえで、借入金額を決めましょう。

生活費などの住宅ローン以外の出費とのバランスを考える

住宅ローンを返済していくには、住宅ローンの支払い以外に発生する生活費などの出費を考慮してバランスを考えましょう。生活費以外にも、子どもの教育費や住宅ローン以外のローンの返済をおこなっている場合は、負担を考慮したうえで毎月の返済の負担を減らす必要があります。年収は返済額を決めるうえで重要な指標になりますが、その他にも考慮すべき出費がある場合は、返済額を決める際には注意が必要です。

具体的な返済計画をシミュレーションする

住宅ローンの返済は、具体的な返済計画を立ててシミュレーションすることが重要です。例えば、毎月の返済をおこなうだけでなく、毎月の返済とは別にまとまった返済をおこなう繰り上げ返済を予定している場合は、どのタイミングでおこなうべきか考える必要があります。

また定年やライフイベントによる休職などを理由に収入が減少する場合は、減少する収入も考慮しましょう。現在の世帯年収だけを考慮して返済の見込みがあると考えるのではなく、返済期間が終了する期日までの将来を見据えて具体的な返済計画を立てることがポイントです。

住宅ローンを世帯年収で審査してもらう方法

世帯年収で審査をしてもらうためには、ペアローンまたは収入合算を利用する必要があります

共働きの家庭で配偶者にも年収がある時、単独でローンを組むのではなく、配偶者の年収も合算した世帯年収で住宅ローンの審査を受けられます。住宅ローンを世帯年収で審査してもらう方法は以下の2つです。

  • ペアローン
  • 収入合算

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ペアローン

ペアローンは、それぞれ収入がある夫婦が1つの物件に対して別々に住宅ローンを組む方法です。例えば、3,000万円の住宅ローンでは、夫が2,000万円、妻が1,000万円の融資を受けて契約可能であり、お互いが連帯保証人になります。

団体信用生命保険は夫婦がそれぞれ契約します。そのため、保険料などの諸費用は通常の住宅ローンよりもかかりますが、どちらに対しても万が一のことがあった場合は保証が受けられます。

収入合算

ペアローンの他に、契約者本人の収入では希望の借入金額に満たない場合に、配偶者などの収入を合算して審査をおこなう収入合算と呼ばれる審査方法があります。収入合算をした結果、希望の借入金額で返済ができるようになった場合は、「連帯保証型」と「連帯債務型」の2つの契約方法を選びます。

連帯保証型は、契約は単独でおこないますが、契約者が返済できない場合は連帯保証人である配偶者が返済義務を負います。連帯債務型は、夫婦が連名で契約し、互いに返済義務を負う仕組みです。

ペアローンとは異なり住宅ローンの契約は1本であるため、団体信用生命保険などの諸費用がペアローンと比較してかからないメリットがあります。

住宅ローンを世帯年収で利用する場合の注意点

世帯年収で審査を受ける場合は単独でローンを組む場合と比較して特有の注意点があります

単独の年収で住宅ローンの審査を受ける場合を含めて、住宅ローンは念入りに計画して利用するべきですが、住宅ローンを世帯年収で審査を受けて利用する場合は、より慎重に考える必要があります。住宅ローンを世帯年収で利用する場合の注意点を以下にまとめました。

  • ライフイベントに合わせて将来の収入を考慮する
  • より余裕を持って借入金額を決める
  • 世帯年収で審査を受ける場合は離婚のリスクを理解する

それぞれ詳しく解説します。

ライフイベントに合わせて将来の収入を考慮する

共働きの夫婦は、夫と妻、それぞれにライフイベントがあります。例えば、妻の出産や、夫婦の育児による休職期間による収入の減少は、住宅ローンの返済に影響をおよぼします。計画しているライフイベントがある場合は、ライフイベントに合わせた将来の収入減少を考慮して返済計画を立てる必要があるといえるでしょう。

より余裕を持って借入金額を決める

世帯年収で審査を受ける場合に、ペアローンを利用する時は、団体信用生命保険などの諸費用が通常の住宅ローンよりも多くかかります。そのため、諸経費なども考慮して、より余裕を持って借入金額を決めることが重要です。

世帯年収で審査を受ける場合は離婚のリスクを理解する

世帯年収で審査を受ける場合は離婚のリスクも理解しておきましょう。仮に収入合算で契約した場合、離婚をしたとしても連帯債務型で返済の義務を負っている場合や、連帯保証型で連帯保証人になっている場合は配偶者が返済できなかったときにローン残高を返済する必要があります。

まとめ

住宅ローンの世帯年収の目安は、返済負担率を基準に考えられます。フラット35では返済負担率が30%~35%程度でも借り入れできますが、理想の返済負担率は20%~25%程度といわれているので、生活費などの出費とのバランスも考えて借入金額を決めましょう。世帯年収で住宅ローンを契約するなら、ライフイベントによる収入の減少も考慮しながら、計画的に借入金額を決めることが重要です。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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