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マンション売却の前にリフォームすべき?費用対効果と高く売るためのポイントを徹底解説

マンション売却の前にリフォームすべきかを解説します
マンションを売却する時、「リフォームをしてから売ったほうが高く売れるのでは?」と考える方は少なくありません。たしかに、古く見える設備や汚れた壁紙を直せば、購入希望者の第一印象をよくできる可能性があります。

一方で、リフォーム費用をかけても売却価格に反映されないケースも多く、必ずしも得策とは限りません。本記事では、マンション売却時にリフォームが必要なケースと不要なケースを整理し、費用対効果を高めるポイントを詳しく解説します。

マンション売却前のリフォームの基本

マンション売却前のリフォームは基本必要ありません
マンション売却前のリフォームは基本必要ありません

結論からお伝えすると、基本的にはマンション売却前にあえてリフォームをしてから市場に出す必要はありません。中古マンションの取引は「現況引き渡し」が原則。壁紙や水回り、床材などの修繕・改修は、購入者が自分のライフスタイルや予算に応じて、あとから自由におこなうのが一般的です。

もちろん、物件の状態によっては例外もあります。例えば、建物の経年劣化による不具合は、ある程度「想定の範囲内」とされます。しかし、ペットによる傷や子どもの落書き、家具移動の際にできた大きな凹みのように「所有者の過失」で生じた損傷などは、買主から修繕を求められることもあるでしょう。その場合、売主が自費で修繕するか、販売価格を下げることで調整するかなどの交渉が発生します。

また、「現況引き渡し」とは言いつつも、買主側は実際の内覧で得た印象を重視します。清掃が行き届いていなかったり、明らかに壊れている部分を放置したままでは、購入検討者にマイナスの印象を与えてしまう可能性も少なくありません。そのため、「リフォーム」と呼べるような大規模な工事までは不要であっても、最低限の修繕や見た目の改善を意識することは、売却活動をスムーズに進めるうえで重要です。

マンション売却前のリフォームがリスクになりやすい理由

マンション売却前のリフォームはリスクになりやすい理由を解説します
マンション売却前のリフォームはリスクになりやすい理由を解説します

「リフォームをすれば高く売れるのでは?」と考える方も多いですが、必ずしもそうとは限りません。リフォームには大きな費用をともなうにもかかわらず、必ずしも買主に評価されるわけではなく、むしろ逆効果になる場合もあります。リフォームが売却活動にうまく結びつかない主な理由を整理すると、以下のようにいくつかのパターンに分けられます。

築年数が与える影響が大きい

中古マンションを購入する際、多くの買主が最初に築年数をチェックします。築浅の物件であれば、表面上の傷や多少の汚れは、許容されやすい傾向にあります。しかし、築20年、30年を超えると、いくら内装を新しくしても、建物そのものの資産価値が下がるため、価格設定に大きな影響を与えてしまいます。

売主が「見た目はリフォーム済みできれいだから築浅と同じ価格で売りたい」と考えていても、実際には買主の多くが「古い建物に変わりはない」と判断するため、売却価格を大幅に上げることは困難でしょう。

特に築古マンションでは、表面的な補修では限界があり、配管や断熱、耐震性能など、安全性や快適性につながる側面が不安視されるケースも。ただし、駅から近い立地などでは築年数が経っていても買い手が見つかる場合もあります。

リフォーム済みでも売れる保証はない

市場の動向を見ても、リフォームが売却の成否を左右する決定打になるとは限りません。東日本不動産流通機構(REINS)の「季報 Market Watch サマリーレポート 2025年4〜6月期※」によれば、東京都の中古マンションの成約にいたる件数は6,639件となっています。つまり、リフォームをしたかに関わらず、売れ残る物件は一定数存在します。

※リンクは東日本不動産流通機構(REINS)のトップページに遷移します。

特に、立地や日当たり、周辺環境など「物件そのものの条件」が劣る場合、どれだけ室内を手直ししても買い手がつきにくいことがあります。「リフォームに数百万円をかけたのに、売れ残って値下げを余儀なくされた」などの事例も珍しくありません。

リフォーム代を価格に転嫁できない

リフォームを不要とする大きな理由は、かけた費用がそのまま売却価格に反映されにくいからです。例えば、リフォームをせずに4,000万円で売れると査定されたマンションがあるとします。ここに300万円を投じてリフォームした場合、売主は最低でも売却査定額とリフォーム費用を合わせた4,300万円以上で売却したいと考えるでしょう。

しかし、実際に不動産会社に査定を依頼すると、リフォーム後の評価額がせいぜい4,200万円程度にとどまるケースは珍しくありません。仮に4,300万円で売り出しても、市場価格と乖離しているため購入希望者が集まらず、結局は4,200万円前後まで値下げせざるをえないことも。

つまり、この場合300万円を費やしても200万円しか上乗せできず、最終的には100万円の損失につながる可能性があります。もちろん、立地がよく、需要が高いエリアであれば、リフォーム費用をある程度反映できる場合もありますが、常に成功するわけではありません。

むしろ、費用を回収できないことが多い点を踏まえると、リフォームを実施するメリットは少ないでしょう。

簡易リフォームは効果が薄いことが多い

築古物件の売却でありがちなリフォームが、部分的に目立つ場所だけを直して見栄えをよくしようとするケースです。例えば、キッチンや浴室だけを新しくしても、建物全体の耐震性や共用部分の老朽化などの構造上の問題は残ったままです。そのため、買主に「一部だけきれいにしたが、根本的には古いまま」という印象を与えてしまいます。

また、リフォームの範囲が中途半端だと、かえって「売主の都合で一部だけ直した」などのマイナスの受け止め方をされることも。結果として投じた費用が売却価格や成約スピードに結びつかず、無駄な出費に終わってしまうリスクが高くなります。

買主と好みが異なると売れなくなる

買主の好みとずれてしまうと売却が難しくなる点も、リフォームをおこなうリスクの一つです。せっかく費用と時間をかけて内装を整えても、そのデザインや設備が購入希望者のニーズに合わなければ、むしろマイナス要素となってしまうことも。特に、キッチンや浴室などの水回りは、人によって求めるポイントが大きく異なります。「シンプルで機能性重視がよい」と考える人もいれば、「最新のデザイン性にこだわりたい」と思う人もいます。

さらに、住宅設備やインテリアには流行があるため、売却前に取り入れたデザインも、売却時には流行が変化している可能性も。例えば、水栓やタイルなどの細部の選び方一つでも印象は大きく変わり、選択を誤ると「なぜこの仕様にしたのか」と疑問を持たれてしまうこともあるでしょう。そのうえ、質の高い設備やデザイン性の高い素材を導入すれば費用は跳ね上がり、売却価格に十分反映できないリスクが高まります。

不要なリスクを抱えるよりも、リフォームを施さず、現状のままで売却を試みてみましょう。そして購入希望者からの反応を見たうえで、必要に応じて部分的な修繕をおこなうほうが賢明です。

若い世代は自分でデザインするのを好む傾向にある

近年の傾向として、築古マンションを安く購入し、自分の好みに合わせてリノベーションする人が増えています。特に若い世代の購入者は「既製品のきれいさ」よりも「自分でデザインを選ぶ楽しみ」を重視する傾向が強いです。

このような層は、あらかじめリフォームされた物件を敬遠するケースも。さらに、実際にはリフォーム前との販売価格に差が少ない場合でも、「リフォームされている分高くなっているのではないか」とマイナスイメージを持たれてしまう可能性もあります。

機能改善は写真で伝わりにくい

リフォームの効果は、必ずしも広告写真や物件情報で伝わるとは限りません。例えば、断熱材を入れ替えたり、給排水管を新しくしたりなどの機能的なリフォームは、暮らしてみて初めて実感できる部分です。ポータルサイトに掲載する写真では、外観や内装の見た目が第一印象となるため、機能改善のリフォームだけではどうしても伝わりにくく、「古い印象」を拭えないこともあります。

その一方で、見た目の印象を改善するための工夫であれば、高額なリフォームが絶対に必要とは限りません。徹底した清掃や不用品の撤去、床のワックスがけ、壁の小さな穴を補修する程度でも、内覧時に受ける印象は大きく変わります。

リフォームをせずにマンションの印象をアップさせる方法

リフォームをせずにマンションの印象をよくする方法を解説します
リフォームをせずにマンションの印象をよくする方法を解説します

売却前に大がかりなリフォームは不要とはいえ、購入希望者によい印象を与える工夫は欠かせません。ここでは、リフォームをせずに実践できる具体的な方法を紹介します。

ハウスクリーニングを実施する

生活感が強く残っている物件は、内覧時に大きなマイナス印象を与えかねません。そのため、売却活動に入る前にプロのハウスクリーニングを依頼することをおすすめします。特に水回り(キッチン、浴室、洗面所、トイレ)は、汚れが目立ちやすく、購入希望者のチェックも厳しくなる部分のため、徹底的にきれいにしておきたいところです。ハウスクリーニングはリフォームよりも低コストで実施でき、費用対効果が高い点もメリット。以下はおおよその費用相場です。

間取り 費用相場
ワンルーム1K 3万円〜4.5万円
1LDK・2LDK 4万円〜7.5万円
3LDK・4LDK 8万円〜10.5万円

数万円程度で部屋全体が清潔に見えるようになるため、売却活動の第一歩として検討してもよいでしょう。

機能性・実用性につながる部分を修理する

内覧に訪れた購入希望者は、見た目のきれいさだけでなく「実際に快適に住めるか」を重視します。そのため、機能性や実用性に関わる部分は、特に注意が必要です。

購入希望者がよくチェックする箇所は、以下のとおりです。

  • 水回り(蛇口の水漏れ、排水口の詰まり、カビの有無など)
  • ドアや窓の立て付け(スムーズに開閉できるか)
  • 網戸や窓ガラス(破れや傷がないか)
  • 壁や床の凹み・傷(生活感を強く残すポイント)

これらの部分に不具合があると、購入希望者は「このマンションは住んだあとに追加費用がかかる」と考え、購入をためらう原因になります。逆にいえば、少し手を加えるだけで印象を大きく改善できます。小規模な修理であれば数千円〜数万円で済むことも多く、売却活動のための投資としては十分に価値があります。

室内の明るさと換気を確保する

物件の第一印象を大きく左右するものが「明るさ」です。カーテンを開けて自然光を取り入れるだけでも、室内の印象は大きく変わります。また、家具や壁に反射するように鏡や明るい色のインテリアを置くことで、さらに部屋全体を広く、明るく見せられるでしょう。

加えて、定期的な換気も重要なポイント。閉め切った部屋は空気がよどみ、臭いがこもりやすくなります。特にペットやタバコの臭いは、購入希望者に強いマイナスイメージを与えがちです。換気を徹底すれば、清潔で快適な空間を演出できるでしょう。これらはコストをかけずにできる工夫のため、売却前の準備にも有効です。

マンション売却時にリフォームが必要なケース

マンション売却時にリフォームが必要なケースを解説します
マンション売却時にリフォームが必要なケースを解説します

リフォームをおこなうと、購入希望者が減る可能性もあるとお伝えしましたが、リフォームが必要なケースもあります。以下に当てはまる場合は不動産会社と相談し、リフォームをおこなうかを慎重に検討しましょう。

水回りなど設備の劣化が顕著に出ているケース

キッチンや洗面台、トイレ、浴室などの水回りの設備は、マンション購入を検討する人が特に重視する部分です。これらの設備は使用頻度が高いため、劣化が目立ちやすく、汚れや傷みが放置されていると「管理が行き届いていない物件」という印象を与えてしまいます。

実際に国土交通省の「令和6年度 住宅市場動向調査報告書」でも、既存集合住宅を取得した理由として「外装、内装、水回りなどがリフォームされており、きれいだったから」と回答した割合は、31.2%。水回りのリフォームは購入希望者からの関心度が高いことがわかります。

とはいえ、必ずしもフルリフォームをおこなう必要はありません。例えば、キッチンの水栓交換、浴室の鏡やシャワーヘッドを新調するだけでも、清潔感は格段に向上します。

設備の耐用年数は一般的に15〜20年程度とされており、それを超えて劣化や不具合が目立つ場合には、売却前に何らかの対策を取ったほうがよいでしょう。水漏れやカビ、便器の黄ばみなどは購入希望者にとって大きなマイナス要素になるため、不動産会社に相談することをおすすめします。

築年数が著しく経過しているケース

築年数が古いマンションは、売却活動に入る前にリフォームが必要となる場合があります。特に築30年以上を超えると、設備や内装の老朽化が顕著になり、そのままでは購入希望者が敬遠する可能性が高まります。

実際、リフォームを検討した理由として「設備や構造の老朽化」を挙げる人が多く、築古物件の売却では大きなポイントとなるでしょう。築年数にともなう劣化が目立つと「購入後にリフォーム費用を別途かけなければならない」という印象を持たれ、値引き交渉につながるケースもあります。しかし、築40年以上のマンションでも駅近など立地条件がよければ需要はあります。つまり、築古だからといって必ずリフォームが必要なわけではなく、立地条件や購入希望者の層によって判断しましょう。

内覧時に不利となる箇所があるケース

内覧は購入希望者が実際に物件を確認し、購入するかを判断する大切な機会です。この時にマイナスの印象を与える部分があると、それだけで成約につながらなくなる恐れがあります。

例えば、インターホンや給湯器の故障、ペットによる壁紙や床の傷、さらにはタバコやペットの臭いが残っていると「この物件は手入れが行き届いていない」と判断されやすくなります。特に、臭いに関しては写真や資料ではわからないため、内覧時に大きなネガティブ要素として購入希望者の記憶に残ることもあるでしょう。

その結果、せっかくの販売機会を逃してしまうことに。このようなケースでは、フルリフォームをする必要はありませんが、クロスの張り替えやフローリングの補修、専門の会社による消臭作業など、ピンポイントのリフォームやクリーニングをおこなえば改善が可能です。

小さな修繕や清掃でも「清潔感がある」「管理状態がよい」などの好印象を与えられるため、結果として売却価格の維持や成約スピードの向上につながります。

マンション売却の際にかかるリフォーム費用相場

マンション売却の際にかかるリフォーム費用相場を解説します
マンション売却の際にかかるリフォーム費用相場を解説します

リフォーム費用は、工事内容や使用する素材によって大きく変動しますが、おおよその目安は以下のとおりです。

リフォーム箇所 目安費用
壁紙・床の張り替え 10万〜40万円(広さによる変動あり)
キッチン 30万〜150万円
トイレ 10万〜50万円
洗面所 20万円〜
浴室 50万〜150万円

マンションを売却する際には、リフォームの有無が価格や売れやすさに直結するとは限りません。しかし、効果的におこなうことで、購入希望者の購入意欲を高められます。ここでいうリフォームとは、古くなった設備を新品に交換することを指し、間取りを大きく変更したり、機能を全面的に向上させるリノベーションとは異なります。

売却を前提とする場合は、購入希望者が特に気にする水回り設備や内装の清潔感から優先的に手を加えると効果的です。以下からリフォームの費用相場を、それぞれ詳しく解説します。

壁・床のリフォーム費用相場

壁や床のリフォームは比較的費用を抑えながらも、室内の印象を大きく変えられる効果的な手段です。壁紙の張り替え費用は、1平方メートルあたりおよそ1,000円が相場で、6畳の部屋なら4〜6万円ほどで施工できます。

量産品のクロスは安価ですが、デザインの選択肢が限られます。一方、ハイグレード品は質感や耐久性に優れていますが、1平方メートルあたりの価格も150〜400円ほど高くなるため、リフォームの目的によって適切に選択しましょう。

床のリフォーム費用相場は6畳あたり約10万円ですが、工法や素材によって差が生じます。既存の床材を撤去して張り替える場合は、手間と費用がかかる一方で、上から重ね張りする方法なら比較的安価です。

無垢フローリングは高級感がありますが、費用が高額になりやすい傾向。一方で、複合フローリングはコストを抑えられますが傷に弱いのが難点でしょう。壁紙や床材は内覧時によく目に入る部分であり、築年数が古くてもこれらを新しくするだけで物件の印象が格段に変わります。

キッチンのリフォーム費用相場

キッチンのリフォーム費用相場は、50〜150万円と幅があります。例えば既存のシステムキッチンをスタンダードグレードに交換するリフォームは30万円から可能ですが、アイランド型やカウンター型などデザイン性の高いキッチンに変更する場合は、100万円を超えることも多くあります。

また、収納スペースを増やすキャビネット追加、食器洗い乾燥機や浄水器の取り付けなどのオプションを加えると、費用はさらに膨らみ、150万円前後になることも珍しくありません。ガスコンロをIHクッキングヒーターに変更する場合には電気工事も必要になるため、別途追加費用が発生します。

キッチンは使い勝手や清潔感を重視されやすいため、それらを改善するリフォームをおこなうと効果的でしょう。

トイレのリフォーム費用相場

トイレのリフォーム費用相場は、おおよそ20〜50万円です。便器の交換や床・壁紙の張り替えなどは、10〜30万円程度に収まります。

一方、和式トイレを洋式トイレに変更する場合や、温水洗浄機能付き便座を新設する場合は、配管工事や電源工事が必要になり、費用は20〜50万円ほどに上がります。

さらに、バリアフリー対応として手すりを設置したり、トイレ内を広げたりする場合には、50万円以上の費用が発生することも。収納棚を追加するなどの小規模工事でも印象は大きく変わり、内覧時にプラスの効果をもたらすでしょう。トイレは衛生面が重視される購入希望者にとって重要なチェックポイントのひとつ。そのため、少しの投資で清潔感や安心感を高められるリフォームは、売却を有利に進めるうえで効果的です。

浴室のリフォーム費用相場

浴室のリフォーム費用相場は、80〜150万円程度です。既存のユニットバスを同等グレードのものに交換するリフォーㇺの場合は、50〜80万円前後。一方で、在来工法のタイル張り浴室をユニットバスに入れ替える場合は、解体や下地補修などが必要になるため、150万円かかることもあります。

浴室は快適さや清潔感が強く求められる場所であり、カビやサビが目立つと大きなマイナスポイントに。最近では、掃除のしやすさや断熱性に優れた高グレードのユニットバスも人気で、費用は100万円を超えるものの、売却の際に印象を大きく改善できるメリットがあります。

さらに、浴室乾燥機や追い焚き機能などが付いていると、ファミリー層からの評価も高まります。売却を見据えるなら、最低限の改修で済ませるか、思い切って機能性を高めるか、立地や築年数とのバランスを見て判断しましょう。

マンションのリフォームとリノベーションの違い

マンションのリフォームとリノベーションの違いを解説します
マンションのリフォームとリノベーションの違いを解説します

一般的に「リフォーム」と「リノベーション」の2つの言葉は似ているため、同じ意味で使われがちですが、実際には明確な違いがあります。両者の大きな差は「目的」と「改修の範囲」にあります。

  • リフォーム …… マイナス部分を取り除き、建物を基準の状態に戻すことが目的。

  • リノベーション ……新しい価値をプラスし、物件の魅力を高めるための改修。

リフォームは「原状回復」を意味することが多く、劣化した部分を直すことが目的。古くなった壁紙の張り替えや、壊れた水道設備の修理などが挙げられます。

一方、リノベーションは「付加価値を加える」ための取り組みであり、既存の物件に新しい命を吹き込むような改修を指します。具体的には、間取りの変更、和室から洋室の変更、最新設備の導入などが挙げられます。

つまり、リフォームはマイナスをゼロに戻す行為で、リノベーションはゼロからプラスへと引き上げる行為と表現するとわかりやすいでしょう。

リフォームとリノベーションのどちらを選択すべき?

実際に、物件を売却する際にどちらを選ぶべきなのでしょうか。現在の不動産市場では、老朽化した部分の修繕や設備の修理は「リフォーム」と呼ばれることが一般的です。そして、築古マンションをあえて購入し、ヴィンテージ感を残しつつ、おしゃれでモダンな空間に仕上げることを「リノベーション」と呼ぶケースが増えています。

不動産会社に相談する場合も、リフォームとリノベーションはまったく別のカテゴリとして扱われています。そのため「故障した箇所を直したいのか」「物件に新しい価値を加えたいのか」という目的を整理すれば、どちらを選ぶべきか判断することは難しくありません。

また、コスト面にも大きな違いがあります。一般的にリフォームは比較的低コストで済むことが多いですが、リノベーションは数百万円単位の投資になるケースもあります。壁紙や床の張り替えるリフォームであれば数十万円程度です。一方、間取り変更や設備の全面入れ替えをともなうリノベーションでは、数百万円から1,000万円を超えることも珍しくありません。そのため、「売却前にどこまで費用をかけるか」を考える際には、目的と回収可能性を踏まえて判断する必要があるでしょう。

まとめ

マンション売却時のリフォームは、すべてのケースで必須なわけではありません。必要なのは、購入希望者によい印象を与えつつ、費用を無駄にしないバランス感覚です。

大規模リフォームに踏み切るよりも、クリーニングや壁紙の張り替えなど、コストを抑えた対策で十分なケースもあります。売却を検討している方は、まず不動産会社に相談し、ターゲットに合わせたリフォーム戦略を立てることがマンション売却の成功の鍵となるでしょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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