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マンション売却の平均期間はどれくらい?スムーズに売るためのポイントを解説

マンション売却にかかる平均的な期間を解説します
マンションを売却しようと考えた時に、多くの方が気になることが「売れるまでの期間」です。平均的には4カ月程度と言われていますが、立地や築年数、価格設定によっては1年以上かかるケースも。売却期間を正しく理解しておくことは、資金計画や住み替えのスケジュールを立てるうえでも、とても重要なポイントです。

本記事では、マンション売却にかかる平均的な期間や、早く売却するための工夫、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

記事の目次

マンション売却までの平均期間

マンション売却までの平均期間は約4カ月です
マンション売却までの平均期間は約4カ月です

マンションを売却する際、「どれくらいの時間がかかるのか」は多くの方が気になるポイントです。売却には一定の流れがあり、売り出してから引き渡しまでには平均的な期間があります。ここでは、実際のデータをもとにした売却期間の目安や全体のプロセスを解説します。事前にスケジュール感を把握しておくことで、無理のない計画を立てられるでしょう。

マンション売却までの平均期間は約4カ月

一般的に、マンションが売れるまでの平均期間は 4カ月前後 とされています。公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「首都圏不動産流通市場の動向(2024年版)」によると、中古マンションの「登録から成約に至るまでの日数」は、2023年で平均80.1日、2024年では85.3日という結果でした。

この数値は「レインズ」と呼ばれる不動産情報ネットワークに登録されてからの成約日数を示しています。実際には、不動産会社の選定や売り出し価格の設定など、売却活動を始める前の準備期間が加わり、さらに契約成立後の引き渡し準備にも時間を要するため、合計すると4カ月程度かかることが一般的です。

ただし、このデータはあくまで首都圏の平均で、地方では状況が異なる場合があります。1カ月ほどで売れるケースもあれば、半年以上かかることも珍しくありません。そのため「4カ月」はあくまで参考の目安としてとらえることが大切です。

主要都市別のマンション売却期間の目安

マンションを売却する際、地域ごとの平均売却期間を把握しておくことは重要です。ここでは「東京カンテイ」のデータをもとに、主要都市別の中古マンションの売却期間を紹介します。ご自身のマンションがある地域のデータを参考に、売却スケジュールの計画を立てましょう。

東京都(首都圏)

東京都を含む首都圏の中古マンションは、売り出してから成約に至るまでの平均期間がやや長い傾向にあります。東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」によると、不動産の平均売却期間を見てみると、直近2024年下期では、平均で約5.11カ月かかっており、過去数年と比べると売却期間が徐々に長期化しています。

この背景には、円安や建築費の高騰、新築マンション価格の上昇などがあり、中古マンション価格の上昇が売却期間の延長につながっていると考えられるでしょう。また、売却活動には不動産会社選びや契約手続き、物件引き渡しまでの期間も含まれるため、実際にはもう少し余裕を持ったスケジュールを立てることをおすすめします。

大阪府(近畿圏)

大阪府を中心とした近畿圏の中古マンションの売却期間は、東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(近畿圏)」を見ると、2024年下期は約5.24カ月と首都圏よりもやや長めの傾向にあります。近畿圏では、購入者が中古マンションに対して慎重な姿勢を持つ傾向があるため、売り出しから成約までに5カ月前後かかる場合も珍しくありません。また、中古マンション価格の上昇にともない、売却期間が長期化する傾向も見られます。近畿圏での売却を検討している場合は、首都圏以上に早めの行動が重要です。

愛知県(中部圏)

愛知県を中心とした中部圏では、売却までの期間が地域や物件タイプによって変動します。東京カンテイの「中古マンションの価格乖離率&売却期間(中部圏)」を見ると、2022年度までは4カ月前後で成約するケースが多かったものの、2023年の下期以降は5カ月近くかかるケースも。中部圏は一戸建て住宅を選ぶ人も多く、マンションの需要が首都圏などと比べると比較的低いため、売却に時間がかかりやすい特徴があります。中部圏でマンションを売却する場合は、余裕を持ったスケジュールを設定し、価格設定や訴求方法も工夫することが重要です。

マンションの売却にかかる期間と手順

マンションの売却にかかる期間をステップごとに解説します
マンションの売却にかかる期間をステップごとに解説します

マンションの売却を検討し始めてから、実際に市場に売り出し、最終的に売却が完了するまでの大まかな流れを以下にまとめました。全体像を把握しておくことで「どの段階にどれくらい時間がかかるのか」「どの順番で進んでいくのか」をイメージしやすくなります。

特に、売却そのものの行動が集中する部分は「売却活動」ですが、実際にはその前後にも多くの準備や手続きが存在します。スムーズに取引を進めるためには、売却開始前から計画を立て、余裕を持ったスケジュール管理を心がけることが大切です。

マンション売却までのプロセス一覧

プロセス やること かかる時間の目安
売却前 不動産会社選び 訪問査定の結果まで含めて3日~2週間程度
売却前 媒介契約 連絡後から3~5日ほど
売却中 売却活動 約3カ月~売れるまで
(長ければ半年以上)
売却中 売買契約 1~3週間ほど
売却後 引き渡し・入金 1~2カ月程度

マンションの売却完了・引き渡しまでの全行程日数は、最短でもおよそ4カ月半以上かかることを想定しておく必要があります。

ステップ1. 不動産会社を選ぶ(数日~2週間)

マンションの売却活動の第一歩は、不動産会社を選ぶことから始まります。売却活動は基本的に不動産会社が担うため、信頼できる会社を見つけることが成功へのカギとなります。

最初の段階では、一括査定サイトを利用して複数の不動産会社に査定を依頼し、おおよその相場を把握しましょう。比較をすることで、単に「高く売れそうな会社」を選ぶだけでなく、査定額の根拠や担当者の対応の丁寧さも判断材料にできます。
査定額の提示は数日で届きますが、そのあとに実施される訪問査定はより具体的に。訪問査定では、現地に足を運んでもらい、建物の状態、周辺環境、法的条件などを確認したうえで査定額が出されます。結果が出るまで3日~1週間程度かかることが一般的です。

ステップ2. 不動産会社と媒介契約を締結する(3~5日)

複数の会社から査定結果を受け取り、担当者の対応や売却プランを比較したうえで、依頼する一社を決定します。その際に結ぶものが「媒介契約」です。媒介契約には種類があり、それぞれメリットや制限が異なるため、契約前に確認しておきましょう。

契約を結ぶと、いよいよ売却活動がスタートします。並行して、売主は売却に必要な書類(権利証、固定資産税納税通知書など)を準備する必要があります。また、内覧希望者がいつ来てもいいように、早めに家の片づけや掃除を始めておくことが大切です。第一印象が購入希望者の意欲に直結するため、準備期間と考えて行動しておくとスムーズに進むでしょう。

ステップ3. 売却活動をおこなう(約3カ月~売れるまで)

媒介契約を結ぶと、不動産会社が中心となり売却活動が本格的に始まります。売却活動には、不動産情報サイトへの掲載、チラシの配布、既存顧客への紹介、店舗での掲示など、さまざまな手法が含まれます。

早ければ数週間で決まることもありますが、エリアや物件の状況によっては半年以上かかることも珍しくありません。この間に購入希望者が現れると「内覧」がおこなわれます。内覧は週末や休日に集中する傾向があり、売主はその都度立ち会いや準備をおこなわなければなりません。内覧では、清掃が行き届いているか、収納や設備の状態はどうかなどの細かい部分が、購入希望者の印象を左右します。

特に水回りや玄関などは、しっかり整えておくことがポイントです。売却活動は「待つ時間」と「対応する時間」の繰り返しになるため、余裕を持って取り組むことが重要です。

ステップ4. 売買契約を締結する(1~3週間)

購入希望者が現れると、まずは条件交渉をおこないます。価格や引き渡し時期、付帯設備の扱いなど、細かい点を詰めていき、双方が合意すれば売買契約の締結となります。
契約日の設定は売主・買主双方のスケジュール調整をおこなうため、実際には1~2週間後に設定されることが多いでしょう。契約時には「手付金」として売却額の1割前後が買主から支払われます。

契約成立後は、買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関の審査を受ける必要があります。その結果が出るまで、さらに1週間から10日程度かかることも。ローン承認を得られて初めて、売却が確実なものになります。

ステップ5. 引き渡し・入金がおこなわれる(1~2カ月)

買主のローン本審査が通過したら、残金の支払いと物件の引き渡しがおこなわれます。この段階で売主から買主へ所有権移転登記がおこなわれ、正式に売却が完了となります。

残金決済や登記手続きは、買主が融資を受ける金融機関でおこなわれ、不動産会社も立ち会うのが一般的です。日程は双方の予定を調整して決めるため、1週間程度先になることも。

売主側は、決済日までに引越しを済ませ、家を空いている状態にしておかなければなりません。不用品の処分やハウスクリーニングなど、想像以上に作業が多いため、契約成立後すぐに準備を始めたほうがよいでしょう。引き渡し日が近づいてから慌てないよう、余裕を持った行動が安心です。

マンションの売却期間が長引きやすいケースとその理由

マンションの売却期間が長引きやすいケースを解説します
マンションの売却期間が長引きやすいケースを解説します

マンションを売却する際、一般的には4カ月ほどで買主が見つかると言われています。しかし、すべての物件が同じようにスムーズに売れるわけではありません。

築年数や立地条件、価格設定などによっては、購入希望者がなかなか現れず、売却まで半年以上かかることも少なくありません。ここでは、売却期間が長引きやすいケースを解説します。ご自身のマンションが当てはまっていないか、ぜひ確認してみてください。

築年数が経過しているマンション

築年数が古いマンションは、どうしても購入希望者が見つかりにくい傾向にあります。東日本不動産流通機構の「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2025年04~06月】」によると、東京都における築年数別の成約価格は以下のとおりです。

  成約価格(中古マンション)
〜築5年 11,258万円
〜築10年 9,752万円
〜築15年 8,640万円
〜築20年 8,284万円
〜築25年 7,476万円
〜築30年 6,093万円
築30年〜 3,562万円

特に築20年以上経過している場合、建物や設備の劣化が目立ち、買主がリフォームを前提に検討しなければならないケースも多くなります。築30年以上経過すると、築30年までと比べて約半分に価格が下落してしまうケースも少なくありません。加えて、古い建物は耐震基準や断熱性能の面で不安視されることもあり、価格を下げても売却が長引きやすくなります。

ただし、築古マンションでも駅近や再開発エリアなど立地がよければ、需要はあります。また、リノベーション前提で物件を探している層も一定数いるため、不動産会社に相談しながら「現状販売」か「一部リフォーム」かを選ぶとよいでしょう。

専有面積が広すぎる

ファミリー層向けの広い専有面積を持つマンションは、需要がある一方で売却に時間がかかるケースもあります。特に100平方メートルを超えるような大規模住戸は、購入者層が限られてしまい、購入希望者が少なくなる傾向があります。

また、広い分だけ管理費や修繕積立金が高額になるため、購入後の維持費を懸念して敬遠されるケースも少なくありません。このような場合は「二世帯向け」「在宅ワークに最適」など、広さを活かした魅力的な訴求を工夫することで、需要を掘り起こすことが可能です。

立地条件が悪い

マンションの価値を大きく左右する要素が立地です。駅から遠い、買い物施設が近くにない、騒音や治安面の懸念があるなどの場合、どうしても売却までの期間は長くなりがちに。

特に近年は共働き世帯や子育て世帯が増えているため、「通勤・通学の利便性」や「生活環境の快適さ」は購入時の大きな判断基準になっています。

ただし、立地条件が劣っているからといって、売れないわけではありません。バス便が充実している、駐車場が広いなどのプラス要素を強調したり、価格を適切に調整すれば早く売却できる可能性は大いにあるでしょう。

売り出し価格が相場に合っていない

マンションの売却で重要なことが価格設定です。相場より高く設定してしまうと、購入希望者の検索条件から外れたり、同じエリアの競合物件と比較されて敬遠されることがあります。その結果、内覧すら入らず、長期間売れ残ってしまいます。

反対に、安すぎる価格を設定すると、すぐに売れる可能性は高まりますが、売主が損をしてしまうでしょう。そのため、売り出し価格は「相場+物件の付加価値」を踏まえて慎重に決める必要があります。査定は複数の不動産会社に依頼し、提示価格の平均値を参考にすると失敗を避けやすいでしょう。

管理費や修繕積立金が高い

購入希望者が物件を検討する際には、ローン返済額だけでなく、毎月のランニングコストも重視します。管理費や修繕積立金が相場より高いと「長期的に負担が大きい」と感じられ、内覧をしても購入に至らないことが多くなります。特に、築年数が経過して修繕費が増大しているマンションでは注意が必要です。

売却活動をする際は、なぜ管理費や修繕積立金が高いのか、その理由を明確にしておくとよいでしょう。「大規模修繕がすでに完了している」「将来的に値上げリスクが少ない」などの情報を提示できれば、購入希望者に安心感も与えられます。

低層階に位置している

マンション購入者の多くは日当たりや眺望を重視するため、低層階の住戸は不利になることがあります。特に密集地では日当たりが悪く、暗い印象を与えやすいため、なかなか決まらないケースも少なくありません。

しかし、低層階にも「階段ですぐに出入りできる」「小さな子どもや高齢者が安心して暮らせる」などのメリットがあります。このような特徴を上手にアピールできれば、むしろニーズを持つ買主に響きやすくなるでしょう。

周辺エリアに競合物件が多い

同じエリアで似た条件のマンションが多く売りに出されている場合、比較されやすく、差別化ができなければ売却が長引いてしまいます。例えば、同じ築年数・間取り・価格帯の物件が複数あると、購入希望者はより条件のいい物件を選ぶのが自然です。

この場合は、売り出し価格を調整する、内覧時に印象をよくするためにハウスクリーニングを徹底するなど、小さな工夫が大切。また、不動産会社に相談し、競合より有利に見せるための戦略を積極的に立てていくのもポイントです。

マンション売却の平均期間が過ぎても売れない場合の対策

マンション売却の平均期間が過ぎても売れない場合の対策を解説します
マンション売却の平均期間が過ぎても売れない場合の対策を解説します

マンション売却では「4カ月前後で買い手がつく」というのが一般的な目安ですが、必ずしもその通りにいくとは限りません。特に都市部では競合物件が多く、郊外では需要の偏りが影響するため、売却期間が長引くことも少なくありません。ここでは、平均期間を過ぎても売却が成立しない時に検討すべき具体的な対策を紹介します。

需要が高い時期を狙って売り出す

もし4カ月以上経っても成約に至らない場合は、一度売却活動を止め、需要が盛り上がる時期に合わせて売り出し直すことも有効な手段です。不動産市場は賃貸同様に「引越しシーズン」と重なる2〜3月、異動が多い秋の10〜11月が需要が高まる時期です。

公益財団法人東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2025年8月度」を見ると、首都圏の中古マンションの成約件数には明確な季節性が見られます。

成約件数 (件) 前年同月比 (%)
2024年8月 2,299 -2.9
9月 3,047 -4.5
10月 3,092 -5.9
11月 3,207 10.6
12月 3,158 7.4
2025年1月 3,242 19.6
2月 4,152 23.9
3月 4,991 31.0
4月 3,950 21.5
5月 3,841 35.0
6月 4,299 31.9
7月 3,979 24.6

上記の表からもわかるように、2〜4月や10〜11月には取引が活発化しています。売り出しを検討する際は、すぐに買い手が見つからない可能性も考慮し、少なくとも1〜2カ月前の12月頃から準備を始めるとスムーズです。

内覧の準備を徹底する

内覧は、購入希望者にとって物件の印象を決定づける大事な機会です。第一印象がよければ成約に近づき、逆に印象が悪ければ他の物件に流れてしまいます。そのため、内覧前の準備を徹底することが欠かせません。準備の例としては以下のようなものがあります。

  • 部屋を片付け、不要な家具や物を取り除き、広く見せる工夫をする
  • 換気をおこない、湿気や生活臭をできる限り取り除く
  • 部屋を明るく保ち、収納も自由に見てもらえる状態にしておく
  • 水回り(キッチン・浴室・トイレ)は特に清潔感を意識して掃除する
  • 周辺の住環境や生活利便性なども説明できるように準備する
  • 来客用スリッパを用意して歓迎の姿勢を示す

さらに、不動産会社によっては無料のハウスクリーニングを提供しているところもあるため、必要に応じて利用するとよいでしょう。売主自身の対応も購入希望者の安心感につながるため、適度な距離感を意識した対応も大切です。

売り出し物件の訴求ポイントを見直す

売却が長引く原因の一つは、物件の魅力が購入希望者に十分に伝わっていないことです。物件の立地や環境によっては「デメリット」と見られがちな要素も、表現を変えることで「魅力」としてアピールできる場合があります。

例えば、駅から遠い場合は「静かな住宅環境が得られる」と強調でき、幹線道路沿いの物件なら「夜でも明るく帰宅時も安心」と打ち出せます。川や山が近い立地であれば「自然を身近に感じられる」という訴求もできるでしょう。

もちろん、ハザードマップや災害リスクに関しては、正しい情報を提供することが前提ですが、訴求の角度を変えるだけで印象は大きく異なります。長期化している場合は、不動産会社の担当者と一緒に「誰に向けて、どのように伝えるか」をあらためて戦略的に練ってみましょう。

一括査定を利用して複数社に査定依頼する

売却が長期化する場合は、査定額や販売戦略が適切でない可能性もあります。そのため、一括査定サービスを活用し、複数の不動産会社から査定を受けて比較検討してみるとよいでしょう。

複数の会社に依頼することで、適正な相場感を把握できるだけでなく、査定額の根拠や販売方針なども多角的に知ることができます。一社だけに任せてしまうと、媒介契約を取りたいがために相場より高い査定額を提示され、そのあとの売却活動で値下げを迫られるリスクもあります。

不動産情報サイト アットホームでは「不動産一括査定依頼サービス」を提供しています。全国の不動産会社が参加しているため、お近くの不動産会社にも査定を依頼できるでしょう。

囲い込みに注意する

マンションを売却する時に気をつけたいのが「囲い込み」と呼ばれる不動産会社の行為です。これは、売主から預かった物件を広く市場に公開せず、他社からの問い合わせや購入希望をあえて遮断し、自社の顧客だけに紹介する手法を指します。

表向きには「売り出している」としていても、実際には他社へ情報を流していないため、買主と売主の双方から仲介手数料を得られます。不動産会社にとっては利益が増える一方ですが、売主にとっては買い手が見つかりにくくなり、結果的に売却まで時間がかかるうえ、値下げを迫られるリスクも。

こうした不利益を避けるためには、不動産会社の口コミや実績をよく確認し、対応が不誠実だと感じた場合は別の会社を検討しましょう。査定額の根拠があいまいだったり、やり取りが雑だったりする場合も注意が必要です。信頼できる不動産会社を選ぶことが、スムーズな売却への第一歩になります。

売買契約をしても解除される可能性がある

マンションの売買契約を締結したからといって、必ずしも売却が確定するわけではありません。実際には、契約が解除されるケースも存在します。契約解除の主なパターンは以下の2種類です。

解除方法 特徴
手付解除 買主が手付金を放棄することで
契約を解除する方法
住宅ローン特約による解除 住宅ローンの審査が通らなかった場合に契約を解除する方法

手付解除の場合、買主は手付金を放棄する代わりに契約をキャンセルできるため、売主は予定していた契約が突然なくなる可能性があります。また、住宅ローン特約による解除は、買主が金融機関からローンを組めない場合に契約を取り消せるものです。
どちらの場合でも再度買主を探す必要があるため、マンションの売却期間が延びることになります。売買契約を結んでも、代金決済がおこなわれマンションの引き渡しが完了するまでは、売却が正式に成立したとはいえません。安心しすぎず、常に次の売却計画を考えておくことが大切です。

値下げを検討する

マンションが4カ月以上売れない場合、まず考えたいのが価格の見直しです。売却期間の目安は約4カ月とされており、それ以上経過している場合は、売り出し価格が市場の相場よりも高く設定されている可能性があります。

中古マンションは同じ物件が存在しないため、周辺環境や築年数、間取りなどの条件によっては、相場よりも低めに設定しないと購入希望者が現れないことも少なくありません。

価格改定を検討する際には、不動産会社の担当者に相談し、どの程度値下げすれば売却の可能性が高まるか、具体的な目安を出してもらうと安心です。値下げをすれば新たな購入希望者の目に留まりやすくなり、成約のチャンスを大きく増やせるでしょう。

Webサイトでの閲覧対策を徹底する

近年の不動産探しは、ほとんどの購入希望者がインターネットを活用しています。ポータルサイトや不動産会社の自社サイトを横断して検索し、気になる物件を「お気に入り」に登録して比較検討する流れが主流になっています。そのため、Webサイトに掲載される情報が第一印象を大きく左右するといっても過言ではありません。特に画像の質はとても重要です。室内が暗く写っていたり、ピントが合っていなかったりすると、それだけで候補から外されてしまうことがあります。

購入希望者は物件を見学する前に「写真でどれだけ生活をイメージできるか」を重視しているため、撮影時には自然光を取り入れ、部屋を整理整頓してから撮影することが効果的です。

また、物件紹介文も「駅徒歩〇分」「築年数」「間取り」などの基本情報だけでなく、「南向きで日当たり良好」「ペット飼育可」「周辺にスーパーマーケットや学校が充実」など、生活に直結する具体的なメリットを盛り込むと、他の物件との差別化につながります。

Webサイト掲載は物件の顔となる部分のため、写真・文章ともに手を抜かず、購入希望者が「内覧してみたい」と思えるような工夫を意識しましょう。

相場を自分でも調べておく

売却を成功させるためには、不動産会社の査定だけに依存せず、売主自身も相場感を持っておくことが大切です。相場を把握していれば、提示された査定額が妥当かどうかを判断できるだけでなく、売り出し価格を決める際の参考にもなります。相場の調べ方として代表的なものが以下の3つの方法です。

不動産ポータルサイト

不動産ポータルサイトを利用すると、同じエリア・条件の物件がいくらで売り出されているかがわかります。これは売主が希望している価格であり、実際の成約価格とは異なる場合もありますが、売り出し価格の参考値として役立ちます。

レインズマーケットインフォメーション

レインズマーケットインフォメーションは、不動産会社同士で共有されている「成約済み物件」のデータを閲覧できるサービスです。実際に売買が成立した価格を確認できるため、より現実的な相場を把握できます。一般の方もインターネットから閲覧可能です。

不動産情報ライブラリ

不動産情報ライブラリは、国土交通省が提供している公的データベースで、実際の取引価格をアンケート形式で収集・公開しています。地域や面積、築年数などを細かく絞り込んで検索できるため、売却予定の物件と条件が近い不動産の価格を知ることが可能です。

これらを併用することで、「売り出し時はいくらに設定するか」「値下げ交渉にどの程度応じられるか」などの戦略が立てやすくなります。特に築年数や立地条件による価格の違いは大きいため、自分の物件の特徴と照らし合わせながらチェックするとよいでしょう。

専任媒介契約にする

不動産会社と売却を進める際には媒介契約を結びますが、この契約形態によって売却活動の熱量が大きく変わります。媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類がありますが、早く・高く売却したい場合には「専任媒介契約」を選ぶことをおすすめします。

一般媒介

一般媒介は複数の会社に同時に依頼できるため、売主側には一見有利に見えます。しかし、不動産会社からすると「必ずしも自社で契約が取れるとは限らない」ため、広告費や営業リソースを積極的に投入していない傾向にあります。結果として、売却活動が長引くケースも少なくありません。

専任媒介

専任媒介は1社に絞って依頼する方法です。専任にすることで、不動産会社は「必ず自社で取引が成立する」という安心感を得られるため、広告活動や営業に力を入れやすくなります。

ポータルサイトへの掲載やチラシ配布、顧客リストへの積極的な営業など、幅広い売却活動を期待でき、結果的に早期売却につながりやすい点が特徴。また、売主自身が直接買主を見つけた場合は「自己発見取引」として契約できる点もメリットの一つです。

専属専任媒介

専属専任媒介は、専任媒介と同様に1社に依頼する契約方法ですが、こちらは自己発見取引ができないため、仲介を通さなければなりません。そのため、知人や親族に売却する可能性がある場合は不向きです。ただし、活動報告は細かく義務付けられているため、安心感があります。

売却活動には広告費や人件費がかかるため、不動産会社は「契約が決まる見込みがあるかどうか」で力の入れ方を変えます。その点、専任媒介は不動産会社側にもメリットが大きく、売主側も自由度をある程度確保できるため、バランスのよい選択肢でもあるでしょう。

長期間売却できない場合は買取を検討する

どうしても売却が長引き、生活設計に支障が出ている場合は、不動産会社による「買取」を検討するのも選択肢の一つです。買取とは仲介を経ず、不動産会社が直接物件を購入する仕組みで、短期間で現金化できる点が大きなメリットです。

通常の売却では、買主が見つかるまで数カ月以上かかることもありますが、買取なら早ければ数週間で取引が成立します。また、物件の状態にかかわらず買い取ってくれる場合が多く、リフォームや修繕をおこなう必要もありません。

ただし、買取価格は市場相場の7〜8割程度になることが一般的です。そのため、できるだけ高く売りたい場合には向きませんが、急ぎで資金を必要とする場合や長期間売れ残ってしまった時の最終手段としては有効です。

まとめ

マンション売却の平均期間は4カ月程度が目安ですが、物件の条件や売り方によって大きく変わります。売却をスムーズに進めるためには、相場に合った価格設定や内覧準備、不動産会社選びが欠かせません。

計画的に動くことで、希望するタイミングでの売却が実現しやすくなります。売却を検討している方は、まず信頼できる不動産会社に相談し、自分のマンションがどれくらいで売れるのか、具体的な見通しを立ててみましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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