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不動産一括査定のデメリットは?注意点と適切な選び方を徹底解説

不動産一括査定は便利ですがデメリットもあります
売却を検討している不動産の相場を知りたい場合や、媒介契約を結ぶ不動産会社を探している場合、複数の不動産会社に査定を依頼できる不動産一括査定を利用する方法があります。
手軽に依頼ができ便利な不動産一括査定ですが、デメリットもあるため、理解したうえで利用するようにしたいところです。

本記事では、不動産一括査定のデメリットと注意点を紹介します。本記事を参考に、不動産一括査定サービスの適切な選び方と利用方法、他の査定方法を事前に確認しましょう。

不動産一括査定とは

不動産一括査定の概要を詳しく解説します
不動産一括査定の概要を詳しく解説します

「不動産一括査定」とは、インターネット上で複数の不動産会社に同時に査定を依頼できる便利なサービスのことです。一括査定サイトを利用すれば、一度の情報入力で複数の会社から査定結果を受け取ることができます。

短時間で市場価格の目安をつかめるだけでなく、不動産会社ごとの査定方針や対応の違いを比較できることがメリット。1社ずつ個別に相談して査定依頼をする必要がないため、効率的な査定方法といえるでしょう。

不動産一括査定の仕組み

不動産一括査定のサイトでは、複数の不動産会社と提携しており、ユーザーが入力した物件情報をもとに、条件に合致する複数の会社へ自動的に査定依頼を送信します。サイトで入力する主な内容は以下のとおりです。

入力項目 内容
物件種別 マンション・一戸建て・土地など
所在地 都道府県・市区町村・丁目・番地まで
建物面積・土地面積 マンションの場合は専有面積
建築年 建築された年あるいは築年数
物件の現状 居住中・空き家・賃貸中など

物件情報の入力後、サイトのシステムが提携している不動産会社のなかから、エリアや物件種目などに対応している複数社を選定します。自動マッチングにより、自身で不動産会社を選ぶことなく、複数の不動産会社に査定を依頼できる仕組みです。

不動産情報サイト アットホームの「不動産一括査定依頼サービス」では、全国の不動産会社2,522社(2025年11月時点)が参加しており、相場を調べたいエリアを取り扱う不動産会社にも依頼できるでしょう。

不動産一括査定の流れ

不動産一括査定の流れは以下のとおりです。

  • STEP 1売却したい物件の情報を入力する
  • STEP 2連絡先などの個人情報を入力する
  • STEP 3情報をもとに一括査定がおこなわれる
  • STEP 4査定額が電話・メールで伝えられる
  • STEP 5結果を参考に不動産会社を選び訪問査定を依頼する
  • STEP 6信頼できる不動産会社と媒介契約に進む

査定結果は、机上査定であれば1日~3日ほどで、各不動産会社から査定結果が届きます。机上査定の結果を確認して、気になる不動産会社があれば訪問査定を依頼しましょう。不動産一括査定では、複数の不動産会社の査定を受け取ってから、不動産会社を絞り込みます。最終的に信頼できる不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を開始します。

不動産一括査定の方法

不動産一括査定の方法には、以下の2種類があります。

査定方法 内容
机上査定 過去の取引事例や公的データをもとに、入力情報でおこなう概算査定
訪問査定
(現地調査)
担当者が現地を訪問し、建物や周辺環境を直接確認して査定

それぞれの査定方法を簡単に解説します。

机上査定

机上査定は、査定物件の現地は確認せず、過去の取引事例や公的データをもとに査定額を算出する査定方法です。一括査定サイトで入力された物件の基本情報をもとに、データを参照して概算価格が提示されます。

査定結果が出るまでの期間が短いことから、物件のおおよその相場を早く把握できます。ただし、物件の状況が査定結果に反映されないことから、実際の売却価格と差が出やすい点に注意しましょう。

訪問査定(現地調査)

訪問査定(現地調査)は、担当者が実際に現地を訪れ、査定物件の建物や敷地の状態、周辺環境を細かく確認したうえで査定額を算出する方法です。机上査定と比較して正確な査定が可能であり、より実際の売却価格と近い査定結果を得られます。

立ち会いが必要になるため、訪問日程を調整する必要があり、結果が出るまでにも時間がかかる点を理解しておきましょう。特定の不動産会社の仲介で、売却を具体的に検討している場合に適している査定方法です。

不動産一括査定のデメリット

不動産一括査定のデメリットを紹介します
不動産一括査定のデメリットを紹介します

便利で利用しやすい不動産一括査定ですが、デメリットもあります。不動産一括査定を利用するデメリットについて見ていきましょう。

多数の不動産会社から営業電話が来る可能性がある

不動産一括査定を利用すると、複数の不動産会社に同時に査定依頼が送られます。物件の情報と連絡先などの個人情報が送られるため、同時に多数の不動産会社から営業電話が来る可能性があります。

具体的には、より正確な査定結果を出すために、訪問査定の日程調整を確認する内容です。気軽に不動産一括査定を利用できる反面、多くの不動産会社から営業電話が来る状況は迷惑に感じる人もいることでしょう。

売却を検討している段階ではなく、不動産の相場感を知りたい場合は、一括査定以外の査定方法も検討できるでしょう。AIが査定物件と成約事例のデータを比較し価格を算出する匿名査定では、連絡先などの個人情報を伝えないため営業電話が来ることがありません。あるいは、一括査定の依頼時に電話対応を避け、メールのみで連絡するように希望を出しましょう。

査定額に大きな差が出ることがある

不動産一括査定では、不動産会社ごとに提示される査定額に数百万円単位の差が出ることがあります。査定額が異なる理由は、現地を確認しない机上査定のため不動産会社ごとに参照するデータが異なっていたり、販売戦略が異なることが考えられます。

さらに悪質な不動産会社は、契約を取るために相場からかけ離れた高額な査定額を提示することも。信頼できる不動産会社と悪質な不動産会社の2種類の査定を受けた場合は、査定額に大きな差が生まれます。結果的に、不動産一括査定を受けても、さまざまな理由で査定額に差があるために、正確な相場を把握できないかもしれません。

不動産の相場は一括査定のみで判断するのではなく、自身でインターネット上の情報を閲覧して判断する、自己査定とあわせて判断したほうがいいでしょう。

査定額で売れるとは限らない

不動産一括査定で提示された査定額は、想定される売却価格の目安であるため、必ずしも査定額で売れるとは限りません。実際の売却価格は、買い手が現れるまでわかりません。多くの場合、査定額よりも安くなることが多いです。

売り出し価格は、購入希望者の値引き交渉を前提にしています。仮に査定額をそのまま売り出し価格に設定した場合、購入希望者の値引きに応じれば、実際の売却価格は安くなるでしょう。査定額は売却価格の参考値であり、実際の売却価格は査定額の10%程度は変動する可能性があります。

査定を依頼できる不動産会社が制限される

不動産一括査定は便利なサービスですが、すべての不動産会社が参加しているわけではありません。提携している会社はサイトごとに異なり、なかには大手不動産会社が参加していないサイトや、地域限定の会社以外は登録していないサイトもあります。

よって、不動産一括査定サイトで不動産会社を探すデメリットは、良質な不動産会社があっても提携されていないために、媒介契約の候補から弾かれてしまうことです。また、すでに査定を依頼したい不動産会社に目星を付けている場合も、提携していなければ個別で依頼しなければならず一括査定で効率よく査定を依頼できません。

サイトによって提携する不動産会社は異なるため、提携している不動産会社の傾向を調べましょう。不動産一括査定サイトに提携していない不動産会社は、個別に査定を依頼する必要があります。

地域によっては査定の対象外になることがある

不動産一括査定サイトは対象地域を指定している場合があり、地域によっては対象外になることがあります。例えば、人口減少が進む地域や、需要が極端に少ない地域、地価が下がっている地域などは、買い手が付きにくいため、査定を受け付けない不動産一括査定サイトも存在します。

該当する地域を対象としている一括査定サイトを探すことになりますが、存在しない場合は、査定を受け付けている不動産会社に個別に依頼することになるでしょう。

不動産一括査定を利用する際の注意点

不動産一括査定を利用する際の注意点を解説します
不動産一括査定を利用する際の注意点を解説します

不動産一括査定は便利ですが、デメリットもあるため万能ではありません。デメリットを踏まえたうえで、必ず理解しておきたい不動産一括査定を利用する際の注意点をそれぞれ詳しく解説します。

相場とかけ離れた高額査定を信用しない

不動産一括査定を利用すると、複数の会社からさまざまな査定額が提示されます。特に注意するべき不動産会社は、相場よりも明らかに高い査定額を提示する会社です。魅力的に見えますが、信用してしまうと実際の売却価格が大きく下がったり、売却期間が長引いたりすることも。
相場とかけ離れた高額査定をする悪質な不動産会社が存在する理由は、他社より高い査定額を提示して媒介契約を結ぶためです。

しかし、不動産は査定額で売却できるとは限りません。相場とかけ離れた価格で販売しても売れないため、値下げを繰り返すことになります。値下げを繰り返し、売れ残る期間が長いほど、物件自体に問題があると考えられてしまうため、買い手からの印象も悪くなります。

悪質な不動産会社は媒介契約を結ぶことを優先して、顧客の利益を考えません。相場に沿った価格でなければ物件は売れないため、相場とかけ離れた高額査定を出す不動産会社を信用しないようにしましょう。

査定額は高額であることよりも妥当性を重視する

高額な査定額を出す不動産会社ほど、よい会社であるという認識は誤りです。信頼できる不動産会社は、査定額が高額であることよりも、妥当性のある査定額を出します。

一括査定の時点で判断できることは、事前に自身で調べた相場に沿った価格であることです。査定額を判断する際には、「この価格で売れたらうれしい」ではなく、「この価格であれば売れる」と確信を持てることが重要になります。

一括査定のあとに、実際に不動産会社から訪問査定を受けて査定額の根拠の説明を受ける際に、根拠を明示して納得のいく説明をしてくれる会社を選ぶことが理想です。一括査定は、複数の不動産会社から査定を受けることで、妥当性のある査定額を出す信頼できる不動産会社を見つけることに役立ちます。

不動産会社ごとの強みを把握する

一括査定を利用した不動産会社は、信頼できる不動産会社を選ぶことを前提に、各社の強みを見極めることが重要です。例えば、マンションを売却したい場合は、マンションの売却実績が多い不動産会社に任せるほうがスムーズに売却しやすくなります。

一戸建ての住宅を売却する場合は、一戸建ての売却実績のある不動産会社に任せたいところです。一括査定で訪問査定を依頼する不動産会社を絞り込む際には、査定額のみを比較するのではなく、各社の情報をチェックするようにしましょう。

一括査定では、入力した物件情報をもとに自動的に不動産会社とマッチングし、各不動産会社が算出した査定額を閲覧できます。そして査定額を提示した不動産会社のなかから、売却する物件が専門外の不動産会社、査定額から判断して悪質な不動産会社は除外して、相談先を検討できます。よって、不動産一括査定をうまく利用すれば、信頼できる不動産会社と出合うための便利なツールといえるでしょう。

不動産一括査定の選び方

不動産一括査定の選び方を紹介します
不動産一括査定の選び方を紹介します

不動産会社に多くの種類があるように、不動産一括査定サイトにも種類があります。よって、信頼できる不動産会社を効率よく選ぶためには、不動産一括査定サイトの選び方も理解する必要があるでしょう。不動産一括査定の選び方について詳しく解説します。

対応エリアを確認する

不動産一括査定サイトを選ぶうえで、最初に確認するべきことは対応エリアです。売却する物件が対応エリア外にある場合は売却できません。また、不動産一括査定によっては、特定のエリアに対する査定を強みとしているケースもあります。

都心部の物件は、どの不動産一括査定サイトを選んでも問題なく査定できます。しかし、地方の物件を売却する場合は、対応エリアの確認と、該当するエリアを強みとしている不動産一括査定サイトを探すことが、効率的な査定につながるでしょう。

提携している不動産会社の数と傾向を把握する

不動産一括査定サイトでは、サイトごとに提携している不動産会社の数と、提携する不動産会社の傾向が異なります。一般的に、提携社数が多いサイトほど比較の幅が広がります。しかし、単に数が多ければよいわけではありません。

大手不動産会社が中心であるか、地域密着型の不動産会社を多く含むのかによって、期待できる査定結果も変わるでしょう。大手不動産会社は、広告力が高く販売スピードが速いことが特徴です。一方で、地域密着型の不動産会社は地元の不動産動向に詳しく、顧客を見つけられる独自のネットワークを築いている場合があります。

また、信頼できる不動産一括査定サイトでは、悪質な不動産会社の排除体制が整っています。提携会社に対する事前審査を念入りにおこない、苦情やトラブルが多い企業を除外する仕組みがあれば、安心して利用できるでしょう。

利用者の口コミ・評判を調べる

不動産一括査定サイトを利用する前に、利用者の口コミ・評判を調べましょう。ただし、インターネット上に公開されている意見のなかには「電話がしつこい」など、不動産一括査定サイトではなく、提携する不動産会社側の落ち度を指摘する意見も多いです。よって、一部に悪評があっても悪いサイトとは限りません。

しかし、極端に悪評が多いサイトはトラブルになる危険性もあるため、利用は避けたいところです。不動産会社選びでは、利用者の口コミ・評判の確認も重要ですが、不動産一括査定サイトを利用する場合も口コミ・評判の確認を忘れないようにしましょう。

不動産一括査定以外の査定の選択肢

不動産一括査定以外の査定の選択肢を紹介します
不動産一括査定以外の査定の選択肢を紹介します

不動産一括査定サービスは、査定の目的や売却準備の段階によっては、他の方法を考えたほうがいいケースもあります。不動産一括査定以外の査定の選択肢を見ていきましょう。

インターネット上の情報を閲覧する自己査定

不動産の売却準備を始めたばかりの人は、一括査定を利用する前に、インターネット上で情報を調べる自己査定をしておきたいところです。一括査定の利用では、相場からかけ離れた査定額を見抜ける知識が必要になります。

大手ポータルサイトで類似する物件の価格帯を調べるだけでも、査定額の目安をつかみやすいでしょう。また、国土交通省が公開する「不動産情報ライブラリ」から、同じエリアの類似する物件の取引事例を調べて相場を把握する方法があります。

最終的に一括査定を利用する場合も、事前知識を得るために自己査定をおこなうことで、査定額に対する解像度が上がります。実際に不動産会社から査定額の根拠を聞く際も、正しい説明に対して納得しやすくなるでしょう。

より手軽に査定できる匿名査定

匿名査定は、名前や電話番号などの個人情報を入力せずに、不動産価格を知ることができるサービスです。一括査定では、連絡先などの個人情報を入力するため、複数の不動産会社から営業連絡が来る可能性があります。しかし、匿名査定では連絡が来る心配がありません。

物件の情報を入力するだけで、AIが過去のデータをもとに査定価格を自動で算出します。すぐに結果が表示されるため、手軽に相場を把握できるでしょう。精度は低くなる傾向にありますが、現時点で売却を検討しておらず、気軽に相場を調べたい場合は、匿名査定の利用で問題ありません。

まとめ

不動産一括査定は、複数の不動産会社に同時に査定を依頼できる便利なサービスです。効率よく各社の査定額を比較できるため、信頼できる不動産会社を見つけやすくなります。一方で、複数のデメリットが存在し、他社や相場とかけ離れた査定額を提示する不動産会社に注意が必要です。

また、査定額の妥当性を見極めるためには、自己査定を中心に事前に相場を把握しておくことが重要です。不動産一括査定で複数の不動産会社を効率的に比較すれば、信頼できる不動産会社に出合うまでのプロセスを短縮しやすくなるでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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