マンションは10年住んでから売るといい?実際の成約状況と注意点を解説

本記事では、マンションは10年住んで売るのがよいのか、実際の成約状況も踏まえて解説します。築年数の浅い状態と築年数が経過した状態でマンションを売る場合のメリット・デメリットもあわせてご紹介。記事を読むことで、10年住んでからマンションを売る戦略を取るうえで、気を付けるべきことがわかるようになるでしょう。
記事の目次
マンションは10年住んでから売るのがよい理由

マンションを10年住んでから売るとよい理由は、大きく分けて5つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
築10年前後は売れやすく値段も期待できる
マンションの資産価値は、新築から年数が経過するごとに少しずつ下がっていきます。特に入居してから最初の5年間は価格の下落幅が大きく、購入時の価格から20%〜30%程度下がってしまうことが一般的です。
しかし、築10年前後になると、急激な値下がりが落ち着きます。中古マンション市場では築10年前後の物件がもっとも流通量が多く、需要が安定しています。新築より割安で建物の劣化も目立たないことから、人気を集めやすいでしょう。
また、築年数が5年以内の物件ほどではありませんが、一定の売却価格が期待できます。よって、築10年前後は売ることを検討するうえで、買い手が見つかりやすく、高値で売却できるバランスのよい築年数です。
ライフスタイルは10年単位で変わる傾向にある
暮らし方や家族構成は、10年を区切りに大きく変化しやすいと言われています。購入当初は夫婦二人暮らしでも、10年の経過で産まれた子どもが大きくなり、今の住居では狭く感じられるかもしれません。さらに10年経過すれば、子どもが独立して夫婦二人の生活に戻ると、今の物件が広すぎると感じることもあります。
よって、10年の期間は住宅の住み替えに適した年数といえるでしょう。10年住んだマンションを売ることは、ライフスタイルの変化からも理に適っていると考えられます。
修繕積立金が増加する前に売れる
マンションの所有では、毎月管理費と修繕積立金を支払う必要があります。管理費は建物の維持や管理人の人件費などに充てられる費用。修繕積立金は、将来の大規模修繕に備えてマンションの所有者全員で積み立てるもので、築年数に応じて増加します。
一般的には、大規模修繕のために築10年~築15年程度で積立金が引き上げられます。築10年前後のタイミングは、修繕積立金が増加する直前で売りやすい時期になるでしょう。
将来的な負担が増える前に手放せるため、コスト面で売却が有利です。また、修繕積立金が増加したあとに売却するとコストの増加により、買い手を見つけるのに時間がかかる場合があります。
住宅ローン控除の終了タイミングと重なる
住宅ローン控除はマイホームを購入した際に、一定期間、年末のローン残高に応じて所得税や住民税から控除を受けられる制度です。控除期間は近年では13年に延長されることもありますが、基本的には10年であるため、住宅ローン控除の終了タイミングと重なります。
控除が終わるタイミングで売却して、住宅ローンを返済できるように計画すれば、住宅ローン控除を最大限に利用できます。次の住まいを買い替える際に住宅ローンを組めば、住宅ローン控除が利用できます。
そのため、住宅ローン控除の控除期間からも、住んでから10年のタイミングは適しています。築10年の物件は高い売却価格を期待できることから、住宅ローンの残債の返済もしやすいでしょう。
10年超所有軽減税率の特例を利用できる
マンションの売却では、利益が出た場合に譲渡所得税・住民税が課されます。税率は物件の所有期間によって変化する仕組み。
しかし、居住用物件の所有期間が10年を超える場合は、10年超所有軽減税率の特例が適用され、税率が優遇されます。特例では、譲渡所得が6,000万円以下の部分で、優遇税率が適用される仕組みです。
譲渡所得 | 所得税 | 住民税 | 復興特別 所得税 |
---|---|---|---|
6,000万円以下 | 10% | 4% | 0.21% |
6,000万円を超える部分 | 15% | 5% | 0.315% |
6,000万円以下の部分の税率の合計は、14.21%、6,000万円を超える部分は、20.315%の税率が課されます。10年超所有軽減税率の特例を利用するなら、10年住んでから売ると、税率が安くなるタイミングになるでしょう。
築10年のマンションの成約状況

公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」によると、築10年を含む中古マンションの成約率と売却価格の平均は以下のとおりです。
築年数 | 成約率 | 売却価格 |
---|---|---|
築5年以下 | 31.9 % | 7,808万円 |
築6年~築10年 | 35.6 % | 7,156万円 |
築11年~築15年 | 36.2 % | 6,619万円 |
築16年~築20年 | 26.7 % | 5,972万円 |
築21年~築25年 | 23.2% | 5,320万円 |
築26年~築30年 | 16.6% | 3,835万円 |
築31年~築35年 | 11.6% | 2,455万円 |
築36年~築40年 | 11.1% | 2,742万円 |
築41年以上 | 13.2% | 2,351万円 |
成約率は築6年~築15年が35%前後でピークになるため、築10年前後のマンションがもっとも売れやすいでしょう。一方で、築16年を超えると成約率は20%台に下がり、築26年以上になると10%台になります。
また、売却価格は築年数が浅いほど、下落率が激しくなります。最終的には築31年を超えると、売却価格はほぼ横ばいとなりました。築10年前後の物件であれば、高い売却価格で売りやすいです。
実際の成約状況から築10年前後のマンションは、買い手を見つけるのに有利な築年数であり、売却価格の平均からも高く売るのにも有利になると考えられるでしょう。
マンションを築年数の浅いうちに売るメリット・デメリット

成約率・売却価格は築年数が浅いほど高い水準にあるため、築年数の浅いうちにマンションを売るほうがメリットが大きいと考えられます。しかし、築年数の浅い状態で売却する場合はデメリットも理解しておきたいところです。本章では、マンションを築年数の浅いうちに売るメリット・デメリットを紹介します。
マンションを築年数の浅いうちに売るメリット
マンションを築年数の浅いうちに売るメリットは、以下のとおりです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
買い手が見つかりやすい
マンションは築5年~築10年程度で売却活動をすると、買い手が見つかりやすいため、売却活動に困ることはないでしょう。成約率は築11年~築15年がピークです。結果として、広告を出してから購入希望者が現れるまでのスピードが速く、希望価格に近い条件で売却できる可能性も高まります。
築年数が経過すると成約率は大きく下がるため、築年数の浅いうちに売却を検討したいところです。
売却の修繕費が発生しにくい
築年数が経過したマンションでは、売主が物件の魅力を高めるために、大規模な修繕やリフォームをおこなう場合があります。修繕すれば成約しやすくなりますが、大きなコストがかかり、売却益の圧迫は避けられません。
一方で、築年数の浅いマンションは売却時に修繕費が発生しにくいため、コストがかかりにくいです。築年数の浅い物件は、購入直後にリフォームや修繕が必要になりにくいことから、買い手側も余計な負担をかけずに物件を購入しやすくなります。
マンションを築年数の浅いうちに売るデメリット
一方で、マンションを築年数の浅いうちに売るデメリットは2つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
所有期間が短いと税率が高くなる
マンションの売却時に、所有期間が短いと税率が高くなります。具体的には所有期間が5年以下の場合、マンションの売却益が短期譲渡所得として扱われ、高い水準で課税されます。一方で、所有期間が5年を超えると、長期譲渡所得になります。税率の違いを以下にまとめました。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
所得税率 | 30% | 15% |
住民税率 | 9% | 5% |
復興特別所得税率 | 0.63% | 0.315% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の差は19.315%であるため、大きな差になることがわかるでしょう。築年数の浅いほうが売却価格は高くなりやすいですが、5年以下の場合は譲渡所得税の負担が最大になるため注意が必要です。10年超所有軽減税率も考慮すると、税率を考慮したマンションの売却タイミングは5年と10年が節目になります。
諸費用が高くなる
マンションの売却でかかるのは税金だけでなく、諸費用もあります。築年数が浅い状態で売る場合は、諸費用が相対的に高まりやすいことがデメリットになります。
不動産会社に売却を依頼する場合にかかる仲介手数料は、売却価格に応じて決まることが一般的。実際に仲介手数料の上限は、次のように定められています。
売却価格 ×3% +6万円(+ 消費税 )
売却価格が高額になれば、その分仲介手数料も高額になりやすいでしょう。
また、印紙税も売却価格に応じて決まる税金であるため、売却価格が高いほど負担が大きくなります。築年数が浅いうちに物件を売却すると、相対的に諸費用がかかり、売却の実質的な利益が削られることに注意が必要です。
マンションを築年数が経過してから売るメリット・デメリット

一方で、築年数が浅い状態で売る場合と比較して、築年数が経過してから売るメリット・デメリットも確認しておきましょう。
マンションを築年数が経過してから売るメリット
築年数が経過したマンションを売るにはどのようなメリットがあるのでしょうかさっそく見ていきましょう。
ローン残債が減って売却しやすい
マンションの購入時に住宅ローンを利用する場合、築年数が経過して返済が進むほど、ローン残債が減って売却しやすくなります。ローン残債が少なくなれば、売却代金でローンを返済したあとに手元に資金が残りやすいです。
相場の下落は築25年〜30年程度で落ち着く
マンションの売却価格は、築年数の経過とともに下がります。しかし、築25年〜築30年程度で価格の下落スピードが落ち着き、相場が安定しやすい傾向にあります。買い手が築年数よりも立地を重視して選ぶ場合や、価格の安さを重視して選ぶ場合、築年数の経過したマンションを選ぶケースも考えられるでしょう。
築10年前後のマンションを売却するか、住み続けるか悩んでいる場合は、将来的に築30年後も同じ場所で住み続けられるかどうかを想像するといいでしょう。
マンションを築年数が経過してから売るデメリット
一方で、マンションを築年数が経過してから売るデメリットもあります。以下で観ていきましょう。
売却価格が下がり売却しづらくなる
マンションは基本的に時間が経つほど売却価格が下がり、成約率も下がるため売却しにくくなります。築15年~築20年ほどになれば、築10年前後のマンションと比較して、売却価格も成約率も大きく下がる状態になるでしょう。築年数が経過してから売却活動を始めれば、売却までに時間を要することが予想されます。
修繕費・管理費の負担が重くなる
築年数が経過してからマンションを売る前提では、負担する修繕積立金・管理費の総額が大きくなります。特に築年数が増加するほど、毎月支払う修繕積立金も高くなりやすいでしょう。築古のマンションが売れない原因は、修繕積立金・管理費のコストが新築と比較して高いことにもあります。住み続けるうえでのコストの増加と、毎月のコスト負担が買い手から敬遠されやすいことがデメリットになります。
マンションを売る際の注意点

最後に、マンションを売る際の注意点を4つまとめました。
オーバーローンに気を付ける
オーバーローンとは、売却価格よりも住宅ローン残債のほうが多い状態のことです。例えば、マンションを3,000万円で売却できても、ローンの残債が3,500万円残っている場合は、住宅ローンを完済するために500万円を自己負担で返済しなければなりません。
住宅ローンは元利均等返済を選択すると、返済期間が短いほど返済の多くが利息に充てられます。元本の減りが遅くなるため、オーバーローンのリスクが高くなるでしょう。この場合、売却価格が高くても手元には資金が残らず、自己負担でローンを返済することに。築年数が浅い状態で売却する場合は、オーバーローンに気を付けて検討するようにしましょう。
火災保険の解約返戻金を忘れずに手続きする
マンション購入時に加入する火災保険は、期間を決めて一括払いをしているケースが多いです。契約期間中にマンションを売却する場合は、解約返戻金を請求できます。ただし、自動的に返金されるわけではないため、火災保険の期間が残っている場合は、自身で手続きが必要です。よって、マンションの売却時には火災保険の期間を確認し、解約返戻金を請求できる場合は、忘れずに手続きしましょう。
査定価格の高さで不動産会社を選ばない
マンションを売る際には、不動産会社の仲介を受けて売却します。不動産会社を選ぶにあたって重要になるポイントは、不動産会社が提示する実際の売却価格の目安になる査定価格です。査定価格は実際の売却価格とは異なるため、必ずしも査定価格で売却できるとは限りません。
築年数の浅いマンションは査定価格が高くなる傾向にありますが、査定価格の高さのみで不動産会社を選ばないようにしましょう。不動産会社のなかには契約を増やすために、相場よりも高い査定額を提示する場合があります。築10年前後のマンションは売れやすいですが、相場よりも極端に高い価格で売り出せば、売れなくなります。
仲介を依頼する不動産会社によっては、築10年前後のマンションでも売却活動が長引く可能性も。不動産会社は中古マンションの販売実績が豊富であり、査定価格の根拠を丁寧に説明できる点を重視して選ぶことをおすすめします。
スケジュールに余裕を持つ
高い成約率が期待されるマンションであっても、不動産会社の仲介で営業活動をすれば、すぐに売れるわけではありません。不動産の売却活動は、成約まで3カ月~6カ月かかることが一般的です。よって、売却スケジュールには余裕を持つようにしましょう。
希望価格で早く売却したい場合は、マンションの需要が高まりやすい引越しシーズンである3月~4月、9月~10月を狙って売り出せば問い合わせが増えやすくなるため、売却スピードの向上が期待できます。
マンションを現金化する手段には、不動産会社の買取を利用する方法もあります。現金化のスピードは1カ月ほどであるため短くなります。しかし、売却価格が大きく下がるため、成約率の高い築10年前後のマンションではおすすめできません。
まとめ
築10年前後のマンションは、成約率と売却価格が高く、買い手が見つかりやすい時期です。よって、マンションは10年住んでから売るほうがよいと言われています。マンションは築年数が経過するほど、売却価格・成約率の減少、修繕積立金の増加によるコストが問題になります。
築30年以上が経過しても住み続けるのであれば、築年数が経過したあとに売っても問題はないかもしれません。しかし、築15年以上を過ぎたあとの成約率・売却価格は、築10年前後と比較して大きく下がります。近い将来、別のマンションに住み替えたいと考えているなら、売却する決断は早いほうがいいでしょう。
物件を探す
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ