不動産の個人売買はできる?メリット・デメリットと注意点を解説

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不動産の個人売買はできる?

不動産の個人売買は可能です。不動産売買は宅地建物取引業の免許を持っていなくてもおこなえるため、法律的には売主と買主だけでも売買契約を締結できます。
不動産の個人売買はおすすめできない
不動産は個人売買できますが、おすすめできません。不動産売買するには不動産や税金の知識が必要であり、知識がないと大きなトラブルを発生させてしまうからです。不動産のトラブルは多額の損害賠償請求に発展するおそれがあるため、通常は不動産会社を通さずに個人売買をおこないません。
不動産の個人売買をするメリット

不動産の個人売買をするメリットは次のとおりです。
- 仲介手数料がかからない
- 自由度が高い
- 売買スケジュールの調整が容易
不動産の個人売買には、メリットが存在します。ただし、メリットがあるといってもデメリットのほうが大きいこともあり、不動産の個人売買をするのはおすすめできません。
仲介手数料がかからない
不動産の個人売買をおこなえば、仲介手数料がかかりません。仲介手数料は、不動産仲介会社を介して売買契約を締結したときに支払う費用です。仲介手数料は、売買代金が400万円を超える場合、次の計算式で金額を計算します。
例えば1,000万円の物件を個人売買するとした場合、39万6,000円が浮くということです。なお、不動産の個人売買をおこなっても、売却に関する税金は減税されません。
自由度が高い
不動産の個人売買には、自由度が高いというメリットがあります。ここでいう自由度とは、販売価格や販売時期、買い手の選択など自分でおこなえることです。不動産会社を通じて不動売買をおこなう場合、不動産会社の基準が介入してしまって自由度が低くなります。しかし、個人売買であれば他人の基準が必要なく、自分の判断ですべて決定できます。
売買スケジュールの調整が容易
不動産の個人売買をすれば、売買スケジュールの調整が容易です。不動産会社を介して売買契約を進めると、手続きのスケジュールがすべて不動産会社に管理されてしまいます。手続きを進めていくには不動産会社のスケジュールも必要となり、売主の一存では日程を調整できません。忙しい売主にとって、不動産会社中心のスケジュールにならなくて済むのはメリットです。
不動産の個人売買をするデメリット

前述したとおり、不動産の個人売買にはメリットもありますが、基本的にはおすすめできません。その理由については下記のようなリスクやデメリットがあるからです。
高度な専門知識が必要
不動産の個人売買には、高度な専門知識が必要です。不動産に関する知識を得ようとしても、独学では得られないほどの量の知識を学ばなければなりません。一般の人が不動産の高度な知識を得ることは困難であり、個人売買をする際には知識がないまま売買契約書を作成する必要があります。知識がないまま作成した契約書で売買契約を締結してしまうと、大きなトラブルに発展してしまいかねません。
買主とのトラブルが発生しやすい
不動産の個人売買は、買主とトラブルになりやすい契約です。不動産売買契約には、売主と買主との取り決めを記載します。調べながらであったとしても、一般の人が専門的な書類を作成するのは難しいケースが多いでしょう。
例えば、土地の売買契約書には測量し越境物が発生した場合、越境物の撤去について取り決めをします。越境物は建築できる建物に影響をおよぼすため、誰が撤去するのか、撤去できるのかを明確に記載しなければ大きなトラブルに発展してしまいます。
手間と時間がかかる
不動産の個人売買をするには、手間と時間がかかります。不動産売買をするには、各種手続きや売買契約書の作成が必要です。手続きや契約書作成時には、膨大な書類を抜け漏れなく準備した上で、内容に間違いがないか確認しなければなりません。
また、買主にも不動産の知識がないと、個人売買はスムーズに進みません。売主・買主双方に不動産の知識がなければ、確認の漏れが発生してしまうからです。
買い手が見つかりづらい
不動産の個人売買で進めたいと考えたとしても、買い手をみつけるのは非常に困難です。不動産会社は買い手を探索するため、売り物件情報をインターネットや広告に掲載したり、既存顧客に連絡したりするなどします。多くの方法を用いることで、買い手を探していきます。
しかし、一般の人が広告したり、既存の顧客に売り物件情報を紹介したりできないため、買い手を見つけること自体難しいでしょう。
買主の住宅ローンが組みにくい
不動産の個人売買では、住宅ローンを組むことがまずできません。住宅ローンは多額の借入であり、金融機関は慎重に融資審査をおこないます。売買契約書の内容も審査対象となり、宅地建物取引業者が作成した売買契約書でないと審査に通過しない可能性が高くなります。
個人売買をサポートする会社の支援を受ければ住宅ローンを組めるケースがあるものの、結局費用がかかってしまうため、最初から不動産会社を通じて売買を進めたほうがよいでしょう。
個人売買を選択肢に入れても良いケース

基本的には不動産会社に仲介を依頼することがいいとされていますが、下記のようなケースであれば個人売買に適していると考えられています。いくつかご紹介します。
親族や友人など、親しい間柄での取引
親族や友人など親しい間柄の人と取引する場合は、個人売買を選択してもいいケースです。不動産の個人売買をおこなうには高度な知識が必要で、知識が不足していることで手続きや売買契約書の内容に抜けが発生するリスクがあります。他人同士の契約であれば抜けが大きなトラブルに発展するおそれがあるものの、親しい間柄の人同士であれば、抜けが判明した際に話し合いで解決することも可能です。
貸している物件を借主に売る
賃貸物件を借りている人に売る場合、個人売買を選択してもよいでしょう。賃貸物件の借主は、実際に住んでいる物件を購入することになるため、物件について熟知しているといえます。そのため、物件のことを知らない人に売却するよりも、トラブルになる可能性を抑えられるでしょう。
関連会社間、法人間での取引
関連会社間や法人間での取引であれば、個人売買は選択肢のひとつです。関連会社間の取引であれば、実質、売主と買主が一緒ともいえるため大きなトラブルに発展しにくいと考えられます。また、法人であれば不動産の知識があるケースも多く、法人間なら個人売買してもトラブルになりにくい傾向があります。
不動産個人売買の流れと手順

不動産個人売買をおこなうときには、次の流れ・手順で進めます。
- STEP 1売りたい不動産の相場を調べる
- STEP 2必要書類を準備する
- STEP 3売却価格を設定する
- STEP 4買い手と価格交渉する
- STEP 5売買契約書を作成する
- STEP 6物件を引き渡す
STEP1:売りたい不動産の相場を調べる
不動産の個人売買をおこなう前に、まず売りたい不動産の相場を調べます。通常であれば不動産を売却する際、不動産会社の査定を受けて売り出す価格を決定しますが、個人売買の場合は査定が受けられません。そのため売却金額は売主が決めなければならず、相場の調査も自分でおこなう必要があります。
STEP2:必要書類を準備する
不動産の売却価格を調査したら、売却に必要な書類を準備しましょう。用意しなければならない書類は多くあり、売却する不動産の種別や売主によって異なります。どの書類が必要なのかは後述します。
STEP3:売却価格を設定する
個人売買に必要な調査と書類が準備できたら、売却価格を設定します。売却価格は安すぎると売主にとってマイナスとなり、高すぎると買主にマイナスとなるため適正な価格設定をしなければなりません。
一般の人が適正価格を設定するのは難しいものの、多くの成約事例を調査することで相場の把握が可能です。成約事例を確認する際には、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」を参照するとよいでしょう。
STEP4:買い手と価格交渉する
売却価格を決定したら、買い手と価格交渉をおこないます。価格交渉をする際に無理な交渉はせず、一定の金額までなら許容するように交渉することが大切です。無理な交渉をすると、買い手が購入を諦めてしまう可能性が高くなるため注意しなければなりません。価格交渉がスムーズに進まないときには、条件交渉に切り替えるという方法もあります。
STEP5:売買契約書を作成する
買い手との交渉がまとまったら、売買契約書の作成を開始します。売買契約書には売却する不動産の情報を掲載しなければならないため、登記事項証明書や建築確認などの書類を用意しなければなりません。
また、売主・買主の決め事を記載するため、いつ手付金授受をおこなうのか、いつ引渡しするのかなどを買主と決めておく必要があります。
STEP6:物件を引き渡す
買主と売買契約を締結したら、売買契約書の内容に従って引渡しをおこないます。不動産には、売買契約から引渡しまでに済ませておかなければならない事項が多くあります。例えば、引越しや抵当権抹消、土地の測量などです。契約書で買主と取り決めた事項を、すべて済ませてからしか引渡しはおこなえません。
家を売るのに必要な書類は?

家を売るのに必要な書類は多くあり、売却する物件や売主によって異なるものの、一般的に次の表に記載されている書類を準備しなければなりません。
準備する人 | 必要書類 | 入手場所(方法) |
---|---|---|
売主・買主 どちらか |
売買契約書 | 売主が自作 |
売主・買主 どちらか |
登記事項証明書 (登記簿謄本) |
法務局 |
売主 | 権利証 (登記済証) |
不動産購入時に法務局もしくは司法書士から郵送されてくる |
売主・買主 どちらか |
公図 | 法務局 |
売主 | 固定資産税評価額証明証 | 売却不動産の所在を管轄する自治体 |
売主 | 身分証明書 (マイナンバーカード、運転免許証など) |
- |
売主 | 住民票 | 売主の現住所を管轄する自治体 |
売主 | 実印 | - |
売主 | 印鑑証明書 (発行から3カ月以内のもの) |
売主の現住所を管轄する自治体 |
不動産の個人売買で必要になる書類
上記のリストのなかで、不動産取引で特に重要な書類について下記で解説します。
売買契約書
売買契約書は不動産を売買した証明書として、所有権移転時に法務局に写しを提出します。法務局ではどの不動産を売買したのか、誰に不動産をいつ売買したのか確認されます。売買契約書の作成にはルールがなく、売主もしくは買主どちらが作成しても構いません。
登記事項証明書(登記簿謄本)
登記事項証明書(登記簿謄本)は、不動産の詳細な内容が記載されている書類で、売買契約書の作成時に必要です。登記事項証明書は法務局の窓口で取得可能であり、登記情報はオンラインになっているため、どこの法務局でも取得できます。なお、法務局の窓口で登記事項証明書を取得すると、1通あたり600円(オンライン請求をして窓口に取りに行く場合は480円)かかかります。
権利証(登記済証)
権利証(登記済証)は不動産の所有者が誰か記載されている書類で、所有権移転時に法務局に提出します。権利証は売却する不動産を購入したとき、法務局または司法書士より郵送されてくるものです。紛失した場合は再発行できず、司法書士に権利書に代わる書類を用意してもらわなければなりません。
司法書士に書類を作成してもらう場合、5~10万円程度かかります。ただし、依頼する司法書士によって金額が大きくことなるため注意しましょう。
公図
公図では土地の形状や、土地に割り振られている地番の確認が可能であり、売買契約書作成時に使います。公図は法務局で取得可能であり、登記事項証明書と同じくどこの法務局でも取得が可能です。法務局の窓口で公図を取得する場合、1通につき450円かかります。
固定資産税評価額証明証
固定資産税評価証明書は、不動産に関連する税金の金額の基となる数字が記載されている書類で、所有権移転時に法務局へ提出が必要な書類です。固定資産税評価証明書は、売却する不動産を管轄している自治体で取得できます。取得費用は自治体によって異なりますが、東京都の場合、1枚目は400円、2枚目以降は100円かかります。
不動産売買には多くの書類が必要であり、抜け漏れなく用意しなければなりません。書類を個人で完璧に用意するのは、大変な作業となることを覚えておきましょう。
不動産を個人売買する際の注意点

不動産を個人売買する場合に、注意すべき点を以下にまとめました。
親族間の個人売買は贈与税がかかることも
親族間で個人売買をすると、贈与税が課税されるケースがあるため注意しなければなりません。親族間の個人売買を相場でおこなえば問題ありませんが、相場よりも低い金額で売買してしまうと税務署から贈与税逃れを指摘されます。相場と売買した金額の差が贈与とみなされる「みなし贈与」を指摘されると、金額の差に応じた贈与税が課税されます。
相場よりも安く売買すればするほど、贈与税の課税額が上がってしまうため注意しましょう。なお、税務署と法務局は情報交換しており、相場より安く不動産を売買したことはすぐばれてしまいます。
書類作成は司法書士に依頼する
不動産の個人売買をする際、所有権移転登記申請書類作成は司法書士に依頼しましょう。不動産売買では多くの書類を作成しますが、特に法務局への提出書類の作成は複雑で一般の人ではなかなか対応できません。書類不備によって法務局が登記に応じないケースもあります。
スムーズに個人売買を進めるためにも、司法書士に所有権移転登記申請書類作成を依頼するのが無難です。なお、所有権移転登記申請手続きを依頼する場合、売主は2万円弱、買主は10~15万円程度の費用が必要になります。
買主が住宅ローンを組めないケースがある
個人売買で作成した売買契約書の場合、ほとんどのケースで買主は住宅ローンを組めません。金融機関は買主の年収や年齢だけでなく、不動産売買に問題がないか契約書の内容を確認します。しかし、個人売買で作成した売買契約書には抜け漏れが多くあり、不動産売買には適していない状態になっていることがほとんどです。不動産売買に適した契約を締結していないと、融資が焦げ付くおそれが高いため金融機関は融資を実行してくれません。
また、金融機関のほとんどは、宅地建物取引士が作成する重要事項説明書があることを融資の条件としています。一般の人では重要事項説明書を作成できないことで、融資に通らないこともあります。
契約不適合責任に注意する
不動産の個人売買をおこなう際には、契約不適合責任に注意しなければなりません。契約不適合責任とは、契約で渡すと記載した商品の内容は、引渡し時と異なっていた場合に売主が負う責任です。例えば、雨漏りがない建物を引き渡すと契約書に記載してあったものの、引渡しした直後に雨漏りが発見された場合、売主には雨漏りの補修や損害賠償の責任が発生します。
不動産会社を通さずに売買契約書を作成すると、物件の状態の見落としなどにより契約不適合責任を問われる可能性が高くなってしまいます。
少しでも不安ならプロの不動産会社に依頼しよう!

不動産の個人売買の内容を確認し、少しでも心配になった人は、不動産会社を通して売却すべきでしょう。不動産売買の責任は重く、時に数千万円の損害賠償を受けてしまいます。不動産会社を通せば仲介手数料がかかるものの、損害賠償の金額よりも少なく済むはずです。
まとめ
最後に、本記事で解説した重要ポイントをまとめました。
不動産の個人売買は可能?
不動産の個人売買は可能です。不動産売買は、不動産会社を介さなければならないという法律はありません。ただし、不動産会社を介さない場合、自分で売買契約書を作成したり登記手続きをしたりしなければなりません。
不動産の個人売買のメリットは?
不動産の個人売買のメリットは、次のとおりです。仲介手数料がかからない・自由度が高い・売買スケジュールの調整が容易。詳しくは「不動産の個人売買をするメリット」をご参照ください。
不動産の個人売買のデメリットは?
不動産の個人売買のデメリットは、次のとおりです。高度な専門知識が必要・買主とのトラブルが発生しやすい・手間と時間がかかる。詳しくは「不動産の個人売買をするデメリット」をご参照ください。
不動産の個人売買は可能です。個人売買自体は、法律で禁止されているわけではありません。しかし、デメリットが大きく、一般の人がおこなうのは危険です。個人売買だと売買契約書を自分で作成しなければなりません。不動産でトラブルになると高額の損害賠償をされる危険性もあるため、少しでも個人売買に不安を感じるのであれば不動産会社に売買を依頼しましょう。
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