都心で本格的な野菜づくりが楽しめる、 農園付き賃貸住宅
東京の元麻布で、農家とともに土いじりと交流を楽しむ、 農業・アーバンライフ一体型の新しい住まい方
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都市生活者の中には、野菜づくりや庭いじりに憧れる人が少なくない。だが、畑で本格的に育ててみたいとなると、郊外の庭付き住宅に住むか、倍率の高い区民農園に申し込むなどの手段を選ばざるを得ないのが現状だ。しかし、都会の真ん中で、思い切り畑仕事ができる集合住宅がある。2011年に誕生した農園付きシェア住居「元麻布農園レジデンス」だ。こちらはもともと、外国人向けの高級レジデンスだった物件。 「東京に住んでいても土いじりができて、農と食と交流を楽しめるコミュニティースペースがあったら面白いと考え、建物に隣接していたコインパーキングを農園にするアイデアをオーナーに提案しました」(運営会社スタッフ)。
農園は、住人はもちろん、地域住民にもレンタル農園として開放されている。野菜づくりのアドバイスと同時に、つくり手の思いや苦労も知ってもらいたいと、新潟県から若手農家を月に2回招き、本格的な有機野菜講座も開講しているという。さらに、建物内に設けられた「コミュニティーラウンジ」では、食にまつわるイベントやアウトドアイベントなどが毎月開催され、都心とは思えない、「農のあるくらし」が満喫できるのだ。
全17室の居室に現在暮らしているのは27歳から51歳まで。入居して1年半ほどになるという下岡賢吉さん(39歳)は、デジタルプロモーション企画会社代表。料理が好きで、食に関するイベントの企画や、社会に貢献する取組みをしたいと考え、一人暮らしから、人との交流が身近にできるシェア暮らしにシフトしたという。「仕事でデジタルにどっぷりつかっているので、野菜づくりに参加すると気持ちが切り替えられます。引越してきた最初の日、鳥の鳴き声で目が覚めたときは感動しましたね」。 一方、会社員の西脇大喜さん(28歳)は実家が兼業農家。「子どもの頃から畑仕事を手伝っていましたが、ここで講座を受けて初めて、自分がこなしていた作業の意義が分かりました。将来も、生活の一部として農業がごく自然にある、というのが理想ですね」。 気負わずに農を楽しむ暮らしは、都会、郊外を問わず、これからもニーズが高まっていくことだろう。